MIDI CCとは

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
ベロシティで強弱を付けたのに、ストリングスがのっぺりしたまま。ピアノのペダルを踏んだ響きが打ち込みで再現できない。続けていると必ずぶつかる壁ですが、原因はノートの情報だけで演奏を完結させようとしていることにあります。
MIDI CC(コントロールチェンジ)は、ノートとは別に流す「音の表情を動かす追加データ」です。鳴っている最中の膨らみ、揺れ、ペダルの踏み替え。ノートが楽譜の音符だとすれば、CCは「だんだん強く」やペダル記号にあたる書き込みです。
先に押さえること
MIDI CCは、鳴っている最中の音を動かすためのデータです。
- ノートの下のレーンに、0〜127のカーブとして描く
- 番号ごとに役割が違う。まずCC1・CC11・CC64の3つ
- 持続音の「途中」を動かせるのがベロシティとの違い
- 最初は1トラックにCCを1本だけ書いて聞き比べる
音の表情を動かす追加データ
音源のつまみを、演奏に合わせて自動で回す仕組みです。
MIDI CCのCCは、コントロールチェンジの略です。ノートが「どの音を、いつ、どの長さで鳴らすか」を伝えるのに対して、CCは「鳴らし方を今この瞬間どう変えるか」を伝えます。
値は0から127まであり、時間に沿って連続的に変化させられます。
生の演奏者は、1つの音を伸ばしながら弓の圧を変えたり、息の量を増やしたりして、音の中身を動かし続けています。打ち込みでその「変え続ける」部分を担当するのがCCです。
音源側のつまみを、再生に合わせて自動で回してくれる仕組みと考えると近いです。
DAWでは、ピアノロールの下にあるレーン(Cubaseならコントローラーレーン)に折れ線やカーブとして描きます。ノートの下に山や谷を描くと、再生時にその形の通りに音が変化します。
MIDIキーボードのモジュレーションホイールを動かしながら弾けば、手の動きがそのまま記録されます。
CCの番号は0から127まで用意されていて、それぞれに役割が割り当てられています。ただ、全部を覚える必要はまったくありません。
実際の制作で日常的に使うのは、次に挙げる数個だけです。
代表的なCC番号を用途で覚える
番号の暗記ではなく、何がしたい時に使うかで覚えます。
CC1はモジュレーションです。もともとはビブラートの揺れの深さを操作するホイールですが、現在のオーケストラ系音源では、音の強さや張りをCC1で動かす設計が主流になっています。
ストリングスやブラスの、弱い音から強い音への滑らかな移り変わりはここで作ります。
CC11はエクスプレッションです。日本語にすると「表情としての音量」。
トラック全体の音量とは別枠で、フレーズの中での膨らみやしぼみを描くための音量です。ミックスで決めたバランスを崩さずに、演奏の抑揚だけを上から足せるのが便利なところです。
CC64はサステインペダルです。ピアノの右ペダルに相当し、値が64以上で踏む、63以下で離す、というスイッチとして働きます。
ペダル付きのMIDIキーボードで弾けば自動で記録されますし、後からマウスで書き足すこともできます。ペダルなしのピアノ打ち込みが痩せて聞こえる大きな理由が、この響きの有無です。
この3つを押さえるだけで、持続音の抑揚とピアノの響きという、打ち込みの二大弱点をカバーできます。他の番号は、必要になった時に音源のマニュアルで調べれば十分です。
CC番号の早見表
迷ったら、やりたいことから逆引きします。
| 番号 | 名前 | 動かすもの | よく使う場面 |
|---|---|---|---|
| CC1 | モジュレーション | 音の張り・揺れの深さ | ストリングスやブラスの強弱の移り変わり |
| CC11 | エクスプレッション | フレーズ内の音量の膨らみ | 盛り上げ・しぼませの表情付け |
| CC64 | サステインペダル | ペダルのオン・オフ | ピアノの響きをつなげる |
| CC7 | ボリューム | トラックの基準音量 | 基本はフェーダーに任せて多用しない |
ストリングスが生っぽくなる実例
白玉コードにカーブを1本描くだけで、印象が変わります。
全音符の白玉で打ち込んだストリングスが、置物のようにのっぺり聞こえる。定番の悩みですが、CCを1本書くだけで見違えます。
