本文へスキップ
古賀稔宏の作曲ノート作曲・編曲家のDTM制作ノート

コード進行が単調な時の直し方

古賀稔宏のプロフィール写真

作曲・編曲家 古賀 稔宏

「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。

C・Am・Dm・Gのような4つのコードを並べてループさせると、3周目あたりで飽きてきます。ここで多くの人は「進行の選び方が悪かった」と考え、コードブックを開き直します。ところが、進行を丸ごと差し替えても、たいてい同じ場所でまた飽きます。

退屈さの正体は、進行そのものより「同じ形が同じまま続くこと」にあります。だから直す時は、進行を捨てる前に、進行を残したまま動かせる部分から順に触ります。ベースの音、コード1つ、8小節目。この3つを試して、それでも平らなら、最後に作り直します。譜面は使いません。

先に見ること

コード進行が単調な時は、作り直す前に「戻しやすい順」で3つ試します。

  • ①ベースの音だけを変える(分数コード)。上のコードは触らない
  • ②4小節のうち1つだけを、構成音の近い代理コードに差し替える
  • ③4小節を2周させて、8小節目だけ別のコードにする
  • 3つとも効かなかった時だけ、進行そのものを作り直す

触る順番は「戻しやすい順」

影響の小さいものから触ると、何が効いたか分かります。

同じ4小節を何周も聞くと、耳は次に来るコードを先に当ててしまいます。当たり続けると注意が切れ、これが「単調」「退屈」と感じる正体です。コードの選び方が間違っているわけではありません。予想が外れる瞬間が一度もないことが問題です。

だから直し方の基本は、予想が外れる場所を1つ作ることです。進行を全部入れ替えると、予想が外れるどころか、聞き手が形を覚える前に景色が変わってしまいます。せっかく耳に残り始めた形まで消えます。

レッスンでドラムを教える時、1小節のパターンをそのまま繰り返すと機械的に聞こえるので、A・B・A・Cのように戻る場所と変える場所を作る、という考え方を使います。コード進行も同じです。戻る場所を残したまま、変える場所を1つ決める。これが全体の判断軸になります。

変える場所の候補は3つあり、触る順番は「元に戻しやすい順」です。ベースの音を1つ変えるのは、MIDIノート1つの話なので一瞬で戻せます。コードを1つ差し替えるのは、3音まとめて動かすので少し影響が大きい。8小節目を変えるのは、曲の長さ自体を倍にする作業です。

影響の小さいものから試すと、効いたかどうかを1つずつ確かめられます。3つ同時に変えると、良くなっても悪くなっても、どれが原因か分からなくなります。

試す前に、今の4小節を別名で保存しておきます。元に戻せると分かっていると、思い切って変えられます。

①ベースの音だけを変える

上のコードは1音も触らず、一番下の音だけを動かします。

最初に触るのはベース、つまり一番低いパートの音です。コードのトラックは何も変えず、ベースのトラックで鳴らしている音だけを別の音にします。コード名の下に低音を書き添えたものを分数コードと呼びますが、やることは「一番下の音を1つ差し替える」だけです。

C→Am→Dm→Gで試すなら、4小節目のGの下を、ソではなくシにします。G/Bと書く形です。上ではソ・シ・レのGが鳴ったままなので、響きの種類は変わりません。変わるのは、4小節目から1小節目のCへ戻る瞬間です。ベースがソからドへ跳ぶ代わりに、シからドへ半音上がります。戻る動きがなめらかになり、同じ4小節に前へ進んでいる感じが出ます。

もう1つの候補は、3小節目のDmの下をレからファにすることです。Dm/Fの形です。ベースがファ・ソ・ドと階段で上がり、後半2小節に流れが生まれます。

効いたかどうかは、ループのつなぎ目で判断します。4小節目から1小節目へ戻る時、「戻された」と感じていたのが「戻ってきた」に変わっていれば成功です。ここが変わらないなら、別の小節のベースを試します。

