イントロの作り方

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
イントロは、曲を再生して最初に耳へ届く数秒です。ここで「お、いいかも」と思ってもらえるか、それとも指がスキップへ伸びるか。イントロは曲の顔であり、続きを聞くかどうかの入口になります。
とはいえ、この入口だけを豪華にしようとすると、かえって長く、もたついた始まりになりがちです。ここでは、長さの目安、サビのフレーズやコードを一部だけ先に見せる作り方、そして歌に入る直前の受け渡しまで、掴みを作る順番で整理します。
先に見ること
イントロは短く、続きを聞きたくさせる掴みに徹します。
- 長さは4小節から8小節を目安にする
- サビのフレーズやコードを一部だけ先に見せて期待を作る
- 飾りを盛るより、曲の雰囲気が一瞬で伝わることを優先する
- 最後の1小節は、歌やAメロへ渡す助走に使う
曲の顔として掴む
イントロの仕事は、続きを聞かせることです。
イントロは、曲を頭から流したときに最初に鳴る区間です。歌やサビが始まる前の、いわば前置きにあたります。
聞き手はまだ曲を知りません。
だからこそ、ここで曲の雰囲気やテンポ、ジャンルの手触りが一瞬で伝わると、その先へ耳を進めてもらいやすくなります。
初心者がつまずきやすいのは、イントロを一つの作品として仕上げようとするときです。
かっこいいフレーズを足し、音を重ね、気づくと歌に入る前だけで20秒を超えている。掴みのはずが、長い待ち時間になってしまいます。
イントロの良し悪しは、それ単体の完成度では決まりません。
続きを聞きたくなるかどうかで決まります。
判断の軸は三つです。曲の雰囲気が伝わるか、テンポやノリが分かるか、そして次に歌が来ると予感させるか。
この三つが満たせていれば、音数は少なくても入口として合格です。
長さは4〜8小節
短く作って、必要なら伸ばします。
長さに決まりはありませんが、歌ものの入口としては4小節から8小節を目安にすると扱いやすいです。
テンポにもよりますが、だいたい数秒から十数秒。この範囲なら、聞き手が待たされたと感じる前に歌へ入れます。
まずは4小節だけ作ってみます。
短い範囲なら良し悪しの判断も速く、作り直しも軽い。
物足りなければ8小節へ伸ばし、それでも長いと感じたら2小節へ削ります。長さは最初に決め込むより、鳴らしながら合わせていくものです。
逆に、イントロが16小節を超えて長くなっているときは、たいてい役割を詰め込みすぎています。
掴みと展開を一つのイントロで両方やろうとすると間延びします。掴みはイントロ、展開はAメロやサビに任せると、全体の見通しが良くなります。
イントロの型早見表
迷ったら、この中から一つ選んで試します。
| 型 | どんな入り方 | 向いている曲 |
|---|---|---|
| サビ先出し | サビのメロディやコードを一部だけ鳴らす | 掴みを最優先したい曲 |
| リフ始まり | 短い印象的なフレーズを繰り返す | ロックやギターもの |
| コードだけ | 伴奏を薄く流して雰囲気を出す | バラードや静かな曲 |
| ドラムから | リズムだけで空気とテンポを作る | ノリで聞かせる曲 |
| いきなり歌 | 前奏を置かず歌から始める | 最速で掴みたい曲 |
サビを少し先に見せる
いちばん聞かせたい部分を、少しだけ予告します。
掴みを強くしたいときに使いやすいのが、サビのフレーズやコードを一部だけイントロに先出しする方法です。
予告編で本編の名場面をちらっと見せるのと同じ発想です。後でサビが来たときに「これだったのか」とつながり、曲全体に一体感が出ます。
やり方はいくつかあります。
- サビの歌メロを楽器で軽くなぞる。
- サビのコード進行だけを先に流す。
- サビで使う特徴的な音色を、薄く一瞬だけ出す。
全部を見せる必要はありません。むしろ一部だけ隠すから、続きへの期待が生まれます。
気をつけたいのは、先出しでサビを鳴らしきってしまわないことです。
