Bメロの作り方

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
Bメロは、Aメロとサビをつなぐ橋です。落ち着いたAメロから、いきなり最高潮のサビへ飛び移ると、聞き手が置いていかれます。あいだにひと区間はさんで、「そろそろ来るぞ」という気持ちを作るのがBメロの役目です。
橋なので、Bメロ自体で完結させません。むしろ少し落ち着かない、宙に浮いたまま次へ渡す感覚が正解です。ここでは、Aメロと差をつける三つの手(コード・リズム・音域)、緊張を溜めてサビへ持ち上げる作り方、転調感の出し方を順に見ていきます。
先に見ること
Bメロは「渡す橋」。Aメロと差をつけ、着地はサビまでお預けにします。
- コード・リズム・音域のどれか一つを、Aメロからはっきり変える
- Aメロと違うコードから始めると、宙に浮いた橋渡しの感じが出る
- 後半で少しずつ密度を上げ、サビへ気持ちを持ち上げる
- Bメロで盛り上げ切らない。最高音と厚い伴奏はサビに残す
Bメロは「橋」だと考える
完結させず、次へ渡すのがBメロの仕事です。
Bメロを難しく感じるのは、Aメロやサビと同じように「良いメロディを作ろう」としてしまうからです。
ですがBメロは、単体で気持ちよく決まる必要はありません。
仕事は、Aメロとサビをつなぐことそのものです。渡す橋であって、目的地ではないと考えると、力の入れ方が変わります。
橋である以上、Bメロは着地しないほうが役割に合います。
フレーズの終わりで安定した音に落ち着けず、少し宙に浮いたまま止める。この落ち着かなさが、聞き手の「早く先を聞きたい」という気持ちを引き出します。
安定を我慢することが、サビの解放を大きくします。
逆に、Bメロで気持ちよく着地させてしまうと、そこで一度話が終わったように聞こえ、サビが余分に感じられます。
Bメロは、わざと言い切らない場所だと覚えておくと迷いません。
Aメロと差をつける三つの手
変えるのはコード・リズム・音域。まず一つで十分です。
Bメロがうまく作れない時、多くはAメロの続きのまま書いてしまっています。
Aメロと同じコード、同じリズム、同じ音域で続けると、聞き手には別の場所だと伝わりません。
差をつける手は大きく三つあります。コードを変える、リズムを変える、音域を動かす、です。
大事なのは、三つ全部を一度に変えなくてよいことです。
まずどれか一つをはっきり変えます。
リズムなら、Aメロが細かく刻んでいたところを、Bメロでは音を長く伸ばす。あるいは逆に、伸ばしていたところを細かく動かす。音域なら、Aメロより少し高い位置へ移して、サビの手前の階段の一段目を作ります。
一つ変えるだけで手応えが出なければ、二つ目を足します。
この順番で試すと、何が効いてBメロらしくなったのかが自分で分かります。Aメロとの違いは、大きさより「はっきりしているか」で決まります。
違うコードから始めて浮かせる
出だしのコードを変えると、橋の浮遊感が生まれます。
三つの手のなかでも、初心者がいちばん効果を感じやすいのがコードです。
Aメロが中心のコード(Cなど)から始まっているなら、Bメロはそこから離れたコードで始めてみてください。
たとえばFやAmなど、曲の中心から少しずれた音で入ると、着地しきらない浮いた感じが出ます。これがそのまま橋渡しの響きになります。
この出だしのコード選びは、転調感の出し方としても使えます。Aメロと違うコードから入るだけで、キーが変わったような、景色が切り替わる印象を作れます。
本当に転調する必要はありません。キーはそのままで、Bメロの頭のコードを中心から離す。それだけで、転調したかのような浮遊感が生まれます。
ここで使える考え方が、レッスンの判断メモにあります。同じメロディや同じ音を繰り返しても、下のコードが変われば聞こえ方が変わる、というものです。
反復と変化を同時に作れるので、耳に残りやすくなります。
Bメロでは、Aメロの終わりの音の余韻を引き継ぎつつ、下のコードだけ別の場所へずらす。すると、メロディは地続きなのに景色だけ変わった、という橋らしい感触が作れます。
コードを動かす速さも橋づくりに使えます。
