CubaseでMIDI録音する方法|初心者が最初に確認すること

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
MIDIキーボードをつないで、いざCubaseで録音しようとすると、意外な壁に当たります。録音ボタンを押したのに何も残らない。音は鳴るのに録れていない。原因のほとんどは演奏の失敗ではなく、録音前の準備がひとつ抜けていることです。
MIDI録音には、トラックを作る、音源を選ぶ、入力を確かめる、クリックを鳴らす、録音待機を点ける、という決まった並びがあります。ここではその並びを最初から順にたどり、失敗テイクのやり直し、鍵盤が苦手な人のためのステップ入力、録音後にタイミングを整えるクオンタイズまでを扱います。なお、メニューの表記はCubaseのバージョンで少し変わるため、一般的な呼び方で書きます。
先に見ること
CubaseのMIDI録音は、録音ボタンより先に準備を確認します。
- インストゥルメントトラックを作り、音源を選ぶ
- 鍵盤を押して、トラックが反応するかを見る
- テンポとクリック(メトロノーム)を決める
- 録音待機を点けてから録音する。失敗しても消してすぐ録り直せる
インストゥルメントトラックと音源を用意する
MIDIは演奏の記録です。音にする音源をまず決めます。
準備の前に、ひとつだけ仕組みの話をします。MIDIデータには音そのものが入っていません。
入っているのは、どの高さの音を、いつ、どれくらいの強さで弾いたか、という演奏の記録です。この記録を音に変えるのがソフト音源です。
だからMIDI録音では、演奏を受け取るトラックと、それを鳴らす音源のペアを最初に作ります。
トラックが並ぶ領域で右クリックするか、メニューからトラックの追加を選び、インストゥルメントトラックを作ります。
このとき音源を選ぶ欄が出るので、Cubase付属のピアノやシンセを選べば十分です。音色にこだわるのは録音が動いてからで構いません。
MIDI入力の欄は、初期設定では「すべてのMIDI入力」のような設定になっていることが多く、つないだ鍵盤の信号はそのまま届きます。ここを触るのは、鍵盤を2台以上つなぐようになってからで大丈夫です。
MIDI入力の確認(鍵盤を押して反応を見る)
録音の前に、信号が届いているかを10秒で確かめます。
トラックができたら、録音の前に必ず鍵盤をいくつか押してみます。見る場所は2つです。
- トラック横の小さなメーターが押した瞬間に振れるか
- そして音源の音が実際に聞こえるか
この2つが確認できれば、鍵盤からCubaseまでの道はつながっています。
メーターは振れるのに音が聞こえない場合、信号は届いていて、音になる手前で止まっています。
トラックに音源がきちんと立ち上がっているか、モニタリング(入力した音をその場で聞く機能)のボタンの状態、トラックのミュートを順に見ます。
それでも鳴らないなら、問題はMIDIではなくオーディオ側です。Cubaseで音が出ない時の手順で切り分けてください。
メーターがまったく振れない場合は、鍵盤をつないだ順番を疑います。
MIDIキーボードは、Cubaseを開く前につないであったかどうかで認識のされ方が変わることがあります。起動後にUSBを挿した場合は認識されていないことがあるので、つないだままCubaseを再起動するのが確実な切り分けです。
ケーブルやドライバーを疑うのはその後で十分です。
テンポとクリックを決める
クリックに合わせて録ると、後の編集が一気に楽になります。
クリックとは、設定したテンポで鳴り続けるメトロノームの音です。ツールバーにあるメトロノームのボタンで入り切りできます。
自由に弾きたいから要らない、と感じるかもしれませんが、クリックなしで録った演奏は小節の線とずれて記録されるため、後からコピーしたり、タイミングを直したりする作業が難しくなります。
打ち込みの土台にする録音では、クリックは点けておくものと考えてください。
テンポは、作りたい曲の速さではなく、自分が今ミスなく弾ける速さまで落とします。
MIDIはテンポを後から変えても演奏データがそのままついてくるので、遅く録って本来の速さに上げる、が普通に使える手です。ゆっくり正確に録るほうが、速く雑に録るより結果的に早く終わります。
あわせてプリカウントも設定しておきます。録音ボタンを押してから実際の録音が始まるまでに、1〜2小節ぶんクリックだけが鳴る助走の機能です。
これがあると、1音目から構えて弾き始められます。
録音待機から録音、失敗テイクのやり直しまで
録音待機の点け忘れが、録れていない原因の第1位です。
1. 録音待機を点ける。トラックには録音可能を示すボタン(多くの場合は赤い丸)があります。これが点いたトラックだけが録音の対象です。
録音したのに何も残っていない、という相談のほとんどはここの点け忘れが原因です。
トラックを選ぶと自動で点く設定になっていることも多いですが、録音前に目で確かめる癖をつけてください。
2. 録音を開始する。再生位置を録りたい場所の少し手前に置き、ツールバーの録音ボタンを押します。
プリカウントの後に録音が始まるので、クリックに合わせて演奏します。テンキーの「*」キーで録音を開始できるのが一般的です。
