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古賀稔宏の作曲ノート作曲・編曲家のDTM制作ノート

アコースティックポップの作り方|ギターと歌をDTMで組む手順

古賀稔宏のプロフィール写真

作曲・編曲家 古賀 稔宏

「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。

アコースティックギターと歌を中心にした、素朴であたたかいポップス。いざDTMで作ってみると、打ち込みのギターがどうしても機械的になり、本物の弾き語りとの差にがっかりしやすいジャンルです。

差を埋める鍵は、高い音源ではなく、ストロークの再現と足し算の順番です。歌とギターの2人だけで成立する骨格を先に作り、シェイカーなどの軽いパーカッション、ベースの順に少しずつ重ねます。ストロークを人間らしく打つコツから、最初の8小節の手順まで順番にまとめます。

先に見ること

アコースティックポップは、弾き語りの2人編成を軸に組みます。

  • 歌とギターだけで成立する骨格を先に作る
  • ストロークは発音を数十ミリ秒ずらして再現する
  • 打楽器はシェイカーとカホン風の軽い音だけ
  • 盛り上がりは楽器が増える順番で作る

歌とギターの2人から考える

弾き語りで成立していれば、何を足しても崩れません。

アコースティックポップの編成を考える出発点は、路上やカフェでの弾き語りです。歌とアコースティックギター。

この2人だけで曲として成立していれば、後から何を重ねても骨格は崩れません。逆に、2人の段階で退屈な曲は、楽器を足すほど散らかります。

役割ははっきり分かれています。歌はメロディと言葉の主役。

ギターは、コードの響きとリズムの刻みを1本で兼任します。バンドならドラムとベースが受け持つ仕事の大半を、ストロークが引き受けているのがこのジャンルの構造です。

だから打ち込みでも、最初に時間をかける価値があるのはギターのトラックです。ドラム音源を豪華にするより、ストローク1本の説得力を上げるほうが、仕上がりへの効きがはるかに大きくなります。

BPMとストロークの型

口で言えるパターンを、そのままピアノロールへ移します。

テンポはBPM85〜105を目安にします。

90前後なら8ビートのストロークが素直に乗り、100を超えると散歩のような軽快さが出ます。数字は入口にすぎないので、仮の歌メロを口ずさみながら、言葉が詰まらない速さへ前後させて決めます。

リズムの型は、口で言える形にしてから打ち込みます。

制作のレッスンでは、ドラムは譜面より先に「ドン、タン、ツツ」と口で言えるリズムから置く、という判断を軸にしています。ストロークもまったく同じで、「ジャーン、ジャカ、ジャッ、ジャカ」と声に出せるパターンは、迷わずピアノロールへ置き換えられます。

定番の型は、ダウン・ダウン・アップ・アップ・ダウン・アップの8ビートです。1拍目と3拍目のダウンを強く、間のアップは添える程度に軽く。

この強弱の骨組みを先に声で決めておくと、後のベロシティ調整も迷いません。

ストローク感を打ち込みで出す

機械的に聞こえる正体は、全音同時の発音です。

打ち込みのギターが機械的に聞こえる最大の原因は、和音の全部の音が同時に発音されることです。

実際のストロークでは、ピックが6本の弦を上から順になぞるので、音の立ち上がりには数十ミリ秒のずれがあります。この「ジャラン」の時間差こそがストロークの音です。

そこで、コードの構成音を10〜20ミリ秒ずつずらして置きます。ダウンストロークは低い音から高い音へ、アップストロークは高い音から低い音へ。

この向きの違いを入れるだけで、上下に振る腕の動きが聞こえるようになります。

アップはさらに、鳴らす音数を減らします。実際の演奏でも、アップで6本全部を鳴らすことは少なく、高い側の2〜3音を軽く引っかける程度です。

ベロシティもダウンより2〜3割下げると、それらしい揺れが出ます。

ギター音源にストローク用の奏法切り替えが付いていれば使って構いません。ただ、一度この仕組みを手で打っておくと、音源任せにした時も、不自然に聞こえる原因を自分で特定できるようになります。

カポ的な響きとコードの性格

開放弦風のきらめきを、打ち込みで再現します。

弾き語りのギターには、カポタスト(弦を挟んで全体の音程を上げる器具)を付けて、開放弦の混ざった明るい鳴りのまま歌いやすいキーへ移す文化があります。あのきらきらした響きを打ち込みで出す鍵は、開放弦風の音を意図的に残すことです。

具体的には、add9やsus4のように、隣り合う音が軽く触れ合うコードを使います。CならレをたしたCadd9、GならGsus4。

濁りではなく、光の粒のような膨らみとして聞こえ、素直なコード進行に空気感を足してくれます。

もう一つの手が、コードが変わっても同じ高い音を鳴らし続けることです。C→G→Am→Fと進みながら、和音の一番上でソとレの2音を保ち続けると、カポを付けたフォームを押さえ替えている時の、あの鳴りっぱなしの弦の感じに近づきます。

コードの性格としては、セブンスやテンションを何段も重ねるより、三和音にadd9を添える程度の、明るく風通しの良い響きが似合います。凝った進行を探すより、C→G→Am→Fくらいの素直な流れで十分です。

楽器編成と役割

それぞれの仕事と、入る順番で覚えます。

楽器役割足すタイミング
メロディと言葉の主役最初から
アコースティックギターコードとリズムを1本で兼任最初から
シェイカー・カホン風打楽器ドラムの代わりの軽い推進力Bメロやサビ前から
ベースルート中心に低音を支えるサビ、または2番から
グロッケンや薄いピアノサビの飾り。少しだけ最後に必要なら

