DTMで1曲を作る順番

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
DTMで1曲を作る時、いちばん止まりやすいのは、コードもメロディもアレンジも一度に考えようとする瞬間です。何から手をつけるか迷った時点で、手は動かなくなります。迷いを消す方法は単純で、作る順番を1本の線に決めてしまうことです。
その線は、音出し、コードとドラムの土台、メロディ、展開、仕上げ、と流れます。前の工程が終わってから次へ進むだけなので、今どこにいるかがいつも分かります。読み終えたら、まずDAWを開いて音を1つ鳴らしてください。ここから順に見ていきます。
作る順番
1曲は、土台から仕上げへ一直線に進めると迷いません。
- 音を出す。まずDAWから1音鳴らして手を動かす
- コードとドラムで、曲を支える土台を作る
- メロディを主役として置く
- 8小節を1コーラスへ広げ、最後に仕上げる
完成を最初から狙わない
最初のゴールは、短く聞ける形を1つ作ることです。
1曲作ると聞くと、イントロからサビ、間奏、終わりまでを一気に思い描きたくなります。ところが、その全体像を最初から埋めようとすると、たいていどこかで手が止まります。
初心者がつまずくのは、才能ではなく、ゴールが大きすぎることのほうが多いのです。
そこで、今日のゴールを小さく決めます。目安は4小節か8小節。この短い範囲で、曲が動いて聞こえて、次に広げられそうか、それだけを確かめます。
完成形が見えないまま細部を延々と触ると、作業は増えても曲は前へ進みません。小さいゴールが、迷子を防ぐ道しるべになります。
もう一つ大事なのが、音色探しを後回しにすることです。止まりやすい人ほど、最初から理想の音を探し始めます。
けれど、曲の流れがない段階で音を差し替えても、良くなったのか判断できません。ピアノでもシンセでも、仮の音のまま、まず流れを作ることを優先してください。
コードとドラムで土台を作る
支える音を、先に鳴らしておきます。
音が出せたら、土台に入ります。土台とは、メロディを乗せる床のことで、コード、ドラム、ベースが担当します。
初心者は、コードとドラムのどちらから始めても構いません。伴奏の響きから考えたい人はコード、リズムから乗りたい人はドラムです。
コードは、難しい進行を探す必要はありません。C、Am、F、Gのような、よく使われる4つを1小節ずつ並べるだけで、4小節の流れができます。
コードがあると、あとで作るメロディの着地先が見えるので、外れにくくなります。まずはこの4つを最後まで止めずに鳴らすことを目標にします。
ドラムは、キック、スネア、ハイハットの3つで足ります。キックで拍の頭を作り、スネアを2拍目と4拍目に、ハイハットで刻みを足せば、曲の速さと時間の流れが決まります。
コードとドラムがそろうと、それだけで曲らしく聞こえ始めます。ベースは、この段階ではコードの根っこの音を鳴らすだけで十分で、動かしすぎないほうが土台は安定します。
メロディを主役として置く
出てこない時は、音程よりリズムから決めます。
土台ができたら、主役のメロディを乗せます。主役とは、聞いた人が口ずさむ部分です。
コードがあるなら、その中の音に着地させると外れにくくなります。たとえばCコードならド・ミ・ソ、Amならラ・ド・ミ。フレーズの最後の音をコードの中の音にするだけでも、まとまって聞こえます。
メロディが出てこない時は、正しい音を探す前に、リズムから作ります。同じ1つの音でも、短く切る、長く伸ばす、休みを入れる、と並べ方を変えるだけでフレーズになります。
「いい音程」を探すより、まず口ずさめる形のリズムを決めるほうが、手が動きます。入る拍を1拍ずらすだけでも、印象は大きく変わります。
頭の中に鼻歌があるなら、スマホで録音してしまいます。きれいに歌う必要はありません。上がる、下がる、伸ばす、という形さえ残れば、それを聞きながらDAWの画面に音を写せます。
完璧に写せなくても、その録音が曲の入口になります。ここでも音色は仮のままで、歌えるか、覚えられるか、を先に確かめます。
1コーラスまで展開を広げる
同じ素材を少し変えて、曲を前へ進めます。
