DTMは独学だと何年かかる?上達しない時期の抜け方

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
DTMを独学で続けたら、何年で曲を作れるようになるのか。あるいは、もう何ヶ月もやっているのに上達している気がしないのはなぜか。期間への疑問は、これから始める人にも、続けている人にも重くのしかかります。
この記事では、期間の質問に正直に答えたうえで、年数よりも当てになる物差しを提案します。そして、誰にでも来る「上達しない時期」の正体と、そこを抜ける具体的な方法まで書きます。
先に見ること
年数を数えるのをやめて、曲数と頻度で考えます。
- 何年かかるかは触る頻度で大きく変わり、一律の答えは無い
- 物差しは経過年数ではなく、書き出した曲の数
- 毎日5分でも触るほうが、週末まとめてより速く進む
- 上達しない時期の原因は、たいてい大きな才能差ではなく1点
何年かかるかへの正直な答え
断定する記事より、変数を教える記事を信じてください。
「DTMは3ヶ月でできる」「最低3年はかかる」。検索するとどちらの断定も見つかりますが、正直に書くと、一律の年数は存在しません。
触る頻度、1回の長さ、楽器経験の有無、目指す完成度で、同じ人間でも数倍の差が出るからです。
ただ、これでは答えになっていないので、条件を固定した目安を出します。覚える範囲を絞って順番どおりに進めた場合、短いワンコーラスまでなら数週間から2ヶ月程度が現実的な範囲です。
逆に、操作も理論も網羅してから作ろうとすると、何年あっても最初の1曲にたどり着きません。期間を決めるのは才能ではなく、進め方の設計です。
つまり「何年かかるか」は、問いの立て方を少し変える必要があります。何年やったかではなく、その期間に何を完成させたか。次の節で、この物差しに掛け替えます。
年数ではなく曲数で数える
経験年数は、実力の物差しとしてほぼ機能しません。
DTM歴3年でも、作りかけのプロジェクトが数個あるだけの人と、短い曲を30本書き出した人がいます。この2人の実力差は、年数からは読み取れません。
差を作ったのは、最後まで通して完成させた回数です。
曲を1本完成させると、コード、ドラム、メロディ、構成、書き出しという工程を一周することになります。上達とは、この一周の各所にある小さい判断が速く正確になっていくことです。
だから、完成の回数がそのまま経験値になります。作りかけを10個抱えるより、4小節でも10回書き出した人のほうが先に進んでいます。
今日から数えるものを変えてください。DTMを始めて何年か、ではなく、書き出した曲が何本あるか。
この数字は自分で増やせるので、期間の不安が具体的な行動に変わります。完成までの通し方は90秒ワンコーラスの記事が実践編です。
期間を縮めるのは頻度
同じ月10時間なら、配り方で結果が変わります。
レッスンで一番よく伝えている考え方があります。DTMは、ソフトを持っていれば自動的に曲ができるものではなく、楽器と同じように、触る時間で慣れていくものだということです。
1日5分でも、DAWを開いて昨日の続きを聞くことは練習になります。
週末に5時間まとめて触る人と、毎日20分触る人では、月の合計時間が近くても進み方が違ってきます。間隔が空くと、操作の記憶も作りかけの曲の記憶も薄れて、毎回思い出し作業から始まるからです。
毎日触っていれば、この目減りがありません。期間を縮めたければ、1回を長くするより、間隔を詰める。これが数少ない確実な近道です。
短い時間で何をやるかに迷う人は、毎日の練習メニューの記事に具体案があります。開いて、続きを聞いて、1つだけ足す。それで十分です。
上達しない時期の正体
大きな壁に見えて、原因は1点のことが多いです。
続けているのに伸びない感覚には、パターンがあります。作れるのに、聞き返すと素人っぽい。この段階の原因は、大きな才能差ではなく、特定の1点にあることが多いです。
