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古賀稔宏の作曲ノート作曲・編曲家のDTM制作ノート

バラードをDTMで作る基本

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作曲・編曲家 古賀 稔宏

「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。

バラードは、ゆっくりしたテンポで、感情をていねいに伝える曲です。速い曲のように音を詰めるのではなく、音と音の間、つまり静けさも使って聞かせます。だから、たくさんの音を鳴らすより、一つ一つの音をていねいに置きます。

作り方の基本は、遅いテンポ、少ない音、歌を主役にすること、そして盛り上げを後半に取っておくことです。読み終わったら、遅めのテンポでピアノとコードだけの4小節を作ってみてください。

先にやること

バラードは、遅いテンポと間を活かし、歌を主役に、盛り上げは後半へ回します。

  • テンポを遅くして、音を長めに鳴らす
  • ピアノやストリングスで静かに支える
  • 主役は歌、伴奏は控えめにする
  • 前半は抑えて、後半で盛り上げる

遅いテンポと間で作る

音を鳴らさない時間も、曲の一部です。

バラードの土台は、遅いテンポです。速い曲では細かい音でノリを作りますが、バラードでは一つ一つの音を長く鳴らし、余韻を聞かせます。

テンポを遅くするだけで、同じコードでも落ち着いた雰囲気に変わります。

遅いテンポでは、間、つまり音を鳴らさない時間が大切になります。ずっと音を埋めると、せわしなく聞こえ、バラードらしさが消えます。

フレーズの後に少し休みを作ると、次の音が引き立ちます。静けさも、曲の一部として使います。

最初は、コードを一小節に一つ、長く伸ばして鳴らすところから始めます。速く動かさず、響きが消えていくのを聞きます。

この余韻を感じられるようになると、バラードの入口ができています。

テンポの数字そのものより、歌をのせた時にゆったり歌えるかで判断します。速すぎると言葉が詰まり、感情をこめる余裕がなくなります。

仮に鼻歌をのせてみて、息をつく間があるくらいの速さに合わせると、バラードらしい落ち着きが出ます。

コードは長めに鳴らす

速く動かすより、一つの響きを聞かせます。

バラードでは、コードを速く切り替えず、長めに鳴らします。一つのコードをしっかり伸ばすと、その響きがゆっくり耳に届き、落ち着いた感じになります。

一小節に一つ、場合によっては二小節に一つでも、バラードなら間延びしにくいです。

コードが分からなくても、難しい和音を探す必要はありません。よく使われる四つほどのコードを、長く伸ばして順番に鳴らすだけで土台になります。

大事なのは、コード名を増やすことより、一つの響きを最後まで聞かせることです。

コードを置いたら、すぐメロディへ進まず、何度か再生します。切なく聞こえるか、あたたかく聞こえるか、次のコードへ進みたくなるか。

響きの感じを先に確かめると、後で歌をのせた時に合わせやすくなります。同じメロディでも、下のコードが変わると聞こえ方が変わります。

ピアノやストリングスで支える

支えの音を、主役より前に出しません。

バラードでよく使われるのが、ピアノとストリングスです。ピアノは、和音を鳴らしても余韻が残り、間を作りやすい楽器です。

まずはピアノ一つでコードを鳴らすだけでも、バラードの伴奏になります。難しく考えず、この一つから始めます。

ストリングスは、バイオリンなどの弦楽器の音で、長く伸ばして背景を作るのに向きます。

ピアノで和音の芯を作り、ストリングスで後ろを薄く支えると、音数が少なくても豊かに聞こえます。

ただし、ストリングスやパッドを気持ちよく上げすぎると、歌が奥に引っ込みます。支えの音は、主役の歌が前に立つ範囲でとどめます。

伴奏は、隙間を埋めるためではなく、歌の周りに空気を作るために置く、と考えると量を決めやすいです。

歌を主役にする

主役の居場所を、先に空けておきます。

バラードの主役は、たいてい歌です。だから、他の音は歌が一番前に聞こえる状態を守るように配置します。

伴奏が主役より前に出ると、せっかくの感情が伝わりにくくなります。まず、歌とドラムにあたる芯の音が聞こえる状態を作ります。

歌がまだない段階でも、主役の居場所を空けておきます。伴奏だけで気持ちよくしすぎると、後から歌を入れた時に居場所がなくなります。

歌が入る中音域を少し空けておくと、後で歌がすっと入ります。

歌の入り方も、印象を左右します。拍の頭からまっすぐ入るのか、少し待って入るのかで、同じメロディでも聞こえ方が変わります。

バラードでは、少しためて入ると、しっとり聞こえることが多いです。

前半と後半の作り分け

同じ強さで通さず、差を作ります。

場所音の量ねらい
前半(Aメロ)ピアノと歌が中心・薄く歌詞と感情を伝える
中盤(Bメロ)少しずつ足す後半への橋渡し
後半(最後のサビ)ドラムやストリングスを厚くいちばん盛り上げる

