Aメロ・Bメロ・サビの違い

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
Aメロは作れたのに、続きを作るとBメロもサビも同じような雰囲気になってしまう。歌ものを作り始めた人が、ほぼ必ず通る壁です。原因の多くは、3つのセクションの「役割」を分けないまま、同じ気分でメロディを続けてしまうことにあります。
Aメロ・Bメロ・サビの違いは、暗記する用語ではなく、耳で聞き分けられる役割の違いです。それぞれの役割、メロディの高さ・音数・コードの密度がどう変わるのか、市販曲での聞き分け練習、そして自分の曲が全部同じに聞こえる時の直し方まで、順に整理します。
先に見ること
Aメロ=説明、Bメロ=橋渡し、サビ=解放。役割が違えば作りも変わります。
- Aメロは低め・落ち着き、サビはいちばん高く、いちばん覚えやすく
- 変わるのはメロディの高さ、音数、コードと伴奏の密度
- 好きな曲で「どこで景色が変わるか」を秒でメモする練習が効く
- 全部同じに聞こえたら、サビを盛るよりAメロを引き算する
役割で覚える:説明→橋渡し→解放
3つの名前は、順番ではなく仕事の違いです。
J-POPの1番は、多くの場合Aメロ→Bメロ→サビの順で進みます。名前だけ見ると単なる順番のようですが、実際にはそれぞれに別の仕事が割り当てられています。
Aメロは説明、Bメロは橋渡し、サビは解放です。
Aメロの仕事は、曲の世界を説明することです。物語でいえば導入部にあたります。聞き手はまだ曲に慣れていないので、ここで無理に盛り上げる必要はありません。
落ち着いたメロディで「こういう曲ですよ」と伝える場所です。歌詞でも、状況や情景の描写がAメロに置かれることが多いのはこのためです。
Bメロの仕事は、Aメロとサビをつなぐ橋渡しです。落ち着いたAメロから、いきなり最高潮のサビへ飛び移ると、聞き手が置いていかれます。
あいだにワンクッション置いて、「そろそろ来るぞ」という期待を高めるのがBメロです。少し落ち着かない、宙に浮いたような響きになるのは、着地をサビまでお預けにしているからです。
サビの仕事は、ためたものを一気に解放することです。曲の看板であり、いちばん伝えたいことを、いちばん覚えやすい形で見せる場所です。
曲名のフレーズがサビに置かれる曲が多いのも、ここが「この曲といえばこれ」を背負う区間だからです。
何が変わるのか:高さ・音数・密度
役割の違いは、3つの要素の変化で音になります。
1つ目はメロディの高さです。Aメロは話し声に近い低めの音域で歌い、Bメロで少しずつ上がり、サビで曲中の最高音に届く。この階段のような設計が、いちばん分かりやすい作り分けです。
サビが「開けた」と感じるのは、それまで温存していた高い音域がここで初めて解放されるからです。
2つ目は音数、つまり言葉とメロディの詰め方です。Aメロは会話のように細かく言葉を並べ、サビでは1つの音を長く伸ばして聞かせる。意外に思えますが、サビのほうが音数が減る曲は珍しくありません。
短い音の連打は「語り」に、伸ばす音は「叫び」や「歌い上げ」に聞こえる。この性質を使って、セクションごとに語り方を変えます。
3つ目はコードと伴奏の密度です。Aメロでは楽器を減らし、コードも1小節に1つとゆったり構える。Bメロでコードを2拍ごとに動かして流れを速め、サビで全部の楽器を鳴らす。
メロディが同じでも、下の密度が変わるだけでセクションの表情は変わります。
もう1つ、見落とされやすいのが歌い出しの位置です。レッスンで使っている判断メモに「メロディは、どの拍から言葉や音が入るかで印象が変わる。1拍目から入るのか、少し待って入るのか、手前から入るのかを試す」というものがあります。
Aメロは1拍目から素直に、サビは小節の手前から食い気味に入る。入り口の位置を変えるだけでも、セクションの区別は付けられます。
セクション別の設計早見表
迷ったらこの表に戻って、どれか1行だけ直します。
| 項目 | Aメロ | Bメロ | サビ |
|---|---|---|---|
| 役割 | 説明。曲の世界に招き入れる | 橋渡し。期待を高める | 解放。看板を見せる |
| メロディの高さ | 低め。話し声に近い | 中間。少しずつ上げる | 最高音を出す |
