Cubaseのメトロノーム設定

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
Cubaseで初めて録音する時、メトロノームは「ボタンを押せば鳴る」はずなのに、鳴らない、録音の時だけ消える、音がうるさくて歌えない、といった小さなつまずきが続きます。設定が2か所に分かれているのが原因で、どちらを見ればいいかが分かれば、数分で片付きます。
鳴らない時に確認する順番、プリカウント、録音の時だけ鳴らす設定、音色と音量、そしてクリックに合わせて弾けない時の対処を、Cubaseの操作として順にたどります。メニューの名前はバージョンで少し違うことがあるので、見つからない時は近い名前を探してください。
先に見ること
メトロノームの設定は、ツールバーのボタンと「メトロノーム設定」の画面、この2か所で全部済みます。
- 鳴らない時は、ボタン→再生中か→設定のチェック→音量→出力先の順に見る
- プリカウントは2小節から。1音目を構えて弾ける
- 「再生時」と「録音時」のチェックは別。録音時だけオンにすると聞き返しが楽
- 合わせて弾けない時は、テンポを落として録る。MIDIなら後から上げられる
設定は2か所にある
ボタンと設定画面。迷ったらこの2つに戻ります。
Cubaseのメトロノームに関わる場所は2つです。1つ目は、トランスポートパネル(画面下の再生や録音のボタンが並ぶ帯)にあるメトロノームのボタン。オンかオフかを決めるだけの場所です。
2つ目が「メトロノーム設定」の画面です。画面上部のトランスポートメニューから開けます。プリカウントの長さ、再生時と録音時のどちらで鳴らすか、音色、音量は、すべてここにまとまっています。
ボタンだけ触って設定画面を開いたことがない人がつまずき、設定画面ばかり触ってボタンがオフのままの人もつまずきます。何かおかしいと思ったら、この2か所のどちらの話かをまず分けます。
ボタンのショートカットはキーボードのCキーです。押すたびにオンとオフが切り替わります。日本語入力がオンだと効かないことがあるので、効かない時は半角英数に戻します。
鳴らない時の確認順
上から順に1つずつ。1つ確認するたびに再生します。
メトロノームが鳴らない時は、次の順で確認します。1つ見るたびにスペースキーで再生して、鳴るかどうかを確かめてください。順番を飛ばすと、原因が2つ重なっている時に見落とします。
- ボタンが点灯しているか。Cキーに指が触れてオフになっていることはよくあります。
- 再生しているか。Cubaseのクリックは、再生中か録音中にしか鳴りません。ボタンをオンにして、止まったまま「鳴らない」と思っているケースがここで消えます。
- メトロノーム設定の「再生時にクリックを有効」「録音時にクリックを有効」のチェック。再生では鳴るのに録音で消える、またはその逆なら、故障ではなくここの設定です。
- 設定画面のクリック音量。スライダーが下がっていると、オンでも無音です。
- 出力先。ここまでで鳴らなければ、メトロノームの中の問題か、外の問題かを分けます。
分け方は簡単です。曲のトラックは聞こえていてクリックだけ聞こえないなら、まだメトロノーム側の話です。曲ごと何も聞こえないなら、メトロノームではなくオーディオの出力設定の問題なので、Cubaseで音が出ない時の手順で先に音の道をつなぎます。
コントロールルームという機能を有効にしている場合は、クリックの出力先がコントロールルーム側で別に管理されます。自分で有効にした覚えがなければ、ここは飛ばして構いません。
プリカウントを入れる
録音の頭に、助走の小節を入れます。
プリカウントは、録音ボタンを押してから実際に録音が始まるまで、クリックだけが鳴る助走です。「カチ、カチ、カチ、カチ」を聞いてテンポを体に入れてから、1音目を出せます。
入れないと、録音開始と同時に演奏が始まるので、1音目が毎回遅れます。歌でもギターでも、出だしがヨレるテイクが増える原因の多くはこれです。
オンとオフは、トランスポートパネルのプリカウントのボタン(メトロノームボタンの隣あたり)で切り替えます。何小節鳴らすかは、メトロノーム設定の画面で指定します。
長さは2小節から始めます。1小節だと構える時間が足りず、4小節だと録り直すたびに待ち時間が積み上がります。慣れてきたら好みで変えて構いません。
助走の間のクリックは録音データには入りません。安心して使ってください。
録音の時だけ鳴らす
チェック2つの組み合わせで決めます。
メトロノーム設定の画面には、「再生時にクリックを有効」と「録音時にクリックを有効」の2つのチェックがあります。Cubaseはこの2つを別々に持っているので、鳴る場面を組み合わせで決められます。
録音する段階でおすすめなのは、録音時だけオンです。録っている間はテンポの基準としてクリックが要りますが、録ったテイクを聞き返す時にまで鳴っていると、歌や演奏の良し悪しを曲の音だけで判断できなくなります。
