ドラムパターンの作り方

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
ドラムパターンは、ひらめきで生み出すものではありません。拍のどこに、どの音を置くか。その組み合わせが決まれば、初心者でも曲を支える土台のリズムは組めます。使うのは、キック、スネア、ハイハットの3つで足ります。
ここで扱うのは、その3つを画面のどこに置き、どう並べ替えると曲が前へ進むか、という配置の話です。基本形を1つ組み、刻みを変え、8小節の流れを作り、フィルで場面をつなぐ。この順で見ていきましょう。
先にやること
ドラムパターンは、拍の中の置き場所を先に決めてから組みます。
- 1拍を4つのマスに割って、拍の頭を数えられるようにする
- キックで拍の頭、スネアを2拍目と4拍目、ハイハットで刻みを作る
- ハイハットの細かさで、落ち着きと勢いを切り替える
- 8小節の中に、戻る小節と変える小節を分けて置く
拍をマスで数える
置き場所は、目盛りの数で決めます。
ドラムを打ち込む画面は、縦に楽器、横に時間が並んだマス目になっています。パターンを作る前に、この横の目盛りの読み方だけ決めておきます。
1小節を4拍に分け、さらに1拍を4つの細かいマスに割ると、1小節が16のマスになります。この16のマスが、音を置く座標です。
拍の頭は、1つ目、5つ目、9つ目、13番目のマスです。ここが1拍目、2拍目、3拍目、4拍目にあたります。
まずはこの4か所を指させるようにしておくと、どこに何を置くかで迷わなくなります。細かい位置は、後からマスを数えれば済みます。
縦の並びも確かめておきます。多くのDAWでは、下のほうに低いキック、その上にスネア、さらに上にハイハットやシンバルが並びます。
つまり、画面の下から上へ、音の高さの順に楽器が積まれています。この上下の位置と、先ほどの左右の目盛りが分かれば、パターンはマス目の座標を指定していく作業に変わります。
ひらめきを待つのではなく、置きたい音の楽器と拍を決めれば手が動きます。
置き場所に迷った時は、リズムを声に出して確かめる方法もあります。ただ、そのやり方は別の記事で詳しく扱うので、ここでは画面上の配置そのものに絞って進めます。
数えられる目盛りがあれば、耳と手のどちらからでも組み立てられます。
8ビートの基本形を置く
下の音から順に、1段ずつ重ねます。
いちばんよく使う8ビートを、1小節組んでみます。手順は、低い音から順に重ねることです。
まずキックを、拍の頭にあたる表拍へ置きます。1拍目と3拍目、つまり1つ目と9つ目のマスです。
これで拍の骨組みができ、曲の速さの基準も決まります。
次にスネアを、2拍目と4拍目に置きます。5つ目と13番目のマスです。
キックとスネアが交互に来る形になり、手拍子が入る位置がはっきりします。ここまでを一度ループさせて、体が自然に揺れるかを確かめてください。
揺れれば、土台としては合格です。
最後にハイハットで刻みを足します。まずは8分で、拍の頭と裏に8回。1、3、5、7、9、11、13、15番目のマスに置くと、均等な刻みになります。
3つを一度に置こうとせず、キック、スネア、ハイハットの順に一段ずつ重ねて、そのつど聞き返すと、どの音が何を足しているか耳で分かります。
置く場所を少しずらすだけで、同じ3つの音でも曲の表情は大きく動きます。音色やコードを変えるより、リズムの配置を変えるほうが印象が変わることは珍しくありません。
逆に言えば、キックとスネアの位置が決まっていないパターンは、どれだけ音を足しても芯が出ません。まずはこの基本形を、崩れない土台として体に入れます。
ハイハットの刻みで表情を変える
刻みの細かさが、速さの感じを決めます。
キックとスネアの位置はそのままに、ハイハットの刻みだけを変えてみます。ここが、同じ基本形から違う雰囲気を引き出す近道です。
8分の刻みは落ち着いて前へ進む感じ、16分の刻みは細かく前のめりな感じになります。16分にするには、16のマスすべてにハイハットを置きます。
全部を16分でびっしり刻むと勢いは出ますが、ずっと続けると耳が慣れて平坦に聞こえてきます。
ここで使い分けが効きます。落ち着かせたいAメロは8分、押し出したいサビは16分、という具合に場面で刻みを変えると、曲の起伏が生まれます。