盛り上げは後半に取っておく

前半で抑えた分だけ、後半が生きます。

バラードは、最初から最後まで同じ強さで作ると平坦になります。前半は音を抑え、後半で盛り上げると、感情の流れが生まれます。

この差が、バラードの一番の聞かせどころになります。

前半は、ピアノと歌など少ない音で静かに始めます。ドラムを入れないか、入れてもごく薄くします。

後半、最後のサビあたりで、ドラムを厚くし、ストリングスを増やし、音域を広げます。少しずつではなく、はっきり差をつけます。

盛り上げは、音を足すだけではありません。前半でどれだけ抑えたかで、後半の効果が決まります。

静かな場所があるから、盛り上がりが大きく感じられます。最初から全部を出さないことが、後半を生かすコツです。

音を詰めすぎない

静かさに不安を感じて、埋めないようにします。

バラードで初心者がつまずきやすいのが、静かさに不安を感じて音を足しすぎることです。

間が寂しく思えて、すべての小節を音で埋めてしまうと、バラード特有の余韻が消え、ただ音の多いだけの曲になります。

音を足したくなったら、まず本当に必要かを考えます。歌とピアノだけで感情が伝わっているなら、それ以上は足さなくて構いません。

足すとしても、後半の盛り上げまで取っておきます。前半で使い切らないことが大切です。

迷ったら、一度伴奏を減らして、歌とピアノだけで通して聞きます。それで気持ちが動くなら、土台はできています。

書き出して、静かな環境で聞くと、詰めすぎや物足りなさに気づきやすくなります。

直す時も、一度に全部を変えないでください。重いなら低音の長さ、うるさいなら音の数、平坦なら前半と後半の差、というように、気になる場所を一つだけ選んで直します。

バラードは小さな違いが伝わりやすい曲なので、少し変えて聞き返す作業を繰り返すと、静けさと盛り上がりのちょうどよい所が見つかります。仕上げまでの流れは制作工程マップでも確認できます。

短い素材を曲へ広げる

前半の4小節を、後半との差で伸ばします。

4小節や8小節の静かな土台ができたら、曲の形へ広げます。

バラードでは、まったく新しい素材をどんどん足すより、前半の素材をそのまま使い、後半で差をつける形が作りやすいです。同じコードやピアノを、量を変えて二度使います。

たとえば、前半のAメロと同じ伴奏を、後半のサビでは音域を広げ、ストリングスを重ねて厚くします。

メロディの骨は同じでも、支える音の量が変わるだけで、盛り上がって聞こえます。全部を作り直さなくても、曲は前へ進みます。

広げる時も、遅いテンポと間は守ります。長くしたいからと音を詰めると、バラードらしさが消えます。

保存名は、前半だけの版、後半まで作った版のように分けておくと、盛り上げをやりすぎた時に戻せます。最後は通して聞き、前半と後半の差がきちんと出ているかを確かめます。

よくある疑問

バラードのテンポはどのくらいですか

はっきりした決まりはありませんが、ゆっくり歩くより遅いくらいから試すと作りやすいです。まず遅めに設定し、歌がのせやすい速さに調整します。

ドラムは必要ですか

前半はなくても成り立ちます。入れる場合も薄くし、後半の盛り上がりで厚くすると差が出ます。

ピアノとストリングスのどちらから作りますか

まずピアノで和音の芯を作り、後からストリングスで背景を足すと混ざりにくいです。一つの楽器で土台を決めてから重ねます。

静かすぎて物足りません

前半を抑えたぶん、後半でしっかり盛り上げます。物足りなさは全体を上げるのではなく、後半との差で解決します。

無料配布|アンパンマン劇場版楽曲を手がけた作曲家の「制作工程マップ」

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バラードの土台になるコードや歌まわりの作り方を見ておきます。

古賀稔宏のプロフィール写真

プロフィール

古賀 稔宏

ギター、ウクレレ、DTM(Cubase)、作曲技法、音楽理論を指導。14歳でギターを始め、同時に作曲も始める。ポップ、ロック、クラシックの要素を含む楽曲を得意とする。

商業音楽の制作・演奏に携わりながら、初心者が止まりやすい場所を制作工程に沿って整理している。

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