古賀稔宏の作曲ノート

レイテンシーがひどい時に最初に見る設定

鍵盤を押してから音が遅れる、歌っている声が遅れて返ってくる。これはレイテンシーの問題です。録音時とミックス時で設定を分けて考えます。

この記事の結論

録音時はバッファサイズを小さめに、ミックス時は大きめにします。常に同じ設定で作業しようとすると、遅れか音切れのどちらかで止まりやすくなります。

  • 使用中のドライバーを確認する
  • 録音時のバッファを下げる
  • ミックス時のバッファを上げる
  • 録音時とミックス時でバッファサイズを切り替える

この記事で解決すること

この記事では、遅れを小さくする作業と、音切れを防ぐ作業を分けて考えます。

  • MIDIキーボードの音が遅れて聞こえる
  • 歌録りで返りが遅くて歌いにくい
  • バッファサイズの意味が分からない
  • 設定を下げるとノイズや音切れが出る

まず確認する順番

録音中は反応の速さ、ミックス中は安定を優先します。同じ設定で全部を済ませようとしないことが大事です。

  1. 使用中のドライバーを確認する
  2. 録音時のバッファを下げる
  3. ミックス時のバッファを上げる
  4. 重いプラグインを一時停止する
  5. ダイレクトモニターを確認する
  6. プロジェクトの負荷を見る
  7. 遅れと安定のどちらを優先するか決める

確認の流れ

  1. 01録音
  2. 02負荷
  3. 03ミックス

レイテンシーは故障ではない

レイテンシーとは、入力してから音が返ってくるまでの遅れです。MIDIキーボードを押して音源が鳴るまで、マイクで歌ってヘッドホンに返るまで、どちらにも発生します。完全にゼロにはできませんが、作業に支障がない範囲まで小さくできます。

初心者が混乱するのは、遅れを小さくするとパソコン負荷が増え、安定を優先すると遅れが増えることです。つまり、録音とミックスでは最適な設定が違います。

バッファサイズの考え方

バッファサイズは、パソコンが音を処理するために一時的にためておく量です。小さくすると反応は速くなりますが、処理が追いつかないとノイズや音切れが出ます。大きくすると安定しますが、演奏時の遅れが増えます。

録音時は小さめ、ミックス時は大きめが基本です。録音時に遅れが気になるならバッファを下げます。ミックス時に音切れするならバッファを上げます。この切り替えを覚えるだけで、無駄な悩みが減ります。

ドライバーで大きく変わる

オーディオインターフェイスを使っているなら、専用ASIOドライバーを選ぶことでレイテンシーが改善することがあります。パソコン標準のドライバーでも音は出るかもしれませんが、録音やリアルタイム演奏には向かない場合があります。

Cubase側でどのドライバーが選ばれているか確認します。インターフェイスを持っているのに別のドライバーを使っていると、せっかくの機材が活きません。

歌録りで遅れる場合

歌っている声が遅れて返ってくると、ピッチもリズムも取りづらくなります。この場合、ソフト側で返す音を聞くのか、インターフェイスのダイレクトモニターを使うのかを分けます。

ダイレクトモニターは、パソコン処理を通す前の音を返すため遅れが少ないです。ただし、リバーブなどDAW内のエフェクトをかけた返しとは違います。録音しやすさを優先するなら、返しの作り方も調整します。

重いプロジェクトでは設定を変える

曲が進むほど、音源やエフェクトが増えてパソコン負荷が上がります。最初は問題なかったバッファ設定でも、後半で音切れすることがあります。これは異常ではなく、制作段階が変わったサインです。

録音が終わったらバッファを上げる。重い音源をオーディオ化する。不要なプラグインを一時停止する。こうした処理で、ミックス時の安定を作ります。

制作工程での位置づけ

制作工程で見ると、レイテンシーは作曲力以前の停止ポイントです。鍵盤を弾いて反応が遅いと、コードやメロディの判断が鈍ります。歌録りで返りが遅いと、良いテイクが録れません。

だからこそ、レイテンシーは最初に理解しておく価値があります。録音時は反応、ミックス時は安定。この切り替えを前提にすると、制作が止まりにくくなります。

状態別の見方

同じ悩みに見えても、見る場所が違うことがあります。今の状態に近い行から確認してください。

今起きていること見る場所次にやること
MIDIキーボードの音が遅れて聞こえるバッファサイズとドライバーを見る録音時だけバッファを下げる
歌録りで返りが遅くて歌いにくいDAW返しとダイレクトモニターを分ける歌いやすい返し方を選ぶ
バッファサイズの意味が分からない遅れと安定の交換関係として読む録音用とミックス用の値を決める
設定を下げるとノイズや音切れが出るCPU負荷と重いプラグインを見る録音時だけ不要な処理を止める

15分で確認すること

最初は範囲を広げすぎず、下の項目だけを順番に見ます。

  1. 使用中のドライバーを確認する
  2. 録音時のバッファを下げる
  3. ミックス時のバッファを上げる
  4. 重いプラグインを一時停止する

15分では、ドライバー、録音時バッファ、重いプラグインの停止まで確認します。演奏できる反応に戻すことを優先します。

30分かけて見る場合

15分で解決しない場合だけ、少し広い範囲を確認します。

  1. ダイレクトモニターを確認する
  2. プロジェクトの負荷を見る
  3. 遅れと安定のどちらを優先するか決める

30分見る場合は、プロジェクト負荷、ダイレクトモニター、録音後のバッファ変更まで含めて、作業段階ごとの設定を決めます。

次の制作作業へつなげる

遅れが気にならなくなったら、録音や打ち込みの判断に戻ります。

レイテンシーは完全に消すものではなく、作業に支障がない範囲へ収めるものです。録音中とミックス中で目的が違うため、設定も切り替えます。

反応が整ったら、鍵盤演奏、歌録り、ギター録音など、今やる作業だけに集中します。設定探しを続けるより、録れる状態で素材を残すことが完成に近づきます。

実践ワーク

読んだあとにやること

  1. 現在のドライバー名を確認する
  2. 録音用にバッファを下げる
  3. 重いプラグインを一時停止する
  4. 録音後にバッファを上げて再生確認する

録音用とミックス用の設定値をメモしておくと、毎回同じ悩みに戻りにくくなります。

よくある失敗

知識不足より、確認する順番を飛ばして問題が大きくなることがあります。

  • 常に同じバッファサイズで作業しようとする
  • 標準ドライバーのまま録音する
  • 重いプラグインを挿したまま録音する
  • ダイレクトモニターとDAW返しを混同する

次に読む記事

遅れが解決したら、音出しやインターフェイス設定を確認し、実際の演奏や録音へ進みます。

古賀稔宏のプロフィール写真

プロフィール

古賀 稔宏

ギター、ウクレレ、DTM(Cubase)、作曲技法、音楽理論を指導。14歳でギターを始め、同時に作曲も始める。ポップ、ロック、クラシックの要素を含む楽曲を得意とする。

「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGM、堂本光一ソロアルバムへのギタリスト参加など、商業音楽の制作・演奏に携わる。

プロはどうやって1曲を作るのか

古賀稔宏の「1曲完成までの制作工程マップ」では、音出しからコード、ドラム、メロディ、アレンジ、フルコーラス完成までの流れをまとめています。