DTMコード進行の作り方

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
コード進行を自分で作ろうとして、1つ目のコードすら決められずに止まる。これは知識が足りないからではなく、決める順番がないからです。コードには「ここで終わる」と聞こえる種類と「まだ続く」と聞こえる種類があり、この2つを聞き分けられれば、並べる順番は自然に決まります。
手順は4段階です。使うコードを7つに絞る、終わる感じと続く感じを聞き分ける、最後の小節から決めて4小節を組む、4小節を8小節へ伸ばす。キーはCで進めます。キーの決め方そのものはキーとスケールの基本に任せます。譜面は出てきません。
先に見ること
コード進行は、最後の小節を先に決めると作れます。
- 使うのはCキーのダイアトニックコード7つ。座りの悪い1つを外して実質6つ
- Cは「終わる感じ」、Gは「続く感じ」。残りは途中の景色
- 1小節目はC、4小節目はCかGを先に決め、2・3小節目を後から埋める
- 8小節にする時は、4小節目と8小節目の組み合わせで形を決める
材料は7つ、使うのは6つ
コードを探す範囲を、最初に閉じておきます。
※ 以下の音は、説明用にこのサイトで合成したものです。7本ともキーC・テンポ90で、同じピアノの音色にそろえています。
7つを順に鳴らします。聞きながら、明るい・暗い・落ち着かない、の3つに仕分けてみてください。
7つ目のBm(♭5)だけ、鳴らした瞬間に座りが悪いと分かります。最初の進行では使わないので、材料は実質6つです。
条件:BPM 90/各1小節/キーC/このサイトで合成したピアノ。7本とも同じ音量で書き出しています。
1つのキーの中で、白鍵だけで無理なく作れるコードは7つあります。これをダイアトニックコードと呼びます。Cキーなら、C・Dm・Em・F・G・Am・Bm(♭5)です。コード進行を作る時の材料は、この7つで足ります。
レッスンでは、理論書のうちダイアトニックコードにたどり着くまでの説明は飛ばしてよい、と伝えています。曲を作るのに必要なのは、この7つと、慣れてから足す少しの外のコードだけです。理論を怖がる人は少なく、分からないだけの人が多いので、7つを並べて鳴らす体験から入ります。
7つのうちBm(♭5)は、単体で鳴らすと落ち着きません。あとで役に立つコードですが、最初の4小節では外します。残った6つが、この先で並べる材料です。
材料を6つに閉じる理由は、迷う時間を減らすためです。何百とあるコードから探し始めると、選んでいるうちに手が止まります。6つなら、思いつく組み合わせを全部鳴らして確かめられます。
終わる感じと続く感じ
6つのコードを、役割で「終わる」「続く」「途中」に分けます。
※ 以下の2本は、このサイトで合成した説明用の音です。1〜3小節目は同じで、違うのは4小節目のコードだけです。
終わる感じと続く感じの違いは、最後の1小節を聞けば分かります。
止まっていません。この後に何か来るはずだ、と耳が待っています。これが続く感じです。
着地しました。ここで音が止まっても不自然ではありません。これが終わる感じです。
1〜3小節目が同じでも、4小節目がGかCかで、4小節の意味が変わります。並べる順番を決める時に頼るのは、この違いです。
条件:BPM 90/4小節/キーC/このサイトで合成したピアノ。2本の違いは4小節目のコードだけです。
6つのコードは、鳴らした後に「ここで止まれる」か「まだ先がある」かで分けられます。Cキーでは、Cが終わる感じ、Gが続く感じの代表です。Cを鳴らすと家に帰った気分になり、Gを鳴らすと次を待つ気分になります。
残りのAm・Dm・Em・Fは、途中の景色です。どれも、単体では終わりも続きもはっきり主張しません。CとGの間に置いて、道のりを作るコードです。
この分け方は、名前で覚えるより耳で確かめるほうが確実です。確かめ方は、コードを1つ鳴らし、鳴らし終わった後の静けさを聞くことです。静かなままで平気ならそのコードは終わる感じ、「次は?」と待ってしまうなら続く感じです。Cと比べながら聞くと、違いがはっきりします。
