ボカロ曲の作り方 初心者向け手順

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
ボカロ曲を作ろうとして、歌声合成ソフトを開いた途端に手が止まる。よくあるのは、ソフトの操作が難しいのではなく、歌わせる中身がまだ決まっていないケースです。
メロディも歌詞も白紙のままソフトに向かうと、何を打ち込めばいいのか分かりません。
工程を分けると迷いが減ります。
口ずさめる仮メロと仮歌詞を作る。オケの土台を作る。ソフトに打ち込む。歌詞を音数に合わせる。オケと歌声を混ぜる。ワンコーラスで書き出す。
この順番を、初心者がつまずく場所と一緒に見ていきます。
先に見ること
ボカロ曲は、ソフトに入れる前の準備で決まります。
- 打ち込む前に口ずさめる仮メロと仮歌詞を作る
- オケ先かメロ先かは、今日出てきた方でいい
- 歌詞は1音1文字を目安に音数を合わせる
- 最初の1曲はワンコーラスで完成にする
歌声ソフトに入れる前に決めること
打ち込みの前に、口ずさめる形を作ります。
ボカロ曲とは、歌声合成ソフトに歌わせて作る曲のことです。作業を分解すると、オケ(伴奏)、メロディ、歌詞、歌声トラックの4つでできています。
このうちソフトの画面で作るのは一部だけで、核になるメロディと歌詞の当たりは、ソフトの外で作れます。
レッスンでも伝えている判断基準があります。フレーズを口に出せるなら、そこにはイメージがある。楽器で正確に弾けなくても、口ずさめる形を録っておけば、後からMIDIへ近づけられる、というものです。
逆に言うと、自分で口ずさめないメロディは、ソフトに歌わせても歌として聞こえにくいです。
だから最初の作業は、スマホの録音アプリに鼻歌を残すことです。きれいに歌う必要はありません。
音程が多少ずれていても、上がる、下がる、伸ばす、切るという形が残れば素材になります。
歌詞も、この段階では当たりだけで十分です。ラララで歌ってもいいし、サビの一言だけ本物の言葉を入れてもいい。
「会いたい」でも「まだ帰れない」でも、曲の核になる一言があると、後の作業がぶれにくくなります。
オケ先かメロ先か
どちらでも完成します。選ぶ基準だけ持ちます。
ボカロ曲の作り方を調べると、オケを先に作る人とメロディを先に作る人の両方が出てきます。どちらが正解というものではなく、頭の中から先に出てくる素材が人によって違うだけです。
オケ先は、コード進行とドラムを先に4小節から8小節作り、その伴奏を流しながらメロディを探すやり方です。CからAmへ進むような短い進行で構いません。
伴奏が鳴っていると、メロディの着地する音が見つけやすく、キーも自然に決まります。鼻歌がなかなか出ない人は、こちらが向いています。
メロ先は、鼻歌が先に浮かぶ人のやり方です。録った鼻歌をピアノロールに写し、その音に合うコードを後から当てます。
メロディの終わりの音がドならC、ラならAmのように、メロディの音を含むコードから試すと外れにくいです。
迷ったら、今日出てきた方から始めてください。昨日はオケ先で今日はメロ先でも問題ありません。
決め方に時間を使うより、どちらかで4小節作った方が先へ進みます。
ボカロ曲が完成するまでの工程
止まったら、1つ前の工程へ戻ります。
| 工程 | やること | 確認すること |
|---|---|---|
| 1. 仮メロ・仮歌詞 | 鼻歌をスマホに録る | 口ずさめるか、核の一言があるか |
| 2. オケの土台 | コードとドラムを8小節 | 鼻歌とキーとテンポが合うか |
| 3. 打ち込み | メロディを歌声ソフトへ | 鼻歌の形と大きくずれていないか |
| 4. 歌詞入れ | 音数に合わせて言葉を調整 | 1音1文字で歌えているか |
| 5. 混ぜる | 歌声トラックとオケの音量 | 歌詞が聞き取れるか |
| 6. 仕上げ | ワンコーラスで書き出す | 最後まで通して聞けるか |
歌詞とメロディの音数を合わせる
目安は1つの音に1文字です。
初心者が一番つまずくのが、歌詞がメロディに乗らない問題です。原因のほとんどは音数です。
日本語の歌は、おおよそ1つの音符に1文字(「きゃ」のような小さい文字は前とセット)が乗ります。メロディが8つの音でできているなら、乗る言葉は8文字前後です。
