8ビートドラムの基本

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
ドラムのパターンはたくさんありますが、初心者が最初に覚えるべき形はひとつだけです。それが8ビートです。ポップスもロックもアニメの曲も、驚くほど多くがこの土台の上に乗っています。
しかも構造は単純で、覚えることは3つしかありません。ハイハットを8分で刻む、キックを1拍目と3拍目に置く、スネアを2拍目と4拍目に置く。これだけです。8ビートが打てれば、作れる曲の幅が一気に広がります。
先にやること
8ビートは、たった3つの決まりでできています。
- ハイハットを1小節に8回、8分で刻む
- キックは1拍目と3拍目に置く
- スネアは2拍目と4拍目に置く
- この基本が土台になり、多くの曲へそのまま使える
8ビートとは何か
名前の由来は、ハイハットの数にあります。
8ビートの「8」は、1小節をどれくらい細かく刻むかを表しています。1小節を8つに区切り、その8か所すべてでハイハットを鳴らす。これが8ビートという名前の由来です。
8分音符で刻むから8ビート、と覚えても構いません。
この8回の刻みが、曲の時間の物差しになります。物差しがあるおかげで、キックやスネアをどの位置に置くかが決めやすくなり、他の楽器もこの刻みに合わせて乗せられます。
8ビートは、ドラムだけでなく曲全体のテンポ感を支える土台です。
速さを変えれば、同じ8ビートでも静かなバラードにも走るロックにもなります。形は同じまま、テンポだけで表情が変わる。
だからこそ、最初に一つ覚えるならこの形が向いています。
3つの位置で決まる構造
刻み・頭・背骨、それぞれの担当を分けます。
8ビートの中身は、3つの音の位置で決まります。まずハイハットが、1小節を8等分してすべての区切りで鳴り、時間を細かく刻みます。
これが全体の下地になります。
その刻みの上に、キックが1拍目と3拍目で低く鳴ります。これが小節の前半と後半の頭を示し、曲を前へ進める力を作ります。
そしてスネアが、2拍目と4拍目で乾いた音を鳴らします。キックとスネアが交互に出ることで、ドン・タン・ドン・タンという分かりやすい往復ができます。
低い刻みの下地、頭を示すキック、背骨になるスネア。この3つの役割が別々の位置に収まっているから、8ビートはシンプルでも間延びしません。
まずはこの位置関係だけ、体で覚えてください。
覚え方のこつは、キックとスネアを一つの往復として捉えることです。ドンでキック、タンでスネア、また戻ってドン、タン。
この往復の背後で、ハイハットが休まず時間を刻み続けている。三つを別々の点として覚えるより、往復と刻みという二つの動きで覚えると、頭に残りやすくなります。
これが大半の曲に効く理由
形は同じで、乗せるものだけ替えられます。
8ビートを一つ作れれば、対応できる曲がぐっと増えます。理由は、ポップスやロックの多くが、この同じ土台の上でコードやメロディだけを差し替えて作られているからです。
ドラムをゼロから作り直さなくても、土台は使い回せます。
実際、テンポと音色を変えるだけで、明るいポップスにも、しっとりした曲にも、勢いのあるロックにもなじみます。ドラムの土台が共通なので、コードやメロディを乗せ替えるだけで別の曲に聞こえるのです。
だから、あれこれ難しいリズムを覚える前に、まず8ビートを一つ完成させることを勧めます。これがあれば、次に作りたい曲の多くで、そのまま土台として再利用できます。
完成した8ビートは、フォルダに保存して部品のように使い回すと便利です。新しい曲を始めるたびにゼロから打つのではなく、保存した8ビートを呼び出し、テンポと音色だけ合わせる。
土台作りの時間が減るぶん、コードやメロディに集中できます。基本の一つを持っておく価値は、ここにもあります。
打ち込む手順
刻みを先に敷き、その上に置きます。
打ち込む時は、ハイハットから始めると位置が取りやすいです。1小節に8個、等間隔でハイハットを並べます。
これで8つのマス目ができ、他の音を置く目印になります。
次にキックを、1拍目と3拍目、つまり8個のうち1個目と5個目の位置に置きます。続けてスネアを、2拍目と4拍目、3個目と7個目の位置に置きます。
これで8ビートの基本形が完成です。ループさせて、ドン・タン・ドン・タンと聞こえるか確かめてください。
形ができたら、ハイハットに軽い強弱を付けます。表の拍を少し強く、間の音を少し弱くするだけで、平らだった刻みに揺れが出ます。
まずは位置を正しく置くこと、それから強弱、という順番で進めます。
数えて歌って確かめる
口で言えれば、正しく置けているか分かります。
置いた8ビートが合っているかは、口で歌うと一番はやく分かります。ツッ・ツッ・タッ・ツッと、ハイハットの刻みに合わせて、キックの所は低く、スネアの所は「タン」と強く言ってみてください。
レッスンで軸にしているのは、歌えるものは打てる、という考え方です。歌えれば、打った形も合っています。
もし声とデータがずれるなら、どこかの位置が違っています。1・2・3・4と拍を数えながら、キックが1と3、スネアが2と4に来ているかを見直します。
声で確かめられるので、鍵盤が弾けなくても判断できます。
この歌って確かめる作業に慣れると、頭の中のリズムをそのまま8ビートに落とせるようになります。土台が安定したら、その上に何をどう重ねるかは制作工程マップで確認できます。
飽きさせないバリエーション
基本を崩さず、小さく足し引きします。
基本の8ビートを何小節も続けると、正確でも単調に感じてきます。ここで土台ごと変える必要はありません。
キックとスネアの基本位置は残したまま、小さな変化を足すだけで十分です。
手軽なのは、キックを裏拍に一つ足す方法です。1拍目と3拍目に加えて、間に一つ低い音が入るだけで、前へ転がる感じが出ます。
ほかにも、ハイハットの一部を一瞬だけ細かく刻む、数小節に一度だけスネアで短いフィルを入れる、といった手があります。
変化は、次のまとまりへ入る手前に置くと効果的です。8小節の最後の1小節にフィルを入れると、そこが区切りになり、聞き手に「次が来る」と伝わります。
基本の8ビートを守りながら、変える所だけを絞るのがコツです。
1小節の配置表
4つの拍に、3つの音を割り当てます。
| 拍 | キック | スネア | ハイハット |
|---|---|---|---|
| 1拍目 | 置く | - | 刻む |
| 2拍目 | - | 置く | 刻む |
| 3拍目 | 置く | - | 刻む |
| 4拍目 | - | 置く | 刻む |
よくある疑問
8ビートとは何ですか
ハイハットを1小節に8回、8分音符で刻むリズムです。ポップスやロックで最もよく使う基本の形です。
キックとスネアはどこに置きますか
基本はキックを1拍目と3拍目、スネアを2拍目と4拍目に置きます。まずこの位置から始めれば形になります。
8ビートだけで曲になりますか
なります。ポップスやロックの多くはこの土台に乗っているので、8ビートが作れれば大半の曲に対応できます。
同じ形で飽きます。どう変えますか
キックを裏拍に一つ足す、ハイハットに強弱を付ける、数小節に一度フィルを入れる、といった小さな変化で十分です。
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