DTMコード進行の作り方

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
コード進行を作ろうとして、コードブックの数の多さに圧倒されて止まっていませんか。実は、最初の1曲で使うコードは7つだけに絞れます。その中から選んで並べれば、難しい理論をまだ知らなくても形になります。
進め方はこの3つです。使うコードをダイアトニックコード7つに絞る、終止感を手がかりに並べる、長く使われてきた王道パターンをそのまま借りる。譜面は出てきません。表と手順だけで、今日4小節を鳴らせます。
先に見ること
コード進行は、7つのコードから選んで並べるだけで作れます。
- 使うコードは、そのキーのダイアトニックコード7つに絞る
- 並べる手がかりは「終止感」。帰りたくなる音で締める
- 順番はC→Am→Dm→Gなどの王道パターンをそのまま借りていい
- 理論を全部覚えてからではなく、鳴らしながら覚える
使うコードを7つに絞る
最初の一歩は、コードを増やすことではなく減らすことです。
コード進行の第一歩は、新しいコードを探すことではなく、使うコードを減らすことです。世の中には何百種類ものコードがありますが、1つのキーで自然に使えるのは基本的に7つだけ。
この7つをダイアトニックコードと呼びます。Cキーなら、C・Dm・Em・F・G・Am・Bm(♭5)の7つです。
この7つは、すべてピアノの白鍵だけで作れます。だから初心者は、黒鍵のことを考えずにコードを選べます。
レッスンでも、最初はCキーのこのダイアトニックと、あとで説明する王道進行を出発点にします。選択肢が7つに決まっていると、どれを鳴らしても大きく外れないので、手が止まりにくいからです。
7つを丸暗記する必要はありません。表を横に置いて、そこから選ぶだけで十分です。
むしろ最初は、明るいC、切ないAm、広がるFのように、響きの印象で3つか4つに候補を絞ると決めやすくなります。
この7つは、覚える対象というより、料理を選ぶメニュー表のようなものです。全部を暗記していなくても、表から選べれば注文できます。
コードも同じで、名前を暗記していなくても、表から4つ選んで並べられれば曲は作れます。まずは選ぶことに慣れる、と考えると気が楽になります。
終止感を手がかりに並べる
並べる順番は、耳で感じる落ち着きで選べます。
コードを7つに絞れたら、次は並べる順番です。ここで頼りにするのが「終止感」、つまり曲が終わった、落ち着いた、と感じる響きです。
Cキーでは、最後にCへ帰ると強い終止感が出ます。家に帰ってきたような感覚です。
逆に、Gで終わると「まだ続く」という宙ぶらりんな感じが残ります。この性質を使うと、Gで一度緊張を作り、Cへ戻して解決する、という流れが作れます。
コード進行は、この緊張と解決の並べ方だと考えると、順番の選び方が見えてきます。
初心者のうちは、細かい理屈より耳で確かめるほうが早いです。同じ4つのコードでも、最後をCで締めるかGで止めるかで、印象ははっきり変わります。
並べたら必ずループ再生して、どちらがしっくりくるかを聞いて選びます。
もう1つ覚えておくと便利なのが、途中のコードで終わらせない、ということです。DmやFのような中間のコードで4小節を締めると、話が途中で切れたような落ち着かなさが残ります。
締めはCかG、このどちらかにすると、ひとまとまりの感じが出ます。
王道パターンを借りる
順番を自分で発明しなくても、定番を借りれば済みます。
終止感を意識して自分で並べてもよいのですが、もっと簡単な方法があります。多くの曲で使われてきた「王道」の並びを、そのまま借りることです。
代表的なものを表にまとめます。度数は、Cを1として数えたコードの位置です。
| 進行 | 度数 | 響き | 使いどころ |
|---|---|---|---|
| C→Am→Dm→G | 1→6→2→5 | 素直に一周する定番 | 最初の1曲に |
| C→G→Am→F | 1→5→6→4 | 明るく前向き | ポップスのサビに |
| Am→F→C→G | 6→4→1→5 | 少し切なく始まる | バラード寄りに |
| C→F→G→C | 1→4→5→1 | いちばん基本的な締め | 童謡・シンプルな曲に |
