DTMを始めたいと思ったら最初にやること

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
DTMを始めたい。その気持ちが一番強い今日のうちに、やってほしいことは一つだけです。
DAW(音楽制作ソフト)を1つパソコンに入れて、音を鳴らす。ここまで進めば、あなたはもうDTMを始めた人です。
機材をそろえるのも、理論を覚えるのも、後で構いません。
最初の関門は買い物の正解ではなく、画面から音が出る体験にたどり着けるかどうかです。まずはそこだけを目指します。
先に見ること
始めたい日にやるのは、DAWを1つ入れて音を鳴らすことだけです。
- 無料のDAWを1つ選んで入れる
- ピアノの音を1つ鳴らす
- 鳴ったら名前を付けて保存する
- 機材の買い足しは後回しにする
迷わずDAWを1つ入れる
比べる時間より、1つ入れて開く時間のほうが役に立ちます。
どのDAWがいいか、という比較でつまずく人はとても多いです。無料でも有料でも、最初の1本は合わなければ後で変えられる道具です。
始めたい今日の目的は、最良の1本を選び切ることではなく、開いて触れる1本を手元に置くことです。
DAWを1つ選ぶ基準は、機能の多さではありません。音を出す、保存する、書き出す。この3つがきちんと動くかどうかだけを見れば十分です。
入門期に使う機能はごくわずかで、豪華な機能の大半は当分出番がありません。
MacならGarageBandが最初から入っています。Windowsなら無料で使えるDAWがいくつもあります。
まずは公式サイトから入手し、対応しているOSを確認してインストールします。ここまでで、始めるための道具はそろいました。
有料のDAWをいきなり買う必要もありません。最初は無料のものを1つ入れて、操作に慣れてから乗り換えを考えれば十分です。
プロが使う定番のソフトも、入門者がすぐに全機能を使うわけではありません。始めたい今日は、手に入る1本で音を触ることのほうが、比較記事を10本読むより先に進みます。
音が鳴れば、もう始まっている
画面からピアノが1音鳴れば、それがスタート地点です。
DAWを開いたら、ソフト音源のピアノを1つ選び、画面の鍵盤かマウスで1音鳴らしてみます。ドでもどの音でも構いません。
イヤホンかスピーカーから音が返ってきたら、それが最初の一歩です。理屈より先に、音が出た事実がそのまま自信になります。
もし音が鳴らないなら、故障ではなくたいてい出力先の設定です。
パソコン本体のスピーカーなのか、挿しているイヤホンなのか、音の出口の指定がずれているだけのことがほとんどです。ソフトのオーディオ設定で出口を選び直せば鳴ります。
制作の現場でも、最初にやるのは音の通り道の確認です。音が出る状態を先に作ってから中身に進むと、後で変な音になった時に設定のせいか作り方のせいかを切り分けられます。
音が鳴ったら、まだ何も作っていなくても一度名前を付けて保存しておきます。
音を鳴らす場所は、多くのDAWでピアノロールと呼ばれる画面です。横が時間、縦が音の高さを表す方眼のような画面で、四角を1つ置くと1つの音になります。
楽譜が読めなくても、置いた四角を再生すれば音が出るので、始めたばかりでも直感で扱えます。まずはこの画面に四角を1つ置いて鳴らすことから慣れていきます。
お金をかけずに試してから決める
無料で試せば、本当に買うべきものが後から見えます。
始めたいと思った勢いで、高いDAWや音源まで一気に調べる必要はありません。今のパソコンに無料のDAWを入れれば、音を出して短く打ち込むところまでは十分に試せます。
お金を使うのは、無料で触ってみて「ここが足りない」と具体的に感じてからで遅くありません。
無料で試す期間は、自分がDTMを続けられそうかを確かめる時間でもあります。毎日少し開きたくなるなら、その時に有料版や音源へ進めばよいのです。
触る前に理想の環境をそろえてしまうと、道具は立派なのに一度も曲を作っていない、という状態になりがちです。
無料の道具だけでも、コードを並べ、ドラムを置き、短い音源を書き出すところまでは進めます。足りないと感じるのはたいてい音の豪華さで、曲を組み立てる練習そのものは無料で十分にできます。
まずは0円の範囲で一周してみて、続けられそうだと分かってから、必要な道具を1つずつ足していくのが安全です。
体験版という選択肢もあります。有料DAWの多くは、期間や機能に制限のあるお試し版を配っています。
