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古賀稔宏の作曲ノート作曲・編曲家のDTM制作ノート

2番の作り方|DTMで1番の繰り返しにしない工夫

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作曲・編曲家 古賀 稔宏

「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。

1番はできた。2番はコピーして貼れば長さは埋まる。

でも聞き返すと、同じものが2回流れているだけで退屈に感じる。フルコーラスに挑むと、多くの人がここでつまずきます。

2番は、ゼロから作り直す場所ではありません。1番との「差の付け方」を決める場所です。

なぜコピーのままだと飽きるのか、どこから変えると効率がいいのか、変える場所の優先順位と作業手順を順番に整理します。

先に見ること

2番は1番をコピーしてから、足し算ではなく引き算で差を作ります。

  • メロディは変えず、伴奏側で差を作る
  • 最初に見るのはドラムの手数
  • 楽器は1つ抜くか、1つ足す
  • Bメロで音を戻してサビへ持ち上げる

コピーのままだと飽きる理由

聞き手は1番をもう覚えているからです。

1番と2番は、譜面の上ではほぼ同じ内容です。それなのに、1番は楽しく聞けて、コピーしただけの2番は退屈に聞こえます。

理由は単純で、聞き手にとって1番は初めての情報、2番はすでに知っている情報だからです。

初めて聞くメロディには、次がどうなるか分からない緊張感があります。2回目には、その緊張感がありません。

同じ音がまったく同じ密度で流れてくると、耳は「もう知っている」と判断して、注意が外れます。

市販の曲を注意して聞くと、2番がまるごと1番と同じ音である曲は、ほとんど見つからないはずです。

かといって、飽きさせない工夫として全部を作り替えるのは逆効果です。

歌もコードもリズムも変わってしまうと、聞き手は別の曲が始まったと感じ、せっかく1番で覚えかけたものがリセットされます。

つまり2番の課題は、「同じ曲だと分かること」と「新しい情報があること」の両立です。

骨組みは1番のまま残し、表面の何か所かだけを変える。この配分を決めるのが、2番のアレンジという作業です。

変える場所の優先順位

効果が大きくて壊れにくい順に並べます。

優先順位の1位は、ドラムの手数です。手数とは、1小節の中に打つ音の数のこと。

2番のAメロでハイハットの刻みを半分にする、逆に1番で8分だった刻みを16分にする、フィルの位置を変える。メロディにもコードにも触れないのに、曲の表情がはっきり変わります。

壊れるリスクが低く、効果が大きい、最初に触るべき場所です。

2位は、伴奏の楽器を1つ抜く、または1つ足すことです。1番で鳴っていたピアノを2番の頭だけ休ませる。あるいは1番になかったギターの単音フレーズを2番から加える。

トラックのミュートを切り替えるだけなので、作業は数秒です。抜くほうが簡単で、しかも「2番が始まった」という合図として強く働きます。

3位は、ベースのラインです。1番でルート音を伸ばしていたなら、2番では8分で刻む。1番で動いていたなら、2番の頭は白玉で支える。

低音の動き方が変わると、上に乗っている同じメロディの聞こえ方まで変わります。

ただしベースはコードとの関係を壊しやすいので、ドラムと楽器の抜き差しを済ませた後、余裕があれば触る場所です。

この3つで足りない時に初めて、コードの一部差し替えなど大きな変更を検討します。順位が下がるほど、効果より事故のほうが増えていきます

優先順位の早見表

上から順に試して、2〜3か所で止めます。

優先変える場所具体例事故りやすさ
1ドラムの手数ハイハットの刻みを半分に。フィルの位置を移す低い
2楽器を1つ抜く・足す2番の頭でピアノを休ませる。新しい単音フレーズを足す低い
3ベースのラインルート伸ばしを8分刻みに。動きを白玉に中くらい
4コードの一部Aメロ後半だけ代理コードに差し替える高い

メロディは変えず、アレンジで差を作る

歌は繰り返すから覚えてもらえます。

2番で歌のメロディを作り替えたくなる人がいますが、原則として変えません。聞き手がメロディを覚えるのは、繰り返し聞くからです。

1番と2番で歌が違うと、繰り返しの回数が半分になり、曲の顔が定まりません。

では同じメロディのままどう新鮮さを出すか。答えは、メロディの下側を変えることです。

レッスンで使っている判断メモに「同じメロディや音を繰り返しても、下のコードが変わると聞こえ方が変わる。反復と変化を同時に作れるため、耳に残るフックになりやすい」というものがあります。

