DTM初心者の最初の1ヶ月プラン

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
DTMを始めた最初の1ヶ月は、たくさんの機能を覚える期間ではありません。音を出し、短く作り、書き出して聞く。
この一連の流れに、体を慣らす期間です。
やることを詰め込みすぎると、初日で息切れします。そこで、4つの週に分けて目標を置きます。
1週目は環境づくりと音出し、2週目はコードとドラムで8小節、3週目はメロディ、4週目でワンコーラスまで。週ごとに区切ると、無理なく前へ進めます。
先に見ること
最初の1ヶ月は、完成度より「毎週ひとつ前に進む」ことを目標にします。
- 1週目は環境づくりと、DAWから音を出すこと
- 2週目はコードとドラムで8小節の土台を作る
- 3週目はその上にメロディを乗せる
- 4週目でイントロからサビまでのワンコーラスを書き出す
1週目 環境づくりと音出し
曲を作る前に、音が出て戻れる状態を作ります。
1週目のゴールは、曲を作ることではありません。DAWから自分の思ったタイミングで音が出て、保存して、また開けること。
この地味な確認が、後のすべての土台になります。ここでつまずいたまま先へ行くと、2週目以降がずっと苦しくなります。
やることは3つです。DAWをインストールして起動する。
ソフト音源のピアノを1トラック立ち上げて、鍵盤やマウスで音を鳴らす。プロジェクトを保存して、一度閉じてからもう一度開く。
ここまでできれば、道具としての最低限は動いています。1週目でここに慣れておくと、次の週から作曲そのものに集中できます。
音が出ない時は、故障ではなく、たいてい音の出口の設定です。DAWのオーディオ設定を開き、出力先が今使っているヘッドホンやスピーカーになっているかを確認します。
パソコン内蔵の音源で始めるなら、専用の機材はまだ要りません。1週目のうちにここが通れば、上出来です。
この段階でつまずいても、才能とは何の関係もありません。ほとんどが設定を一つ直せば解決します。
2週目 コードとドラムで8小節
土台は、まず鳴らして作ります。
2週目は、短い土台を作ります。目標は8小節。
まずコードから置きます。難しい理論は、まだ要りません。
レッスンでも最初の1曲目は、CとAmとDmとGを4小節に並べるところから始めるよう勧めています。正解を覚えるより、まず鳴らして曲っぽい土台を作るのが先です。
コードが4小節できたら、2回繰り返して8小節にします。次にドラムです。
ドラムは、譜面や名前から入るより、口で言えるリズムから入ると止まりません。「ドン、タン、ドンドン、タン」と口で言えたら、ドンをキック、タンをスネアに置き換えます。
ハイハットは8分で細かく刻むだけでも形になります。
コードとドラムが8小節そろって鳴れば、2週目は達成です。うまくハマらなくても、直すのは来週で構いません。
土台が鳴っている状態を、まず手に入れます。
ドラムの入れ方で迷ったら、まずキックとスネアだけにします。1拍目と3拍目にキック、2拍目と4拍目にスネア。
これだけで曲の時間が進み始めます。物足りなければ、そこにハイハットを足す。
最初から全部の楽器を鳴らそうとせず、骨になる2つから積むと、崩れても原因がすぐ分かります。この「少なく置いてから足す」順番は、この先どんなジャンルを作る時にも使えます。
3週目 メロディを乗せる
弾けなくても、口ずさめれば打ち込めます。
3週目は、土台の上にメロディを乗せます。ここで楽器がうまく弾けなくても問題ありません。
口ずさめるフレーズがあれば、それは打ち込めます。スマホで鼻歌を録音して、その上がり下がりをピアノロールでなぞるだけでも、立派なメロディになります。
メロディが浮かばない時は、コードの構成音から音を選びます。Cのコードならド、ミ、ソのどれかから始めると、外れた感じになりにくいです。
同じ音を並べるだけでも、下のコードが変わればメロディは違って聞こえます。まずは無理に動かさず、コードに合う音を置いてみます。
メロディが単調に感じる時は、入る場所を変えてみます。1拍目からきっちり始めるのか、少し待って半拍後ろから入るのか。
