古賀稔宏の作曲ノート作曲・編曲家のDTM制作ノート

アコースティックポップの作り方|ギターと歌をDTMで組む手順

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作曲・編曲家 古賀 稔宏

「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。

アコースティックな曲を作りたいが、録音や打ち込みが軽く聞こえる人へ向けて、ジャンル名の説明ではなく、DAW上で8小節を組む順番に落とします。BPM、ドラム、ベース、コード、メロディ、音色を分けて、書き出して聞ける状態まで進めます。

読み終わったら、まず音を出す、再生する、保存する、短く書き出す、次に確認する一点を決めるところまで進めます。完成度を採点する前に、同じ手順をもう一度再現できるかを見ます。制作中に迷ったら、画面の中で悩み続けず、8小節を書き出して普通の再生環境で聞きます。

制作の軸

アコースティックポップは、音色探しより先に8小節の役割を決めます。

  • BPMと体感を分けて決める
  • キック、ベース、コード、メロディの順に置く
  • ジャンルらしい装飾は骨格の後に足す
  • 同じ音量で書き出して判断する

今日やること

8小節だけ作り、保存して、書き出して、次に直す一点を決めます。

  • 仮音色でドラム、ベース、コード、メロディを置く
  • 4小節目と8小節目に小さな変化を入れる
  • 変更前と変更後を別名保存する
  • スマホや小さい音量で再生して、次の修正点を一つだけ書く

最初に決めること

ジャンル名ではなく、曲の速度、主役、8小節の到達点を先に決めます。

アコースティックポップの作り方で最初に見るのは、音色の名前ではありません。アコースティックな曲を作りたいが、録音や打ち込みが軽く聞こえる人にとって必要なのは、今日のDAW画面で何を置けば前に進むかです。

テンポは、80〜120 BPMを中心に、歌の言葉が自然に乗る速さにする。この範囲は絶対値ではなく、最初に手を動かすための目安です。曲の狙い、歌の言葉数、ドラムの細かさによって、同じジャンルでもかなり変わります。

最初の8小節では、完成形を狙いすぎません。ドラム、ベース、コード、メロディの4段だけを置き、曲の方向が聞こえるかを確認します。音色探しはその後で十分です。

作曲や編曲の現場でも、すべての音を一度に正解へ持っていくわけではありません。まず骨格を外に出し、聞き返しながら必要な音だけを残します。

BPMと体感を分ける

数値を決めたら、速さの印象がどこから出ているかを分けます。

80〜120 BPMを中心に、歌の言葉が自然に乗る速さにする。ただし、BPMの数字だけでジャンルらしさは決まりません。速く聞こえる理由は、ドラムの刻み、ベースの長さ、メロディの音数、コードの切り替わり方に分かれます。

初心者が止まりやすいのは、BPMを上げれば勢いが出ると思ってしまう場面です。BPMを上げると、演奏は忙しくなりますが、曲の芯が強くなるとは限りません。

まずは4小節だけループさせ、テンポを10ずつ変えて聞きます。速くした時に良くなるのか、苦しくなるのかを確認すると、曲に合う速度が見えます。

レッスンで生徒の制作を見ていると、テンポを決める前に音色を探して時間が溶けることがあります。先に速度を決めると、ドラム、ベース、メロディの判断がかなり軽くなります。

ドラムの骨格

派手なフィルより、キックとスネアの位置を先に固定します。

ドラムは、薄いキック、スネア、シェイカーを必要な場所だけに置く。最初の段階では、細かいフィルや装飾よりも、どこで体が前に進むかを決めます。

ストロークの強弱とベースの入り方で流れを作る。このグルーヴの方向を決めずにハットやパーカッションを増やすと、音は多いのに曲が進まない状態になります。

8小節で試すなら、1〜4小節は基本パターン、5〜8小節は少しだけ変化を入れます。変化はクラッシュ、フィル、ハットの開き方のどれか一つで十分です。

MIDIで打ち込む時は、すべてのベロシティを同じにしないようにします。ただし揺らしすぎると不安定に聞こえるため、強い拍だけを少し強くするくらいから始めます。

ベースの置き方

低音は大きさではなく、長さと場所で整理します。

ベースは、ルートを支えながら、コードの変わり目で短く動かす。低音は曲の重さを作りますが、長く鳴らしすぎるとキックやコードの低域を隠します。

初心者はベースを大きくして迫力を出そうとしがちです。しかし低音は、大きくする前に音の終わりを決めるほうが重要です。どこで切るかを決めると、キックの輪郭が残ります。

