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古賀稔宏の作曲ノート作曲・編曲家のDTM制作ノート

フルコーラスを作る方法

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作曲・編曲家 古賀 稔宏

「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。

ワンコーラスまでは作れたのに、そこから先が長くて手が止まる。フルコーラスを作る方法でつまずくのは、たいてい「全部を新しく作らなければいけない」と思い込んでいる時です。実際は、すでにできた1コーラスが、これから作る曲の素材の大半になります。

やることは、1コーラスを土台にして、2分から4分の長さまで場面を足していくことです。1番をコピーして2番を作り、間に間奏を挟み、最後のサビを一番高く持ち上げる。貼り付けた素材のどこを残し、どこを変えるかを、順番に見ていきます。

先にやること

フルコーラスは、長さを足す作業ではなく、場面の役割を足す作業です。

  • 1コーラスをコピーして、2番と大サビの土台にする
  • 2番は「残す所」と「変える所」を分けて作る
  • 間奏は、次の場面へ気持ちを渡すために入れる
  • 大サビは音を足すより、直前で一度引くと上がって聞こえる

フル尺は2分から4分で考える

先に、場面の並びを地図にします。

フルコーラスとは、イントロから最後まで通した1曲分の長さです。ポップスなら、だいたい2分から4分に収まることが多いです。

まずは、その長さの中にどんな場面が並ぶかを、地図として書き出します。

よくある並びは、イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ、間奏、2番のAメロ、Bメロ、サビ、大サビ、アウトロです。

