DTMは独学とスクールどっちがいい?後悔しない選び方

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
DTMを独学で進めるか、スクールで習うか。検索すると「独学で十分」と「独学は遠回り」の両方が出てきて、読むほど決められなくなります。
教える側の立場で正直に書くと、この問いに万人共通の答えはありません。ただし、自分にとっての答えを出す判断基準ならあります。ポイントは、性格や予算より先に、今の自分がどの段階にいて、どこで止まっているかを見ることです。この記事では、独学と習うことがそれぞれ何を解決するのかを分解して、選び方の基準まで落とし込みます。
先に見ること
どっちが上かではなく、何を解決したいかで選びます。
- 音を鳴らすまでは独学で試すのが損のない始め方
- 独学の本当のコストは教材費ではなく、判断にかかる時間
- 習って縮むのは、原因の切り分けと順番の整理
- 迷ったら、止まっている場所が特定できているかで決める
結論:段階で決まる
性格診断より、現在地の確認が先です。
独学かスクールかは、その人の性格で決まる問題のように語られがちです。コツコツできる人は独学、サボりがちな人はスクール、という分け方です。
ですが実際に判断を分けるのは性格より段階です。同じ人でも、段階によって合う学び方は変わります。
DAWを入れて音を鳴らし、コードを並べてみるところまでは、誰にとっても独学で足ります。ここは費用をかけずに試せて、失うものがありません。
一方、作りかけの曲が続けて止まるようになった段階、自分の曲の何が悪いのか特定できなくなった段階では、一人で抱えるより人に見てもらうほうが明らかに速くなります。
だからこの問いは、「どっちの派閥に入るか」ではなく、「今の段階では、どちらが速いか」と立て直すのが正解です。以降で、それぞれが何を解決するのかを見ていきます。
独学の強みと、本当のコスト
無料に見える独学にも、支払っているものがあります。
独学の強みは明確です。費用が抑えられ、自分のペースで進められ、好きな曲だけ作っていられる。
教材も無料で豊富にあり、情報が手に入らないから独学は無理、という時代ではありません。この点で、独学は十分に成立する選択肢です。
ただし、独学が無料というのは半分だけ正しい話です。独学で支払っているのは、お金の代わりに判断にかかる時間です。
どの教材を信じるか、次に何をやるか、この音でいいのか。制作以外の判断が全部自分持ちになり、この判断の渋滞が、独学の遠回りの正体です。
例を1つ挙げます。プラグイン(DAWに追加する音源やエフェクト)で止まる人の多くは、実は選び方ではなく、インストールと認証の手続きでつまずいています。メーカーのアカウント作成、専用ダウンローダー、DAWでの読み込みと認証という流れがあり、認証が終わらないとデモ版のまま使えません。
知っていれば数分の話ですが、知らずに一人で調べると半日消えます。独学の時間は、こういう場所で目減りしていきます。
習うことが解決するもの
知識の販売ではなく、判断の肩代わりです。
では、スクールやレッスンで習うと何が変わるのか。知識が手に入る、はもう答えになりません。知識自体は無料で手に入るからです。
習うことの価値は、自分の状況に合わせた判断をもらえることに集約されます。
たとえば、メロディーが乗せられなくて曲が終わる人に対して、レッスンでは先にコード進行を決めてしまう順番をすすめることがあります。進行が先にあれば、そこに合う音を1つずつ当てはめてメロディーを探せるからです。
この助言自体は一般論として検索でも見つかります。違いは、あなたの止まり方を見たうえで、今のあなたに必要だと特定してくれることです。独学の判断の渋滞が、ここで解消されます。
逆に、習っても解決しないものも書いておきます。曲を作る手数、毎日DAWに触る継続、完成させる回数。これらは誰に習おうと本人が積むしかありません。
スクールは魔法ではなく、切り分けと順番を速くする仕組みです。この前提を持って選ぶと、期待外れが減ります。
後悔しない判断基準
迷ったら、この順で自分に質問してください。
1つ目の質問。まだ音を鳴らしたことがないなら、答えは決まっています。先に無料の範囲で独学を試す。DAWを入れて、音を出して、コードを並べる。ここまでで自分の止まり方が見えてきます。始め方は何から始めるかの記事にまとめています。
2つ目の質問。止まっている場所を、自分で1つに特定できているか。特定できていて、それが操作や知識の問題なら、記事や動画で解けます。本と動画の使い分けも独学の道具になります。
特定できない、または何度直しても同じ場所で止まるなら、それは外の判断を入れたほうが速い状態です。
3つ目の質問。何が欲しいのか。整理された順番が欲しいだけなら、体系的な教材や動画講座が合います。自分の曲への個別の判断が欲しいなら、人に見てもらう形が合います。
この3問に答えると、独学かスクールかの二択は、「今の自分は何で止まっていて、何をもらえば進むか」という具体的な話に変わっているはずです。そして、どちらを選ぶにしても先に必要なのは、1曲ができるまでの全体の順番です。それは下の制作工程マップで無料で確認できます。
独学が向く状況・習うのが向く状況
状況で選びます。途中で切り替えて構いません。
| 今の状況 | 向く学び方 | 理由 |
|---|---|---|
| まだDAWに触っていない | 独学で試す | 音出しまでは無料で試せて、失うものがない |
| 操作や用語で止まっている | 独学で足りる | 記事・動画で解ける種類のつまずき |
| 止まる場所を特定できている | 独学で足りる | その1点の解説を探せば前へ進める |
| 何が悪いのか特定できない | 習うのが速い | 原因の切り分けは外の耳のほうがずっと早い |
| 順番がバラバラで積み上がらない | 体系的な講座 | 整理された順番そのものが解決策になる |
| 作る手数・継続が足りない | どちらでも同じ | ここだけは本人が積むしかない |
よくある疑問
完全な初心者はどちらから始めるべきですか
まず無料の範囲で独学を試すことをおすすめします。DAWを入れて音を鳴らすまでは費用がかからず、そこまでやると自分がどこで止まるかが見えてきます。止まる場所が分かってから習い先を選ぶほうが、選び間違いが減ります。
スクールに通えば必ず上達しますか
通うだけでは上達しません。習って縮むのは原因の切り分けと順番の整理の部分で、曲を作る手数そのものは自分で積む必要があります。レッスンの間に自分で作る人ほど、習う効果も大きくなります。
独学で始めて後からスクールに切り替えるのは非効率ですか
むしろ効率的です。独学で試した経験があると、自分の質問が具体的になり、同じレッスン時間から得られるものが増えます。ゼロから通う人より、つまずきを持ち込む人のほうが習いは速く進みます。
動画講座とスクールはどう違いますか
動画講座は順番が整理された教材を自分のペースで進める形、スクールは自分の曲や状況に合わせた個別の判断をもらえる形です。順番が欲しいのか、個別の判断が欲しいのかで選ぶと迷いにくくなります。
アンパンマン劇場版関連楽曲を手がけた作曲家の、無料の制作工程マップ
独学でも、習うにしても、先に要るのは全体の順番です。音出し、コード、ドラム、メロディ、アレンジ、フルコーラス完成までの流れを1枚にまとめました。登録するとその場でご覧いただけます。
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