途中のコードにも、少しだけ傾きがあります。DmとFは、次にGが来ると続く感じを強めます。AmとEmは、Cの近くにいるような落ち着きがあります。ただ、最初の4小節ではこの傾きは気にしなくて構いません。終わるC、続くG、それ以外は途中、の3つで十分です。
| コード | 構成音 | 役割 |
|---|---|---|
| C | ド・ミ・ソ | 終わる感じ。帰る場所 |
| Dm | レ・ファ・ラ | 途中。Gの前に置くと続く感じが強まる |
| Em | ミ・ソ・シ | 途中。Cの近くの静かな景色 |
| F | ファ・ラ・ド | 途中。Gの前に置くと続く感じが強まる |
| G | ソ・シ・レ | 続く感じ。次を待たせる |
| Am | ラ・ド・ミ | 途中。少し陰る |
| Bm(♭5) | シ・レ・ファ | 最初の4小節では使わない |
最後の小節から決めて4小節を組む
1小節目と4小節目を先に決めると、間は自然に埋まります。
※ 以下の4本は、このサイトで合成した説明用の音です。キーC・テンポ90・4小節にそろえています。
手順どおりに組んだ4小節を2種類、それぞれコードだけのものと、同じメロディを乗せたものです。
4小節目がGなので、ループさせると先頭のCへ戻りたくなります。続く形の4小節です。
4小節目がCなので、ここで一区切りつきます。終わる形の4小節です。
①の上に、4小節のメロディを1本乗せました。
③とまったく同じメロディです。下のコードが違うだけで別の曲のように聞こえます。コード進行を先に決めておけば、メロディはあとから乗せられます。
条件:BPM 90/4小節/キーC/このサイトで合成したピアノ。③と④のメロディは同じデータです。
4小節を組む時は、1小節目から順に埋めません。両端から決めます。
- 1小節目にCを置く。出発点は帰る場所と同じにするのが基本です。
- 4小節目を決める。ループさせて曲の土台にしたいならG、ここで一区切りつけたいならCです。
- 2小節目と3小節目に、途中のコード(Am・Dm・Em・F)から1つずつ選んで入れる。
- ループ再生して、4小節目から1小節目へ戻る瞬間を聞く。
2小節目と3小節目の選び方に、正解はありません。ただ、目安が2つあります。1つは、同じコードを2小節続けないこと。動きが止まって聞こえます。もう1つは、4小節目がGなら3小節目にDmかFを置くこと。Gへ向かう流れが強まります。
この手順で組むと、たとえば1小節目C、4小節目G、間にAmとDmを入れて、C→Am→Dm→Gになります。4小節目をCにして、間にFとGを入れると、C→F→G→Cです。上の音源①②がこの2つです。
最後の小節から決める理由は、4小節の意味がそこで決まるからです。2小節目や3小節目をいくら入れ替えても、4小節目がGなら続く形、Cなら終わる形のままです。意味を先に決めてから道のりを埋めると、途中で迷いません。
音源③④で分かるように、同じメロディでも下のコード進行が変わると聞こえ方が変わります。だからこの段階では、メロディのことは考えなくて構いません。土台としての4小節を先に決めます。
4小節を8小節へ伸ばす
4小節目と8小節目の組み合わせで、8小節の形が決まります。
4小節ができたら、コピーして後ろに貼り、8小節にします。5小節目は1小節目と同じCです。見直すのは4小節目と8小節目の2箇所だけで、この組み合わせが8小節の形を決めます。
| 4小節目 | 8小節目 | 8小節の形 | 向く場面 |
|---|---|---|---|
| G | C | 前半で問いかけ、後半で答える | Aメロやサビの一区切りに |
| G | G | どこまでも続くループ | BGMやイントロに |
| C | C | 4小節ずつ2回区切る | 童謡のようなはっきりした曲に |
| C | G | 一度落ち着いてから次へ向かう | 次の場面へ渡す時に |
