DTM初心者に必要な音楽理論|最初はこれだけでいい

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
「作曲するには音楽理論を全部やらないといけない」と思って、理論書の最初の数ページで止まっていませんか。止まる原因は、覚えるべき量を多く見積もりすぎていることです。最初の1曲に要る理論は、本当にわずかです。
このページでは、どこまで知れば作れるかという最小限のラインを引き、その先にある「今は覚えなくていい理論」を一覧にします。名前だけ知れば十分なものと、後回しでいいものを分けて、安心して作り始められるようにするのが目的です。譜面は出てきません。
先に見ること
最初の1曲に要る理論は「名前だけ知る4つ」。あとは後回しで足ります。
- 名前だけ知ればいいのは、キー、メジャースケール、ダイアトニックコード、王道コード進行
- 中身の並べ方まで覚え込まなくても、表から選んで鳴らせば形になる
- モード、テンションの理屈、複雑な代理コードなどは、丸ごと後回しでいい
- 止まったら、理論を読む前に鳴らして耳で判断する
理論は「どこまで」知れば作れるのか
全部やる必要はありません。要るところと、あとで足すところの線を引きます。
音楽理論には終わりがありません。和声、対位法、譜面の読み書き、無数のスケールやコード。全部を身につけてから作り始めようとすると、開始日は永遠にやって来ません。
ですので最初にやるべきは、勉強を進めることではなく、線を引くことです。要る理論と、あとで足す理論を分けます。
DTMで4小節の曲っぽい音を鳴らすために本当に使うのは、「どの音とコードを選べば大きく外れないか」を教えてくれる部分だけです。それを担うのが、キー、メジャースケール、ダイアトニックコード、王道コード進行の4つ。
しかもこの4つは、深く理解するのではなく、名前と役割をなんとなく知っていれば足ります。
逆に言えば、それ以外は最初の1曲には登場しません。この記事の中心は、その「登場しない側」を具体的に並べて、読まなくていい・覚えなくていいと安心してもらうことにあります。
実際のコードの並べ方そのものはコード進行の作り方に任せ、ここでは知識の取捨選択に絞ります。
名前だけ知ればいい4つ
中身を覚え込むのではなく、何を指す言葉かだけ押さえます。
まず、要る側の4つです。ポイントは、内容を暗記するのではなく、それぞれが何を指す言葉かを知っておけば十分だということです。
表にまとめます。
| 用語 | ひとことでいうと | 最初の関わり方 |
|---|---|---|
| キー | 曲の中心になる音の「家」。まずはCキーだけ | 白鍵だけで作れると知れば十分 |
| メジャースケール | ドレミファソラシのこと | 名前を知るだけ。メロディは白鍵から選ぶ |
| ダイアトニックコード | そのキーで使いやすい7つのコード | 暗記せず、表から選ぶ道具として使う |
| 王道コード進行 | C→Am→Dm→Gなどの定番の並び | 1つ借りて4小節鳴らす |
キーは、カラオケで上げ下げするあのキーと同じで、曲がどの音を中心に回っているかを表します。最初はCキーだけでよく、その理由は白鍵だけで完結するからです。
メジャースケールは、そのCキーで主に使う音、つまりドレミファソラシに理論用語がついただけのものです。新しく覚えることはほとんどありません。
ダイアトニックコードは、無数にあるコードから最初に使う7つを絞ってくれる道具です。難しく暗記するものではなく、選択肢を減らす安全地帯だと考えます。
そして王道コード進行は、その7つの並べ方の定番。名前を知って1つ借りれば、それで最初の土台は完成します。
ここまでが「要る側」で、4つとも名前レベルの理解で先へ進めます。
覚えなくていい理論リスト
理論書に並ぶ大半は、最初の1曲には登場しません。
ここがこのページの本題です。理論書には項目がずらりと並んでいますが、その多くは最初の1曲には要りません。
無駄なわけではなく、出番がもっと先というだけです。代表的なものを、なぜ今いらないかと合わせて並べます。
| 後回しにしていい理論 | なぜ今いらないか | 学びどきの目安 |
|---|---|---|
| モードなどスケールの応用 | Cメジャースケール1本で、明るい曲も切ない曲も作れる | ジャンル特有の色を出したくなってから |
| テンションコードの理屈 | 3つの音のコードだけで曲は成立する | 王道進行の響きが物足りなくなってから |
| 複雑な代理コード・裏コード | 定番の並びで十分に曲らしくなる | いつもの進行に飽きてから |