イントロで本編と同じ迫力を出すと、本物のサビが来たときの効果が薄れます。
音数を減らす、音量を抑える、楽器を間引く。予告らしく、控えめに見せるのがちょうどよい塩梅です。
好きな曲のイントロで確かめる
手本は、いつも聞いている曲の中にあります。
イントロの作り方に迷ったら、自分が好きな曲のイントロを一つ選んで、耳で分解してみます。
何秒あるか、最初に鳴る楽器は何か、歌が始まる直前に何が起きているか。数えて書き出すだけでも、掴みの作り方が具体的に見えてきます。
聞くときの観点を絞ると拾いやすくなります。
- 長さは何小節か。
- 使っている楽器は多いか少ないか。
- サビの要素が先に出ているか。
- 歌へ入る合図はどう置かれているか。
この四つをメモしながら二、三曲ぶん並べると、ジャンルごとの入口の癖が見えてきます。
見つけた型は、そのまま真似せず骨組みだけ借ります。
楽器の数や長さの配分、歌へ渡す一手といった構造は共通で使えますが、フレーズそのものを写すと自分の曲になりません。
制作の現場でも、参考曲は設計図として見て、音は自分で置き直します。借りるのは順番、埋めるのは自分の音です。
分解は一度で終わりにせず、作ったイントロを見直すときにもう一度使います。
自分の入口と手本を並べて聞くと、音が多すぎる、掴みが弱い、歌への渡しが唐突といった差が耳で分かります。直す場所が具体的になるほど、作り直しは速く済みます。
歌へ渡す最後の1小節
イントロの終わりは、歌の入口です。
イントロで意外と差が出るのが、いちばん最後の1小節です。
ここは、次に歌やAメロへバトンを渡す助走の区間になります。ここが唐突だと、せっかく作った掴みから歌へ、段差を踏むようにぎくしゃくつながってしまいます。
レッスンで使っている判断メモに、メロディはどの拍から音や言葉が入るかで印象が変わる、というものがあります。
1拍目から素直に入るのか、少し待って入るのか、小節の手前から食い気味に入るのか。歌の入り方に合わせて、イントロの終わり方もそろえます。
具体的には、最後の1小節で音を少し減らして隙間を作る、ドラムに小さなフィルを入れて合図にする、伸ばしていた音をすっと切る。
こうした一手で、聞き手に「そろそろ歌が来る」と伝えられます。渡す側と受け取る側の呼吸が合うと、イントロと歌が地続きに聞こえます。
長くなってしまう時
足すより、削る方向で考えます。
イントロがどうしても長く、もたつくときは、たいてい音を足しすぎています。
かっこよくしようとフレーズを重ねるほど、入口は重くなります。
一度、鳴っている音を役割ごとに分けて聞いてみてください。主役、低音、リズム、飾り。掴みに効いていない飾りは、思い切って抜きます。
それでも決まらないときは、いったんイントロを2小節まで削るか、いっそ無くして歌から始めてみます。
前奏なしで通して聞くと、本当に必要な入口だったのかが見えてきます。必要だと感じたら、そのときに最小限だけ足し直します。
作った入口は、短くても書き出して、スマホなど普段聞く環境で流してみます。
制作画面の中では良く見えても、外で聞くと長く感じることはよくあります。
掴みができたら、次はAメロやサビへつなげて1曲の流れにします。全体の並べ方は制作工程マップに1枚でまとめています。
よくある疑問
イントロは何小節くらいが良いですか
決まりはありませんが、歌ものなら4小節から8小節が目安です。長いと歌が始まる前に飽きられやすいので、まず短めに作って、必要なら伸ばします。
イントロが思いつきません
サビやAメロで使うコードやフレーズを一部だけ持ってくると作りやすいです。ゼロから新しい素材を考えるより、曲の中にある材料を薄く鳴らすところから始めます。
イントロとAメロのつなぎが不自然です
イントロの最後の1小節を、歌に入るための助走として使います。音を少し減らす、ドラムで小さなフィルを入れるなど、次が来る合図を置くと自然につながります。
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