オーディオインターフェイスはDTM初心者に必要か

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
オーディオインターフェースは、一言でいうと「パソコンに音の専用の出入り口を追加する箱」です。マイクやギターの音をパソコンへ入れる入口と、作った音をヘッドホンやスピーカーへ出す出口をまとめて担当します。
そして、打ち込み中心でDTMを始めるなら、今日は買わなくて大丈夫です。パソコン内蔵のイヤホン端子だけで最初の曲作りは始められます。必要になるのは録音を始める段階からです。この線引きを、本文で具体的にしていきます。
先に見ること
買うかどうかは機能表ではなく「今すぐ録音するか」で決めます。
- 打ち込みだけなら不要。内蔵端子で始められる
- マイクやギターを録るなら必要性が一気に上がる
- 音の遅れ(レイテンシー)が録音の邪魔になったら検討の合図
- 選ぶ時に見るのは入力数・ドライバー・接続の3か所
オーディオインターフェースとは何をする機材か
名前は難しそうですが、役割は「音の玄関」だけです。
パソコンは、そのままでは音楽用のマイクやギターをつなげません。歌を録るためのマイクの端子(XLRという太い3ピンの端子)も、ギターのシールドケーブルの端子も、パソコン本体には挿す穴がないからです。
オーディオインターフェースは、この「挿せない機材」とパソコンの間に立つ変換係です。
マイクやギターの音を、パソコンが扱えるデータに変えて送り込みます。同時に、パソコンの中の音をヘッドホンやスピーカーへきれいに送り出す出口の役目も持っています。
つまり玄関です。外から音を入れる、内から音を出す。
この出入りが仕事のすべてなので、外から音を入れる予定がない人にとっては、仕事の半分が最初から不要ということになります。ここが「必要か」の答えの出発点です。
打ち込みだけなら、なくても始められる
音符をマウスで置く作り方に、音の入口は要りません。
打ち込みとは、マウスやMIDIキーボードで画面に音符を置いていく作り方です。ピアノもドラムもベースも、音はすべてDAW(音楽制作ソフト)の中の音源が鳴らします。
外の世界から音を取り込む工程が存在しないので、入口としてのオーディオインターフェースは出番がありません。
出口はどうでしょうか。パソコンには最初からイヤホン端子が付いていて、打ち込んだ曲を確認する用途ならこれで足ります。
ヘッドホンを内蔵端子に挿して、コードを置き、ドラムを置き、書き出して聞く。この一連の流れは追加の機材なしで完結します。
レッスンの現場でも、機材の判断はシンプルに扱います。打ち込みだけなら必須ではなく、歌やギターを録る段階で必要性が上がる。
買うかどうかは「今すぐ録音するか」で決める、という基準です。始める前に機材をそろえる楽しさはありますが、箱が届いても曲は進みません。
先にDAWの操作に時間を使うほうが、最初の1曲には近道です。
「でも内蔵端子だと音が悪いのでは」と心配になるかもしれません。
確かに聞こえ方は変わりますが、書き出した音源データそのものは、内蔵端子で作っても専用機材で作っても同じです。音の判断を細かくする段階になってから出口を整えれば間に合います。
必要になるのは3つの段階
「いつか」ではなく、合図が来たら買う。その合図は3つです。
1つ目の合図は、マイクやギターを録音したくなった時です。歌を入れたい、ギターの生音を重ねたい、と思った瞬間に、パソコンに挿す穴がない問題へ正面からぶつかります。
音楽用のマイクもギターのシールドも、オーディオインターフェースの入力端子に挿すのが標準の形です。ここが最も分かりやすい買い時で、迷う余地もほとんどありません。
2つ目の合図は、レイテンシーが録音の邪魔になった時です。レイテンシーとは、弾いた音や歌った声がヘッドホンから返ってくるまでの遅れのこと。
パソコン内蔵の音の仕組みは、この遅れが大きくなりがちです。打ち込みだけなら気になりにくいのですが、MIDIキーボードをリアルタイムで弾く、クリックに合わせて録音する、といった場面では遅れがタイミングを狂わせます。
専用のドライバーを持つオーディオインターフェースは、この遅れを短くしやすい設計になっています。
3つ目の合図は、モニター環境を整えたくなった時です。
モニタースピーカー(制作用のスピーカー)で音を確認したい、手元のつまみで音量をさっと変えたい、という段階になると、内蔵のイヤホン端子では接続も操作も窮屈になります。ミックスに踏み込む頃にやってくる合図です。
逆にいえば、この3つのどれも来ていないうちは、買わない判断で問題ありません。合図が来てから選ぶほうが、自分に必要な入力の数や使い方が具体的に分かっているぶん、選び間違いも減ります。
あると何が変わるか
変わるのは録音まわり。変わらないのは曲の中身です。
いちばん大きいのは、録音の入口ができることです。
マイクを挿し、手元のつまみで入力の大きさを調整しながら、歌や楽器をDAWに取り込めるようになります。声が小さすぎる、大きすぎて割れる、といった調整を機材側で行えるのは録音の基本です。
