アレンジの順番

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
アレンジは、コード進行と主役のメロディができた後の作業です。ここから音を足していきますが、足す順番を決めずに手を動かすと、音は増えても曲がまとまりにくくなります。まず、どの音から重ねるかを決めます。
重ねる順番は、ドラム、ベース、伴奏、装飾です。低い音域から上へ積んでいくと、土台が先に決まり、後から乗せる音の居場所が見えてきます。読み終わったら、今ある4小節にドラムを一つ足すところから始めてください。
先にやること
アレンジの順番は、低い音域から上へ、ドラム、ベース、伴奏、装飾と積んでいきます。
- ドラムでリズムの骨組みを作る
- ベースでコードの一番下を支える
- ピアノやギターで和音の厚みを足す
- 装飾は最後に、隙間へ少しだけ入れる
アレンジは何から足すか
足す前に、元の4小節がはっきりしているか確かめます。
アレンジは、ゼロから音を探す作業ではありません。すでにあるコードとメロディに、リズムや厚みを足して曲の形にする作業です。
だから、足し始める前に、元になる4小節のコードとメロディがはっきりしているかを先に確かめます。土台があいまいなまま音を重ねると、どこを直せばいいのか分からなくなります。
足す順番を決めておくと、迷いが減ります。低い音域から上へ、ドラム、ベース、伴奏、装飾と重ねます。
土台になる音を先に置くと、後から乗せる音の高さや量を決めやすくなります。この積み方は、下の音域から上の音域へ順番に聞いていく整え方と同じ考え方です。
制作の現場でも、いきなり細かい飾りから作ることはまずありません。まず時間と低音を固め、それから中音域、最後に上の飾りへ進みます。
この順番は、初心者が一人で作る時にもそのまま使えます。
始める前に、使いそうな音源を先に立ち上げておくと手が止まりにくくなります。ドラム、ベース、ピアノを並べておけば、音色を探すたびに作業が止まりません。
準備で入口を軽くしておくと、アレンジの本番に集中できます。
ドラムでリズムを決める
曲の時間の流れを、最初に固めます。
最初に足すのはドラムです。ドラムは曲の時間の流れを作る音で、これが決まると他の音のリズムも合わせやすくなります。
キック、スネア、ハイハットの三つだけで十分です。複雑なパターンより、まず一定のビートを作ることを優先します。
キックは低い太鼓で拍の頭を、スネアは手拍子のような音で拍の裏を作ります。ハイハットは細かく刻んで速さを感じさせます。
まずはこの三つで8ビートの形を作り、細かいフィルや飾りは後回しにします。
リズムが変わると、コードやメロディが同じでも曲の印象は大きく変わります。逆に、ドラムを何となく置くと曲全体が平坦に聞こえやすくなります。
だからアレンジの最初の一手として、ここは丁寧に置きます。
パターンに迷ったら、口でリズムを言ってから打ち込みます。ドン、タン、ドドタンのように声に出せる形を、そのままキック、スネア、ハイハットへ置き換えます。
譜面や名前から入るより止まりにくく、自分の中にあるノリを外へ出せます。
ベースで低音をつなぐ
キックと合わせて、下半分を固めます。
ドラムの次はベースです。ベースは、コードの一番下の音を支える低い音です。
最初はコードのルート音、つまりコード名と同じ高さの音を置くだけで構いません。動かしすぎると土台がぼやけるので、まずは動きを少なくします。
ベースのリズムは、キックと合わせると土台がまとまります。キックが鳴る場所でベースも鳴らすと、低音が一つのかたまりに聞こえます。
ばらばらに鳴らすと、下の方がにごって聞こえやすくなります。
ドラムとベースがそろうと、曲の下半分が決まります。この段階で一度再生し、リズムと低音だけで前へ進む感じがあるかを聞きます。
ここがしっかりしていると、上に乗せる音の判断が楽になります。
アレンジで足す順番と役割
迷ったら、上から順に見直します。
| 順番 | 足す音 | その音の役割 |
|---|---|---|
| 1 | ドラム | リズムと曲の速さを決める |
| 2 | ベース | コードの一番下を支える |
| 3 | 伴奏 | 和音の厚みと響きを作る |
| 4 | 装飾 | 隙間を埋めて変化をつける |