| 音数・言葉 | 細かく語る | 語りから歌へ移行 | 伸ばして歌い上げる |
| コードと伴奏 | 薄め。1小節1コード | コードの動きを速める | 全部鳴らす。密度最大 |
| 聞き手の状態 | 様子を見ている | 次を待ち始める | 一緒に口ずさむ |
聞き分ける練習:好きな曲を地図にする
分析ではなく、境界線を見つける遊びです。
作り分けの感覚は、市販の曲を「境界線」に注目して聞くと早く育ちます。好きな曲を1曲選び、再生しながら「景色が変わった」と感じた瞬間の秒数をメモしてください。
歌詞やコードの知識は要りません。変わったと感じた場所が、ほぼそのままセクションの切れ目です。
次に、その境界で何が変わったのかを1つだけ特定します。メロディが高くなった、ドラムが入った、コードの動きが速くなった、楽器が増えた。答えは1つとは限りませんが、まず1つ言えれば十分です。
「サビでドラムのパターンが変わって、メロディが一気に上がった」と言えるようになれば、それはもう設計図として読めています。
これを2〜3曲やると、ジャンルが違っても同じ型が繰り返されていることに気づきます。低く語るAメロ、浮いた感じのBメロ、高く開くサビ。プロの曲は、この型の上で細部を競っています。
型そのものは隠されていないので、聞く側の注目を変えるだけで見えてきます。バラードとアップテンポの曲を1曲ずつ選ぶと、テンポが違っても境界の作り方は同じだと確認できて、型への信頼が一段深まります。
この練習の目的は、批評家になることではありません。「サビの手前で音数を減らしていた」「Bメロの頭でベースが止まった」といった発見は、そのまま自分の曲に移植できる部品になります。
メモした発見を1つ、次の制作で真似してみてください。
全部同じに聞こえる時の直し方
足すより先に、引く場所を探します。
自分の曲のAメロとサビが同じに聞こえる時、多くの人はサビに音を足そうとします。ところが実際の原因は、サビが弱いことよりも、Aメロがすでに満杯なことのほうが多いです。
Aメロの時点で楽器が全部鳴り、メロディが高い音域まで使っていると、サビで上げる余地が残っていません。
直す手順は引き算からです。まずAメロの伴奏を思い切って減らします。ドラムとベースと歌だけ、くらいまで薄くして通して聞くと、サビに入った瞬間の落差が生まれます。
次にメロディの最高音を確認します。Aメロがサビと同じ高さまで登っているなら、Aメロ側を数音下げて、最高音をサビ専用にします。
それでも平坦なら、セクションの境界に段差を付けます。サビの直前の1小節だけ全部の楽器を止める、Bメロの終わりでドラムにフィルを入れる、といった小さな仕掛けで、聞き手に「ここから変わる」と伝えられます。
境界がはっきりすると、中身が同じでも別のセクションとして聞こえるようになります。
直す時は、1回につき1セクションの1要素だけ変えて、通しで聞き比べてください。3カ所同時に変えると、どれが効いたのか分からなくなります。
Aメロ・Bメロ・サビの役割分担ができたら、次は2番や間奏を含めた1曲全体の組み立てです。全体の流れは制作工程マップに1枚でまとめています。
よくある疑問
Aメロ・Bメロ・サビはどの曲にも必要ですか
必須ではありません。海外のポップスにはBメロを挟まずVerseからChorusへ直行する曲も多くあります。ただ、説明・橋渡し・解放の3役がそろった型で一度作っておくと、省略する形にも応用が利きます。
サビから先に作ってもいいですか
構いません。いちばん聞かせたいサビを先に完成させ、そこから高さと音の密度を引き算してAメロとBメロを作る方法は、むしろ設計しやすい定番の順番です。
Bメロだけうまく作れません
メロディの高さをAメロとサビの中間に置き、コードをAメロと違う場所から始めてみてください。Fなど中心のCから離れたコードで始めると、宙に浮いたような橋渡しの感じが出ます。
英語ではそれぞれ何と呼びますか
Aメロはverse、Bメロはpre-chorus、サビはchorusと呼ばれるのが一般的です。海外のDAW解説や作曲動画を見る時は、この対応を知っておくと迷いません。
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