同じ音の並びでも、入り方が変わると印象がずいぶん動きます。音を増やすより先に、タイミングをずらすほうが手軽で効果が出やすいです。
3週目の終わりに、8小節のコードとドラムの上でメロディが流れれば、曲の骨組みは完成にかなり近づきます。ここまでで、作曲の主要な工程を一通り触ったことになります。
4週目 ワンコーラスを完成させる
強弱をつけて、90秒でも1本書き出します。
4週目は、ここまでの8小節をワンコーラスへ広げます。ワンコーラスとは、イントロ、Aメロ、サビあたりまでの、曲の最初のひとかたまりです。
8小節をそのまま貼り足すのではなく、イントロは音を減らして始め、サビで音を増やす。この強弱をつけるだけで、ぐっと曲らしくなります。
作業を始める前に、今日はどこまで作るかという小さなゴールを決めておきます。イントロを作る、サビの音を増やす、と一つに絞ると、細部で迷って時間だけが過ぎるのを防げます。
ゴールが見えないまま全体を触ると、作業は増えても曲は進みません。
最後に、WAVで書き出します。最初の1ヶ月の締めくくりは、たとえ90秒でも、頭から終わりまで再生できる音源を1本残すことです。
上手か下手かは問いません。1本の完成を通した経験があると、次の曲はずっと軽く感じられます。
この90秒は最終ゴールではなく、フルコーラスへ広げる前に、入口、盛り上がり、終わり方を小さく確かめる通過点です。この流れをどう全曲へ広げるかは、下の制作工程マップで確かめられます。
無理のない配分にする
遅れても、順番だけは飛ばしません。
無理のない配分にするコツは、1回の時間を短く固定することです。1日30分を週に3、4回。
これでも1ヶ月あれば、環境づくりからワンコーラスまで十分に届きます。毎日長時間やろうとすると、多くの人は数日で燃え尽きます。
短く、何度も戻るほうが結局遠くまで行けます。1回を軽くしておくと、疲れている日でもDAWを開くハードルが下がります。
計画どおりに進まない週があっても、失敗ではありません。2週目のドラムに手こずったら、その週をもう一度2週目として使えばいいだけです。
大事なのは、遅れても順番を飛ばさないこと。コードとドラムの土台がないままメロディへ進むと、後で作り直しになります。
1ヶ月で全部が完璧になる必要はありません。骨組みを一度通せれば十分です。
機材やソフトを増やしたくなるのも、この時期です。ただ、最初の1ヶ月は買い足しを我慢したほうが、かえって早く進みます。
新しい道具が増えるほど、覚える操作も増え、肝心の曲作りから気がそれます。本当に足りないものは、ワンコーラスを一度書き出してみて初めて分かります。
何が不足しているかを実感してから、月末に一つだけ検討する。この順番なら、無駄な買い物を避けられます。
4週間の到達点
各週で、ここまで来たら次の週へ進みます。
| 週 | 目標 | 達成の目安 |
|---|---|---|
| 1週目 | 環境づくりと音出し | 音が出て、保存して、開き直せる |
| 2週目 | コードとドラム | 8小節の土台が鳴る |
| 3週目 | メロディ | 土台の上に主役の旋律が流れる |
| 4週目 | ワンコーラス | 90秒前後の音源を書き出せる |
よくある疑問
1ヶ月で1曲作れますか
短い曲なら十分可能です。フルコーラスでなくても、90秒ほどのワンコーラスを1本書き出せれば、最初の1ヶ月としては上出来です。長い曲より短い完成を目指してください。
毎日やる必要がありますか
毎日でなくても構いません。1日30分を週に3、4回でも、1ヶ月あればワンコーラスまで届きます。同じファイルに戻る回数を保つことが大切です。
週の目標が達成できませんでした
その週をもう一度同じ目標に使ってください。遅れても順番を飛ばさないことが大切です。土台がないまま先へ進むと、後で作り直しになります。
途中で飽きたらどうしますか
別の曲を始めても構いませんが、今の8小節は書き出してから移ってください。短くても完成の音源が残れば、それが次の練習の材料になります。
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