買う前に操作の感触を確かめられるので、いきなり全額を払う必要はありません。無料のものと体験版をいくつか触ってみて、画面が見やすい、操作が分かりやすいと感じた1本を選べば、始めた後の迷いが減ります。
機材を買うのは後でいい
MIDIキーボードもマイクも、今日は要りません。
DTMを始めるには何を買えばいいか、を先に決めようとすると、それだけで疲れてしまいます。
最初の音出しから短い打ち込みまでは、パソコンと今使っているイヤホンだけで回せます。入力はマウスで足ります。
MIDIキーボード(パソコンにつなぐ鍵盤)は、頭に浮かんだフレーズを外へ出しやすくする道具です。マウス入力が遅くてもどかしいと感じ始めたら、その時が買い時です。
マイクやオーディオインターフェイス(マイクや楽器をつなぐ機材)は、歌やギターを録る段階になってから必要になります。
道具は、制作が止まった場所を解消するために買うものです。
まだ何も作っていない初日には、どこで止まるかが見えていません。買い物は、止まる場所が見えてからのほうが失敗しません。
もう一つ覚えておきたいのは、最初にそろえた機材ほど使わずに眠りやすいことです。憧れで買った鍵盤やマイクが、箱のまま部屋の隅に残る、というのはよくある話です。
今の自分が本当に困っている作業は何か。そこが見えてから買えば、道具は毎日使う相棒になります。
始める前の不安と、その答え
始める前に浮かぶ不安は、たいてい先に答えが決まっています。
| 始める前の不安 | 実際のところ | 今日やること |
|---|---|---|
| お金がかかりそう | 無料DAWと手持ちのイヤホンで足りる | 無料のDAWを1つ入れる |
| 楽器が弾けない | コードもドラムもマウスで置ける | ピアノを1音マウスで鳴らす |
| 才能がなさそう | 最初に要るのは才能より続ける仕組み | 短くていいので毎日開く |
| パソコンが心配 | 短い曲なら普通のパソコンで動く | まず音が鳴るかを試す |
| 続けられるか不安 | 完成でなく音が鳴る体験から始める | 4小節だけ作って保存する |
やめない人になる小さなコツ
始めた気持ちを、明日につなぐ工夫です。
DTMは、ソフトを持っていれば勝手に曲ができるものではありません。楽器と同じで、触った時間のぶんだけ手が慣れていきます。
1日5分でも、DAWを開いて昨日の音を聞き返すことは立派な練習です。長さより、開いた回数のほうが効いてきます。
続けるコツは、最初のゴールを小さく置くことです。1曲の完成を初日の目標にすると重すぎます。
今日はピアノを1音鳴らす、明日はコードを4つ並べる、というくらいの刻みで十分です。自分のパソコンから曲っぽい音が鳴る体験さえ作れれば、次に何を調べればいいかも見えてきます。
何を何日目にやるかを通しで整理しておくと、始めたその日から迷いません。音出しから曲の完成までの流れを1枚にまとめた無料の制作工程マップも用意しているので、次の一歩に使ってください。
もし三日で開かなくなっても、失敗ではありません。作った4小節が保存してあれば、いつでもそこから再開できます。
始めたい気持ちがまた戻ってきた時に、ゼロからではなく続きから触れる。その状態を今日のうちに作っておくことが、遠回りに見えて一番の近道です。
よくある疑問
DTMを始めるのにいくらかかりますか
パソコンがあれば、DAWもイヤホンも手持ちで0円から始められます。有料の道具は、無料で試して足りないと感じてから足せば十分です。
どのDAWから始めればいいですか
最初の1本は、無料で入るものか手持ちのパソコンに合うもので構いません。音を出す・保存する・書き出すが動けば入門には足ります。合わなければ後で変えられます。
楽器がまったく弾けなくても始められますか
始められます。コードもメロディもマウスで1音ずつ置けます。弾く技術より、口ずさめるイメージがあるかどうかのほうが役立ちます。
始めたけれど何も作れずに終わりそうです
初日は音が1つ鳴れば十分です。完成を目標にせず、4小節だけ作って保存するところから始めると、翌日に続けやすくなります。
無料配布|アンパンマン劇場版楽曲を手がけた作曲家の「制作工程マップ」
音出し、コード、ドラム、メロディ、アレンジ、フルコーラス完成までの流れを1枚にまとめた無料マップです。登録するとその場でご覧いただけます。
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DAWを入れて音が鳴ったら、次は道具の全体像と作り方へ進みます。