数が多く見えますが、半分以上は1番の使い回しでできています。

全部を先に作る必要はありません。今できているワンコーラスが、この地図のどこに当たるかを決めます。

多くの場合、それは1番のAメロからサビまでの区間です。

位置が決まると、あと何を足せばフルコーラスになるかが見えます。足りないのは2番、間奏、大サビ、そして前後のイントロとアウトロくらいです。

全体像が見えると、残りの作業が急に小さく感じられます。

コピペを土台にする

2番はゼロからではなく、複製から始めます。

伸ばす作業は、コピーから始めます。1番のAメロからサビまでを、そのまま後ろへ複製します。これが2番の土台になります。

マウスの操作だけで、曲の長さは一気に倍近くまで伸びます。

ここで大事なのは、貼り付けただけでは曲にならない、という点です。制作の現場でも、フルコーラスは1コーラスを貼り付けて終わりにはしません。

2番、間奏、最後で、残す音と変える音を分けていきます。この「分ける」という作業が、伸ばすことの中身です。

コピーを土台にすると、コード進行やメロディの骨組みは1番とそろいます。聞く人は、1番で覚えた形が2番で戻ってくると安心します。

だから、骨組みはあえて残すのが正解です。

変えるのは、その骨組みの上に乗る飾りの部分です。次に、2番の残す所と変える所を具体的に分けていきます。

2番は残す所と変える所を分ける

全部変えると、別の曲に聞こえます。

2番は、1番を全部変える必要はありません。むしろ、コードとメロディの骨組みは残したほうが、同じ曲として自然に聞こえます。

変える所を欲張ると、つながりが切れてしまいます。

変えて効くのは、伴奏の密度です。1番のAメロが静かなら、2番のAメロは楽器を少し足します。逆に1番が厚いなら、2番の入りは薄くします。

同じメロディでも、下で鳴る音が変わると新しく聞こえます。音を増やすより、この差だけで十分に変化がつきます。

歌がある曲なら、2番は歌詞が変わります。歌詞の言葉数が1番と違うと、メロディの譜割りも少しずれます。

その時は、音の長さだけを調整して、音程はできるだけ1番のまま残します。

一度に全部を動かさないことも大切です。「今日は2番Aメロの伴奏だけ」と決めて触ると、迷わずに進みます。

変える場所を1つに絞るほど、作業は速く終わります。

間奏でひと呼吸置く

歌を一度休ませると、次が届きます。

間奏は、2番のサビが終わった後に置く、歌のない場面です。長さは4小節か8小節で十分です。

最初は短くて構いません。

役割は、次の大サビへ気持ちを渡すことです。歌がずっと続くと、聞く人の耳は少し疲れます。

ここで歌を一度休ませると、そのあとの大サビがより強く届きます。

中身は、新しく作らなくてかまいません。サビのコード進行を借りて、その上で主役の楽器にメロディを弾かせるだけで間奏になります。

ギターやシンセなど、1本の楽器に歌の代わりをさせます。

間奏の最後の1小節は、次の場面へ入る合図にします。ドラムを少し増やす、音を上へ上げる。

それだけで、大サビへ入る準備が整います。

大サビを一番上げる

上げ方は、足すより引くことです。

大サビは、曲の最後に来るサビです。全体の中で一番高い場所にしたい場面で、ラスサビとも呼びます。

ここが決まると、曲に着地点ができます。

上げ方は、音を足すことだけではありません。むしろ効くのは、直前で一度引くことです。大サビの手前で伴奏を薄くしたり、一瞬止めたりすると、次に全部が鳴った瞬間が大きく聞こえます。

落差が、盛り上がりを作ります。

音を足す場合は、上の帯域を増やします。ハモリを重ねる、高い楽器を1つ加える。

低音を増やすより、上を増やすほうが華やかに聞こえやすいです。

それでも足りないと感じたら、大サビだけ半音上げる転調という手もあります。ただ初心者は無理に使わなくて大丈夫です。

引いてから出す。この一手だけで、同じ素材でも十分に上がって聞こえます。

伸ばす作業の順番

1番から借りて、少しだけ変えます。

足す場面1番から借りるもの変える所
2番のAメロAメロをそのまま複製伴奏の密度を1番とずらす
2番のサビサビをそのまま複製ほぼ変えず、そのまま残す
間奏サビのコード進行主役の楽器にメロディを弾かせる
大サビサビを複製直前で引いて、上の音を足す
アウトロイントロを短くする音を減らして静かに閉じる

伸ばす途中で止まったら

重くなったら、2番は借り物で十分と考え直します。

伸ばす途中で止まる時は、たいてい「2番も1番と同じくらい作り込もう」として重くなっています。2番は借り物で十分だと考え直すと、手が動きます。

場面がつながらない時は、境目の1小節だけを見ます。Aメロからサビ、サビから間奏。そのつなぎ目に、ドラムのフィルや短い音を1つ置くと、場面が自然に流れます。

全体を作り直す必要はありません。

長すぎて間延びして聞こえる時は、足すのではなく削ります。2番のBメロを短くする、間奏を8小節から4小節にする。

フルコーラスは、長ければ良いというものではありません。

最後は、一度通して聞いて、止めたくなった場所を1つだけメモします。その1か所を直して、また通す。

この繰り返しで、2分から4分が最後まで流れる形になります。仕上げの全体像は、下の制作工程マップでも確認できます。

よくある疑問

ワンコーラスから何を足せばフルコーラスになりますか

足すのは2番、間奏、大サビ、そして前後のイントロとアウトロです。2番と大サビは1番のコピーが土台になるので、ゼロから作る場所は多くありません。

2番は1番と全部変えるべきですか

いいえ。コードとメロディの骨組みは残したほうが、同じ曲として聞こえます。変えるのは伴奏の密度や歌詞くらいで十分です。

間奏は入れないといけませんか

必須ではありませんが、2番のサビと大サビの間に4小節から8小節置くと、歌が一度休んで大サビが届きやすくなります。サビのコード進行を借りれば新しく作らずに済みます。

大サビはどうやって盛り上げますか

音を足すより、直前で一度引くのが効きます。手前で伴奏を薄くしてから全部を鳴らすと、同じ音でも大きく聞こえます。

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プロフィール

古賀 稔宏

ギター、ウクレレ、DTM(Cubase)、作曲技法、音楽理論を指導。14歳でギターを始め、同時に作曲も始める。ポップ、ロック、クラシックの要素を含む楽曲を得意とする。

商業音楽の制作・演奏に携わりながら、初心者が止まりやすい場所を制作工程に沿って整理している。

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