Cubaseでオーディオファイルが見つからない時

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
昨日まで開けていた曲を開いたら、Cubaseに「オーディオファイルが見つかりません」と出た。トラックに枠だけ残って、録音した歌やギターの音が抜けている。急に出るこの表示に、初心者は「データが飛んだ」と青ざめます。
でも、あわてて録り直す前に読んでください。この表示は多くの場合、素材が消えたのではなく、置き場所が分からなくなっただけです。まず原因を見分け、次に探して場所をつなぎ直し、最後に同じことが起きない形に整える。この順番で進めます。
先に見ること
「見つかりません」は削除ではなく、置き場所が分からない状態です。まず探します。
- プロジェクトファイルと録音した素材は別のファイル
- 原因はフォルダの移動・プロジェクト外の参照・別PCのどれか
- ファイル名で検索して見つけ、開いた時に場所を指定し直す
- つなぎ直したら曲ごとのフォルダにまとめて再発を止める
なぜ「見つかりません」が出るのか
まず、Cubaseが何を見失っているかを知ります。
Cubaseで曲を保存してできるプロジェクトファイル(cprという拡張子)には、どのトラックがあり、どの音をどこに置いたかという設計図だけが入っています。
マイクで録音した歌やギターの音そのものは、この中には入っていません。WAVという別のオーディオファイルとして保存され、プロジェクトはその置き場所を記録しておいて、開くたびに呼び出して鳴らしています。
「オーディオファイルが見つかりません」は、この呼び出しが空振りした合図です。記録した場所に素材がなかった、というだけの意味です。
原因は主に3つに分かれます。
- 1つ目は、素材を入れたフォルダを後から移動したり名前を変えたりした時。
- 2つ目は、曲ごとにフォルダを分けずに進めた結果、素材が別の曲のフォルダなどプロジェクトの外にあり、そこが動いた時。
- 3つ目は、プロジェクトファイルだけを別のパソコンやUSBに移し、素材を置いてきた時です。
打ち込みで作ったソフト音源のパートは設計図の中に含まれるので、こうなっても鳴ります。抜けるのは録音したパートだけ。
歌やギターだけ消える、という症状の正体はここにあります。
検索で素材を探し出す
表示が出ても、素材は生きていることが多いです。
最初にやるのは、素材がパソコンのどこにあるかを探すことです。
いちばん早いのは、エラー表示に出ているファイル名を控えて、パソコンの検索(WindowsのエクスプローラーやMacのFinder)にそのまま打ち込むことです。名前が分からなければ、拡張子wavで絞り、録音したおおよその日付で探します。
手で見当をつけるなら、順番があります。まずプロジェクトファイルと同じ場所やその近くに、Audioという名前のフォルダがないか。次に、以前に作った別の曲のフォルダの中のAudioフォルダ。
曲ごとに分けずに録音を続けていた場合、素材はここに紛れ込んでいることが多いです。それでもなければ、デスクトップ、ダウンロード、クラウド同期のフォルダを見ます。
Cubaseには、行方不明の素材をまとめて探す機能も用意されています。プールという素材一覧の画面や、見つからないファイルを検索する項目から、探す範囲のフォルダを指定して一括で照合できます。
手作業で1つずつ探すより速いので、抜けたパートが多い時はこちらを使います。
場所を指定し直して復旧する
見つけた素材を、プロジェクトにつなぎ直します。
素材のありかが分かったら、Cubaseに新しい場所を教えます。
プロジェクトを開いた時に出るダイアログで、見つからないファイルを検索するか、フォルダを指定する項目を選び、素材のあるフォルダを指定します。ファイル名が一致すれば、Cubaseが自動でつなぎ直し、抜けていた波形が戻ってきます。
ここで終わらせないことが大事です。つなぎ直しただけでは、素材があちこちに散らばった状態は何も変わっていません。次に別のフォルダを動かせば、また同じ表示が出ます。