Aメロが1小節に1コードでゆったりしていたなら、Bメロでは2拍ごとにコードを動かして流れを速める。前へ進む感じが強まり、自然とサビへ向かう推進力になります。
緊張を溜めてサビへ持ち上げる
後半にかけて密度を上げ、サビの手前で溜めます。
Bメロは、前半と後半で表情を変えると持ち上げやすくなります。
前半は宙に浮いたまま静かに進み、後半にかけて少しずつ密度を上げる。
ドラムの刻みを細かくする、ベースを動かし始める、コードの動きを速める。じわじわ増やしていくと、サビへ向かう坂道ができます。
サビの直前の数拍は、いちばん効く仕掛けどころです。
ドラムにフィル(おかず)を入れて「ここから変わる」と予告する、あるいは逆に、直前の1小節だけ全部の楽器を止めて空白を作る。溜めてから解放しても、いったん止めてから飛び込んでも、どちらもサビを大きく見せます。
ただし、後半で持ち上げても、Bメロで頂点まで行き切らないことが大切です。
いちばん高い音といちばん厚い伴奏は、サビのために残しておきます。
Bメロは坂の途中で手を離す場所。最後のひと押しはサビに任せます。
Bメロの設計早見表
Aメロからの「変化」と、サビへの「余白」を両方見ます。
| 決める要素 | Aメロからの変え方 | サビへ残すこと |
|---|---|---|
| コード | 中心から離れたコードで始める | 解決するコードはサビ頭に取っておく |
| コードの速さ | 1小節1つから2拍ごとへ速める | 速さの頂点はサビで作る |
| リズム | 刻みか伸ばしをAメロと入れ替える | 最も細かいキメ(楽器をそろえて鳴らす合図のフレーズ)はサビ直前に置く |
| 音域 | Aメロより一段上へ移す | 最高音はサビまで出さない |
| 密度 | 後半にかけて楽器を足していく | 全部鳴らすのはサビに残す |
間延びする・強くなりすぎる時
二つのつまずきは、原因が正反対です。
Bメロがうまくいかない時のつまずきは、大きく二つに分かれます。
一つは間延びして聞こえるパターン。これはたいてい、コードもリズムも動かず、Aメロのまま時間だけ過ぎている状態です。
コードを2拍ごとに動かす、後半でドラムを増やすなど、サビへ向かう流れの速さを足すと解消します。
橋が長く感じるのは、渡っている実感がないからです。
もう一つは、Bメロが強くなりすぎてサビとの差が消えるパターンです。
Bメロで盛り上げ切ると、サビが来ても「さっきと同じ」に聞こえます。
この時は、Bメロの最高音を下げ、いちばん厚い部分をサビへ移します。Bメロは着地させず宙に浮かせたまま終える、という原則に戻すだけで差が戻ります。
どちらの場合も、直すのは一度に一か所です。
コードの速さ、音域、密度のうち一つだけ変えて、AメロからBメロ、Bメロからサビまで通して聞き比べます。
Bメロがつながったら、次は曲の頂点であるサビの作り方へ。全体の並べ方は制作工程マップに1枚でまとめています。
よくある疑問
BメロはAメロとどう変えればいいですか
コード・リズム・音域のどれか一つを、はっきり変えることから始めます。全部を変える必要はありません。Aメロと違うコードから始める、リズムの刻みを変える、音域を少し上げる。一つ変えるだけでも、Aメロとは別の場所だと伝わります。
Bメロがなくても曲は作れますか
作れます。Aメロからサビへ直接つなぐ曲も多くあります。ただ、AメロとサビをつなぐBメロがあるとサビがより開けて聞こえるので、まずは3つそろえた形で一度作っておくと応用が利きます。
Bメロがサビみたいに強くなってしまいます
Bメロで盛り上げ切ると、サビとの差がなくなります。Bメロは着地させず、少し宙に浮いたまま終わらせるのがコツです。いちばん高い音といちばん厚い伴奏は、サビのために残しておきます。
Bメロが間延びして聞こえます
多くはコードやリズムが動かず、Aメロのまま続いていることが原因です。コードを2拍ごとに動かす、後半でドラムを増やすなど、サビへ向かう流れの速さを作ると、間延びが消えます。
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