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古賀稔宏の作曲ノート作曲・編曲家のDTM制作ノート

DTMは毎日何を練習すればいいか|短時間で進むメニュー

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作曲・編曲家 古賀 稔宏

「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。

DTMの練習と聞いて、教則本を読む、理論を覚える、解説動画を見る、といった勉強を思い浮かべるなら、そこから見直す価値があります。DTMの練習の中心は、頭に入れることではなく、DAWで短く作ることだからです。

毎日何をすればいいか決まっていないと、DAWを開かない日が少しずつ増えていきます。そこで、DTMで練習と呼べる行為と呼べない行為を分けて、毎日続く形に組み直します。今日から使える基準だけを書きます。

練習の基準

DTMの毎日の練習は、勉強ではなく短い制作で作ります。

  • 練習の単位は「短く作って、自分で聞く」こと
  • 昨日の続きを開いて再生するだけでも1回に数える
  • 同じ8小節を作り直すと、上達が耳で確認できる
  • プラグイン集めと動画の見流しは練習に数えない

何を練習と呼ぶか

読んだ時間・見た時間ではなく、音を置いた時間を数えます。

楽器にはスケールや教則本といった定番の基礎練習がありますが、DTMにはそれにあたる決まったメニューが見当たりません。だから多くの人が、代わりに理論の勉強や解説動画の消化を練習だと考えます。

机に向かった実感はあるのに、曲は1曲もできていない。あの状態はここから生まれます。

DTMで練習と呼んでいいのは、DAWの中に音が増えた時間と、自分の作った音を聞いた時間です。

  • コードを4小節打ち込む。
  • ドラムを1小節置く。
  • 鼻歌をスマホに録る。

どれも数分で終わる小さな制作ですが、手が操作を覚え、耳が音の重なりを覚えます。知識は、この途中で必要になった時に調べれば、忘れない形で身につきます。

逆に、作らずに知識だけを増やすと、いざDAWの前に座った時に手が動きません。読んで分かったことと、自分でできることは別だからです。

判定は単純で構いません。今日、プロジェクトに音が増えたか。増えていれば、それが今日の練習です。

昨日の続きを開くだけで練習になる

毎日のハードルは「完成させる」ではなく「開いて聞く」まで下げます。

レッスンで一貫して伝えているのは、DTMはソフトを持っていれば自動的に曲ができるものではなく、楽器と同じように触る時間で慣れていく、という判断軸です。

1日5分でも、DAWを開いて昨日の続きを聞くことは練習になります。毎日の練習をこの基準で数え直すと、続けられる日が一気に増えます。

実際に開いて通しで聞くと、たいてい気になる場所が一つ見つかります。ドラムが重い、コードの切り替わりが不自然、メロディの語尾が伸びすぎている。

それを一つ直したら、その日はもう十分です。直す時間がなくても、気になった場所を一言メモしておけば、翌日の入口ができます。

この練習法の前提は、前日に保存してあることです。曲ごとにプロジェクトを保存して閉じる習慣さえあれば、毎日の練習は「ゼロから何を作ろう」ではなく「昨日のここを直そう」から始まります。

始まり方が決まっている練習は続きます。

白紙のプロジェクトから始める日を減らせる、という効果もあります。何もない画面を前に「今日は何を作ろう」と考える時間は、実は毎日の練習でいちばん消耗する部分です。

続きから入れば、その消耗を毎回スキップして、残った集中力を音に使えます。

練習になる行為・ならない行為

迷ったら「プロジェクトに音が増えるか」で判定します。

行為判定理由
昨日のプロジェクトを開いて通しで聞く練習になる耳が自分の曲を覚え、直す場所が見つかる
コード4小節とドラム1小節を打ち込む練習になる手が操作を、耳が音の重なりを覚える
同じ8小節を新規プロジェクトで作り直す練習になる前回との差を聞き比べて上達を確認できる
解説動画を見て、同じ操作を自分のDAWでやる条件付きで練習になる手を動かした部分だけが身につく
解説動画を見るだけで終える練習にならない見た記憶は数日で薄れ、手は動くようにならない
無料プラグインを探して入れる練習にならない道具は増えるが、曲は1秒も増えない

上達が見える練習:同じ8小節を作り直す

前回の自分と聞き比べられる形にすると、伸びが耳で分かります。

楽器なら、先週弾けなかったフレーズが今日は弾ける、という形で上達が見えます。DTMで同じ手応えを作る方法としておすすめなのが、同じ8小節をもう一度最初から作り直す練習です。

