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古賀稔宏の作曲ノート作曲・編曲家のDTM制作ノート

DTM独学で挫折しない考え方

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作曲・編曲家 古賀 稔宏

「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。

独学でDTMを始めると、教える人も締め切りもいません。自由な反面、うまくいかない時に「これで合っているのか」を確かめる相手がいません。独学が挫折しやすいのは、やる気の問題ではなく、この確かめられなさが少しずつ積み重なるからです。

折れずに続けるコツは、根性ではありません。完璧を目指さない、人と比べない、毎日短く触る、分からない所は飛ばす。この4つを先に決めておくと、独学でありがちな行き止まりを、その手前で避けられます。

先に見ること

独学で挫折しないために、完璧さより「毎日手が動く状態」を守ります。

  • 完璧を目指さず、下手なまま先へ進める
  • 人の完成曲と自分の途中を比べない
  • 1回を短くして、毎日DAWに戻る
  • 分からない所は飛ばし、後でまとめて調べる

独学が挫折しやすい理由

折れるのは、進んでいる感じが消えた瞬間です。

独学の挫折は、たいてい特定の瞬間に起きます。

  • 作った曲がプロと比べて下手に聞こえた時。
  • 3時間かけたのに完成しなかった時。
  • 専門用語が分からず、調べているうちに何をしていたか忘れた時。

どれにも共通しているのは、「進んでいる感じ」が消えた瞬間だ、という点です。

教室なら、講師が「そこまでできれば十分」と言ってくれます。独学では、この「進んでいる感じ」を自分で作らないと誰も与えてくれません。

だから、大きな完成を待つのではなく、小さく手が動いた証拠を毎回残します。4小節でも書き出しておけば、昨日より進んだことが耳と目でわかります。

その小さな達成感が、次にDAWを開く理由になります。

挫折を防ぐ設計は、意志を強くすることではありません。折れる瞬間があらかじめ分かっているなら、その瞬間の対処を先に決めておく。

これから、その具体的な決め方を工程に沿って見ていきます。

もう一つ、独学だからといって、分からないことを全部自力で解く必要はありません。詰まった時に検索したり、無料の解説を見たりするのは、独学の中の当たり前の行動です。

誰にも聞かず一人で抱え込むことが独学ではありません。むしろ、調べる相手がいない分、外の情報をうまく取りに行けるかどうかが、続くかどうかを分けます。

完璧を目指さない

上限のない基準は、達成できる日が来ません。

独学で最初に手放したほうがいいのが、完璧主義です。1曲目からプロのような音を目指すと、コード一つ、音色一つに何十分もかかり、やがて手が止まります。

完成の基準を「直す場所が一つもなくなること」に置くと、その基準を満たす日は永遠に来ません。プロの現場でも、直したい場所を残したまま曲は世に出ています。

代わりに、下手なまま先へ進めます。仮のピアノの音でコードを置き、仮のドラムを重ね、気に入らなくても次の工程へ行く。

粗いまま最後まで一度通したほうが、どこが弱いのかが全体として見えます。細部で立ち止まり続けるより、まず一周する。これが独学を止めない一番のコツです。

気に入らない部分は、消すのではなくメモに残します。「サビのメロディが単調」と書いておけば、次の曲の課題になります。

今の曲で全部を解決しようとしないことが、独学では長続きの条件になります。一つの曲に完璧を求めるより、粗い曲を何本も通したほうが、結局は上手くなります。

分からない所は飛ばして進む

止まって調べるより、鳴らして耳で判断します。

分からない所は、飛ばして進みます。これは手抜きではなく、独学で手を止めないための積極的な判断です。

レッスンでも、理論の理解が浅いうちは、先に音を鳴らして耳で判断するよう勧めています。正解を先に探すより、鳴らした音を聞いて進めるほうが、結果として曲になりやすいからです。

たとえばコード進行の理屈が分からなくても、CとAmとDmとGを4小節に並べれば、とりあえず曲っぽい土台は鳴ります。理屈は、その響きを気に入ってから後で調べても遅くありません。

分からない単語が出るたびに検索へ逃げると、いつの間にかDAWから離れ、動画を見て一日が終わります。

そこで、疑問はその場で解決せず、メモに一行書き留めます。「ダイアトニックって何」「なぜGの次にCが落ち着くのか」。

作業が一区切りしてから、メモをまとめて調べる。飛ばすことと、いい加減にやることは違います。

飛ばした場所を記録しておけば、後から確実に回収できます。むしろ、実際に曲で困ってから調べたほうが、答えがすっと頭に入ります。

毎日短く触る

続く人の差は、長さではなく頻度です。

独学が続く人と途切れる人の差は、1回の長さではなく頻度です。週末に3時間だけ触る人より、毎日10分でもDAWを開く人のほうが、操作を忘れず、曲への感覚も切れません。

