コード進行が単調な時の直し方

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
同じコードを並べてはみたものの、何度聞いても平らで、盛り上がらない。コード進行が単調に聞こえるのは、初心者がよくぶつかる壁です。
ただ、原因はだいたい決まっていて、直し方も少しずつ試せます。
単調さの多くは、同じ進行の繰り返しと、全部を基本形で鳴らしていることから来ます。
ここでは、その原因と、まず1箇所だけ変える具体的な方法を、難しい言葉を避けて説明します。譜面は使いません。
先に見ること
コード進行が単調な時は、原因を2つに分けて、1箇所だけ変えます。
- 同じ進行を最後までそのまま繰り返していないか見る
- すべてのコードを基本形のまま鳴らしていないか見る
- 変えるのは、まず1箇所だけにする
- 分数コード・代理コード・転回形を1つずつ試す
単調に聞こえる2つの原因
音源やセンスより先に、この2つを疑います。
コード進行が単調に聞こえる時、原因は大きく2つに分かれます。
- 1つは、同じ4小節の進行を、曲の最後までそっくり繰り返していること。
- もう1つは、すべてのコードを基本形、つまり構成音を低いほうから順に積んだ形のまま鳴らしていることです。
どちらも、悪いわけではありません。安定していて、崩れにくい。
ただ、変化が少ないぶん、長く聞くと平らに感じます。人の耳は、同じものが続くと注意が薄れ、少しの違いがあると引き戻される性質があるからです。
だから直し方の方針は、進行を全部作り替えることではありません。今の安定した土台を残したまま、どこか1箇所に小さな変化を作ることです。
繰り返しと変化が同じ場所に共存すると、単調さは自然にやわらぎます。
大切なのは、単調さを「才能がないから」と受け取らないことです。単調に聞こえるのは、多くの場合ただの構造の問題で、原因さえ分かれば手を動かして直せます。
だから最初にやることは、落ち込むことではなく、上の2つのどちらに当てはまるかを見分けることです。
まず1箇所だけ変える
全部を変えると、元の良さまで消えます。
単調さを直そうとして、いきなり全部のコードを差し替える人がいます。これはおすすめしません。
うまくいかなかった時に元へ戻せず、たまたま良くなっても、何が効いたのか分からないからです。
変えるのは、まず1箇所だけにします。たとえば、繰り返している4小節のうち、2回目の最後のコードだけを別の候補に差し替える。
それだけで、次へ進む感じが出ることがあります。1箇所変えて聞き、良ければ残し、悪ければ戻す。
この小さな試行を重ねるのが、遠回りに見えて一番速いです。
この後で紹介する3つの方法も、すべて「1箇所だけ試す」で使えます。名前は少し難しく聞こえますが、やることはどれも、すでにあるコードを少しいじるだけです。
1箇所を変えた後は、必ず全体を通して聞き直します。その1箇所だけをループしても、流れの中で効いているかは分かりません。
頭から4小節、または8小節を通して、変えた場所が自然につながっているかを確認します。
変化を置く場所を選ぶ
同じ変化でも、置く場所で効き方が変わります。
1箇所だけ変えると決めたら、次はどこに置くかです。同じ差し替えでも、置く場所によって効き方が変わります。
まず試したいのは、繰り返しの2回目です。1回目はそのまま素直に聞かせ、2回目で少し変えると、聞き手は「あれ、さっきと違う」と感じて耳を戻します。
次に効きやすいのが、4小節の最後、次のまとまりへ入る手前です。ここに変化を置くと、区切りと前進の感じが同時に出ます。
逆に、小節の頭を毎回変えると、土台が安定しないので、かえって落ち着かない進行になりやすいです。
迷ったら、まず2回目の最後の1コードだけを動かしてください。効果が分かりやすく、元にも戻しやすい、いちばん安全な場所です。
ここで手応えをつかんでから、分数コードや代理コード、転回形へ広げていきます。
分数コードで低音を動かす
一番下の音だけを入れ替えます。
分数コードとは、コードはそのままで、一番下で鳴る低音だけを別の音に入れ替えたものです。名前に分数が付くのは、コード名の下に低音の名前を書くからで、計算とは関係ありません。
