ドラムパターンの作り方

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
初めてドラムを打ち込む時、音源には何十種類もの音が並んでいて、どれをどこに置けばいいのか分かりません。最初に使うのは3つだけで足ります。キック、スネア、ハイハット。この3点で8ビートを1小節組めば、曲を支えるリズムの土台ができます。
置く手順、1小節の中のどこに置くか、そして置いたのに素人っぽく聞こえる原因とその直し方まで、順に見ていきます。原因は音源の質ではなく、強弱が全部同じであることがほとんどです。ここは打ち込んだ後に直せます。
先にやること
8ビートは3点で組み、強弱の谷を作ると人が叩いたように聞こえます。
- キックは1拍目と3拍目、スネアは2拍目と4拍目、ハイハットは8分で8回
- 口で「ドン・ツ・タン・ツ」と言える形にしてから置く
- 素人っぽさの原因は、音源ではなくベロシティが一定なこと
- ハイハットの裏拍を弱くして「谷」を作る。タイミングはジャストのままでよい
3点の役割を知る
低い音、抜ける音、刻む音。担当がそれぞれ違います。
ドラムセットにはたくさんの音がありますが、8ビートの骨組みを作るのは3つです。役割を先に知っておくと、どこに置くかが決めやすくなります。
キックは、足で踏む一番低い音です。「ドン」と鳴り、曲の重心を作ります。ベースと一緒に低音を支える担当で、キックの位置が曲のノリの土台になります。
スネアは、「タン」と抜ける音です。手拍子が入る位置に置かれ、曲の拍を聞き手に教えます。キックとスネアが交互に来ることで、進んでいる感じが生まれます。
ハイハットは、2枚のシンバルを重ねて「ツ、ツ、ツ、ツ」と刻む音です。キックとスネアの間を埋めて、時間が流れていることを伝えます。3つの中で一番数が多く、一番強弱の影響が出る音でもあります。
レッスンでは、名前や譜面より先に、口で言える形にすることを勧めています。「ドン、ツ、タン、ツ」と言えれば、ドンをキック、タンをスネア、ツをハイハットに置き換えるだけで、パターンになります。
1小節の中のどこに置くか
1小節を8つに割って、場所を番号で呼びます。
ドラムを打ち込む画面は、横が時間、縦が楽器のマス目です。8ビートを組むには、1小節を8つのマスに分けます。1拍を2つに割った長さで、8分音符と呼びます。
8つのマスを左から1、2、3、4、5、6、7、8と数えます。奇数のマス(1、3、5、7)が拍の頭で、表拍と呼びます。偶数のマス(2、4、6、8)が拍の間で、裏拍です。
キックの置き場所は、マス1とマス5。1拍目と3拍目の頭です。
スネアの置き場所は、マス3とマス7。2拍目と4拍目の頭です。キックとスネアが交互に並ぶ形になります。
ハイハットは、8つのマス全部に置きます。表と裏の両方を刻むので、8回鳴ります。これが「8ビート」という名前の由来で、ハイハットが1小節に8回鳴る形です。
縦の並びは、多くのドラム音源で、下にキック、その上にスネア、さらに上にハイハットが並びます。画面の下から上へ、音の高さの順です。3つの高さを覚えれば、他の音は当分触らなくて済みます。
8ビートを組む手順
1つ置くたびにループして聞きます。
3つを一度に置かず、下から順に1段ずつ重ねます。置くたびに1小節をループ再生して、何が足されたかを耳で確かめます。
- 口でリズムを言う。「ドン、ツ、タン、ツ、ドン、ツ、タン、ツ」。これが8マス分です。
- キックをマス1と5に置く。ループすると「ドン、、、ドン、、、」と重心だけが鳴ります。
- スネアをマス3と7に足す。「ドン、、タン、、ドン、、タン、」になり、体が揺れ始めます。ここで揺れなければ、置く場所を数え直します。
- ハイハットを8マス全部に足す。「ドン、ツ、タン、ツ、ドン、ツ、タン、ツ」が完成します。
- 1小節を4回コピーして、4小節にする。コードやベースを乗せる前に、ドラムだけで4小節を聞きます。
ここまでで8ビートの形はできています。ただし、この状態で鳴らすと、たいてい素人っぽく聞こえます。形は合っているのに、なぜか安っぽい。次の節で、その原因を見ます。
打ち込んだのに素人っぽい原因
音源を替える前に、強弱を見ます。
打ち込んだ8ビートが素人っぽく聞こえると、まず音源を疑いたくなります。有料のドラム音源に替えれば直る気がしますが、原因はそこではないことがほとんどです。
原因は、全部の音が同じ強さで鳴っていることです。マウスで置いた音は、初期設定では全部同じベロシティ(音の強さを表す数値)になります。人が叩くドラムでは、1つとして同じ強さの音はありません。