まずルート音だけで8小節を作り、次にコードが変わる直前だけ経過音を入れます。最初から動かしすぎると、何が曲を支えているのか分からなくなります。

書き出して聞く時は、スピーカーだけでなく小さい音量でも確認します。低音は大きい環境では気持ちよく聞こえますが、実際には曲のバランスを壊していることがあります。

コードの組み方

難しいコードより、メロディが乗る場所を作ります。

コードは、オープンコード感のある進行を使い、sus4やadd9で響きを広げる。コード進行は知識を見せる場所ではなく、メロディと展開を支える場所です。

テンションコードや借用和音を使う場合も、名前を覚えることが目的ではありません。音の色が変わる場所を耳で確認し、必要な場所だけに置きます。

古賀稔宏のレッスンでは、理論を説明する前にコードの響きを鳴らして、明るい、暗い、浮く、戻る、という体感を確認することがあります。進行を丸暗記するより、耳で違いを聞けるほうが制作に使いやすいからです。

8小節では、同じ進行を2回繰り返しても構いません。2回目だけ上物を変えたり、最後のコードを少し変えたりすると、曲が次へ進む感じを作れます。

メロディとフック

覚えやすい形を先に作り、細かい装飾は後から足します。

メロディは、音域を広げすぎず、言葉の抑揚をそのまま音程にする。ジャンルらしさを出そうとして音数を増やす前に、何度も出せる短い形を作ります。

サビや主題になる場所では、最初の1音が重要です。高い音にするのか、短い反復にするのか、長く伸ばすのかを決めると、伴奏の置き方も決まります。

メロディが弱い時は、音程を増やすよりリズムを見ます。同じ音でも、入る位置や伸ばす長さが変わるだけで、かなり印象が変わります。

歌ものの場合は、言葉が自然に入るかを必ず確認します。インストの場合も、リードが歌える形になっているかを口でなぞると判断しやすくなります。

音色の選び方

プリセット探しより、曲の役割で音を選びます。

音色は、アコギ、柔らかいベース、薄いパーカッション、控えめなピアノ、短いリバーブを出発点にします。ここで大切なのは、音色の数ではなく、前に出る音、支える音、空間を作る音を分けることです。

プリセットを探し始めると、制作が止まりやすくなります。まず仮音色でコードとリズムを置き、曲の形が見えた後で差し替えます。

商業音楽の制作でも、最初から最終音色だけで進むとは限りません。仮のピアノ、仮のドラム、仮のベースで構成を見てから、必要な質感へ寄せていきます。

音色を変えたら、必ず音量も見直します。派手な音は大きく聞こえやすいため、良くなったのか大きくなっただけなのかを分けて判断します。

8小節の制作マップ

短い範囲で完成の入口を作り、次の展開へ渡します。

最初の8小節は、完成品ではなく制作の地図です。1小節目で土台を見せ、3小節目で少し変化し、7〜8小節目で次のセクションへ渡します。

A案として、1〜4小節は基本パターン、5〜8小節はドラムか上物を一つ増やします。B案として、1〜4小節は少なめ、5〜8小節でメロディを少し上げます。

この時点でミックスを作り込みすぎる必要はありません。音量バランスだけ整え、各パートの役割が聞こえるかを確認します。

古賀稔宏が制作で重視しているのは、頭の中のイメージを聞ける形に出すことです。8小節でよいので外に出すと、直す場所が具体的になります。

崩れやすい場所

ジャンルらしさを足すほど、曲の芯が消えることがあります。

このジャンルで崩れやすいのは、生っぽさを出すためにタイミングを崩しすぎると、ただ不安定に聞こえることです。ジャンル名に寄せるほど、音色や装飾に意識が行き、曲の骨格が弱くなることがあります。