次に、音の返りが速くなります。録音中に自分の声がほぼ遅れなしでヘッドホンに返ってくると、歌いやすさが目に見えて変わります。
レイテンシー対策は、録音の気持ちよさに直結する部分です。
出口の面では、ヘッドホンやモニタースピーカーへの接続が安定し、音量操作が手元に来ます。作業のたびにパソコンの設定を開かなくてよくなるのは、地味ですが毎日の制作では効いてきます。
一方で、変わらないものもあります。コード進行、メロディ、ドラムのパターン。曲の中身は機材では良くなりません。
「あれば録音の世界が開く。ただし曲を作る力は別の練習で育つ」。この距離感で見ておくと、買った後にがっかりしません。
状況別の判断表
自分の行に近いところだけ読めば判断できます。
| やりたいこと | 内蔵端子で足りるか | 判断 |
|---|---|---|
| 打ち込みだけで曲を作る | 足りる | 今は買わず、DAWの操作に時間を使う |
| 歌をマイクで録りたい | 足りない | 音楽用マイクをつなぐ入口として必要 |
| ギターやベースを録りたい | 足りない | シールドを挿す入力が必要 |
| MIDIキーボードの反応が遅い | 場合による | 先にDAWの設定を見て、改善しなければ検討 |
| モニタースピーカーで確認したい | 窮屈になりやすい | ミックスに踏み込む段階で出口として検討 |
選ぶ時に見る3か所
カタログを全部読む必要はありません。見るのは入力数、ドライバー、接続です。
1か所目は入力数です。同時にいくつの音を録るかで決まります。
一人で歌を録る、ギターを録る、という使い方なら入力2つの機種で足ります。弾き語りを一発で録るなら、マイクとギターで2つ同時に使います。
バンドの一斉録音のような予定がなければ、入力数を多く見積もる必要はありません。
2か所目はドライバーです。ドライバーとは、機材とパソコンの間の通訳をするソフトのこと。
自分のOS(WindowsかMacか、そのバージョン)と使うDAWに対応したドライバーが、メーカー公式で配布されているかを買う前に確認します。ここを見ずに買うと、届いた日に音が出せないことがあります。
3か所目は接続です。
多くの機種はUSBでパソコンとつなぎますが、パソコン側の端子の形と合うか、ケーブルは付属するか、電源はUSBだけで足りる設計かを確認します。ノートパソコンの人は特に、端子の種類を先に見ておくと安心です。
音質の数値やつまみの数で悩み始めると決められなくなります。録音の入口として成立するか。
この一点で見れば、初心者が最初に選ぶ機材はどれも大きく外しません。
つないだ後に止まりやすい場所
買った日に音が出ない原因は、ほぼ2つに絞れます。
最初の関門はドライバーの入れ忘れです。USBで挿せばすぐ使えると思いがちですが、そうではない機種が多くあります。
実際のレッスンでも、ドライバーが入っていなくて認識されない例が繰り返し起きています。メーカー公式サイトから機種用のドライバーを入れて、パソコンとDAWを再起動する。
ここまでが「接続」だと覚えておいてください。
次の関門は、DAW側の切り替えです。DAWは、どの機材を音の出入り口に使うかを設定で選ぶ仕組みになっています。
Cubaseならスタジオ設定のオーディオシステムで、つないだオーディオインターフェースのドライバーを選びます。ここを切り替えないと、機材は正しくつながっているのに音は内蔵端子から出続けます。
使い始めてからは、バッファサイズという設定を場面で使い分けます。録音の時に返りが遅いと感じたら数値を下げて反応を速くする。
ミックスの時に音が途切れたら数値を上げて安定させる。録音時は速さ、ミックス時は安定と、見る基準を分けるのがコツです。
機材の接続が終わったら、次は曲を進める番です。
入口と出口がそろっても、コードからドラム、メロディへと進む順番が見えていないと手が止まります。録音の前に、1曲を完成させるまでの流れを一度確認しておくと、機材が本当に活きてきます。
よくある疑問
打ち込みだけでも買えば音は良くなりますか
書き出した音源データの中身は変わりません。再生時の聞こえ方が変わることはありますが、曲そのものが良くなるわけではないので、打ち込み中心の段階で急ぐ必要はありません。
USB接続のマイクなら不要ですか
USBマイクは音の変換の仕組みをマイク側に内蔵した機材で、歌やナレーションだけ録るなら入口になります。ただしギターやベースをつなぐ用途には向かないため、録る対象が増えそうなら通常のマイクとオーディオインターフェースの組み合わせを検討します。
つないだのにDAWで選べません。故障ですか
故障より先にドライバーを疑ってください。挿すだけでは使えない機種が多く、メーカー公式のドライバーを入れてパソコンとDAWを再起動すると認識される例がほとんどです。
後から買うと損をしませんか
損はしません。打ち込みで作る力は内蔵端子のままでも育ちます。録音を始めるタイミングで買えば、必要な入力数も自分で判断できるようになっています。
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