初心者が最初に作るなら、4小節目G・8小節目Cの組み合わせをすすめます。前半の4小節が質問で、後半の4小節が答えになり、8小節でひとまとまりの話になります。歌ものの多くは、この形の積み重ねでできています。
8小節目をCにする時は、7小節目にGを置くと答えがはっきりします。C→Am→Dm→Gを2周させるなら、後半をC→Am→G→C、あるいはC→F→G→Cに変えます。前半と後半で違うのは最後の2小節だけなので、まとまりは崩れません。
8小節が組めたら、同じ考え方で16小節へ伸ばせます。8小節の最後をGにして続く形にし、次の8小節の最後をCで締める。終わる感じと続く感じの組み合わせは、長さが変わっても同じです。
DAWで鳴らす時の置き方
構成音を3つ縦に置いて、1小節伸ばすだけです。
コードを打ち込む時は、上の表の構成音を3つ、同じ位置に縦に並べます。長さは1小節いっぱいです。Cならド・ミ・ソの3つのノートを1小節目の頭に置いて、小節の終わりまで伸ばします。刻む必要はありません。
置く高さは、鍵盤の中央のドを含む1オクターブの範囲が目安です。低い位置に置くと3音が濁って区別がつかなくなり、高すぎると薄く聞こえます。まず中央に置き、濁ると感じたら1オクターブ上げます。
音色は、DAWに最初から入っているピアノで十分です。この段階で音色を探し始めると、コード進行を決める前に時間が消えます。判断したいのは響きの流れだけなので、ピアノで聞き比べます。
4小節を置いたら、ループ再生をオンにして何周か聞きます。1周目では分からない「戻る瞬間」の手触りが、3周目あたりで分かります。4小節目がGとCのどちらが合うか迷ったら、両方置いて聞き比べます。理屈で決めるより、鳴らして決めるほうが早く、外れません。
手順の早見表
止まったら、どの手順にいるかを確かめます。
| 手順 | やること | 迷った時の決め方 |
|---|---|---|
| 1 材料を絞る | Cキーの7つから、Bm(♭5)を外して6つにする | 材料を増やさない。6つの外は後で |
| 2 2種類を聞き分ける | Cは終わる、Gは続く、残りは途中と分ける | 鳴らした後の静けさで判断する |
| 3 両端から決める | 1小節目C、4小節目はGかC。間に途中のコード | ループ用ならG、区切るならC |
| 4 8小節に伸ばす | コピーして、4小節目と8小節目の組み合わせを決める | 最初はG・Cの「問いと答え」 |
手順のどこで迷っても、戻る場所は1つです。最後の小節を終わる感じにするか、続く感じにするか。そこが決まれば、間のコードは鳴らして選べます。組み上がった8小節にドラムとメロディを重ねて1曲へ進める順番は、無料の制作工程マップにまとめています。
よくある疑問
最初の1つ目のコードが決められません
1小節目はCで固定して構いません。決めるべきなのは4小節目のほうで、ループさせたいならG、一区切りつけたいならCです。両端が決まれば、2・3小節目は途中のコードから鳴らして選べます。
終わる感じと続く感じが聞き分けられません
コードを1つ鳴らし、鳴り終わった後の静けさを聞きます。静かなままで平気ならそのコードは終わる感じ、次を待ってしまうなら続く感じです。CとGを続けて鳴らして比べると、差がはっきりします。
4小節から8小節にすると、ただの繰り返しに聞こえます
4小節目と8小節目の組み合わせを見直します。両方Gだとループのままです。4小節目をG、8小節目をCにすると、前半が問い、後半が答えになり、8小節でひとまとまりの形になります。
ダイアトニックコード以外は使ってはいけませんか
使って構いませんが、最初の4小節では必要ありません。Cキーの7つ、実質6つで、続く形も終わる形も作れます。外のコードは、この手順で8小節が組めるようになってから1つずつ足します。
コードの「床」を、先に用意しておく
C・Am・Dm・G の4小節ループMIDIと、90秒ワンコーラスの下地を無料でお送りしています。鳴らしながら鼻歌を乗せていけば、メロディを探す作業がぐっと楽になります。
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