この設定にしておくと、録音と聞き返しのたびにCキーを押して回る手間がなくなります。録音ボタンを押せば鳴り、再生ボタンを押せば鳴らない。
打ち込みの段階では逆に、再生時もオンにしておくと、ピアノロールで置いた音が拍からずれていないかを耳で確かめられます。作業の段階で切り替える、と覚えておくと迷いません。
音色と音量を変える
耳に刺さる音は、我慢せず変えます。
クリックの音色と音量は、メトロノーム設定の「クリック音」のタブで変えます。初期設定の高いビープ音が耳に刺さって疲れる人は多く、我慢して録り続けると集中が落ちます。
音色は、ビープ音と、用意された何種類かのクリック音から選べます。1拍目とそれ以外の拍で音が分かれているので、小節の頭が聞き分けやすい組み合わせにします。
音量は、自分の演奏の後ろでクリックが確認できる程度に下げます。大きすぎると演奏が縮こまり、小さすぎるとずれに気付けません。
マイクで歌やアコースティックギターを録る人は、もう1つ注意があります。ヘッドホンから漏れたクリックがマイクに入ることがあります。録ったテイクの後ろでカチカチ鳴っていたら、クリックの音量を下げるか、密閉型のヘッドホンに変えます。
クリックに合わせて弾けない時
自分を責める前に、テンポと遅れを疑います。
クリックが鳴っているのに合わせて弾けない時、原因は2つに分かれます。1つは、テンポが今の自分に速すぎること。もう1つは、音が遅れて返ってくること(レイテンシー)です。順に切り分けます。
まずテンポを落とします。プロジェクトのテンポを、弾ける速さまで下げて録音します。MIDIで打ち込んだ演奏なら、録った後にテンポを上げても、音程は変わらず、そのまま速くなります。曲のテンポで弾けるまで練習してから録るより、遅く録って上げる方が早く進みます。
オーディオ(マイクやギターの生録音)の場合は、テンポを後から変えると音が伸び縮みして質が落ちるので、録る前にテンポを決めます。難しいフレーズだけ、小節を区切って少しずつ録るのも手です。
テンポを落としても、クリックより自分の音が遅れて聞こえる時は、レイテンシーです。ヘッドホンに返ってくる自分の音が遅れると、耳はその遅れに合わせようとして、どんどんずれます。
レッスンで歌を録った時も、バッファサイズを512から256へ下げて、遅れが歌える範囲に収まる所を探しました。512では合わせられず、256でわずかに遅れは残るものの歌える、という塩梅です。下げすぎるとパソコンが止まるので、止まらない範囲で小さくします。設定場所は、スタジオ設定のオーディオシステムから開くドライバーのコントロールパネルです。詳しくはレイテンシーの直し方で扱っています。
クリックが鳴り、テンポと遅れが整えば、録音の準備は終わりです。録音が制作全体のどこに来るかは、制作工程マップで確認できます。
確認順と設定場所の早見表
やりたいことから、触る場所を引けます。
| やりたいこと | 触る場所 | 目安 |
|---|---|---|
| クリックを鳴らす/止める | トランスポートのメトロノームボタン、またはCキー | 再生か録音の時だけ鳴る |
| 鳴らない原因を探す | ボタン→再生中か→設定のチェック→音量→出力先 | 1つ見るたびに再生して確認 |
| プリカウントを入れる | プリカウントボタン+メトロノーム設定で小節数 | 2小節から |
| 録音の時だけ鳴らす | メトロノーム設定の「再生時」「録音時」のチェック | 録音時のみオン |
| 音色・音量を変える | メトロノーム設定のクリック音タブ | 演奏の後ろで聞こえる程度 |
| 合わせて弾けない | テンポを下げて録る。遅れるならバッファサイズを下げる | 512→256で塩梅を探る |
よくある疑問
ボタンをオンにしたのに鳴りません
Cubaseのクリックは再生中か録音中にしか鳴りません。スペースキーで再生してみてください。それでも鳴らないなら、メトロノーム設定の再生時・録音時のチェックと音量スライダーの順に確認します。
プリカウントは何小節が目安ですか
2小節です。1小節だと構える時間が足りず、4小節だと録り直しのたびに待ち時間が増えます。慣れたら好みで調整してください。
再生の時はクリックを消して、録音の時だけ鳴らせますか
できます。メトロノーム設定の「再生時にクリックを有効」を外し、「録音時にクリックを有効」だけを入れます。2つは別々のチェックです。
クリックに合わせて弾けません
プロジェクトのテンポを弾ける速さまで下げて録ります。MIDIなら後からテンポを上げられます。テンポを下げても自分の音が遅れて聞こえるなら、バッファサイズを512から256へ下げて、パソコンが止まらない範囲で遅れを減らします。
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クリックが鳴ったら、音の出口と遅れのつまずきを片付けて録音に入ります。