特に目立つのがハイハットです。8回全部が同じ強さだと「チャッチャッチャッチャッ」と平らに並び、機械が鳴らしているとすぐ分かります。人が刻むハイハットは、表拍が強く、裏拍が弱い。この強・弱・強・弱の波が、打ち込みには最初ありません。強い所と弱い所の差、つまり「谷」がない状態です。
レッスンでドラムが機械っぽいと相談された時、最初に見るのはタイミングではなくベロシティです。タイミングはジャストのままで構わず、8分で強弱を付けるだけで人間味が出ます。逆に、1〜2小節の一定パターンをそのまま貼り付けて曲にするのが、一番格好悪いと伝えています。
音色やコードより、リズムが変わると曲の印象は大きく変わります。同じ3点でも、強弱があるかないかで、曲全体が平坦に聞こえるか、前へ進んで聞こえるかが分かれます。
ベロシティで谷を作る直し方
裏拍を下げる。それだけで波ができます。
直し方は、ベロシティを1つずつ変えることです。ドラムを打ち込む画面の下に、音ごとの強さを示す棒が並んでいます。この棒の高さを変えます。
ハイハットから直します。表拍(マス1、3、5、7)はそのまま、裏拍(マス2、4、6、8)だけを下げます。目安は表の6〜7割ほど。音源によって聞こえ方が違うので、耳で波が聞こえる所まで下げます。強・弱・強・弱の谷ができます。
谷ができたかどうかは、ハイハットだけをソロにして確かめます。「ツ、つ、ツ、つ」と大小が交互に聞こえれば谷があります。「ツ、ツ、ツ、ツ」と同じ大きさで並んでいれば、まだ裏が下がり切っていません。
次にキックとスネア。こちらは数が少ないので、大きくは触りません。ただし、2つ並んだ時に完全に同じ強さだと平らに聞こえるので、ほんの少しだけ差を付けます。4拍目のスネアを2拍目よりわずかに強くすると、小節の終わりに向かって前に進む感じが出ます。
変えるのは強弱だけで、位置は動かしません。タイミングをずらして人間らしくしようとすると、初心者のうちは「ずれている」と聞こえるだけになりがちです。ジャストのまま、強弱だけで揺らします。
直したら、直す前とループで聞き比べます。同じ3点、同じ位置、変えたのはベロシティだけ。この1点の違いで、素人っぽさの大半が消えます。
4小節にコピーした後も、コピーした小節のベロシティが全部同じにならないよう、小節ごとにハイハットの裏を少し変えます。数値を厳密にそろえる必要はなく、そろっていないことが大事です。
3点の8ビートに谷が付けば、コードやベースを乗せる準備は整いました。ドラムが制作全体のどこに来るかは、制作工程マップで確認できます。
3点の配置と強弱の早見表
1小節を8つのマスに分けた時の置き場所です。
| パーツ | 置くマス | 口で言うと | 強弱の付け方 |
|---|---|---|---|
| キック | 1と5(1拍目・3拍目の頭) | ドン | ほぼ同じ強さ。位置は動かさない |
| スネア | 3と7(2拍目・4拍目の頭) | タン | 4拍目をわずかに強く |
| ハイハット | 1〜8の全部(8回) | ツ | 表拍を強く、裏拍を弱くして谷を作る |
よくある疑問
最初に置くのはどの音ですか
キックです。1拍目と3拍目の頭に置いて重心を作り、次にスネアを2拍目と4拍目、最後にハイハットを8分で8回。1つ置くたびにループして聞くと、何が足されたか分かります。
8ビートのハイハットは何回鳴らしますか
1小節に8回です。1小節を8つのマスに分け、全部のマスに置きます。表拍と裏拍の両方を刻むので、8ビートと呼ばれます。
打ち込んだドラムが素人っぽいのは音源のせいですか
ほとんどの場合、音源ではなくベロシティが全部同じことが原因です。ハイハットの裏拍を下げて強弱の谷を作ると、同じ音源のままで人が叩いたように聞こえます。
タイミングもずらした方が人間らしくなりますか
最初はジャストのままで構いません。タイミングを触ると、初心者のうちは「ずれている」と聞こえがちです。8分で強弱を付けるだけで人間味は出るので、ベロシティを先に直します。
同じ8ビートを、3つの表情で比べる
ジャスト/後ノリ(スネア +22tick)/スウィングの8ビートMIDIを3つ、無料でお送りしています。音色は同じで、動かしたのはタイミングとベロシティだけ。実際の音の違いはこちらで聞き比べられます。
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3点の8ビートができたら、ジャストと後ノリの違いや曲全体の順番へ進みます。