だから復旧できたら、その直後に必ず、後述するバックアップ機能で素材を1つのフォルダにまとめ直してください。散らかった部屋を、片付いた1部屋に引っ越しさせるイメージです。
別PCで開いて音が抜けた時
元のパソコンに素材が残っています。
スタジオや友人の環境など、別のパソコンで開いたら録音パートだけ鳴らない、というのもよくある形です。
これはたいてい、プロジェクトファイルだけを持ってきて、録音した素材を元のパソコンに置いてきたために起きます。設計図だけ持ち出しても、素材が付いてこなければ再生できません。
復旧は元のパソコン側で行います。元のプロジェクトを開き、バックアップ機能で参照している素材を1つのフォルダに集めてから、そのフォルダごと丸ごと移し直します。そうすれば、移した先でもすべての録音パートが鳴ります。
元のパソコンが手元にない、すでに処分したという場合だけ、録音のやり直しを検討することになります。持ち出す前に、素材ごと運ぶ。これだけで避けられる事故です。
曲ごとフォルダで再発を防ぐ
一度直したら、同じ表示を二度と出さない形にします。
レッスンでこの相談を受けた時に必ず伝えているのが、曲ごとのフォルダ管理です。デフォルトのまま保存を続けると、録音した素材が同じ共通の場所や別の曲のフォルダに溜まっていき、そのフォルダを動かした瞬間やUSBに移した瞬間に「オーディオファイルがありません」が出る、という話をしています。
原因は保存の設計であって、作曲の力ではありません。
防ぎ方はシンプルです。新しい曲を作る時に、先にその曲専用のフォルダを1つ用意し、Cubaseの保存先としてそこを指定してから作り始めます。以降は録音のたびに、素材がその曲フォルダの中のAudioフォルダへ自動で入っていきます。
設計図と素材が同じ箱に入るので、持ち運びもバックアップもフォルダごとコピーするだけで済み、離ればなれになりようがありません。すでに散らかっている過去の曲は、バックアップ機能でまとめ直せば、この形に引っ越せます。
状況別の対応表
今の状況から、やることを選びます。
| 状況 | 疑う原因 | まずやること |
|---|---|---|
| 同じPCで急に出た | 素材フォルダを移動・改名した | ファイル名で検索し、開いた時に場所を指定し直す |
| 録音パートだけ抜ける | 素材がプロジェクトの外にある | 別の曲のフォルダのAudioを探し、まとめ直す |
| 別のパソコンで鳴らない | プロジェクトだけ移して素材を置いてきた | 元PCでバックアップ機能でまとめ、フォルダごと移す |
| 抜けたパートが多数 | 複数の素材が行方不明 | プールや検索機能で範囲を指定し一括照合する |
| 復旧できた直後 | まだ素材が散らばったまま | バックアップ機能で1フォルダにまとめて再発を止める |
よくある疑問
「オーディオファイルが見つかりません」は消えたということですか
多くの場合は消えていません。この表示は素材が削除されたのではなく、置き場所が分からなくなったという意味です。パソコンのどこかに残っていることが多いので、まず探すところから始めます。
どこを探せばいいですか
プロジェクトの近くにあるAudioフォルダ、以前に作った別の曲のフォルダ、デスクトップやダウンロードフォルダを見ます。エラーに出ているファイル名でパソコンを検索すると、いちばん早く見つかります。
別のパソコンで開いたら歌だけ鳴りません
プロジェクトファイルだけを移して、録音した素材を元のパソコンに置いてきた状態です。元のパソコンでバックアップ機能を使い、素材を1つのフォルダにまとめてから、フォルダごと移し直せば鳴ります。
二度と起こさないためにはどうしますか
新しい曲は、先に曲専用のフォルダを1つ作り、そこを保存先に指定してから作り始めます。設計図と録音素材が同じ箱に入るので、移動しても離ればなれになりません。
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