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古賀稔宏の作曲ノート作曲・編曲家のDTM制作ノート

90秒ワンコーラスを作る手順

古賀稔宏のプロフィール写真

作曲・編曲家 古賀 稔宏

「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。

3分の曲を作ろうとして、Aメロの途中で手が止まる。イントロを何度も作り直して、サビにたどり着く前にプロジェクトを閉じる。完成しない原因は、曲を作る力ではなく、ゴールの大きさにあることがほとんどです。フル尺は、初めて作る人にとって遠すぎます。

そこでゴールを、90秒のワンコーラスに置き換えます。イントロ、Aメロ、Bメロ、サビが1回ずつ鳴って終わる長さです。短いのに、曲に必要な場面が全部入っています。小節の配り方、各パートの役割、そして「ここで止める」と決める基準まで、順に見ていきます。

先に決めること

90秒ワンコーラスは、完成しない人のための最初のゴールです。

  • フル尺ではなく、イントロ→Aメロ→Bメロ→サビの1周で1曲と数える
  • テンポ120なら、4小節・16小節・8小節・16小節が目安
  • 各パートには役割があり、役割が果たせていれば長さは足りている
  • サビが1回鳴って終わりの形が付いたら、2番を作らずに止める

フル尺で止まる理由

遠いゴールは、途中の判断をすべて重くします。

初めて曲を作る時に、いきなりフル尺を狙うと、途中の判断がすべて重くなります。イントロを置いても「この後3分続くのに、これでいいのか」が決められず、Aメロを作っても、2番やDメロまで考えると先が見えなくなります。

決められないまま細部を触り続けると、時間は使っているのに曲は進みません。作りかけのプロジェクトが増え、どれも最後まで鳴らない状態になります。

レッスンで曲が完成しない人に伝えているのは、0から10までの形が見えないうちに、1、2、3を作り込まないということです。今日の作業を始める前に、どこまで作れば「1曲できた」と言えるかを決めておく。その最小の10が、90秒のワンコーラスです。

90秒なら、頭の中に完成形を置けます。3分は置けなくても、テレビアニメの1番だけの長さなら、多くの人が体で覚えています。ゴールが見えると、途中の判断は軽くなります。

90秒ワンコーラスとは何か

場面が1回ずつそろって、終わる長さです。

ワンコーラスとは、曲の1番のことです。イントロで始まり、Aメロで歌が入り、Bメロで持ち上げ、サビで一番聞かせたい所を鳴らして、終わる。この1周で、曲に必要な場面は一通りそろいます。

90秒という長さは、この1周を普通のテンポで鳴らした時に収まる尺です。8小節のループだけでは、入口も出口もなく、曲として人に聞かせられません。かといって2番や間奏を足すと、途端に判断が増えて止まります。

90秒の中には2番も間奏もないので、前の場面をコピーして貼る作業がありません。1周分を全部、自分で決めることになります。だからこそ、通し切ると入口から出口までの作り方が体に残り、次の曲では同じ判断が速くなります。

「1曲」の数え方を変えるのがポイントです。フル尺で1曲ではなく、ワンコーラスで1曲。この数え方にすると、完成の回数が増え、1回ごとに入口の作り方、盛り上げ方、終わらせ方を通しで経験できます。

90秒は最終ゴールではありません。フルコーラスへ広げる前に、入口、展開、盛り上がり、終わり方を小さく確かめる通過点です。ただし通過点でも、通り切ることに意味があります。通り切っていない3分より、通り切った90秒の方が、次の1曲を作る力になります。

小節の配り方

秒ではなく小節で数えると、DAWの上で迷いません。

90秒を、DAWで数えやすい小節に置き換えます。4拍子でテンポが120なら、1拍は0.5秒、1小節は2秒です。90秒はおよそ45小節になります。

この45小節を、イントロ4、Aメロ16、Bメロ8、サビ16に配ります。合計44小節、テンポ120で88秒。残りの1小節ほどは、最後の音を伸ばす余白です。

テンポが変わると小節数も変わります。テンポ100なら1小節は2.4秒なので、同じ90秒でおよそ37小節。イントロ4、Aメロ12、Bメロ8、サビ12、といった配分になります。小節数は目安で、守るのは秒数の方です。

配分はDAWに入る前に決めます。マーカートラックやメモに「1〜4小節イントロ、5〜20小節Aメロ」と区切りを先に書いておくと、作っている途中で「ここは何小節目か」を見失いません。

区切りを先に置くと、Aメロが膨らみすぎるのを止められます。16小節と決めてあれば、17小節目は自動的にBメロです。器が先にあると、中身を注ぐ量で迷わなくなります。

各パートの役割

役割が果たせていれば、そのパートは完成です。

小節を配ったら、各パートで何をするかを1つずつ決めます。役割が決まると、「まだ足りない気がする」で作り込み続ける時間が減ります。

イントロ(4小節)は、曲のテンポと雰囲気を告げる場所です。凝ったフレーズは要りません。サビの伴奏を4小節だけ先に鳴らす、リズムだけで始める、どちらでも役割は果たせます。長くなるほどサビが遠のくので、4小節で切ります。