3. 止めて聞き返す。スペースキーで停止し、頭から再生します。トラック上に演奏の入ったパートができていれば成功です。
4. 失敗テイクを消してやり直す。録り直したいときは、いま録れたパートをクリックして選び、Deleteキーで消します。
録音直後なら、編集メニューの「元に戻す」でも録音前の状態に戻れます。消すのが不安なら、パートを残したままミュートして、同じ場所にもう一度録る方法もあります。
ただし同じトラックに重ねて録ると前のテイクと音が重なって聞こえることがあるため、最初のうちは消してから録り直すのが混乱しません。
そして、1回で全部を録ろうとしないことです。8小節をまとめて録って毎回どこかでミスするより、4小節ずつ区切って録るほうが早く終わります。
録音は一発勝負ではなく、部品を集める作業だと考えてください。
録音前チェック表
録れない・鳴らない時は、症状から見る場所を引きます。
| 症状 | 見る場所 | 直し方 |
|---|---|---|
| 鍵盤を押してもメーターが振れない | 接続の順番 | 鍵盤をつないだままCubaseを再起動する |
| メーターは振れるが音が出ない | 音源・モニタリング・ミュート | 音源の立ち上がりとボタンの状態を順に見る |
| 録音したのに何も残らない | トラックの録音待機 | 赤い録音可能ボタンを点けてから録る |
| 録った演奏が小節とずれる | クリックとプリカウント | クリックを点け、助走をつけて録り直す |
| 前のテイクと二重に聞こえる | 同じ場所の古いパート | 失敗テイクを消してから録り直す |
リアルタイム録音とステップ入力の使い分け
弾いて録るだけがMIDI入力ではありません。
ここまで説明したのは、クリックに合わせて演奏するリアルタイム録音です。
もうひとつの入力方法が、ピアノロールを開いてマウスで音をひとつずつ置いていくステップ入力(打ち込み)です。出来上がるMIDIデータはどちらも同じもので、優劣はありません。
使い分けの目安ははっきりしています。コードの伴奏や、ノリと勢いがほしいフレーズは、多少ヨレてもリアルタイム録音のほうが音楽的になります。
逆に、ドラムのパターンや、自分の指では弾けない速さのフレーズは、マウスで置くほうが正確で早いです。
1曲の中で、伴奏は弾いて録り、ドラムはマウスで打つ、という混在がむしろ普通です。
鍵盤がうまく弾けないことは、MIDI録音をあきらめる理由になりません。
MIDIキーボードは上手に演奏するための道具というより、頭の中のフレーズやコードを外に出すための道具です。鍵盤が苦手なら、マウス入力から入って構いません。
片手でゆっくり弾いてクオンタイズで整える、という中間の使い方もあります。ドラムをマウスで組む具体的な手順はドラムパターンの作り方にまとめています。
クオンタイズで後から整える
タイミングのずれは、録り直さなくても直せます。
クオンタイズは、録音したMIDIノートのタイミングを拍のグリッドに吸い寄せる機能です。
8分音符や16分音符といった基準を選んで実行すると、走ったり遅れたりした音が一番近いグリッドに揃います。クリックに合わせて録ってあれば、ヨレの大部分はこれだけで整います。
だから、録り直すかどうかの判断基準はこう置けます。
音の高さを間違えたら録り直すか、そのノートだけ直す。タイミングがヨレただけなら録り直さず、クオンタイズで揃える。
この線引きがあると、同じ4小節を何十回も弾き直す沼にはまりません。
ひとつだけ注意があります。基準より細かい音符は、クオンタイズで隣のグリッドに動いて演奏が変わってしまいます。
16分音符が入ったフレーズを8分音符の基準で揃えない、という点だけ気をつけてください。
また、全部を機械のように揃えると人間らしい揺れも消えます。気になる音だけ選んでかける使い方で十分です。
録音して、消して、録り直して、クオンタイズで整える。
この一連の流れが手になじめば、MIDI録音は曲作りの止まらない入り口になります。録れたフレーズをコード、ドラム、メロディへ広げていく順番は、下の制作工程マップに1枚でまとめています。
よくある疑問
MIDIキーボードがないとMIDI録音はできませんか
できます。ピアノロールを開いて鉛筆ツールで音を置くステップ入力なら、マウスだけで同じMIDIデータを作れます。鍵盤は必須ではありません。
鍵盤を押しても音が鳴りません
Cubaseを起動する前にMIDIキーボードをつないでいたかをまず確認します。後からつないだ場合は認識されないことがあるため、Cubaseを再起動します。次にトラックの音源とモニタリングの状態を見ます。
録音したはずなのに何も残っていません
録音したいトラックの録音待機が点いていなかった可能性が高いです。録音待機を点けたトラックだけが録音の対象になります。点灯を確認してから録音ボタンを押してください。
演奏がヨレヨレでも録音していいですか
構いません。タイミングのずれはクオンタイズで拍に揃えられます。音の高さの間違いだけ直せば使えるテイクになるので、完璧に弾けるまで待つ必要はありません。
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