伝えたい文をそのまま乗せようとすると、たいてい字余りになります。「あなたにずっと会いたかった」は13文字あるので、8音のメロディには入りません。
この時の直し方は2方向あります。言葉を削るか言い換えて短くするのが1つ。「ずっと会いたかった」なら9文字まで減ります。
もう1つは、メロディ側のノートを1つ割って音数を増やすやり方です。どちらを選ぶかは、そのフレーズの主役がメロディか言葉かで決めます。
もう1つ効くのが、言葉の入る位置です。同じ歌詞でも、小節の頭から入るのか、半拍待ってから入るのかで印象が変わります。
詰め込んで苦しいフレーズは、文字を減らして入りを少し遅らせるだけで歌いやすくなることが多いです。
合っているかの判定は簡単で、自分で声に出して歌えるかどうかです。ソフトは無理な音数でも発音してくれますが、人が歌って苦しい詰め込みは、聞く人にも苦しく聞こえます。
仮歌詞から本物の歌詞への差し替えは、ワンコーラス分のメロディが固まってからで大丈夫です。メロディがまだ動く段階で歌詞を完成させると、メロディを直すたびに言葉を書き直すことになります。
順番としては、メロディ確定、音数の確認、歌詞の清書です。
歌声トラックとオケを合わせる
歌が主役として聞こえる状態を作ります。
歌声ソフトで書き出した歌をDAWのオケに並べると、最初はたいていどちらかが埋もれます。ここで見る場所は3つです。
1つ目はテンポとキーです。歌声ソフト側とDAW側のテンポ設定が違うと、途中から歌がずれていきます。混ぜる前に、両方のプロジェクトが同じテンポ、同じキーになっているかを確認します。
2つ目は音量です。歌ものでは、ドラムと歌が聞こえる状態を先に作るのが基本です。
コードやシンセを気持ちよく上げていくと、主役の歌が奥へ下がります。エフェクトを触る前に、フェーダーで歌が一番手前に来る配置を作ってください。
3つ目は音域のかぶりです。メロディと同じ高さで鳴り続ける楽器があると、歌詞が聞き取りにくくなります。
その楽器を消すか、音量を下げるか、オクターブ動かすかで、歌の場所を空けます。
仕上げの判定は、スピーカーの前だけでやらないことです。一度書き出してスマホやイヤホンで聞くと、歌詞が聞き取れるかどうかがはっきり分かります。
最初の1曲はワンコーラスでいい
短くても、最後まで通る形を先に作ります。
ボカロ曲の初投稿でフルコーラスを目指すと、多くの人が2番の歌詞で止まります。1番で言いたいことを使い切っているので、2番に乗せる言葉が出てこないためです。
そこで、最初の1曲はワンコーラスで完成にします。Aメロ、Bメロ、サビが一度ずつ出て、90秒前後で終わる形です。
90秒は完成の代わりではなく通過点で、入口、展開、盛り上がり、終わり方という曲の要素を小さく全部確認できます。この確認を通った人は、次の曲もフルコーラス化も速くなります。
ワンコーラスでも、終わり方だけは作ってください。サビの最後の音を伸ばして止める、オケを1小節だけ残して閉じる。
それだけで、途中で切れたループではなく1本の曲として聞こえます。
できあがったら、書き出して保存し、次に直したい場所を1つだけメモして終わります。
メロディ、歌詞、オケ、混ぜ方のどこを次に伸ばすか。その1点が、2曲目の設計図になります。
曲作り全体のどこに今いるのかを見失いそうになったら、工程の全体像を1枚で見られる制作工程マップも合わせて使ってください。
よくある疑問
ボカロ曲を作るには何が必要ですか
オケを作るDAWと、歌わせる歌声合成ソフトの2つが基本です。先に高い物を揃えるより、今の環境で短いワンコーラスを作れるかを確認します。
オケとメロディはどちらを先に作ればいいですか
どちらからでも完成します。鼻歌が先に出るならメロ先、伴奏の上で探したいならオケ先。今日出てきた方から始めて構いません。
歌詞がメロディに乗りません
音数を数えてください。1音に1文字が目安です。言葉を削るか言い換えるか、ノートを割るかで合わせます。核の一言を先に決めると調整しやすいです。
最初からフルコーラスを作るべきですか
最初の1曲はワンコーラスで完成にして構いません。最後まで通る短い形を作ると、2曲目やフルコーラスへの広げ方が見えます。
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