対策は、ドラム、ベース、コード、メロディを一度ミュートしながら聞くことです。どれか一つを消した時に曲が急に弱くなるなら、そのパートが支えすぎています。

また、同じ場所を長時間触り続けると、判断が鈍ります。15分ごとに書き出して聞き、次に直す一点だけを決めると、作業が散らかりにくくなります。

生徒の制作でも、うまくいかない原因はセンスより工程の混線であることが多いです。いま直しているのがリズムなのか、音色なのか、構成なのかを分けるだけで進みます。

ミックス前の確認

音圧を上げる前に、役割が聞こえるかを確認します。

ミックスでは、最初から音圧を狙いません。まず音量、左右、低域のぶつかり、主役の聞こえ方を見ます。

ギターが歌を隠していないか、低音が薄すぎないか、録音ノイズが目立ちすぎないかを見る。この確認が終わる前にEQやコンプレッサーを深く触ると、原因が見えにくくなります。

EQはソロで決めきらず、全体再生中に動かします。特に中域はメロディ、コード、ギター、シンセが奪い合いやすいため、単体で良い音より全体で必要な音を優先します。

最後に、同じ音量で変更前と変更後を書き出して聞きます。大きい音は良く聞こえるため、音量差をそろえないと判断を間違えます。

完成へ進める基準

完璧さではなく、次の工程へ渡せるかで判断します。

8小節ができたら、完成度ではなく次へ渡せる状態かを見ます。ドラム、ベース、コード、メロディの役割が聞こえ、次のセクションへ進む理由があれば十分です。

次は16小節、32小節、ワンコーラスへ広げます。広げる時は新しい音を増やすだけでなく、音を抜く場所も作ります。抜く場所があるから、サビやクライマックスが強く聞こえます。

制作ログには、今日のテンポ、使ったコード、残した音色、次に直す一点を書きます。長い反省より、再開できるメモのほうが役に立ちます。

検索に戻る場合も、ジャンル名だけではなく、キック、ベース、コード、メロディ、ミックスのどこで止まったのかを言葉にします。検索語が具体的になるほど、次に読む記事も選びやすくなります。

アコースティックポップの制作レシピ表

表は丸暗記ではなく、8小節を作る時の確認順として使います。

項目最初に置くもの注意点
BPM80〜120 BPMを中心に、歌の言葉が自然に乗る速さにする数字は固定ではなく、体感と音数で調整する
ドラム薄いキック、スネア、シェイカーを必要な場所だけに置くフィルより骨格を先に置く
ベースルートを支えながら、コードの変わり目で短く動かす低音は長さと場所を決める
コードオープンコード感のある進行を使い、sus4やadd9で響きを広げる難しさよりメロディの居場所を優先する
メロディ音域を広げすぎず、言葉の抑揚をそのまま音程にする短いフックを作って反復できる形にする
音色アコギ、柔らかいベース、薄いパーカッション、控えめなピアノ、短いリバーブ前に出る音、支える音、空間の音を分ける

よくある疑問

初心者はどこから作ればいいですか

音色探しではなく、BPM、ドラム、ベース、コード、メロディの順で8小節だけ作るのがおすすめです。

ジャンルらしさは何で決まりますか

BPMだけでは決まりません。ドラムの置き方、ベースの長さ、コードの色、メロディの音数、音色の役割が合わさって決まります。

ミックスはいつ始めますか

8小節の骨格が聞こえてから始めます。最初は音量と低域の整理だけで十分です。

記事通りに作れば同じジャンルになりますか

記事の数値は固定値ではなく出発点です。作りたい曲の速度、歌、音色に合わせて調整してください。

次に進む記事

ジャンルの方向が見えたら、止まっている工程に近い記事へ進みます。

古賀稔宏のプロフィール写真

プロフィール

古賀 稔宏

ギター、ウクレレ、DTM(Cubase)、作曲技法、音楽理論を指導。14歳でギターを始め、同時に作曲も始める。ポップ、ロック、クラシックの要素を含む楽曲を得意とする。

商業音楽の制作・演奏に携わりながら、初心者が止まりやすい場所を制作工程に沿って整理している。

無料の制作工程マップ

音出し、コード、ドラム、メロディ、アレンジ、フルコーラス完成までの流れをメールでお送りします。