パーカッションは軽さが命

シェイカーから入り、伸びる金物を避けます。

フルサイズのドラムセットを最初から入れると、せっかくの生々しさが一気にバンドサウンドへ寄ってしまいます。このジャンルの打楽器は、音の軽さと乾き方がそのまま世界観になります。

入口はシェイカーです。「ツ、ツ、ツ、ツ」と8分音符で振るだけで、ストロークの隙間が埋まり、曲が前へ進み始めます。

次に、カホンを想定した低い「ドン」と乾いた「タッ」を、キックとスネアの位置に置きます。ここでも、口で言えるリズムを先に決めてから打つ、という順番が使えます。

手拍子やフィンガースナップをスネアの代わりに使うのも定番です。逆に避けたいのが、クラッシュシンバルのように長く伸びる金物です。

シャーンという余韻が1発入るだけで、部屋の空気だった曲がステージの音になってしまいます。

構成は足し算の順番で作る

どこで誰が入るかが、そのまま盛り上がりになります。

構成づくりは「どの場面で誰が入るか」で考えます。Aメロは歌とギターの2人だけ。

Bメロでシェイカーとベースが加わり、サビでカホン風の打楽器と飾りの上物がそろう。この足し算の順番が、音量を上げなくても曲の盛り上がりになります。

2番の後や落ちサビでは、また2人だけに戻します。一度みんなが鳴った後の弾き語りは、冒頭と同じ編成でもまるで違って聞こえます。

この引き算が効くのは、2人で成立する骨格を最初に作ってあるからです。

8小節から1コーラス、フルサイズへ広げる途中でも、ときどき歌とギター以外をミュートして聞き直します。2人の状態で退屈なら、足りないのは楽器の数ではなく、メロディかコードのほうです。

ミックスの注意は低域のかぶり

アコギの下の膨らみが、歌をこもらせます。

このジャンルのミックスで最初に起きる問題はほぼ一つで、アコースティックギターの低い成分が歌の土台とかぶって、全体がこもることです。アコギは見た目より低域が豊かな楽器で、ストロークを左右に2本重ねると、なおさら下が膨らみます。

対策は単純で、ギターのトラックの低い側をEQで軽く削ります(ローカット)。ベースがいる場面では低音の仕事はベースに任せ、ギターは中域から上のシャラシャラした成分に集中させる。

この一点を整えるだけで、歌の輪郭がすっと前に出ます。

それ以外の細かい処理は、8小節の骨格が気持ちよく回ってからで間に合います。

最初の8小節の手順

今日そのまま打ち込める順番にしておきます。

  1. BPMを90に設定し、C→G→Am→Fを1小節ずつ2周、コードトラックにメモとして置く。
  2. アコースティックギターの音色で、ダウン・ダウン・アップ・アップ・ダウン・アップの8ビートを打つ。和音の構成音は10〜20ミリ秒ずつずらし、アップは高い側の2〜3音だけ弱めに。
  3. 仮の歌メロを鼻歌でスマホに録るか、リード音色で置く。2人だけの状態で最後まで聞けるかを確認する。
  4. シェイカーを8分音符で入れ、5小節目からカホン風の「ドン」と「タッ」を足す。
  5. ベースをルート音の白玉で5小節目から敷き、前半4小節との落差を作る。
  6. ギターの低域だけローカットで整えて書き出し、スマホで聞いて、次に直す一点をメモする。

ここまでできれば、あとは同じ考え方で1コーラス、フルサイズへ広げるだけです。足し算と引き算の設計に迷ったら、曲全体のどの位置にいるのかを制作工程マップで確かめながら進めてください。

よくある疑問

高いアコギ音源がなくても作れますか

作れます。DAW付属のアコースティックギター系の音色で十分です。機械的に聞こえる原因の大半は音源の質ではなく全音同時の発音なので、発音をずらす工夫のほうが先に効きます。

ストロークの打ち込みが機械的に聞こえます

構成音を10〜20ミリ秒ずつずらし、ダウンは低い音から、アップは高い音から発音させます。アップは音数を2〜3音に減らし、ベロシティも2〜3割下げてください。

ドラムセットを入れてはいけませんか

禁止ではありませんが、最初から入れると軽さが消えます。シェイカーとカホン風の音から始め、伸びるシンバル類は使わないのが目安です。

BPMはいくつにすればいいですか

85〜105が目安です。仮の歌メロを口ずさみながら、言葉が詰まらない速さへ前後させて決めます。

無料配布|アンパンマン劇場版楽曲を手がけた作曲家の「制作工程マップ」

音出し、コード、ドラム、メロディ、アレンジ、フルコーラス完成までの流れを1枚にまとめた無料マップです。登録するとその場でご覧いただけます。

次に進む記事

弾き語りの骨格ができたら、歌の録音と仕上げの記事へ進みます。

古賀稔宏のプロフィール写真

プロフィール

古賀 稔宏

ギター、ウクレレ、DTM(Cubase)、作曲技法、音楽理論を指導。14歳でギターを始め、同時に作曲も始める。ポップ、ロック、クラシックの要素を含む楽曲を得意とする。

商業音楽の制作・演奏に携わりながら、初心者が止まりやすい場所を制作工程に沿って整理している。