本文へスキップ
古賀稔宏の作曲ノート作曲・編曲家のDTM制作ノート

VSTプラグインとは

古賀稔宏のプロフィール写真

作曲・編曲家 古賀 稔宏

「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。

プラグインは、DAWに後から差し込んで機能を増やす小さなソフトです。そしてVSTは、その差し込み口の形を決めた規格の名前です。

家電のプラグとコンセントの関係を思い浮かべてください。コンセントの形が国ごとに決まっているから、どのメーカーの家電でも同じ壁の穴に挿せます。

VSTという共通の形があるから、世界中のメーカーが作った音源やエフェクトを、CubaseでもStudio Oneでも同じように差し込めるわけです。

「VST」「VSTi」「プラグイン」と似た言葉が並ぶせいで、初心者には壁に見えやすい用語ですが、仕組みは差し込み口の話にすぎません。

ここでは、プラグインの2つの種類、手に入れてからDAWで使えるようになるまでの流れ、そして入れたのに出てこない時の確認場所まで整理します。

先に見ること

VSTは「プラグインの差し込み口の規格」です。

  • 種類は音を出す音源と、音を加工するエフェクトの2つ
  • 使えるまでの流れは、入手、インストール、DAWのスキャンの3段階
  • 最初はDAW付属で足りる。集めすぎは制作を止める
  • 出てこない時はビット数と対応規格とフォルダを見る

VSTは差し込み口の規格

ソフトの名前ではなく、形の取り決めです。

VSTはVirtual Studio Technologyの略で、Cubaseの開発元であるSteinberg社が作った規格です。規格というのは「この形で作れば、対応するDAWに差し込める」という取り決めのこと。

VST自体は音を出しません。音を出すのは、その規格に沿って作られた個々のプラグインです。

だから「VSTを買う」という言い方は、正確には「VST規格で作られたプラグインを買う」という意味になります。

製品ページに書いてあるVST対応という表記は、ゲームソフトのパッケージにある対応機種の表示と同じ役割です。

差し込み口の規格は、VSTの他にもあります。Macに標準の音楽ソフトが使うAU(Audio Units)、Pro Toolsが使うAAXなどです。

多くのプラグインは複数の規格に同時対応して売られているので、普段は意識しなくて済みますが、「対応規格の一覧に自分のDAWの差し込み口が入っているか」は、ダウンロードの前に一度だけ見る癖を付けてください。

なお、VSTには世代があり、現在の主流はVST3です。古い配布物にはVST2だけのものも残っていて、これが後述の「入れたのに出てこない」の原因になることがあります。

音源とエフェクト、2つの種類

音を「出す」か「加工する」かで分かれます。

プラグインの中身は、大きく2種類に分かれます。1つ目はインストゥルメント、つまり音源です

ピアノ、ドラム、シンセサイザーなどの楽器そのもので、MIDIの打ち込みを受け取って音を出します。VSTインストゥルメントを略してVSTiと表記されることもあります。

楽器を持っていなくても、音源を立ち上げれば生々しいドラムの音で打ち込める。DTMの楽しさの半分はここにあります。

2つ目はエフェクトです。こちらは自分では音を出さず、通ってきた音を加工します。

お風呂場のような響きを付けるリバーブ、音量のデコボコをならすコンプレッサー、特定の音域を持ち上げたり削ったりするEQなどが代表です。カメラアプリのフィルターのように、素材の後から質感を変える道具だと考えると近いです。

比べる点インストゥルメント(音源)エフェクト
役割音を出す通った音を加工する
代表例ピアノ音源、ドラム音源、シンセリバーブ、EQ、コンプレッサー
立ち上げる場所インストゥルメントトラックトラックのインサート欄
入力するものMIDIの演奏情報すでに鳴っている音

この区別は、立ち上げる場所の違いに直結します。音源はトラックとして立ち上げ、エフェクトは既存のトラックに挿す

ダウンロードしたプラグインがどちらなのかを知らないと、探す場所から間違えることになるので、入手の段階で必ず確認しておきましょう。

入手からDAWで使えるまで

流れは3段階。スキャンまでがワンセットです。

プラグインが使えるようになるまでの流れは、入手、インストール、スキャンの3段階です。

スマホアプリと違って、入れた瞬間に使えるわけではないところが最初のつまずきどころです。

入手は、メーカーの公式サイトからが基本です。無料のものでもメールアドレスの登録や専用のダウンロードアプリが必要な場合があります。

この時、WindowsかMacか、そして対応規格を確認してから落とします。

インストールは、ダウンロードしたインストーラーを実行するだけのことが多いです。

途中でインストール先やVST2/VST3の選択を聞かれたら、迷ったら初期設定のまま進めて構いません。初期設定の場所は、DAWが最初から探しに行く場所だからです。

最後がスキャンです。DAWは起動時に決まったフォルダを見回って、そこにあるプラグインを一覧に登録します。

インストール後にDAWを再起動するか、プラグインマネージャーなどの管理画面から再スキャンを実行すると、一覧に新しい名前が現れます。ここまで来て、ようやくトラックから呼び出せる状態になります。