4小節ができたら、それを繰り返して8小節にします。ただ丸ごとコピーするのではなく、2回目のドラムを少し変える、メロディの最後だけ変える、といった小さな差を足します。
この小さな変化が、曲が前へ進んでいる感じを作ります。
8小節ができたら、Aメロ、Bメロ、サビの並びへ広げ、1コーラスを目指します。Aメロは音数を少なめに抑え、Bメロで少し持ち上げ、サビで主役をはっきり見せる。この役割の差を作るだけで、流れが生まれます。
ここで覚えておきたいのは、展開は足すだけではないということです。Aメロで音を減らして静かにしておくから、サビで増やした時の盛り上がりが際立ちます。抜くことも、立派な展開です。
1コーラスまで広げたら、保存名を段階ごとに分けておきます。8小節版、1コーラス版、というように分けると、思い切って展開を試しても、うまくいかなければ前の状態へ戻れます。
戻れる安心があると、大胆に広げられます。
アレンジと仕上げに入る
音を整えるのは、主役が決まってからです。
1コーラスの流れができたら、アレンジと仕上げに進みます。ここで初心者がやりがちなのが、うまく聞こえないからと、すぐにEQやコンプレッサーでミックスを直そうとすることです。
けれど、どの音が主役で、どの音が支えかが決まっていないうちは、音を加工しても判断がぶれます。
先に見るのは、役割の整理です。ドラムは時間を作り、ベースは低音を支え、コードは響きを作り、メロディが主役になる。それぞれの担当が聞こえているかを確認し、担当がかぶって濁っている音を減らします。
音を足して豪華にする前に、要らない音を抜くほうが、主役はよく聞こえます。ミックスで音量や左右を整えるのは、この役割がはっきりしてからで間に合います。
仕上げの段階では、一度書き出して、DAWの外で聞いてください。画面のピアノロールを見続けると、耳ではなく目で判断してしまいます。
書き出した音源をスマホや別のアプリで再生すると、イントロが長い、サビが弱い、終わり方が急、といった曲全体の問題に気づきやすくなります。
作業の順番の一覧
迷ったら、この順に上から確認します。
| 工程 | 作るもの | 次へ進む合図 |
|---|---|---|
| 音出し | DAWから音を1つ鳴らす | 音が鳴り、保存できた |
| 土台 | コードとドラムを4小節 | 止めずにループできる |
| 主役 | メロディを乗せる | 口ずさめる、覚えられる |
| 展開 | 8小節から1コーラスへ | Aメロとサビに差がある |
| 仕上げ | 役割を整えて書き出す | 外で聞いて通せる |
止まった時の戻り方
全部を直さず、見る場所を一つに絞ります。
うまく聞こえない時、全部を消して作り直す必要はありません。見るのは、音量、音域、タイミング、役割の4つのうち、どれか一つだけです。
同時に複数を触ると、何が効いたのか分からなくなります。
- メロディが弱いと感じたら、音程を増やす前にリズムを見ます。
- ドラムが弱いなら、音色を替える前にキックとスネアの位置を見ます。
- 低音が重いなら、ベースの音を短く切ります。
原因の当たりをつける場所を一つに決めると、次に開いた時に迷いません。
直す一点が決まったら、それを短くメモに残してから閉じます。「メロディを短くする」「ドラムを減らす」のように一行で十分です。
次に作業を再開する時、この一行があるだけで、どこから手をつけるかがすぐ分かり、制作が止まりにくくなります。
よくある疑問
初心者は何から作ればいいですか
まず音を1つ出し、コードかドラムで土台を作ります。完成度より、短く保存して聞ける形を先に作ることを優先します。
コードとメロディはどちらが先ですか
どちらでも構いません。鼻歌があるならメロディ先、伴奏から決めたいならコード先で始めます。行き詰まったら、もう一方から入り直します。
ドラムはいつ入れますか
土台の段階で入れます。コードと一緒に、キックとスネアだけの簡単なパターンを置くと、曲の速さと流れが決まります。
途中で止まったら何を見ますか
音量、音域、タイミング、役割のうち、どれか一つだけに絞って見ます。全部を同時に直そうとしないことが大切です。
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