ベースラインの作り方

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
ベースラインは、曲の一番下で低音を支えながら、ドラムと一緒にリズムを前へ運ぶ音です。コードやメロディほど目立ちませんが、ここが弱いと曲全体が軽く、地に足がつかない感じになります。
とはいえ、最初から動き回るフレーズを作る必要はありません。コードのルート音を置くところから始めて、キックと位置を合わせ、慣れてから少しずつ動きを足す。この順番なら、初心者でも土台になるベースラインを組めます。
先にやること
ベースは、まず低音の土台を固めてから動きを足すと安定します。
- コードのルート音を1小節に1つ置いて土台を作る
- ドラムのキックと同じ位置に音を置き、リズムをそろえる
- 動きを足すのは、土台が聞こえるようになってから
- 低すぎず高すぎない、こもらない音域を選ぶ
ベースは何をする音か
低音の支えと、リズムの運び役を兼ねています。
ベースには、大きく二つの仕事があります。一つは、コードの一番下を支える低音の土台です。
もう一つは、ドラムと組んで曲を前へ運ぶリズムの役です。この二役を同時に担うので、ベースが決まると曲全体が落ち着きます。
初心者がつまずきやすいのは、この役割を忘れて、メロディのように音を動かしてしまう時です。
音数が増えると一見にぎやかですが、低音の支えが薄くなり、コードもドラムも輪郭がぼやけて聞こえます。
だから最初は、動かすことより支えることを優先します。いま置いている音が、低音を支えているのか、リズムを運んでいるのか。
そこを聞きながら進めると、必要な音と余分な音が自然に分かれてきます。
役割がはっきりすると、判断が速くなります。支える音なら長く伸ばして安定させ、運ぶ音なら短く切ってリズムを立てる。
同じベースでも、担当が決まっていれば、伸ばすか切るか、鳴らすか休むかがその場で選べます。迷いが減るぶん、手が止まりにくくなります。
ルート弾きから始める
コードと同じ名前の音を、1小節に1つ置きます。
ベースラインの出発点は、コードのルート音です。ルート音とは、そのコードの名前になっている音のことで、CコードならC、FならF、AmならAを指します。
まずはこの音を、コードが変わるたびに1つずつ置いていきます。
たとえばC、Am、F、Gの4小節なら、1小節目にC、2小節目にA、3小節目にF、4小節目にGのベースを置きます。
これだけで、コードとぴったり合った土台ができます。派手さはありませんが、曲としてはしっかり成立します。
この段階で音色を作り込みすぎないでください。仮のベース音のまま鳴らして、コードと低音がかみ合っているかだけを聞きます。
かみ合っていれば、次の段階へ進めます。
ルート音は、コードの名前を見れば分かるので、耳で音を探す必要はありません。
楽器が弾けなくても、コード進行さえ決まっていれば、その頭のアルファベットを順に置くだけでベースの土台になります。これが、いちばん失敗しにくい出発点です。
キックとリズムを合わせる
ベースとキックの鳴る位置をそろえます。
ルート音が置けたら、次はドラムのキックと位置を合わせます。キックは低い太鼓の音で、ベースと同じ低音の帯を鳴らします。
この二つがずれた場所で鳴ると、低音がもたついて聞こえます。
やり方は単純です。キックが鳴っている拍に、ベースの音も来るようにそろえるだけです。
キックが1拍目と3拍目にあるなら、ベースもその位置をまず意識します。二つが重なると低音がひとかたまりになり、リズムが前へ押し出される感じが生まれます。
ここでベースとキックの低音がぶつかって、音が濁ることもあります。その時は、どちらかを少し短く切るか、鳴らす回数を減らします。
二つとも常に鳴らし続ける必要はありません。すき間があるほうが、かえって低音は締まって聞こえます。
少しずつ動きを足す
土台が聞こえてから、つなぎの1音を入れます。
ルート音とキックがそろって土台が聞こえるようになったら、少しだけ動きを足します。
いきなり細かく動かすのではなく、コードが変わる手前に1音だけ、次のコードへ橋を架けるような音を挟みます。この音を経過音と呼びます。
たとえばCからFへ進む時、小節の最後にCとFの間の音を短く入れると、次のコードへ滑らかにつながります。
動かすのはこの1音だけで十分です。全部の小節で動かすと、せっかく固めた土台がまた崩れます。
もう一つ手軽なのは、同じルート音を1オクターブ上げて短く鳴らす方法です。低いルートと高いルートを行き来するだけでも、単調さが消えて弾む感じが出ます。
動きは、増やすより「1か所だけ」が基本だと考えてください。
音域の選び方
低すぎても高すぎても、支えになりません。
ベースは低い音ですが、低ければ低いほど良いわけではありません。下げすぎると輪郭がぼやけて、こもった塊のように聞こえます。
逆に高くしすぎると、コードやメロディと混ざり、低音を支える役目が消えてしまいます。
目安は、こもらない範囲でいちばん低いところです。スマホや小さいスピーカーで聞くと、低すぎるベースはほとんど聞こえなくなるので、その手前を探します。
迷ったら、まず1オクターブの幅で上げ下げして、輪郭がはっきりする高さに置きます。
音域が決まらないうちにフレーズを作り込むと、あとで全体を動かし直すことになります。先に高さを決めてから、リズムや動きを足すほうが手戻りが減ります。
目安として、ベースは他の楽器といちばん低い帯を分け合う音です。
ここが混み合うと曲全体がもたつくので、ベースの高さが決まったら、コードやパッドの低い部分と重なりすぎていないかも一度確かめます。低い場所はベースに任せ、他の音は少し上に置くと、それぞれの輪郭が見えてきます。
口で歌ってから打つ
歌えるベースラインは、そのまま打ち込めます。
動きを足す段になって手が止まったら、画面から離れて、そのベースラインを口で歌ってみてください。ブン、ブン、ブブン、と低い声で構いません。
レッスンで軸にしているのは、歌えるものは打てる、という考え方です。口に出せる形には、すでにリズムと動きのイメージが入っています。
歌ってみると、どこで音を伸ばし、どこで動かしたいのかが自然に見えてきます。それをそのまま、キックやスネアと同じグリッドの上へ写していけば、頭で考え込むより早くフレーズになります。
逆に、口で歌えないほど込み入ったベースは、たいてい動かしすぎのサインです。
低音の土台が安定すると、その上に何をどの順で重ねるかも見えてきます。曲全体の組み立て方は、制作工程マップで確認できます。
作り方の段階
迷ったら、上の段階へ戻ります。
| 段階 | やること | 聞くところ |
|---|---|---|
| 1 | 土台 | コードのルート音を1小節に1つ置く |
| 2 | リズム | キックと同じ位置にベースを置く |
| 3 | 動き | つなぎの経過音を1つだけ足す |
| 4 | 音域 | こもらず、小さい音でも聞こえる高さを選ぶ |
よくある疑問
ベースは何の音から置けばいいですか
コードのルート音、つまりコード名と同じ音を、1小節に1つ置くところからで十分です。動きは土台が聞こえてから足せます。
ベースとドラムのキックはどう合わせますか
キックが鳴る拍にベースの音も来るようにそろえます。二つの低音が重なると、まとまって前へ進む力が出ます。まず1拍目で合わせてみてください。
ベースを動かすと濁ります。どうすればいいですか
動かすのはコードが長く続く所だけにして、コードが変わる頭はルート音へ戻します。動かしすぎたと感じたら、一度ルートだけの形に戻します。
ベースが細く聞こえます
音域が高すぎることが多いです。1オクターブ下げて、こもらない範囲でいちばん低い高さを探すと、支えが戻ります。
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