BGMをDTMで作る基本

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
BGMは、歌ものとは主役が違います。歌ものはメロディや歌声が主役ですが、BGMの主役は、後ろで流れている場面のほうです。だからBGMは、前に出すぎず、その場の空気を作る音として考えます。
作り方の基本は、短いループを前提にすること、メロディを控えめにすること、そして流す場面に合う雰囲気を優先することです。読み終わったら、まず4小節のコードだけを作り、繰り返し流してみてください。
先にやること
BGMは、主役の場面を邪魔しないように、控えめな音で雰囲気を作ります。
- 短いループを前提に、4小節から作る
- メロディは控えめ、コードで雰囲気を出す
- 使う場面(動画・ゲーム・店舗)に合わせる
- 何度流れても疲れない音の量に抑える
BGMと歌ものの違い
聞き手は、BGMをじっと聞いていません。
BGMは、Background Music の略で、背景で流れる音楽のことです。
動画のナレーションの後ろ、ゲームの画面、店内など、別の何かが主役の場所で流れます。聞き手はBGMをじっと聞いているわけではなく、何かをしながら耳に入れています。
だからBGMでは、歌もののサビのように強く主張する必要はありません。むしろ、主張しすぎると主役のナレーションや会話の邪魔になります。
前に出る音より、場面になじむ音を選びます。ここが、聞かせるための曲との一番の違いです。
とはいえ、ただ地味なだけでは印象に残りません。目立たないけれど、その場の空気は変える。この二つの間をねらうのが、BGM作りのむずかしさであり、面白さでもあります。
作り始める前に、そのBGMが主役なのか脇役なのかをはっきりさせます。脇役だと決めたら、上手なメロディや珍しいコードを見せる場ではありません。
場面がどんな気持ちの場所なのか、明るいのか、静かなのか、緊張しているのかを先に決め、その空気に合う音だけを残していきます。
ループを前提に短く作る
4小節を作って、繰り返して長さにします。
BGMの多くは、短いまとまりを繰り返して長さを作ります。この繰り返しをループと呼びます。
4小節や8小節を作って、それを何度もつなげれば、必要な長さのBGMになります。最初から通しで3分を作る必要はありません。
まず4小節のコード進行を作り、ループで流し続けます。繰り返し聞いても飽きないか、うるさく感じないかを確かめます。
ここが、BGMを作る時の最初の確認になります。短い素材が耐えられれば、長くしても崩れにくいです。
ループが単調に感じたら、8小節にして後半だけ少し変えます。楽器を一つ足す、抜く、リズムを少し変える。
大きく変えず、小さな変化で飽きを防ぎます。同じ4小節をそのまま並べ続けると、機械的に聞こえやすくなります。
メロディは控えめに
コード進行だけでも、BGMは成立します。
BGMでは、メロディを主役にしすぎないほうが使いやすくなります。
強いメロディがあると、聞き手の注意がそこへ集まり、主役の映像や会話から気がそれてしまいます。前に出したい気持ちを、少し抑えます。
メロディを控えめにする代わりに、コード進行で雰囲気を作ります。明るいコードなら軽い場面、暗いコードなら重い場面、というように、和音の響きだけでも空気は変わります。
理論の名前を覚える前に、コードを鳴らして響きの違いを聞きます。コード進行とリズムだけでも、BGMとして成立します。
メロディを入れる場合も、短く、繰り返せる形にします。
長い歌のようなメロディより、二小節ほどの短いフレーズを時々鳴らすくらいが、BGMにはちょうどよいです。入れっぱなしにせず、鳴らさない時間も作ります。
テンポで場面に合わせる
速さは、流す場面のリズムに合わせます。
BGMのテンポは、聞かせるためではなく、場面に合わせるために決めます。
落ち着いた説明の後ろなら遅め、明るく動きのある映像ならやや速め、というように、映像や空間の速さに寄せます。曲単体で気持ちよい速さより、場面と歩調が合う速さを選びます。
迷ったら、まず遅めから試します。遅いと落ち着いて聞こえ、多くの場面になじみやすいからです。