どれもCキーのダイアトニックコードだけでできています。まずはC→Am→Dm→Gを鳴らし、飽きたら表の別の並びを試す。
この借り物からのスタートで、十分に曲らしくなります。4つを使い倒す広げ方はコード進行はC-Am-Dm-Gから始めていいで詳しく扱っています。
4小節を作る手順
道具がそろったら、実際に鳴らします。
使うコードと並べ方が決まったら、実際に4小節を鳴らします。手順はシンプルです。
DAWでインストゥルメントトラックを1つ作り、4小節分の長さを用意します。仮の音はピアノのままで構いません。
- 1小節目にC
- 2小節目にAm
- 3小節目にDm
- 4小節目にGを置きます
コードは、表の構成音を同時に伸ばすだけです。Cならド・ミ・ソ、Amならラ・ド・ミ。
3音を縦に積んで、1小節いっぱい伸ばします。難しい打ち込みはしません。
置き終えたら、ループ再生します。最後のGから先頭のCへ戻る瞬間に、ひとまとまりの流れができます。
音色はまだ気にしなくて大丈夫です。流れがあるかどうかだけを聞きます。
ここまで来れば、あとはこの上に白鍵で鼻歌のメロディを乗せられます。
1点だけ気をつけたいのは、コードを置く高さです。低すぎると音が濁って聞こえ、高すぎると軽くなります。
最初は真ん中あたり、ピアノでいう中央のドの周辺に置くと、素直な響きになります。高さに迷ったら、まずはその範囲で鳴らしてみてください。
後回しにしていい理論
今いらないものを分けておくと、寄り道で止まりません。
コード進行を作るうえで、今は知らなくてよい理論もあります。先に線引きしておくと、余計な寄り道で止まりません。
目安は次のとおりです。
| 項目 | 今の扱い | 必要になる時期の目安 |
|---|---|---|
| テンションコード(9thや7thなど) | 後回し | 王道進行が物足りなくなってから足す |
| 転調・借用コード | 後回し | 1曲を通しで作れるようになってから |
| コードの度数分析 | 後回し | 仕組みを知りたくなった時でよい。まず鳴らすのが先 |
| 反転(転回形)や声部の動き | 後回し | 響きの濁りが気になってきてから |
これらは、いつか役に立つ知識です。ただ、順番が来る前に手を出すと、覚える量ばかり増えて曲が進みません。
4小節が鳴らせるようになってから、必要になったものだけ調べれば間に合います。
コード進行が作れない時
手が止まる原因は、たいてい選択肢の広げすぎです。
手が止まる時は、たいてい選択肢を広げすぎています。もっといいコードがあるはずだと探し始めると、7つの安全地帯から外に出てしまい、かえって迷います。
まずは7つの中に戻ります。
並べても違和感がある時は、原因を1つに絞ります。締めのコードがCになっていないと落ち着きません。
同じコードが4小節続いていないか、逆に毎小節バラバラで散らかっていないかも見ます。1か所だけ直して、また鳴らします。
それでも進まない日は、王道進行をそのまま1つ完コピして終わりにします。自分で発明しようとせず、C→Am→Dm→Gを4小節鳴らして保存する。
その小さな一歩の積み重ねが、次のメロディやドラムへつながっていきます。その積み上げの全体像は、無料の制作工程マップに1枚でまとめています。
よくある疑問
コード進行を作るのに音楽理論は必要ですか
最初は、キーとダイアトニックコードだけで十分です。Cキーの7つのコードから選んで並べれば、テンションや転調を知らなくてもコード進行は作れます。足りない理論は、作りながら必要になった時に調べれば間に合います。
コードはいくつ並べればいいですか
まずは4つで十分です。4小節に1つずつ、CやAm、Dm、Gのように置くと、短くて聞き返しやすく、直すのも簡単です。物足りなくなったら8小節に広げます。
どのコードから始めればいいか分かりません
Cから始めてCで終える形が、いちばん落ち着いて聞こえます。あいだにAmやDm、Fを挟み、最後の手前にGを置くと、Cへ帰りたくなる流れができます。
王道進行ばかりでは他の曲と似てしまいませんか
同じ進行でも、メロディやリズム、テンポが変われば別の曲に聞こえます。まずは王道でコード進行の作り方に慣れ、飽きたら7つの中で1つ入れ替えるだけで印象は変わります。
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