例を挙げます。打ち込んだドラムが機械っぽく聞こえる場合、最大の原因はベロシティ、つまり音の強弱を一定のままにしていることです。タイミングはジャストのままでよく、八分の刻みに強弱を付けるだけで人間味が出ます。1〜2小節の同じパターンをそのまま貼り続けるのも、曲全体を安っぽく聞かせる代表的な原因です。
「全体的にダメ」と感じている曲も、分解すればこうした1点の集まりです。ドラムの強弱、メロディの高さの平坦さ、音量バランス。
1点を見つけて直すたびに、曲は目に見えて変わります。停滞期とは、直すべき1点がまだ特定できていない期間のことです。
自分で特定しきれない時は、書き出した曲を人に聞いてもらうのが一番速い方法です。何をすればいいかの全体像は上達するには何をすればいいかの記事で扱っています。
進んでいるかを正しく測る
測り方を間違えると、進んでいても止まって見えます。
上達しないと感じる人の多くは、実は測り方を間違えています。今日の自分の曲と、プロの完成曲を比べているのです。
この比較では、何年続けても満足は来ません。比べる相手は、数ヶ月前の自分が書き出した曲にしてください。並べて聞けば、当時気づけなかった粗に今は気づけるはずです。粗が聞こえること自体が、耳が育った証拠です。
もう一つの測り方は、記録です。書き出した曲に日付を付けてフォルダに残していく。
数と日付が並ぶと、停滞に見えた期間にも曲が増えていたことが分かります。感覚は嘘をつきますが、フォルダは嘘をつきません。
期間の不安は、正体を分ければ「順番を設計する」「頻度を上げる」「1点を直す」という3つの作業に変わります。どれも今日から動かせるものです。その順番の全体像は、下の制作工程マップにまとめてあります。
伸びない症状と見直す1点
年数を悩む前に、左の症状から特定します。
| 伸びない症状 | ありがちな誤解 | 見直す1点 |
|---|---|---|
| 何年やっても自信がない | 年数が足りない | 完成させた曲数を数える |
| 毎回操作を思い出すところから | 記憶力が悪い | 触る間隔を詰める(毎日5分でも) |
| ドラムが機械っぽい | 音源が安いせい | ベロシティの強弱を付ける |
| プロと比べて絶望する | 才能の差 | 比較対象を過去の自分に変える |
| 進んでいる実感がない | 停滞している | 日付付きで書き出しを残して見返す |
よくある疑問
DTMを独学で始めて最初の1曲はいつ作れますか
短いワンコーラスなら、週に数回触れる人で1〜2ヶ月以内が現実的な目安です。ただしこれは操作を全部覚えてからではなく、覚える範囲を音出しとコードとドラムに絞って進めた場合です。順番を絞るほど最初の1曲は早く来ます。
半年やっても上達を感じません。向いていないのでしょうか
向き不向きの前に、半年間で何曲書き出したかを数えてみてください。作りかけばかりで完成が少ないなら、時間ではなく完成の回数が足りていないだけです。小さくてもいいので書き出す回数を増やすと、感覚は変わります。
社会人で平日は30分しか取れません。それでも上達しますか
します。むしろ毎日30分は、週末だけ長時間より条件として有利です。操作と曲の記憶が切れないので、毎回の思い出し作業が要らず、触った時間がそのまま前進に変わります。
プロになるには何年必要ですか
一律の年数では答えられません。仕事にする道筋は制作力以外の要素も絡むためです。ただどの道でも、完成曲を積み重ねた人から順に選択肢が増えるのは共通しています。まず曲数を増やすことが最短の準備になります。
アンパンマン劇場版関連楽曲を手がけた作曲家の、無料の制作工程マップ
遠回りを減らせば、期間は縮みます。音出し、コード、ドラム、メロディ、アレンジ、フルコーラス完成までの流れを1枚にまとめました。登録するとその場でご覧いただけます。
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