そこから、場面が物足りなく感じたら少しずつ速くします。速い方から作ると、後で落ち着かせるのがむずかしくなります。
テンポが決まると、ドラムやコードの刻みの細かさも決まります。遅い曲で細かく刻むとせわしなく、速い曲で伸ばしすぎると間延びします。テンポに合わせて、音の細かさをそろえます。
用途別のBGMの作り方
作る前に、どこで流すかを決めます。
| 用途 | 気をつけること | 向く雰囲気 |
|---|---|---|
| 動画 | ナレーションを消さない | 静かめ・一定 |
| ゲーム | 長く聞いても疲れない | 場面に合わせる・ループ前提 |
| 店舗 | 会話をさまたげない | 落ち着いた・控えめ |
用途で作り方を変える
流す場所が決まると、音の量を選べます。
BGMは、使う場面によって向く作り方が変わります。作る前に、どこで流すBGMなのかを決めておくと、テンポや音の量を選びやすくなります。
同じ「BGM」でも、動画とゲームでは求められる作りが違います。
- 動画向けなら、ナレーションや効果音の邪魔をしない静かめの音にします。
- ゲーム向けなら、同じ場面が長く続くので、ループしても疲れない作りが大切です。
- 店舗向けなら、会話をさまたげない落ち着いた音量感を意識します。
作りたい場面に近いBGMを一つ選んで聞くと、使う楽器やどのくらい音を詰めるかの目安になります。
まねをするためではなく、その場面ではどんな密度が合うのか、どこで音が休むのかを知る材料にします。
音を減らして雰囲気を残す
増やすより、抜くほうがなじむことがあります。
BGMがうるさく感じたり、主役を消してしまう時、まず疑うのは音の数です。
初心者は雰囲気を出そうとして音を足しがちですが、BGMはむしろ減らすほうが場面になじむことがよくあります。増やす前に、今ある音のうち抜けるものを探します。
抜き方の順番は、目立つ音からです。動きの多いフレーズ、高い音の飾り、細かい刻み。
これらを一つずつ切って、雰囲気が残るかを聞きます。コードとリズムだけになっても場面に合っているなら、それで十分なことも多いです。
音を減らすと、残った音の役割がはっきりします。何のための音か分からないトラックは、たいてい抜いても曲は成り立ちます。少ない音で雰囲気が残せると、長く流しても疲れにくいBGMになります。
場面に重ねて確認する
単体でなく、場面と一緒に判断します。
BGMは、単体できれいに聞こえるかより、場面と一緒にちょうどよいかで判断します。
だから作ったら、実際に使う状況に近い形で聞き返します。BGMだけで完璧にしようとすると、かえって主張が強くなりがちです。
動画のBGMなら、仮のナレーションや映像に重ねて聞きます。
BGMだけで聞くと地味に感じても、声と重ねるとちょうどよいことがよくあります。逆に、単体で気持ちよくても、重ねると声を消してしまう場合もあります。
音量も場面で決めます。主役より少し下げて、意識しなくても耳に入るくらいが目安です。
書き出して、スマホなど別の機器で流し、うるさくないか、寂しくないかを確かめます。
気になる点があっても、一度に全部を直そうとしないでください。うるさいなら音量か音の数、こもるなら音の高さ、寂しいなら足す一つ、というように、直す場所を一つだけ選びます。
まとめて変えると、何が効いたのか分からなくなります。短い書き出しを何度か残しながら、少しずつ場面に合わせていきます。仕上げまでの流れは制作工程マップでも確認できます。
よくある疑問
BGMに必ずメロディは必要ですか
いりません。コード進行とリズムだけでも雰囲気は作れます。むしろメロディを控えたほうが、主役の映像や会話の邪魔になりません。
何小節作ればいいですか
まず4小節か8小節を作り、ループで必要な長さに伸ばします。最初から通しで長く作る必要はありません。
ループが単調に聞こえます
8小節にして後半だけ楽器を足す、抜く、リズムを少し変えます。大きく変えず、小さな変化で飽きを防ぎます。
用途で作り方は変わりますか
変わります。動画は声を消さない静かめ、ゲームは疲れないループ、店舗は会話を邪魔しない落ち着いた音、というように選びます。
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