DTMは独学でできる?独学で作れる範囲と止まりやすい場所

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
DTMを始めたいけれど、教室に通わず独学でできるものなのか。楽器も弾けず理論も知らない自分が、一人で曲を作れるようになるのか。始める前に、これを確かめておきたい人は多いはずです。
先に答えを書きます。独学でも1曲は作れます。ただし、独学で進めるかどうかの分かれ目は、頭の良さでも音楽経験でもなく、止まりやすい場所を先に知っているかどうかです。この記事では、独学で到達できる範囲と、途中で止まる場所、独学を成立させる条件を順に見ていきます。
先に見ること
独学でできるかは、才能ではなく進め方で決まります。
- 独学でも1曲完成までは十分に到達できる
- 止まるのは機材選び、理論、行き詰まりの3か所
- 情報は足りている。足りないのは順番と判断
- 無料で音を鳴らすところまで試してから学び方を決めればいい
結論:独学でも1曲は作れる
できるかどうかで言えば、できます。条件付きで。
DTMは、パソコンとDAW(作曲ソフト)があれば一人で完結できる趣味です。教材も解説動画もネット上に大量にあり、曲を1本完成させるところまでなら、独学で十分に到達できます。
実際、今活動している作り手には、独学から始めた人が珍しくありません。
ただし「できる」には条件が付きます。独学でつまずく人と進める人の差は、集めた情報の量ではありません。
検索すれば答えはいくらでも出てくる時代に、それでも止まる人が多いのは、どの順番でやるかと、今の自分に必要かどうかの判断が検索では手に入らないからです。
だからこの記事では、「できます」で終わらせずに、どこで止まりやすいかを先にお見せします。落ちる穴の場所を知ってから歩き始めれば、独学の成功率は大きく変わります。
独学で到達できる範囲
1曲完成までの道は、独学でも全部つながっています。
独学でどこまでいけるのか。目安として、音を鳴らす、コードを並べる、ドラムを打ち込む、メロディを乗せる、1曲に組み立てて書き出す。この一連の流れは、すべて独学で通過できます。
特別な機材も、高価な教材も、この段階では要りません。
レッスンでもよく伝えているのですが、最初の目的は理論や機能を全部覚えることではなく、自分のパソコンから曲っぽい音が鳴る体験を早く作ることです。短いコードと簡単なドラム、鼻歌だけでも構いません。
この体験が早く来るほど、独学は続きます。逆に、準備や勉強を先に積もうとするほど、曲にたどり着く前に燃料が切れます。
一方で、独学だと時間がかかりやすい領域もあります。歌や楽器の録音、ミックスの細かい判断、自分の曲の癖の発見。
これらは自分の耳だけでは答え合わせがしにくい部分です。ただ、どれも1曲目から必要なものではないので、「独学でできるか」の答えを変えるものではありません。
独学で止まりやすい3つの場所
止まる場所は決まっています。先に知っておきます。
1つ目は、始める前の機材選びです。DAWはどれがいいか、パソコンは買い替えるべきか、と比較を始めると、何週間も曲を作らないまま過ぎていきます。
ここは比較で選ぶのではなく、どれか1つで音を鳴らして先に進む場所です。無料のDAWや体験版で構いません。
2つ目は、音楽理論です。理論書を最初から読み始めて、曲を作る前に脱落するのは独学の定番コースです。
実際に最初へ必要なのは、ダイアトニックコードというキーの中で使えるコードのセットと、少しの応用だけです。理論書がそこへ行き着くまでの長い説明は、飛ばして構いません。まず7つのコードを並べて、進行を作る体験から入るほうが早く身につきます。
3つ目は、作りかけの曲が途中で止まる行き詰まりです。8小節はできたのに先へ進まない、メロディが乗らない、といった停滞がこれにあたります。
ここが独学で一番苦しい場所ですが、原因の切り分け方があります。詳しくは曲が完成しない時の記事で扱っているので、実際に止まったらそちらを開いてください。
独学を成立させる3つの条件
才能の条件ではなく、進め方の条件です。
1つ目の条件は、作る順番を1本決めて、その順番から離れないことです。環境を作る、土台を鳴らす、メロディを乗せる、広げる、整える。
独学が崩れるのは、この順番を持たずに、目についた解説を場当たりでつまみ食いした時です。情報を増やす前に、順番を固定する。これが独学の背骨になります。具体的な道筋は独学ロードマップに段階ごとにまとめています。
2つ目の条件は、小さく完成させることです。フルコーラスの大作を最初のゴールにすると、完成体験が来る前に息切れします。
4小節でも90秒でもいいので、書き出して外で聞ける形まで持っていく。完成の回数が、独学の自信の材料になります。
3つ目の条件は、書き出した曲をたまに自分以外の耳に触れさせることです。DTMは一人で完結できるぶん、意識しないと何年も自分の耳だけで回ってしまいます。
友人でも家族でもSNSでも構いません。外の耳が入る仕組みさえあれば、独学の弱点と言われる「癖に気づけない」問題は、かなりの部分を防げます。
独学でできること・止まりやすいこと
始める前に、全体の地図として眺めてください。
| 領域 | 独学での進めやすさ | ポイント |
|---|---|---|
| DAWの基本操作 | 進めやすい | 解説動画が豊富。1つのDAWに絞れば迷わない |
| コード・作曲の入口 | 進めやすい | ダイアトニックコードまでで曲は作れる |
| 機材・ソフト選び | 止まりやすい | 比較を打ち切り、1つ選んで音を出すのが正解 |
| 音楽理論 | 止まりやすい | 理論書を頭から読まない。必要な範囲だけ拾う |
| 行き詰まりの脱出 | 止まりやすい | 原因の切り分け方を知っているかで差が出る |
| ミックス・癖の修正 | 時間がかかる | 外の耳を借りると一気に縮む領域 |
よくある疑問
楽器が弾けなくてもDTMを独学できますか
できます。今のDTMはマウスでの打ち込みや鼻歌の録音から曲を作れるので、鍵盤やギターの演奏力は前提ではありません。演奏が必要になった場面で、その部分だけ練習すれば足ります。
音楽理論を知らないまま始めて大丈夫ですか
大丈夫です。最初に要るのはダイアトニックコードという1つの範囲だけで、そこへ行き着くまでの細かい理論は後回しにできます。コードを並べて鳴らす体験を先に作るほうが、理論の意味も早く分かります。
独学だと変な癖がつきませんか
癖はつきますが、それ自体は習っている人にもあることです。問題になるのは、書き出した曲を誰にも聞かせずに何年も回した場合です。定期的に自分以外の耳に触れさせる仕組みを作れば、独学でも癖は直せます。
独学とスクールで迷っています
まず無料のDAWで音を鳴らすところまでは独学で試すのがおすすめです。お金がかからず、自分がどこで止まるかが分かります。止まった場所が具体的になってから学び方を選ぶと、判断を間違えにくくなります。
アンパンマン劇場版関連楽曲を手がけた作曲家の、無料の制作工程マップ
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