入れすぎという落とし穴

数がそろうことと、曲が進むことは別です。

無料プラグインの紹介記事や動画を見ていると、「とりあえず全部入れておこう」という気持ちになります。ここに落とし穴があります。

50個の音源を並べても、曲が50倍速く完成することはありません。むしろ、音色を選ぶ画面で迷う時間が増え、起動時のスキャンは遅くなり、どれを試したかも分からなくなります。

レッスンで一貫して使っている判断基準は、機材や道具を増やす前に「音が鳴る、録音できる、再生できる、保存できる」という制作が止まらない状態を先に作る、というものです。

高価なプラグインを最初からそろえる必要はありません。プラグイン集めはこの状態ができてから、それも1曲作って足りなかったものだけを足します。

足す時のおすすめは、1回に1つだけ入れて、その日のうちに4小節でも鳴らしてみることです。

使った感触が残っているうちに、残すか消すかを決められます。まとめて10個入れると、この判断ができません。

「今のDAWに最初から入っている音源とエフェクトを全部把握している人」は、実は中級者にもほとんどいません。付属の道具を先に触り切るほうが、無料の何かを探し回るより、たいてい早く曲になります。

出てこない時に見る場所

原因のほとんどは、形が合っていないか、場所が違うかです。

インストールは成功したはずなのに、DAWの一覧に出てこない。この時に見る場所は、順番に3つです。

1つ目はビット数です。今のDAWはほぼ64bitで動いていて、64bitのDAWは原則として32bitのプラグインを読み込めません

何年も前に配布が止まった無料プラグインを入れた時に起きやすい症状です。ダウンロードページに32bitとだけ書かれていたら、そのプラグインは基本的にあきらめて、代わりを探すほうが早いです。

2つ目は対応規格です。VST2までしか対応していない古いプラグインは、VST3のみを読むDAWには現れません。

逆に、AU版だけを入れてWindowsのDAWで探しているというような、規格の取り違えもここに含まれます。インストーラーがどの規格の版を入れたのかを、もう一度確認してください。

3つ目はフォルダです。インストール先を手動で変えた場合、DAWのスキャン対象から外れていることがあります。

DAWの設定にあるプラグインのパス(探しに行くフォルダの一覧)に、インストール先が含まれているかを見て、含まれていなければ追加して再スキャンします。

この3つで大半は解決します。どれでもなければ、DAW名とプラグイン名を並べて検索すると、同じ組み合わせの事例が見つかることが多いです。

闇雲に入れ直す前に、まず形と場所。この順番を覚えておいてください。

よくある疑問

VSTとは何ですか

DAWに音源やエフェクトを後から追加するための、プラグインの共通規格です。この規格に対応したDAWなら、メーカーが違っても同じプラグインを差し込んで使えます。

VSTプラグインにはどんな種類がありますか

大きく分けて2種類です。ピアノやドラムの音を出すインストゥルメント(音源)と、リバーブやEQのように音を加工するエフェクトです。

無料のプラグインだけでも曲は作れますか

作れます。まずDAW付属の音源とエフェクトで1曲完成させて、足りないと感じたものだけを買い足す順番で十分です。

インストールしたのにDAWに表示されません

インストール先のフォルダがDAWのスキャン対象か、プラグインとDAWのビット数(32bit/64bit)や対応規格(VST2/VST3/AUなど)が合っているかを確認します。

無料配布|アンパンマン劇場版楽曲を手がけた作曲家の「制作工程マップ」

音出し、コード、ドラム、メロディ、アレンジ、フルコーラス完成までの流れを1枚にまとめた無料マップです。登録するとその場でご覧いただけます。

次に進む記事

プラグインの仕組みが分かったら、道具集めより先に1曲を進める工程へ戻ります。

古賀稔宏のプロフィール写真

プロフィール

古賀 稔宏

ギター、ウクレレ、DTM(Cubase)、作曲技法、音楽理論を指導。14歳でギターを始め、同時に作曲も始める。ポップ、ロック、クラシックの要素を含む楽曲を得意とする。

商業音楽の制作・演奏に携わりながら、初心者が止まりやすい場所を制作工程に沿って整理している。