Aメロ(16小節)は、歌が入り、曲の話を始める場所です。音数は少なめに、メロディも低めに置きます。ここで盛り上げてしまうと、後のサビで上がる場所がなくなります。静かに始めるのがAメロの仕事です。

Bメロ(8小節)は、Aメロからサビへ持ち上げる橋です。コードを変える、メロディを少し上げる、リズムを細かくする。どれか1つで十分です。8小節と短いのは、橋が長いと期待が途切れるからです。

サビ(16小節)は、一番聞かせたいメロディを鳴らす場所です。音数を一番多くし、メロディを一番高くします。前半8小節でサビを歌い、後半8小節で同じメロディを繰り返して、最後を少し変えて終わりの形を作ります。

終わりは、サビの最後のコードを伸ばして止めるか、イントロのフレーズを1回だけ戻して閉じるか。どちらかを決めた時点で、ワンコーラスは閉じます。

90秒で止める判断基準

続けたくなった時が、止め時です。

サビまで鳴ると、2番を作りたくなります。ここが分かれ道です。90秒の狙いは通し切る経験を積むことなので、次の3つがそろっていたら、そこで止めて書き出します。

1つ目、4つのパートが全部入っている。イントロがない、Bメロを飛ばした、では1周になっていません。短くてもいいので、4つ全部を置きます。

2つ目、頭から最後まで止めずに再生できる。途中で音が抜ける小節や、仮のままの空白がない。ここは音色や細かい調整ではなく、鳴っているかどうかだけを見ます。

3つ目、終わりの形が付いている。サビの途中でぶつ切りになっていたら、まだ終わっていません。伸ばして止める、戻して閉じる、どちらかを置きます。

この3つがそろったら、書き出して、スマホで聞きます。気になる所があっても、直すのは1か所だけにして、2番には手を出しません。90秒が終わっていない状態で2番を始めると、また完成しない曲が1つ増えます。

途中で止まった時は、どこで止まっているかを見ます。レッスンでは、曲が止まる場所はドラム、コード、メロディの3つのどれかに絞れると伝えています。今できている所までを聞けば、欠けている1つが分かるので、そこだけを埋めて先へ進みます。

書き出した90秒が手元に残ったら、1曲完成です。次に作るのは2番ではなく、別の90秒でも構いません。同じ1周を何度か通してから、フルコーラスへ広げる方が、迷わず進めます。90秒がどの工程の後に来るかは、制作工程マップで確認できます。

配分と役割の早見表

4拍子・テンポ120の目安です。テンポが違えば小節数を読み替えます。

パート小節数(テンポ120)役割完成の目安
イントロ4テンポと雰囲気を告げるサビの伴奏かリズムが4小節鳴る
Aメロ16静かに話を始める音数少なめ、メロディ低めで16小節
Bメロ8サビへ持ち上げる橋変化を1つだけ入れて8小節
サビ16一番聞かせたいメロディ前半で歌い、後半で繰り返して終わりへ
終わり1〜2曲を閉じる伸ばして止めるか、イントロを戻す

よくある疑問

なぜフル尺ではなく90秒なのですか

フル尺はゴールが遠く、途中の判断が重くなって止まりやすいからです。90秒のワンコーラスなら完成形を頭に置けるので、通し切る経験を先に積めます。

90秒は何小節ですか

テンポで変わります。4拍子でテンポ120なら1小節2秒で約45小節、テンポ100なら1小節2.4秒で約37小節です。小節数は目安で、イントロ→Aメロ→Bメロ→サビの4つが入って90秒前後なら十分です。

Bメロは飛ばしてもいいですか

90秒ワンコーラスでは入れます。Aメロからサビへ持ち上げる橋の役割があり、8小節と短くても、この1周を通す経験になります。変化は1つだけで構いません。

90秒ができたら2番を作っていいですか

4パートが入り、止まらず再生でき、終わりの形が付いてから書き出します。そこまで済んでいなければ、2番より先に90秒を閉じます。フルコーラスへ広げるのは、90秒を書き出した後です。

コードの「床」を、先に用意しておく

C・Am・Dm・G の4小節ループMIDIと、90秒ワンコーラスの下地を無料でお送りしています。鳴らしながら鼻歌を乗せていけば、メロディを探す作業がぐっと楽になります。

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90秒を書き出したら、各パートの中身とフルコーラスへ広げる手順に進みます。

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プロフィール

古賀 稔宏

ギター、ウクレレ、DTM(Cubase)、作曲技法、音楽理論を指導。14歳でギターを始め、同時に作曲も始める。ポップ、ロック、クラシックの要素を含む楽曲を得意とする。

商業音楽の制作・演奏に携わりながら、初心者が止まりやすい場所を制作工程に沿って整理している。

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