DTMは毎日何を練習すればいいか|短時間で進むメニュー

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
DTMは毎日何を練習すればいいか。この問いで止まる人の多くは、練習の中身を決める前に、DAWを開く回数そのものが減っています。楽器なら「毎日弾く」で済むのに、DTMは開いても何をするかが決まっていないので、開く前に手が止まります。
だから最初に決めるのは、練習メニューではなく「毎日続く設計」です。時間の長さは問いません。毎日DAWを開くこと、開いた日に1つだけ残して閉じること。この2つを軸に、続かなくなる原因と、その対処までを順に見ていきます。1回の練習を何分でどう配分するかは、30分メニューの記事に譲ります。
続ける設計
先に決めるのは練習の中身ではなく、「毎日開いた日数」で数える設計です。迷ったら、前日の4小節を1回聞くだけで1日に数えます。
- 練習時間の合計ではなく、DAWを開いた日数を数える
- 開いた日は、4小節か1音色を1つだけ残して閉じる
- 毎回完成を求めると、開くこと自体が重くなる
- 準備が重い日は、前日の続きを聞くだけで1日に数える
時間の長さより「毎日開く」を優先する理由
DTMの上達は、手と耳が操作に慣れる量で決まります。
週末に3時間まとめて触るのと、平日に毎日10分ずつ触るのでは、合計時間はほぼ同じです。ところが1か月後の手の動きは、毎日開いた人のほうが明らかに速くなります。
理由は、DTMで覚えることの大半が知識ではなく、操作の記憶だからです。ノートを置く、音源を立ち上げる、ループ範囲を決める、書き出す。こうした動きは、間隔が空くたびに頭から抜けて、次に開いた時に思い出す時間から始まります。
レッスンでも、DTMはソフトを持っていれば自動的に曲ができるものではなく、楽器と同じように触る時間で慣れていく、という前提で進めています。1日5分でも、DAWを開いて昨日の続きを聞くことは練習になる。この基準を採用すると、練習の設計はまるごと変わります。
「今日は時間がないから明日まとめて」が消えるからです。5分が練習に数えられるなら、時間がない日は存在しなくなります。あるのは、開くか開かないかだけです。
もうひとつ、毎日開くと耳が自分の曲を覚えます。前日に置いた4小節を翌日に聞くと、昨日は気づかなかった重さやズレが自然に耳に入ります。この「翌日の耳」は、まとめて触る練習では手に入りません。
だから数えるのは、練習時間の合計ではなく、DAWを開いた日数です。カレンダーに丸を付けるだけで十分です。丸が続いていれば、練習は進んでいます。
開いた日は1つだけ残す
目安は「4小節」か「1音色」。どちらか1つで閉じます。
毎日開くと決めても、開いて何もせずに閉じる日が続くと、やがて開かなくなります。そこで、開いた日には成果物を1つだけ残すと決めます。1つで足ります。2つ目に手を出さないことが、明日も開ける条件です。
成果物の目安は2種類です。ひとつは4小節。コードを4つ並べる、ドラムを4小節置く、ベースを4小節足す。どれも、鳴らして聞ける形が残ります。
もうひとつは1音色。昨日置いた4小節のピアノをエレピに替えてみる、ドラムのキットを1つ選び直す。音は増えませんが、聞こえ方が変わった状態が残ります。
どちらも「残す」の意味は同じで、保存して閉じた時に、明日開いて聞けるものがプロジェクトの中に増えていることです。頭の中で考えただけ、動画を見ただけでは、プロジェクトには何も残っていません。
1つに絞る理由は、練習の終わり方をはっきりさせるためです。「4小節置いた、保存した、閉じる」。この終わり方が決まっていると、開く前の気の重さが消えます。今日どこまでやれば終わりかが見えているからです。
調子がいい日に2つ目をやりたくなったら、その気持ちはメモに書いて明日に回します。明日開く理由が1つできたと考えてください。
1日に残すものの例
どれも、閉じた時にプロジェクトの中で聞けるものです。
| 残すもの | やること | 翌日につながる理由 |
|---|---|---|
| コード4小節 | C、Am、F、Gを1小節ずつ置く | 翌日はこの上にドラムかメロディを足せる |
| ドラム4小節 | キックとスネアだけ置く | 翌日はハイハットを足すか、強弱を付けられる |
| 1音色の差し替え | ピアノをエレピに替えて聞く | 翌日、元に戻すか決める判断材料になる |
| 直した1音 | 前日の4小節で気になった1音を動かす | 「直したい所」を耳で探す習慣ができる |
| 聞いただけ | 前日の4小節を1回通して聞く | 気になった場所が、翌日の1つになる |
続かなくなる原因①:完成を求める
日単位のゴールに「完成」を置くと、開けなくなります。
練習が途切れる最初の原因は、毎回の練習で曲を完成に近づけようとすることです。開くたびに「今日はサビまで」「今日こそ通して聞ける形に」と考えると、達成できない日が続きます。達成できない日が続くと、開くこと自体が失敗の予感になります。
