DTMの勉強順番|理論・機材・作曲をどう学ぶか

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
DTMの勉強順番で迷うのは、理論、機材、作曲、録音、ミックスを全部そろえてから作ろうとする時です。どれも大事ですが、最初から同じ重さで学ぶと、覚えることばかり増えて曲が進みません。
順番のこつは、知識を集める順ではなく、作っていて困る順に学ぶことです。先に音を出して短い曲を作り、詰まった場所の知識だけをその都度足していきます。作りながら学ぶほうが、覚えたことが身に残ります。
先に見ること
勉強の順番は、知識の量ではなく、作って困る順に合わせます。
- まず音出しと保存を覚える
- コードとリズムは短い曲で使う
- 理論は困った所だけ最小限に
- 機材は必要になってから足す
先に全部勉強しない
理論書を1冊読み切ってから作る、は続きません。
よくあるつまずきは、理論書を1冊読み終えてから曲を作ろう、と考えることです。読み切る前に力尽きるか、読んでも実際の画面で使えず止まります。
知識は、使う場面とセットにして初めて頭に残ります。だから作りながら学ぶ順番を勧めます。
順番を先に決めるなら、いちばん上に来るのは操作です。
- DAW(音楽制作ソフト)で音を出す
- トラックを作る
- 保存する
- 書き出す。
この4つが動けば、もう曲作りには入れます。理論も機材もミックスも、この土台の上に後から乗せていくものです。
ここで言う操作の土台は、難しいものではありません。トラックを1本足す、音源を選ぶ、範囲を選んで書き出す。
この程度の操作を数回繰り返せば体が覚えます。土台が動くようになってから理論や機材に進むと、学んだことをすぐ試せるので、知識が浮かずに済みます。
作りながら学ぶと、疑問が具体的になります。このコードの次に何を置くと自然か、なぜこの音が濁るのか。
実際に鳴らして生まれた疑問は、答えを調べても忘れにくいです。抽象的なまま覚えた知識より、ずっと使えます。
先に全部を学ぶやり方が続かないのは、知識と手の動きが結びつかないからです。読んだだけの内容は、いざ画面を前にすると思い出せません。
逆に、実際に音を置いて困った時に調べた知識は、その場で使うので手に定着します。学ぶ順番を作る順番に合わせるのは、記憶に残す工夫でもあります。
困った時に呼び出す学び方
作曲・録音・ミックスは、困った時に呼び出します。
学ぶ範囲を困った順に割り当てると、順番は自然に決まります。作曲で手が止まったら、その時にコードやメロディの作り方を調べます。
音がうまく録れなかったら、録音の設定を学びます。聞こえ方が気になったら、ミックスに手をつけます。
この呼び出し方だと、理論・録音・ミックスを並べて同時に勉強せずにすみます。今日の曲で必要になったものだけを拾うので、学ぶ量が増えすぎません。
完成形の小さいゴール、たとえば4小節や8小節を先に決めておくと、そのゴールに要る知識だけを選べます。
困った順に学ぶと、続ける気持ちも保ちやすくなります。今まさに詰まっている場所を解消する知識は、必要性がはっきりしているので頭に入りやすいのです。
逆に、いつ使うか分からない知識を先取りで詰め込むと、覚える負担だけが増えて制作から気持ちが離れます。学びは、渇いた時に飲むほうが吸収されます。
この学び方には、もう一つ良いところがあります。作った曲がそのまま復習になることです。
困って調べて直した箇所は、次に同じような場面が来た時に思い出せます。教材を最初から順に消化していくやり方と違い、自分の曲に紐づいた知識なので忘れにくいのです。
作品が増えるほど、使える引き出しも増えていきます。
理論は最小限から
理論は、選択肢を減らす道具として最小限だけ使います。
音楽理論は、全部を覚えてから作るものではありません。最初に要るのは、使うコードを絞るための最小限だけです。
Cのキーなら、C、Am、Dm、Gあたりの白鍵中心のコードから始めれば、外れた響きになりにくく、迷いも減ります。
理論で手が止まったら、考え込む前にまず鳴らします。理解が浅くても、鳴らした音が気持ちいいか外れているかは耳で判断できます。
なぜそうなるのかは、鳴らして気になった後に調べたほうが早く入ります。理論は正解を出す装置ではなく、候補を減らす道具だと考えると軽くなります。