使いどころは、低音を1つずつ階段のように動かしたい時です。たとえばCからAmへ進む間に、低音がドからラへいきなり跳ぶ代わりに、途中のシを低音にした形を1つ挟むと、低音がド・シ・ラとなめらかに下ります。
コードの響きはほとんど変わらないのに、下の動きが出て、単調さが減ります。まずは1箇所、低音がなめらかに動く場所を探して差し替えてみます。
分数コードは、ベース、つまり一番低い楽器の動きとしても考えられます。
コードを担当する楽器はそのまま押さえ、低音だけを別の音にずらす。バンドで言えば、ギターは同じ和音のまま、ベースだけが動くイメージです。
代理コードで少し色を変える
似た響きの別のコードへ置き換えます。
代理コードとは、今あるコードと似た響きを持つ、別のコードへの置き換えです。似た響きになるのは、構成音が多く重なっているからです。
置き換えても進行の流れは保たれるので、単調さだけを崩せます。
入門として分かりやすいのは、明るいコードを、それと近い切ないコードに替えることです。たとえばCの代わりにAmを、Fの代わりにDmを置いてみます。
ド・ミ・ソと、ラ・ド・ミのように多くの音が共通しているので、進行として自然につながりながら、色合いだけが少し変わります。これも一度に全部ではなく、1箇所だけ替えて聞き比べます。
置き換えると響きが暗くなりすぎる時は、無理に残さなくて大丈夫です。代理コードは、あくまで選択肢を増やす道具です。
元のコードのほうが良ければ戻し、別の場所でもう一度試します。合う場所が1つ見つかれば、それだけで進行の印象は変わります。
転回形でつながりを滑らかに
コードは同じまま、音の積み方を変えます。
転回形とは、コードの構成音の並び順を変えて、一番下に来る音を差し替えたものです。
Cならド・ミ・ソが基本形ですが、ミ・ソ・ドやソ・ド・ミの順に積んでも、鳴っているのは同じCです。コードそのものは変わりません。
すべてを基本形で鳴らすと、コードが変わるたびに音の位置が大きく飛び、ぶつ切りに聞こえます。転回形を使って、隣のコードと近い音の並びにそろえると、コードからコードへのつながりがなめらかになります。
響きは同じでも、流れが出ることで、平らな印象がやわらぎます。まずは1つのコードだけ、隣とつながりやすい積み方に変えてみます。
転回形は、分数コードや代理コードと組み合わせても使えます。ただし最初は1つずつです。
転回形だけを試して手応えをつかんでから、ほかの方法を重ねると、何が効いているかを見失わずにすみます。
変化の付け方まとめ
どれも、1箇所だけ試すのが基本です。
| 方法 | 何をする | 変わること |
|---|---|---|
| 進行を切る | 繰り返しの一部だけ、最後のコードを変える | 次へ進む感じが出る |
| 分数コード | 一番下の低音だけを入れ替える | 低音がなめらかに動く |
| 代理コード | 似た響きの別のコードへ置き換える | 色合いが少し変わる |
| 転回形 | 構成音の積み方を変える | コードのつながりが滑らかになる |
4つとも、今のコード進行を壊さずに、1箇所だけ変えるところから始められます。変えて、聞いて、良ければ残す。
この積み重ねで、単調だった土台が少しずつ動き出します。1曲の中でどこに変化を置くかは、無料の制作工程マップで全体の流れとして確認できます。
よくある疑問
コード進行が単調に聞こえるのはなぜですか
同じ進行を最後まで繰り返しているか、すべてのコードを基本形のまま鳴らしていることが多いです。どちらも変化が少なく、平らに聞こえます。
何から変えればいいですか
一度に全部を変えないでください。まず1箇所、たとえば最後のコードだけを別の候補に差し替えて、印象が変わるかを聞きます。良ければ残し、悪ければ戻します。
分数コードや代理コードは難しくありませんか
名前ほど難しくありません。分数コードは一番下の低音だけを入れ替えたコード、代理コードは似た響きの別のコードへの置き換えです。どちらもまず1箇所で試せます。
転回形とは何ですか
コードの構成音の並び順を変えて、一番下に来る音を差し替えたものです。コード自体は同じでも、音のつながりが滑らかになり、単調さがやわらぎます。
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