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古賀稔宏の作曲ノート作曲・編曲家のDTM制作ノート

ループ素材の使い方

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作曲・編曲家 古賀 稔宏

「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。

ループ素材は、トラックに貼れば確かに鳴ります。ただ、鳴ることと曲になることは別の話です。貼ったループが1曲に育つまでには、BPMを合わせ、キーを合わせ、並べて、抜き差しで展開を作るという4つの工程があります。

素材の選び方や買い方の話ではなく、手元にあるループをどう曲へ育てるかだけに絞ります。最後に、自作のメロディや打ち込みと混ぜる時の注意もまとめます。

先に見ること

貼った後の工程が、ループを曲に変えます。

  • 手順はBPM合わせ→キー合わせ→並べる→抜き差しの4つ
  • キー合わせが必要なのは音程のある素材だけ。ドラム系は不要
  • 展開はループのオン・オフ(抜き差し)だけで作れる
  • 自作パートと混ぜる時は、腕の差より先に音量とノリの差を疑う

貼っただけで曲にならない理由

ループは完成品の「部品」で、曲は時間の中の「変化」だからです。

ループ素材は、2小節や4小節のフレーズがきれいに完成した部品です。部品として完成しているからこそ、貼って繰り返すだけだと、同じ景色がずっと続く映像のようになります。

音は良いのに、聞いていて曲だと感じられない。初心者がループでつまずくのは、ほとんどこの地点です。

曲として聞こえるために必要なのは、時間の中の変化です。

静かに始まり、厚くなり、一度引いて、また盛り上がる。市販の曲が飽きずに聞けるのは、数小節ごとに何かが足されたり抜かれたりしているからです。

つまりループを使う作業の本体は、貼ることではなく、貼った後にあります。

テンポと音程のつじつまを合わせ(BPM合わせ・キー合わせ)、部品を配置し(並べる)、時間の変化を付ける(抜き差し)。ここから、その4工程を順番に進めます。

手順1 BPMを合わせる

先に曲のテンポを決めてから、素材をそこへ追従させます。

最初に決めるのは、プロジェクト側のテンポです。ループのテンポに曲を合わせるのではなく、作りたい曲のBPMを先に決めて、素材のほうを寄せます。

順番を逆にすると、素材を追加するたびに曲全体が引っ張られてしまいます。

ループのテンポは、多くの場合ファイル名に書かれています。曲とテンポが違う素材は、DAWのタイムストレッチ機能で音の高さを変えずに長さを合わせます。

最近のDAWの多くには、貼るだけで自動的にプロジェクトのテンポへ追従させるモードもあります(Cubaseではミュージカルモードと呼ばれます)。まずこの機能がオンかどうかを確認すると、手作業がほとんど要らなくなります。

注意点は一つで、元のテンポから大きく離すほど音がざらついたり不自然に揺れたりすることです。差が大きい時は、倍・半分の関係を試してください。

例えばBPM80の曲に160のループを貼ると、倍の細かさで刻むリズムとしてそのままはまることがあります。

手順2 キーを合わせる

音程のある素材だけが対象です。全部やる必要はありません。

キー合わせが必要なのは、ベース、シンセ、コード、メロディのような音程がはっきりある素材だけです。キックやスネア、パーカッションのようなドラム系は音程がほぼ目立たないので、キーを気にせず貼れます。

手持ちの素材をこの2グループに分けるだけで、作業量は半分以下になります。

音程のある素材は、ファイル名やフォルダにあるキー表記(AmやFなど)を曲のキーと見比べて、差の分だけDAWのピッチシフトで上げ下げします。目安として、半音2〜3個程度の移動なら質感は保たれやすく、それ以上動かすと声や楽器の質感が変わりやすくなります。

表記がない素材や、合っているか自信がない時は、理屈より耳で判定します。曲のコードと素材を一緒に鳴らして、響きが濁らなければ合格です。

濁って聞こえたら、半音ずつ動かして一番すっきり響く位置を探します。この聞き比べ自体が、音程感の良い練習にもなります。

手順3 並べて骨組みを作る

8小節単位で、3つの層に絞って配置します。

テンポと音程のつじつまが合ったら、いよいよ配置です。おすすめは、リズム(ドラム)、低音(ベース)、上物(コードやフレーズ)の3層に役割を分けて、各層1本ずつ選ぶことです。

同時に鳴るループは3〜4本までに絞ります。気に入った素材を全部並べたくなりますが、本数が増えるほど、この後の展開作りで身動きが取れなくなります。

長さの単位は8小節を基準にします。多くのポップスやダンスミュージックは8小節ごとに場面が動くので、8小節×4ブロック=32小節を仮の設計図にすると、後の作業がそのままイントロ、Aメロ、サビの形につながります。

並べる時に一つだけ避けたいのが、似た音域のループを2本重ねることです。ベース系のループを2本同時に鳴らすと低音がだぶついて濁り、上物のフレーズ系を2本重ねるとお互いのメロディがぶつかります。