歌そのものは反復で覚えさせ、変化は下の伴奏が担当する。この分担が、2番アレンジの原則です。

先ほどの優先順位は、すべてこの原則の実践です。ドラムの手数も、楽器の抜き差しも、ベースのラインも、全部メロディの下側にあります。

下側だけを動かしているかぎり、歌の覚えやすさは損なわれません。

例外は、メロディの語尾だけ少し変える程度の小さな装飾です。フレーズの最後の音を半拍伸ばす、最後だけ1音上げる。骨格が同じなら、聞き手には同じメロディとして届きます。

それ以上の変更は、2番ではなく、大サビや落ちサビなど後半の見せ場に取っておきます。

Bメロからサビへの持ち上げ方

頭で減らした分を、Bメロで返済します。

2番のAメロで音を抜くと、そのままではサビの勢いが1番に負けます。そこで使うのがBメロです。

2番のBメロは、抜いた音を段階的に戻していく区間だと考えます。

具体的には、Bメロの前半で楽器を1つ戻し、後半でドラムの刻みを1番と同じ細かさに戻します。

サビに入る時点で、音の密度が1番のサビと同じか、それ以上になっていれば、2番のサビはしっかり立ちます。頭で減らしてあるからこそ、この「戻していく過程」自体が盛り上がりとして聞こえます。

サビ直前の1拍か2拍で、全部の音を一瞬止めるのも定番の手です。ブレイクと呼ばれる手法で、直後のサビが飛び込んでくるように聞こえます。

1番で使っていないなら、2番のサビ前だけに入れると、差としても働きます。

逆に避けたいのは、Bメロまで音を抜いたままサビへなだれ込むことです。静かなBメロ自体は悪くありませんが、その場合はサビの頭で一気に全楽器を戻す準備が要ります。

どちらにしても、サビへ入る瞬間の音量差と密度差をどう作るかを、Bメロのあいだに仕込んでおくことが持ち上げの正体です。

作業手順:コピーして引き算から

白紙から作らず、削るところから始めます。

実際の手順は、1番を丸ごとコピーするところから始めます。DAW上で1番の全トラックを選択し、2番の位置に複製します。

これで2番の骨組みは完成です。白紙のまま「2番をどうしよう」と悩む時間がなくなります。

次にやるのは、足すことではなく引くことです。コピーした2番の頭で、伴奏の楽器を1つミュートします。

ピアノでもギターでも、1番で鳴りっぱなしだったものを選びます。続けてドラムの手数を減らします。

この2つだけで、通して聞くと「2番に入って景色が変わった」と感じられるはずです。

引き算が済んでから、必要なら足し算をします。2番から入る新しい単音フレーズ、ベースの刻み方の変更など、先ほどの優先順位に沿って1つずつ。

変更は合計2〜3か所で止めて、それ以上触りたくなったら一度通しで聞きます。

差が付いたか分からなくなったら、変更前のプロジェクトと聞き比べられるように、コピー直後の状態を別名で保存しておくと安心です。

最後に、1番の頭から2番のサビまでを通して再生し、飽きる場所がないかだけ確認します。

ここまでできれば、残るは間奏とラストの組み立てです。曲全体をどの順番で仕上げていくかは、制作工程マップに沿って進めると迷いません。

よくある疑問

2番でメロディは変えるべきですか

基本は変えません。聞き手が1番で覚えた歌をそのまま繰り返し、差はドラムや伴奏などアレンジ側で作るほうが、曲として覚えてもらいやすくなります。

どこから変えるのが簡単ですか

ドラムの手数がいちばん簡単です。ハイハットの刻みを半分にする、フィルの位置を変えるだけでも2番らしい変化になります。

1番と2番で全部変えてもいいですか

おすすめしません。変える場所が多いと別の曲のように聞こえて、覚えてもらえなくなります。変えるのは2〜3か所に絞ります。

2番のサビが1番より弱く聞こえます

2番の頭で抜いた楽器をBメロまでに戻しきれていないことが多いです。Bメロの後半までに音を戻してからサビへ入ります。

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プロフィール

古賀 稔宏

ギター、ウクレレ、DTM(Cubase)、作曲技法、音楽理論を指導。14歳でギターを始め、同時に作曲も始める。ポップ、ロック、クラシックの要素を含む楽曲を得意とする。

商業音楽の制作・演奏に携わりながら、初心者が止まりやすい場所を制作工程に沿って整理している。