刻みに強弱をつけるのも有効です。すべて同じ強さで並べると機械的になりがちなので、拍の頭にあたるマスだけ少し強く、間のマスは軽く鳴らします。
強弱の情報はベロシティという数値で調整でき、ここに差をつけるだけで、同じ16分でも人が叩いたような揺れが出ます。
8小節で単調さを抜く
戻る所と変える所を、はっきり分けます。
1小節の基本形ができたら、次は長さです。ここで多いつまずきが、同じ1小節をそのままコピーして並べ続けることです。
正確なのに、機械が繰り返しているように聞こえてきます。抜け道は、全部を変えるのではなく、戻る小節と変える小節を分けることです。
基本の1小節をA、少しだけ手を加えた小節をB、別の変化を入れた小節をCと呼びます。これをA・B・A・Cのように並べ、8小節ならA・B・A・C・A・B・A・Dと展開します。
Aで安心させ、B以降で軽く裏切る。戻る場所があるから、変えた場所が耳に残ります。
変える量はわずかで十分です。スネアをもう1つ足す、ハイハットを一瞬だけ16分にする、キックを1つ抜く。そのくらいの小さな差で、繰り返しが生きたリズムに変わります。
抜くことも立派な変化です。詰まった音を1つ減らすと、その空いた場所が次の音を引き立てます。
8小節ごとの最後の1小節は、次のまとまりへの橋になる場所です。ここだけ少しにぎやかにしたり、逆に音を減らして静かにしたりすると、区切りがはっきりします。
にぎやかにするのも、静かにするのも、どちらも次を強く聞かせるための手です。
タムとフィルの入れ所
場面の変わり目に、一発だけ足します。
キック、スネア、ハイハットで土台が組めたら、タムやシンバルを飾りとして足します。ただし、常に鳴らす必要はありません。
多くの場合、タムはフィル、つまり場面の変わり目に入れるおかずとして使います。8小節の区切りや、Aメロからサビへ移る手前の1小節が、その入れ所です。
タムを使ったフィルは、高いタムから低いタムへ、マスを階段状に下げていくと転がる感じが出ます。スネアを細かく連打するだけでも勢いがつきます。
そして次のまとまりの1拍目にシンバルを1つ置くと、場面が切り替わった合図になります。この一発が、Aメロからサビへの流れに勢いを足します。
フィルは長く派手にするほど良い、というものではありません。詰め込みすぎると、かえって次のサビの入りが弱くなります。
基本のパターンを止めて一発入れる、くらいの短さがちょうどよく収まります。まずは8小節に1回、最後の小節だけにフィルを置くところから始めれば十分です。
フィルを入れたら、その直後の1拍目がきちんと戻ってくるかも聞いてください。おかずで盛り上げた後に、基本のパターンへすっと帰ってくると、区切りが気持ちよく決まります。
配置の早見表
基本の置き場所と、変化のつけ方を並べます。
| パーツ | 基本の置き場所 | 変化のつけ方 |
|---|---|---|
| キック | 1拍目と3拍目の表拍 | 裏のマスへ足すと跳ねる感じになる |
| スネア | 2拍目と4拍目 | 位置は保ち、フィルの時だけ連打する |
| ハイハット | 8分で均等に刻む | サビは16分、静かな所は間引く |
| タム・シンバル | 基本形では鳴らさない | 区切りの1小節でフィルとして足す |
よくある疑問
パターンはどの音から置きますか
キックで拍の頭を作り、次にスネアを2拍目と4拍目、最後にハイハットで刻みを足すと組み立てやすいです。下の音から順に重ねると位置を判断しやすくなります。
ハイハットの8分と16分はどう使い分けますか
落ち着かせたい場所は8分、前に押し出したい場所やサビでは16分にします。全部を16分で刻むと、かえって平坦に聞こえることがあります。
パターンが単調に聞こえます
1小節をそのまま何度も並べているのが原因です。8小節の中で、戻る小節と変える小節を分け、最後の1小節だけ動かすと流れが出ます。
フィルはどこに入れますか
8小節の区切りや、Aメロからサビへ移る変わり目に、1小節だけ入れると場面がつながります。長く派手にするより、次の頭へ橋を架ける短いもので十分です。
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