1つの音域に主は1本。これだけで骨組みはすっきり鳴ります。

手順4 抜き差しで展開を作る

ミュートのオン・オフだけで、曲は展開し始めます。

展開作りと聞くと難しそうですが、ループの場合は足し算と引き算だけです。

  • イントロは上物1本だけ。
  • 次の8小節でドラムが入る。
  • その次でベースが加わり、サビにあたるブロックで全部が鳴る。

トラックのミュートを切り替えるだけで、同じ素材のまま曲が前へ進んでいきます。

レッスンでリズムの組み方に使われる判断メモに、こういうものがあります。1小節のパターンをそのまま繰り返すと機械的に聞こえやすい。A、B、A、C、A、B、A、Dのように、戻る場所と変える場所を作ると8小節の流れになる。

これはドラムの打ち込みの話ですが、ループの抜き差しもまったく同じ考え方で設計できます。「いつもの状態(A)」を基準に、4小節目や8小節目だけ何かを変える(B、C、D)わけです。

具体的には、8小節目だけドラムのループを止めて次のブロックへの合図にする、ブロックの頭で1本足す、逆にサビ前の2小節で全部抜いて静寂を作る、といった操作です。

どれも新しい素材は要りません。抜き差しの設計だけで、貼っただけの状態とは別物の聞こえ方になります。

自作パートと混ぜる時の注意

腕の差に見えるものの正体は、たいてい音量とノリの差です。

ループの上に自分のメロディや打ち込みを重ねると、多くの人が「自分のパートだけ下手に聞こえる」と感じます。まず疑うべきは腕ではなく音量差です。

市販のループは音作りと音圧の調整まで済んだ完成品なので、素の状態のソフト音源より大きく派手に聞こえます。フェーダーで音量をそろえてから聞き比べると、印象の差はかなり縮まります。

次に見るのはノリの差です。ループには演奏の揺れ(グルーヴ)が焼き込まれていることがあり、自作パートをグリッドぴったりに打ち込むと、ループ側と微妙に噛み合わないことがあります。

気になったら、自作パートのタイミングをループに合わせてわずかに前後させるか、クオンタイズ(グリッドへの自動吸着)を少し緩めてみてください。

最後に、主役を決めます。おすすめは、主役を自作のメロディにして、ループは伴奏に回す形です。

目立つフレーズ入りのループと自作メロディが同時に主張すると、お互いを打ち消し合います。ループの担当は土台、自分の担当は歌。この分担が決まっていると、混ぜる作業の判断はほとんど迷いません。

工程チェック表

4つの手順と混ぜ方を、確認する順番に並べます。

工程やること確認すること
BPM合わせ素材をプロジェクトのテンポに追従させるリズムが曲とずれていないか。差が大きい時は倍・半分も試す
キー合わせ音程のある素材だけピッチを曲のキーへ寄せるコードと一緒に鳴らして濁らないか
並べるリズム・低音・上物の3層で8小節単位に配置同じ音域のループが2本重なっていないか
抜き差しブロックごとにミュートで鳴らす本数を変える8小節ごとに何か1つ変化しているか
自作と混ぜる音量とノリをそろえ、主役を自作側に決める自分のメロディが埋もれていないか

ループで骨組みを作る作業は、コードを置き、ドラムを組み、メロディを乗せるという曲作り全体の中の一部分です。自分が今どの工程にいるのかは、下の制作工程マップで確かめられます。

よくある疑問

ループのBPMと曲のBPMが違う時はどうしますか

DAWのタイムストレッチ機能で素材を曲のテンポに追従させます。差が大きいと音が不自然になるので、その場合は倍や半分のテンポ関係で使えないかも試してみてください。

ドラムループにもキー合わせは必要ですか

ほぼ不要です。キックやスネアなどのドラム系は音程が目立たないので、キーを気にせず使えます。キー合わせが必要なのは、ベースやシンセ、コードのような音程がはっきりある素材だけです。

ループだけで1曲作ってもいいですか

練習としては良い方法です。抜き差しで展開を作る感覚が身に付きます。慣れてきたら、メロディなど1パートだけ自作に置き換えてみてください。それだけで曲が自分のものに近づきます。

自作の打ち込みがループより下手に聞こえます

腕の差とは限りません。市販のループは音作りまで仕上がった状態なので、大きく派手に聞こえます。まずフェーダーで音量をそろえてから聞き比べると、印象の差はかなり縮まります。

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ループで作った骨組みを、自作の曲へ広げる時に読む記事です。

古賀稔宏のプロフィール写真

プロフィール

古賀 稔宏

ギター、ウクレレ、DTM(Cubase)、作曲技法、音楽理論を指導。14歳でギターを始め、同時に作曲も始める。ポップ、ロック、クラシックの要素を含む楽曲を得意とする。

商業音楽の制作・演奏に携わりながら、初心者が止まりやすい場所を制作工程に沿って整理している。

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