| 対位法・和声法 | クラシックの作曲規則で、打ち込みポップスには使わない | その様式を書きたくなってから |
| 五線譜の読み書き | ピアノロールは音をブロックで置く画面で、譜面がいらない | 譜面でやり取りする必要が出てから |
| 12キーすべての暗記 | Cキーで数曲作れる。移調機能で全体を上下にずらせる | 他キーの曲を自力で組みたくなってから |
| 耳コピ | 参考にしたい曲はネットのコード譜を見れば足りる | 好きな曲を自力で採譜したくなってから |
この一覧に共通するのは、どれも「なくても4小節は鳴る」という点です。順番が来る前に手を出すと、覚える量ばかり増えて、肝心の曲が1小節も増えません。
用語をたくさん知っているのに作品が増えていない、と感じたら、後回しでいいものに時間を使いすぎているサインです。
特に耳コピは、「できないから自分には向いていない」と早々に止まりやすい場所です。最初の段階で必須にする必要はありません。
好きな曲の構造を知りたければ、コード譜を見て打ち込むだけでも十分に勉強になります。ここに挙げた項目は、消してしまうのではなく、いったん脇へ置いておくものだと考えてください。
なぜ後回しでいいと言い切れるのか
理由は、理論を知らなくても、鳴らした音は耳で判断できるからです。
これだけ後回しにして大丈夫なのか、と不安になるかもしれません。言い切れる理由ははっきりしています。
理論の理解がまだ浅くても、実際に鳴らした音の良し悪しは、耳で判断できるからです。DTMは、頭の中で正解を組み立てなくても、置いて、鳴らして、聞いて選べます。
たとえばコードを1つ置いてみて、明るいか暗いか、落ち着くか落ち着かないかは、理論の名前を知らなくても聞けば分かります。合わないと感じたら、隣の白鍵へずらして鳴らし直せばいい。
この「先に鳴らして、耳で選ぶ」進め方だと、理論が追いついていなくても曲は前へ進みます。正解を先に探すより、鳴らした音を聞いて決めるほうが、結果的に早く形になります。
後回しにした理論は、この試行のどこかで「なぜこう聞こえるのか」と気になった時に、その項目だけを調べれば身につきます。疑問が先にあって理論が後から来るので、調べたことが必ずその日の曲に反映されます。
順番が逆だと、覚えた知識が宙に浮いたままになりがちです。
理論で手が止まったときの一手
読むのをやめて、鳴らす側へ切り替えるだけです。
それでも理論の前で固まってしまう日は、やることを1つに絞ります。今日、Cキーのダイアトニックコードから4小節を鳴らすこと。
これだけで十分です。並べ方に迷ったら、王道の定番を1つそのまま借りれば、考え込まずに音が出せます。
読む作業と鳴らす作業は、別のスイッチです。理論書を開いて分からない言葉が出てきたら、いったん閉じて、DAWで音を置く側へ切り替えます。
鳴らした瞬間に、理論は「覚えるべき科目」から「必要な時に引く道具」に変わります。この切り替えができると、止まっていた時間が制作の時間に変わります。
止まりやすい人ほど、知識を完璧にしてから始めようとします。でも、作って、詰まって、その場所だけ調べて、また作る。この小さな循環の中でしか、理論は身につきません。
まずは4小節を鳴らして保存する。その土台にドラムやメロディを重ねて1曲へ育てていく流れは、無料の制作工程マップに1枚でまとめています。
よくある疑問
作曲に音楽理論はどこまで必要ですか
キー、メジャースケール、ダイアトニックコード、王道コード進行の4つを、名前と役割のレベルで知っていれば最初の曲は作れます。並べ方の中身まで踏み込まなくても、表から選んで鳴らせば形になります。残りの理論は、作りながら必要になった時に足せば間に合います。
覚えなくていい音楽理論はどれですか
モードなどのスケールの応用、テンションコードの理屈、複雑な代理コード、対位法や和声法、五線譜の読み書き、12キーの暗記、耳コピは、最初の1曲には要りません。どれも、なくても4小節は鳴ります。物足りなさを感じた項目だけ、その時に調べれば十分です。
分厚い理論書は読んでおくべきですか
最初から通読する必要はありません。教科書は網羅のために書かれていて、最初の曲に不要な章も並んでいます。キーとダイアトニックコードのところだけ拾い読みして、詰まった時に該当箇所を引く使い方が向いています。
理論が分からなくて手が止まります。どうすればいいですか
正解を先に探すより、先に鳴らして耳で判断します。理論の理解が浅くても、短いコードを鳴らせば良し悪しは分かります。今日Cキーのコードを4小節鳴らすと、理論が覚える科目から使う道具に変わります。
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