完成は、日の単位で追うものではありません。曲が形になるのは、4小節が積み重なった先です。日単位で見るのは「昨日より何か1つ増えたか」だけで、完成は週や月の単位で振り返れば足ります。
もう1つの落とし穴が、残した4小節の出来を気にすることです。4小節が平凡でも、翌日に直せます。むしろ翌日の耳で聞いて直すことが練習なので、その日のうちに納得できる形にする必要はありません。
「今日は良いものができなかった」と感じた日ほど、保存して閉じてください。閉じた時点で、その日の練習は成立しています。出来の良し悪しは、翌日以降の材料になるだけです。
完成を求めるのをやめると、練習の重さは一気に軽くなります。開く前に「今日は何を残すか」を1つ決め、残したら閉じる。この繰り返しの先に、完成は結果としてやってきます。
続かなくなる原因②:準備が重い
開いてから音が鳴るまでの手数を、先に減らしておきます。
もう1つの原因は、練習の前段階が重いことです。DAWを起動して、新規プロジェクトを作って、音源を探して立ち上げて、テンポを決めて。ここまでで疲れて、音を置く前に閉じてしまう。これは意志の問題ではなく、入口の設計の問題です。
制作の現場では、使いそうなドラム、ベース、鍵盤などの音源を先に立ち上げておくと、音色探しで止まりにくい、という判断で入口を軽くしています。毎日の練習にもそのまま使えます。
具体的には、ドラム、ベース、ピアノの3トラックだけを立ち上げた練習用のプロジェクトを1つ作って保存しておきます。翌日からは、新規作成ではなく、このプロジェクトを開くところから始めます。開いた瞬間に、鍵盤を押せば音が鳴る状態です。
音源を選ぶ時間も、練習の外に出します。「今日はどの音で作ろう」と迷い始めたら、前日と同じ音で置いてください。音色の差し替えは、それ自体を「1音色」の成果物にして、別の日に回せます。
機材の準備も同じです。MIDIキーボードをつなぎ直す、オーディオインターフェースの電源を入れる、といった手数が毎回あると、その一手が開かない理由になります。机の上を「電源を入れれば鳴る」状態のまま置いておけるなら、それだけで開く回数は増えます。
入口を軽くする作業は、練習時間の中でやると重く感じます。時間に余裕のある日に一度だけ整えて、あとは毎日その入口を通るだけにします。
開けない日をゼロにしない
最低ラインを「聞くだけ」に置くと、空白の日が消えます。
どれだけ入口を軽くしても、疲れて何も置けない日はあります。その日のために、最低ラインを決めておきます。前日に残した4小節を、1回通して聞く。これだけです。1分で終わります。
聞くだけの日も、開いた日数の丸は付けます。理由は2つあります。ひとつは、操作の記憶が切れないこと。DAWを開いて再生ボタンを押す、それだけで手は忘れません。もうひとつは、翌日の耳が動くこと。聞けば何か気になる場所が見つかり、それが翌日に残す1つになります。
それでも数日開かなかった時は、空いた日数を数えないでください。「3日分取り返そう」と考えると、また完成を求める状態に戻ります。やることは同じで、最後に残した4小節を開いて聞き、今日の1つを残すだけです。
再開の入口が「最後に残したもの」に固定されていれば、空白が何日あっても戻る場所は変わりません。白紙から始め直す必要がないことが、続ける設計のいちばんの効き目です。
毎日開いて、1つ残して、閉じる。この形が回り始めたら、残した4小節がどこへ向かうのか、曲全体の流れが気になってきます。音出しから1曲を仕上げるまでの道筋は、制作工程マップに1枚でまとめています。
よくある疑問
毎日5分で本当に練習になりますか
なります。DTMで身につくものの大半は操作の記憶なので、間隔を空けないことが効きます。5分あれば、前日の4小節を聞いて1音直すところまでできます。
1つ残すだけでは曲が進まない気がします
日単位では進んで見えなくても、4小節が毎日1つ増えれば、1週間で1コーラス分の材料がそろいます。完成は週や月の単位で振り返ってください。
何を残すか決められない日はどうしますか
前日に残したものを1回聞いて、気になった場所を1つ直します。何も気にならなければ、同じコードの上にドラムを4小節足すと決めておくと迷いません。
何日か開かなかった後はどこから戻りますか
最後に残した4小節を開いて聞くところからです。空いた日数を取り返そうとせず、その日も1つだけ残して閉じてください。
今日やることは1つです。DAWを開いて、4小節を置いて保存する。すでに置いてある人は、それを1回聞いて閉じる。明日はその続きから始めます。
1日1つだけ。7日で1曲書き出す
「最初の7日チェック表」(PDF)を無料でお送りしています。1日にやることを1つに絞って、7日目には音声ファイルが1つ完成する組み方です。MIDI素材一式も同梱しています。
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