ダイアトニックやスケールといった言葉も、難しい理論としてではなく、最初に使う音を絞る枠として受け取ると扱いやすいです。4小節で使った分だけ覚えれば十分で、残りは次に必要になった時で構いません。
理論を最小限にする、というのは理論を軽視することではありません。順番の問題です。
最初にコードを鳴らして響きの違いを体で覚えておくと、後で理論書を読んだ時にあの音のことかと腑に落ちます。体験が先、言葉が後。
この順にすると、同じ理論でも理解の深さが変わります。
機材は必要になってから
機材は、制作が止まった場所を解消するために足します。
機材の学びと買い物も、順番の後ろでかまいません。打ち込みだけなら、今のパソコンと付属音源、手持ちのイヤホンで足ります。
新しい機材を先にそろえても、使う場面が来ていなければ、覚える手間が増えるだけです。
MIDIキーボード(つなぐ鍵盤)は、マウス入力が遅く感じてから。オーディオインターフェイス(マイクや楽器をつなぐ機材)は、歌やギターを録る段階になってから。
機材は、制作が止まった場所を解消するために足すものです。止まる前に買うと、どれが自分に要るのか判断できません。
機材の情報も、先に集めすぎないほうがいいです。レビューや比較を読み込むほど目移りして、肝心の制作が止まります。
今の打ち込みで具体的に困った時に、その困りごとを解決する1点だけを調べる。機材の勉強も、作曲や理論と同じで、必要になった順に学ぶのが結局は近道です。
何を、いつ学ぶか
学ぶ項目を、呼び出すきっかけと組にして並べます。
| 学ぶこと | いつ学ぶか | 最初に触る範囲 |
|---|---|---|
| DAW操作 | 最初に | 音出し・保存・書き出し |
| コード | 作曲で困ったら | C・Am・Dm・Gの4つ |
| ドラム | 曲が平坦なら | ドンとタンの置き方 |
| 理論 | 響きに疑問が出たら | キーとスケールの基礎 |
| 録音 | 歌やギターを録る時 | 割らずに録る設定 |
| ミックス | 聞こえ方が気になったら | 音量のバランス |
| 機材 | 手数が足りない時 | 鍵盤や録音機材 |
ミックスは後回しでいい
ミックスを先に学ぶと、作る前に止まりがちです。
順番でとくに後ろに置いてよいのがミックスです。EQやコンプといった調整は、鳴らす音がそろってから効く作業です。
まだ4小節も書き出していない段階で音量やエフェクトを深く学ぶと、肝心の曲作りが始まりません。
ミックスに進むきっかけは、書き出した音を外で聞いて主役が埋もれている、低音が重いと具体的に感じた時です。その一点を直すために必要な知識だけを学べば十分です。
学ぶ順番を作る順番に合わせるほど、覚えたことが次の曲で活きます。音出しから完成までの流れを1枚にまとめた無料の制作工程マップも、学ぶ順の見取り図に使えます。
順番を守るもう一つの利点は、挫折しにくいことです。入門期にミックスや高度な理論から入ると、難しさで嫌になりやすい。
先に音が鳴って曲っぽくなる楽しさを味わっておくと、後の難しい工程も乗り越えやすくなります。学ぶ順番は、続けられるかどうかにも直結します。
難しいことを覚える前に、まず一度でも曲を完成させた経験が、その後の学習を支えてくれます。
よくある疑問
理論とDAW操作はどちらを先に学ぶべきですか
先はDAW操作です。音を出せる状態を作ってから理論を試すと、鳴らした音で確かめながら覚えられます。理論だけを先に読み込むと止まりやすくなります。
音楽理論はどこまで勉強すればいいですか
最初は、使うコードを絞れる最小限で十分です。CキーのC・Am・Dm・Gあたりから始め、響きに疑問が出た所だけ足していけば無理がありません。
機材はいつそろえればいいですか
打ち込みだけなら急ぎません。マウス入力が遅い、歌を録りたい、といった具体的な必要が出た時に、その機材だけを足すのが無駄になりません。
ミックスはいつから学べばいいですか
短い曲を書き出した後で十分です。外で聞いて気になった一点を直すために学ぶと、順番を作る順番に合わせられます。
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