コードからメロディを作る方法

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
コードは作れたけれど、その上に乗せるメロディが浮かんでこない。作曲を始めた人が最初にぶつかる壁です。実は、メロディはゼロから思いつく必要はなく、すでにあるコードから組み立てられます。
やり方は、コードの音を繋ぐ、リズムを付ける、隣の音で飾る、の3段階です。鼻歌が浮かぶ人向けの併用のコツと、練習に向いた進行まで、順番に説明します。譜面は使いません。
先にやること
コードからメロディを作る時は、コードの中の音から組み立てます。
- コードトーン(コードの構成音)を繋いで骨組みを作る
- 同じ音でも、リズムを変えると表情が出る
- 隣の音を短く足して、なめらかに飾る
- 鼻歌が浮かぶなら、先に録って混ぜる
なぜコードから作れるのか
コードの中の音は、そのまま安全なメロディの材料になります。
コードは、複数の音を重ねた土台です。Cならド・ミ・ソ、Amならラ・ド・ミという構成音を持っています。
この構成音、つまりコードトーンは、その場所で鳴らして外れない音です。だから、ここから選べば、外れないメロディの骨組みがすぐ作れます。
メロディが浮かばないと感じる時、多くの人は「無から名旋律をひねり出す」イメージで固まっています。でも実際の作り方は逆で、すでにあるコードという材料を並べ替えて、少し飾るだけです。
発明ではなく組み立てだと考えると、気持ちがずいぶん軽くなります。
もちろん、コードトーンだけでは物足りないメロディになります。だからこそ、この後のリズムと飾りで表情を足していきます。
外れない骨組みを先に作り、味付けを後から重ねる。この順番なら、途中で「合っているのか分からない」と迷わずに進められます。
コードトーンを繋ぐ
まずはコードの音だけで、上下の線を作ります。
最初の作業は、各コードのコードトーンを1音ずつ選んで繋ぐことです。たとえばC→Am→Dm→Gという進行なら、Cでソ、Amでミ、Dmでファ、Gでレ、というように、それぞれのコードの中から1音ずつ拾います。
この時点では、まだリズムを付けず、1小節に1音で構いません。
音を選ぶコツは、隣のコードとの間で、なるべく近い音へ移ることです。大きく跳ぶより、近い音を選んだほうが、線としてなめらかにつながります。
繋いだ音を鳴らしてみて、上がって下がる自然な流れになっていれば、骨組みは完成です。
この段階のメロディは、まだ単純で退屈に聞こえます。それで正解です。
骨組みが外れていないことだけを確認して、次のリズム付けへ進みます。
リズムを付ける
同じ音でも、長さと刻みで表情が変わります。
骨組みができたら、そこにリズムを付けます。1小節に1音だった音を、伸ばす場所と刻む場所に分けていきます。
頭で長く伸ばして、後半で細かく動く。あるいは、少し待ってから入る。こうした長短の変化だけで、同じ音の並びが「メロディらしく」なります。
ここで大事なのは、音の高さは変えず、リズムだけを動かして試すことです。高さとリズムを同時にいじると、何が良くなったのか分からなくなります。
まずはリズムだけで、歌える形に近づけます。
言葉にできるリズムから入るのもおすすめです。「タン・タタ・ター」のように口で言えるリズムを、そのまま音に当てはめます。
頭で鳴っている形を外に出すと、打ち込みで迷いにくくなります。
隣の音で飾る
コードの音の間を、隣の音でつなぎます。
最後に、骨組みを飾ります。コードトーンとコードトーンの間に、すぐ隣の音を短く挟むと、線がなめらかになります。
ドからミへ動くところに、間のレを一瞬入れる、といった具合です。この隣の音は、通り過ぎるだけなので、コードから多少外れても濁りません。
飾りは入れすぎないのがコツです。骨組みのコードトーンを主役に残し、隣の音はあくまで通り道として少しだけ足します。
全部を飾ると、どこが軸なのか分からないメロディになります。迷ったら、飾りは1小節に1、2か所までにします。
飾りを入れたら、骨組みだけの状態と聞き比べてみます。飾ったほうがなめらかで気持ちよければ残し、うるさく感じたら減らす。
多いほど良いわけではなく、骨組みが引き立つ量を探すのがコツです。
鼻歌と混ぜる
浮かぶ人は、鼻歌を先に録っておきます。
コードから組み立てる方法は、鼻歌と相性がよいです。コードを鳴らしながら、その上で自由に鼻歌を歌い、スマホで録っておきます。