コード進行だけ前回と同じにして、新しいプロジェクトでドラムもベースも置き直します。

作り終えたら、前回の書き出しと今回の書き出しを並べて聞きます。ドラムの音の選び方、ベースの動かし方、音の隙間の作り方。

二つを聞き比べると、誰かに説明されなくても違いが耳で分かります。良くなった点は上達の証拠で、毎回同じになる点は自分の癖です。

癖が見つかったら、次の作り直しでそこだけ変えてみます。

この聞き比べ自体も練習です。音選びやバランスの上達は、結局「違いを聞き分けられる耳」が土台になります。

自分の曲の新旧を比べることは、その耳を育てるいちばん身近な教材です。書き出した音源は消さず、日付を付けて取っておいてください。

練習にならない行為に時間が消える理由

プラグイン集めと動画の見流しには、失敗がないから吸い込まれます。

プラグイン集め、機材レビューの読み比べ、解説動画の連続再生。ここに時間が消えるのは、意志が弱いからではありません。

制作と違って失敗がなく、「調べた」「学んだ」という手応えだけが確実に手に入るからです。作る作業は思い通りにならない時間が多いので、疲れた日ほど失敗のない方へ流れます。

問題は、それを1ヶ月続けても曲が増えないことです。見分け方は一つで足ります。

その時間のあとで、プロジェクトに音が増えたか、書き出した音があるか。どちらも無ければ、それは準備であって練習ではありません

準備そのものが悪いのではなく、準備を練習に数えてしまうことが、上達しない原因になります。

動画を禁止する必要はありません。見たら、同じ操作を自分のDAWで一度やる、までをセットにするだけで、動画は練習の教材に変わります。

プラグインも、新しく入れたら当日中にその音で4小節作る、と決めておけば、集めるだけで終わらなくなります。

続かなくなった時の立て直し

空いた日数を取り返そうとせず、練習の定義を小さくし直します。

数日DAWを開かないと、後ろめたさが出て、さらに開きにくくなります。ここでやることは、量を取り返すことではなく、練習のハードルを下げ直すことです。

今日の練習を「プロジェクトを開いて通しで一度聞く」だけに設定し直します。聞くだけなら5分で終わり、疲れた日でもできます。

聞けば直したい場所が自然に見えて、手が勝手に動く日が戻ってきます。

DAWの前に座る時間すら取れない週は、書き出した自分の曲をスマホに入れて、移動中に聞くだけでも構いません。自分の曲との接点が切れないことが、再開のしやすさを決めます。

毎日ゼロにしない、という一点だけ守ってください。

時間の置き場所を固定するのも効きます。夜、歯磨きの前に5分だけ開く。朝のコーヒーの間に昨日の書き出しを聞く。

すでにある習慣の隣に練習を置くと、意志の力に頼らずに済みます。

毎日触る目的は、上手くなることの前に、DTMを生活から消さないことです。短い制作が毎日の側に置けたら、次は1曲を完成させるまでの流れを知る番です。

音出しからフルコーラス完成までの道筋は、制作工程マップに1枚でまとめています。

よくある疑問

毎日どのくらい練習すればいいですか

5分でも成立します。DAWを開いて昨日の続きを聞くだけでも練習になります。1回の長さより、間隔を空けないことを優先してください。

音楽理論の勉強は練習に入りますか

作っている途中で必要になった箇所を調べるなら入ります。曲を作らずに先回りで暗記だけ進めても、手は動くようにならず制作は進みません。

何も作る気が起きない日はどうすればいいですか

昨日のプロジェクトを開いて通しで再生するだけで構いません。聞けば直したい場所がたいてい一つ見つかり、そこから自然に手が動き始めます。

上達しているか確認する方法はありますか

同じコード進行で8小節を作り直し、前回の書き出しと聞き比べてください。音の選び方や重ね方の変化が耳で確認でき、毎回同じになる部分は自分の癖として見つかります。

無料配布|アンパンマン劇場版楽曲を手がけた作曲家の「制作工程マップ」

音出し、コード、ドラム、メロディ、アレンジ、フルコーラス完成までの流れを1枚にまとめた無料マップです。登録するとその場でご覧いただけます。

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プロフィール

古賀 稔宏

ギター、ウクレレ、DTM(Cubase)、作曲技法、音楽理論を指導。14歳でギターを始め、同時に作曲も始める。ポップ、ロック、クラシックの要素を含む楽曲を得意とする。

商業音楽の制作・演奏に携わりながら、初心者が止まりやすい場所を制作工程に沿って整理している。