ベースを動かす場所は、4小節に1箇所までにします。毎小節ベースを変えると、土台そのものが揺れて、落ち着かない進行になります。変化は1箇所にあるから目立ちます。

この方法の良いところは、後で乗せるメロディに影響しないことです。コードの構成音は同じなので、すでにメロディがある場合も作り直しは要りません。

②1つだけ代理コードに差し替える

構成音が2つ重なるコードなら、入れ替えても流れは切れません。

ベースだけでは物足りない時、次はコードそのものを1つ差し替えます。ただし4つ全部ではなく、1小節だけです。差し替え先は、今のコードと構成音が2つ重なるコードから選びます。これを代理コードと呼びます。

たとえば3小節目のDm(レ・ファ・ラ)をF(ファ・ラ・ド)にします。ファとラが共通なので、流れは切れません。変わるのは色合いで、少し曇っていた3小節目が明るく開けます。2小節目のAm(ラ・ド・ミ)をF(ファ・ラ・ド)にする手もあります。ラとドが共通で、切なさが広がりに変わります。

どの小節を差し替えるかは、1小節目は最後まで残すのが目安です。1小節目は帰ってくる場所で、ここを変えると土台ごと変わってしまいます。まず3小節目、次に2小節目の順に試します。

差し替えたら、その小節だけを聞くのではなく、4小節を頭から通します。1小節だけ聞くと良く聞こえても、前後とつながっていないことがあります。特に、差し替えた小節から次の小節へ移る瞬間に、引っかかりがないかを聞きます。

ここで注意したいのは、代理コードは色を変える道具であって、退屈さを消す道具ではないことです。差し替えて響きが変わっても、4小節の繰り返しという形は残ります。それでもまだ平らに感じるなら、原因は色ではなく長さにあります。次の③に進みます。

差し替えたコードが暗すぎる、明るすぎると感じたら、元に戻して構いません。合わない代理コードを無理に残すより、①のベースの変化だけで進んだほうが、まとまりは保てます。

③8小節目だけを変える

2周目の最後で、初めて予想を裏切ります。

4小節を2回並べて8小節にし、8小節目だけを別のコードにします。1小節目から7小節目までは元のままです。聞き手は1周目で形を覚え、2周目に入って「同じだ」と気づきます。その直後の8小節目で予想が外れるので、耳が引き戻されます。

C→Am→Dm→Gなら、8小節目のGを次のように変えます。

  • 8小節目をFにする。次のまとまりへ進みたい感じが出ます。
  • 8小節目を2拍ずつに割って、Dm→Gにする。動きが速くなり、走り出す感じが出ます。
  • 8小節目をEmにする。少し影が差して、続きが気になる形になります。

どれか1つを選び、8小節を頭から通して聞きます。ここでも変えるのは1箇所です。8小節目と一緒に4小節目も変えると、1周目で形を覚える前に崩れてしまい、変化が変化として聞こえません。

5小節目は、1小節目と同じCに戻します。戻る場所を守るためです。8小節目で外れた予想が、次の周の1小節目のCで着地します。この「外れて、戻る」の組み合わせが、平らだった4小節に前後の流れを作ります。

この方法は、①や②と重ねて使えます。ベースを1箇所動かした4小節を2周させ、8小節目だけ変える。変化が2箇所に増えますが、1周目と2周目の違いは8小節目だけなので、まとまりは崩れません。

逆に、8小節目を変えても手応えがない時は、変えたコードが元のGと似すぎていることが多いです。Fが弱ければEm、Emが弱ければ2拍割り、というように、変化の大きさを一段ずつ上げます。