音程が完璧でなくても構いません。上がる、下がる、伸ばす、止まるという形が残れば、それがメロディの素材になります。
録った鼻歌を聞き直すと、自然とコードトーンに近い音を歌っていることが多いです。ずれている音だけを、近いコードトーンへ寄せれば、外れないメロディに整います。
ゼロから組み立てるのが苦手な人は、この鼻歌スタートのほうが早いこともあります。
組み立てと鼻歌は、どちらかだけを選ぶものではありません。骨組みはコードトーンで作り、細かい表情は鼻歌から借りる。
両方を混ぜると、外れにくさと自分らしさを両立できます。
高さのつながりを整える
近い音でつなぐと、歌いやすい線になります。
骨組み、リズム、飾りができたら、最後に全体の高さのつながりを見直します。コードトーンから1音ずつ選ぶ時、たまたま音が大きく上下すると、飛び跳ねたメロディになって歌いにくくなります。
人が自然に歌える線は、隣り合う音の距離が小さいものです。
直し方は、大きく跳んでいる場所を探し、その音を同じコードの別のコードトーンに置き換えることです。コードトーンは1つのコードに3つあるので、同じコードのままでも、より近い音を選び直せます。
響きは変えずに、線の上下だけをなだらかにできます。
メロディが高すぎたり低すぎたりして歌いにくい時は、骨組み全体を上下にずらします。コードトーンの選び方は変えず、オクターブごと動かすだけで、無理なく歌える高さに収まります。
作ったメロディを実際に口ずさんで、苦しくない高さかどうかを確かめます。
この段階で完璧を目指す必要はありません。歌ってみて大きく無理がなければ、次の工程へ進みます。
細かい調整は、曲全体ができてから戻ってやり直せます。
3段階の作業表
迷ったら、この順番で戻ります。
| 段階 | やること | 確認すること |
|---|---|---|
| 1 骨組み | 各コードから1音ずつ選んで繋ぐ | 隣のコードへ近い音で移れているか |
| 2 リズム | 音の高さは変えず、長短を付ける | 口で歌える形になっているか |
| 3 飾り | コードトーンの間に隣の音を短く足す | 主役の音が埋もれていないか |
| 併用 鼻歌 | コードを鳴らして鼻歌を録る | ずれた音を近いコードトーンへ寄せたか |
王道進行で試す
響きが安定した進行だと、判断しやすいです。
練習に使う進行は、C→Am→Dm→Gのような王道進行が向いています。長く使われてきた並びで響きが安定しているので、その上に乗せたメロディが良いか悪いかを判断しやすいからです。
土台が不安定だと、メロディの問題なのか土台の問題なのか、切り分けられません。
まず4小節のC→Am→Dm→Gをループ再生し、その上で骨組み、リズム、飾りの順にメロディを組み立てます。4小節がまとまったら、コピーして最後だけ変え、8小節へ広げます。
短い素材を確実に作ってから伸ばすほうが、途中で止まりにくいです。
王道進行に慣れたら、別の進行でも同じ3段階を試します。土台が変わっても、コードトーンを繋ぐ、リズムを付ける、隣の音で飾る、というやり方は変わりません。
1つの進行で手順を覚えれば、あとは応用できます。この積み上げ方は、無料の制作工程マップに沿って進められます。
よくある疑問
楽器が弾けなくてもコードからメロディを作れますか
作れます。各コードのコードトーンを画面に置いて順番に鳴らすだけで、外れにくいメロディの骨組みができます。弾く技術は必要ありません。
鼻歌とどちらを先にやりますか
どちらからでも構いません。鼻歌が浮かぶ人は先に録り、浮かばない人はコードトーンを繋いで骨組みを作ってから飾ります。両方を混ぜると迷いにくくなります。
作ったメロディが単調に感じます
音の高さはコードトーンのままで、リズムだけを変えてみます。同じ音でも、伸ばす場所と細かく刻む場所を分けると表情が出ます。
どのコード進行で練習すればいいですか
C→Am→Dm→Gのような王道進行が向いています。響きが安定しているので、上に乗せたメロディの良し悪しを判断しやすいです。
無料配布|アンパンマン劇場版楽曲を手がけた作曲家の「制作工程マップ」
音出し、コード、ドラム、メロディ、アレンジ、フルコーラス完成までの流れを1枚にまとめた無料マップです。登録するとその場でご覧いただけます。
次に進む記事
組み立てたメロディを、曲の流れへ広げます。