伴奏で厚みを作る
メロディの邪魔をしない高さに置きます。
下半分が決まったら、伴奏を足します。伴奏は、ピアノやギター、パッドなどで和音の厚みを作る音です。
コードを鳴らすことで、メロディの周りに響きが生まれ、曲がさびしくなくなります。
伴奏はメロディの邪魔をしない高さに置きます。メロディと同じ高さで動きの多い和音を鳴らすと、主役とぶつかります。
長く伸ばす白玉のコードや、静かな刻みから始めると混ざりにくいです。
一つの伴奏で足りなければ、もう一種類だけ足します。ピアノで和音、ギターで刻み、のように役割を分けると、重なっても濁りにくいです。
同じような動きの音を二つ重ねても、厚みはあまり増えません。
装飾は最後に少しだけ
入れない場所があるから、入れた場所が目立ちます。
最後が装飾です。装飾は、短いフレーズや効果音、細かい動きなど、曲の隙間を埋める音です。
メロディとメロディの間や、フレーズの終わりに少しだけ入れます。ここまで来て初めて、飾りの出番になります。
装飾は全部の小節に入れる必要はありません。むしろ、入れない場所があるから、入れた場所が目立ちます。
場面の切り替わりの直前に一つ入れる、くらいの量から試します。
ここまで来たら、ドラム、ベース、伴奏、装飾がそろっています。もう一度通して聞き、主役のメロディが一番前に聞こえるかを確認します。
聞こえにくければ、足した音のどれかが多すぎるか、高さがメロディと重なっています。
足しすぎを防ぐ
一つ足すたびに、主役が聞こえるか確認します。
アレンジで一番多い失敗は、音を足しすぎることです。豪華にしようとして音を重ねると、どの音も中途半端に聞こえ、主役のメロディが奥に引っ込みます。
音の数と豪華さは、同じではありません。
足すたびに、主役のメロディが聞こえるかを確認します。一つ足して聞こえにくくなったら、その音は多すぎるか、高さがメロディとぶつかっています。
下げるか、抜くか、鳴らす場所を減らします。
迷ったら、一度すべての飾りを消して、ドラム、ベース、伴奏、メロディだけで聞きます。それで曲として成り立っているなら、装飾は本当に必要な場所にだけ戻します。
土台が弱いのを飾りで隠そうとすると、かえって散らかります。
同じ場所で音を足したり消したりを長く続けているなら、一度書き出して画面を閉じます。スマホなど別の機器で聞くと、多すぎる音や足りない音に気づきやすくなります。
整え終えたら、制作工程マップで全体の流れも確認しておくと、次の一手が見えます。
広げる時も同じ順番で
8小節や1コーラスでも、積む順番は変わりません。
4小節のアレンジがまとまったら、8小節や1コーラスへ広げます。この時も、足す順番は同じです。
ドラム、ベース、伴奏、装飾の順で、新しい場所にも同じように積んでいきます。順番が決まっていると、範囲が広がっても手が止まりにくくなります。
広げる場所では、全部を同じ密度にしません。Aメロは音を減らして静かに、サビは音を増やして厚く、というように、場所ごとに足す量を変えます。
同じ順番で積みつつ、どこまで足すかで場面の差を作ります。音を抜くことも、立派なアレンジです。
広げるほど音のトラックは増えます。増えたら、もう一度低い音域から上へ順番に聞き直します。
ドラムとベースがぶつかっていないか、伴奏が主役をおおっていないか。土台から確認すると、どこが多いのかが見えてきます。
ここまでできたら、制作工程マップで曲全体の流れも見直しておきます。
よくある疑問
アレンジは何から足せばいいですか
ドラムから足してリズムの土台を作り、次にベース、伴奏、装飾の順で重ねます。低い音域から順に積むとバランスを取りやすいです。
音を足しすぎてしまいます
一つ足すたびに主役のメロディが聞こえるか確認します。聞こえにくくなったら、その音を下げるか抜きます。
装飾はどのくらい入れますか
装飾は曲の隙間を埋める程度で十分です。全部の小節に入れず、フレーズの終わりや切り替わりに置きます。
コードとメロがまだない時はどうしますか
先にコード進行と主役のメロディを4小節作ってからアレンジに入ります。土台がないと足す音の判断がしにくいです。
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足す音そのものの作り方を、一つずつ見ていきます。