作り直すのは3つの後

それでも平らなら、原因はコード以外にあるかもしれません。

ベース、代理コード、8小節目。この3つを試しても退屈なら、進行を作り直す前に、もう1つ確かめることがあります。コード以外に何が鳴っているか、です。

ピアノの白玉でコードだけを鳴らしている状態は、どんな進行でも平らに聞こえます。ドラムがない、メロディがない、音色が1つだけ、という状態で「コード進行が単調」と判断するのは早すぎます。キックとスネアだけでも置いてから、もう一度聞きます。コードの退屈さだと思っていたものが、実は「コードしか鳴っていない」退屈さだった、ということはよくあります。

ドラムを足しても平らで、3つの直し方も効かなかった。ここまで来て初めて、進行そのものを作り直します。その時も、元の4小節は消さずに別名で残しておきます。新しい進行が良くなかった時、戻る場所があると作業が止まりません。

作り直す時の順番は、はじめから作る時と同じです。使うコードを絞り、最後の小節から決める。その手順はコード進行の作り方にまとめています。

多くの4小節は、①のベース1箇所か、③の8小節目で動き出します。進行を捨てる前に、今ある4小節そのものを疑わないでください。疑うのは、変化があるかどうかだけです。

3つの直し方の早見表

迷ったら上から順に、1つずつ試します。

順番触るもの変わること効かない時の次の一手
①ベースの音ベーストラックの音を1つ(例: G→G/B)ループのつなぎ目がなめらかになる別の小節のベースを試す。4小節に1箇所まで
②代理コード1小節分のコード(例: Dm→F)その小節の色合いが変わる暗すぎ・明るすぎなら戻して③へ
③8小節目2周目の最後の1小節(例: G→F)2周目に次がある感じが出るF→Em→2拍割りの順に変化を大きくする
作り直し進行そのもの土台ごと変わるドラムを足して聞き直してから判断する

3つに共通するのは、変える場所を1箇所に絞ることです。変えて、頭から通して聞き、良ければ残す。1つ試すごとに保存名を変えておくと、どこで良くなったかを後から追えます。動き出した4小節をドラムやメロディと重ねて1曲へ広げる順番は、無料の制作工程マップで確認できます。

よくある疑問

分数コードと代理コード、どちらを先に試せばいいですか

分数コード、つまりベースの音を変えるほうが先です。上のコードを触らないので響きの種類が変わらず、MIDIノート1つで元に戻せます。ベースを1箇所動かしても平らなら、次に1小節だけ代理コードへ差し替えます。

4小節目ではなく8小節目を変えるのはなぜですか

聞き手が1周目で形を覚え、2周目で「同じだ」と気づいた直後に予想を外すためです。4小節目を変えると、形を覚える前に崩れてしまい、変化が変化として聞こえません。

3つ試しても単調なままです

進行を作り直す前に、コード以外に何が鳴っているかを確かめます。ピアノのコードだけの状態はどんな進行でも平らに聞こえるので、キックとスネアだけでも足してから聞き直します。それでも平らなら、元の4小節を別名で残したうえで作り直します。

変える場所は1箇所だけでいいのですか

最初は1箇所です。1周目と2周目の違いが1箇所なら、聞き手は変化として受け取れます。同時に3箇所変えると、何が効いたか分からず、良くなっても再現できません。効いた1箇所を残してから、次の1箇所を足します。

コードの「床」を、先に用意しておく

C・Am・Dm・G の4小節ループMIDIと、90秒ワンコーラスの下地を無料でお送りしています。鳴らしながら鼻歌を乗せていけば、メロディを探す作業がぐっと楽になります。

次に進む記事

1箇所の変化で動き出した4小節に、ドラムとメロディを重ねて曲の流れへ広げます。

古賀稔宏のプロフィール写真

プロフィール

古賀 稔宏

ギター、ウクレレ、DTM(Cubase)、作曲技法、音楽理論を指導。14歳でギターを始め、同時に作曲も始める。ポップ、ロック、クラシックの要素を含む楽曲を得意とする。

商業音楽の制作・演奏に携わりながら、初心者が止まりやすい場所を制作工程に沿って整理している。

共有する

「作曲・コード・メロディ」の記事をすべて見る