手順はこうです。
- 白玉コードのトラックでCC1のレーンを開き、各ノートの頭では低めの値(30前後)から始めます。
- 音を伸ばしている間に80〜100あたりまでゆっくり持ち上げ、次のコードへ移る直前に少し下げる。
音が「置いてある」状態から「弾いている」状態に変わります。
生っぽくなる理由は、音源の中身にあります。多くのオーケストラ音源は、弱く弾いた録音から強く弾いた録音まで何段階も持っていて、CC1の値でそれらが入れ替わったり混ざったりします。
つまり音量だけでなく、柔らかい音色から張りのある音色へ、音の中身ごと移り変わる。実際の奏者が1音の中でやっている変化と同じことが起きるから、耳が本物に近いと感じるわけです。
CC1とCC11のどちらを使うべきか、と手が止まる人もいますが、レッスンで伝えているのは、理論で止まったら先に鳴らすという判断です。
まずCC1で山を1本描いて再生する。その音源がどう反応するかは、資料を読み込むより聞いた方が数十秒で分かります。
ベロシティとの違い
「弾いた瞬間」か「鳴っている間」か、で分かれます。
ベロシティとCCは、どちらも0〜127で音の表情を扱うため混同されがちですが、効くタイミングが違います。
ベロシティは鍵盤を弾いた瞬間に1回だけ決まる値で、音が出た後から変えることはできません。CCは、鳴っている間じゅう動かし続けられます。
だから、楽器の性質で出番が分かれます。ピアノやドラムのように、鳴った瞬間がすべてで、あとは減衰していくだけの楽器はベロシティが主役です。
ストリングス、ブラス、シンセパッドのように音を伸ばし続ける楽器は、伸ばしている最中を動かせるCCが主役になります。
現実の楽器で考えると分かりやすいです。ピアノの1音は、叩いた後にいくら念じても膨らみません。
バイオリンは弾きながらいくらでも大きくできます。打ち込みのデータも、この現実と同じ分担になっているだけです。
両方を組み合わせる楽器もあります。ストリングスなら、立ち上がりのアタック感はベロシティで、その後の膨らみはCC1やCC11で、という併用が定番です。
どちらか一方で全部やろうとしないことが、表情付けの近道です。
最初の1本の書き方
1トラック1本から。同時に何本も描かないのがコツです。
便利さが分かると全トラックに書き込みたくなりますが、CCは1トラックに1本から始めるのが安全です。CC1とCC11とCC64を一度に描くと、再生した時にどれが効いたのか耳で追えなくなります。
試す順番のおすすめはこうです。
- ピアノの曲ならまずCC64で、コードが変わる場所に合わせてペダルの踏み替えを書く。効果が一番はっきり聞こえます。
- 次に、ストリングスなどの持続系にCC1で山を1つ描く。
- 物足りなければ、フレーズ全体の盛り上がりとしてCC11を重ねる。
この3段階で大半の曲は足ります。
書きすぎのサインも覚えておくと安心です。聞いていて船酔いのように感じる音量の波、そしてカーブがギザギザに細かくなりすぎている状態。
表情は1フレーズに山1つくらいでちょうどよく聞こえます。
CCで表情が付くと、打ち込みは音を置く作業から、演奏を設計する作業に変わります。その演奏をどの工程で仕上げていくかは、制作工程マップで1曲の流れとして確認できます。
よくある疑問
MIDI CCはどこに書きますか
ピアノロールの下にあるコントローラーレーンに、折れ線やカーブとして描きます。ノートと同じ画面で編集でき、MIDIキーボードのホイールで演奏して記録することもできます。
CC1とCC11とCC7はどう使い分けますか
CC1は音の張りや揺れで、音色ごと変わります。CC11はフレーズの中の音量の膨らみです。CC7はトラックの基準音量ですが、ミックスと衝突しやすいので基本はフェーダーに任せます。
CC64を書いたのに響きが濁ります
CC64は64以上でペダルオン、63以下でオフのスイッチです。踏みっぱなしにすると前のコードの響きが混ざるので、コードの変わり目で一度0に戻してから踏み直します。
全部のトラックにCCを書くべきですか
不要です。効果が大きいのはストリングスなどの持続音とピアノのペダルです。ドラムやピアノの打鍵の強弱はベロシティが担当なので、役割を分けて書き込みます。
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