DTMは、触った時間で慣れていく楽器なので、間隔が空くほど毎回のリハビリに時間を取られます。

1回を短く区切るために、終わる前に「次にやること」を一行だけメモしておきます。「2番のドラムを作る」とだけ書いて閉じれば、翌日は迷わず再開できます。

独学でありがちな「どこまでやったか思い出せない」が、この一行でかなり減ります。再開のハードルが下がると、間隔も空きにくくなります。

調子が出ない日に無理をしないことも、頻度を保つコツです。作れない日は、昨日の音源を再生するだけ、保存するだけでも構いません。

大事なのは、DAWを開かないゼロの日を作らないことです。

短く触る習慣は、生活の中の決まった時間にひっかけると続きます。朝のコーヒーの間に昨日の続きを聞く、寝る前に10分だけドラムを足す、といった具合です。

独学ではやる気の波が必ず来ますが、時間で決めておけば、気分が乗らない日も手が動きます。やる気に頼らない仕組みを先に作るほうが、意志の力で乗り切ろうとするより、はるかに長く続きます。

折れやすい瞬間の対処

折れる場面ごとに、次の一手を決めておきます。

折れやすい瞬間ごとに、対処をあらかじめ決めておきます。プロの曲と比べて落ち込んだら、比較をやめて「イントロ何秒、楽器何本」と数える聞き方に切り替えます。

数え始めると、落ち込む代わりに観察が始まります。長時間やって完成しなかった日は、その日のうちに一度書き出して、進んだ証拠だけは手元に残します。

教材を見ても手が動かない時は、教材を閉じます。そして、今作っている4小節に必要な一点だけを調べます。

独学では、インプットが増えるほど作れなくなる時期があります。そういう時は、学ぶ量を減らして、作る量を増やすほうへ振ります。

それでも気持ちが重い日は、作らなくて構いません。DAWを開いて昨日の音源を聞くだけ、保存するだけでいい。

ゼロの日を作らないことが、独学では一番効きます。正しい順番さえ分かれば、独学でも一人で十分に前へ進めます。

何をどの順で触るか迷った時は、下の制作工程マップを地図にしてください。

独学で折れる時と続く時

左の対応に心当たりがあれば、右へ変えます。

場面独学で折れる対応独学が続く対応
下手に聞こえるプロと比べて手を止める先週の自分と比べ、数える聞き方をする
完成しない完璧になるまで直し続ける4小節で区切って書き出す
専門用語が出たその場で延々と検索するメモに残し、一区切り後にまとめて調べる
やる気が出ない何もしない日にする開いて聞くだけ、保存だけでも触る
再開できないどこまでやったか忘れる終わる前に次の一手を一行メモ

よくある疑問

独学だと挫折しそうで不安です

目標を1曲完成から4小節の書き出しまで下げてください。小さくても完成の証拠が毎回残ると、進んでいる実感が続き、挫折しにくくなります。

教材をたくさん見ても作れません

今作っている4小節に必要な内容だけに絞ってください。独学では情報量が多いほど手が止まります。分からない単語はメモに残し、作業が一区切りしてからまとめて調べます。

分からない所を飛ばして大丈夫ですか

大丈夫です。分からない所で止まるより、仮の音で先へ進めて一周したほうが、全体のどこが弱いか見えます。理屈は、その音を気に入ってから調べても間に合います。

何から再開すればいいですか

前回のファイルを開き、音が出るか、保存できるか、書き出せるかを確認します。終わる前に次の一手を一行メモしておくと、独学でも迷わず戻れます。

無料配布|アンパンマン劇場版楽曲を手がけた作曲家の「制作工程マップ」

音出し、コード、ドラム、メロディ、アレンジ、フルコーラス完成までの流れを1枚にまとめた無料マップです。登録するとその場でご覧いただけます。

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古賀稔宏のプロフィール写真

プロフィール

古賀 稔宏

ギター、ウクレレ、DTM(Cubase)、作曲技法、音楽理論を指導。14歳でギターを始め、同時に作曲も始める。ポップ、ロック、クラシックの要素を含む楽曲を得意とする。

商業音楽の制作・演奏に携わりながら、初心者が止まりやすい場所を制作工程に沿って整理している。