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古賀稔宏の作曲ノート作曲・編曲家のDTM制作ノート

DTM無料プラグインの始め方|入れすぎる前に決めること

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作曲・編曲家 古賀 稔宏

「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。

プラグインは、DAWに後から差し込んで使う小さなソフトです。ピアノやドラムの音を増やす「音源」と、音を加工する「エフェクト」の2種類に分かれます。無料のものだけでも数え切れないほど配布されていて、入口としては十分な世界です。

ただし、無料だからと手当たり次第に集めると、道具の管理で制作が止まります。そこで、プラグインの仕組み、VSTの入れ方、無料でできる範囲、そして有料に進むタイミングまでを、迷わない順番で整理しました。

先に押さえること

プラグインは、集める前に「2種類の区別」と「入れる理由」を決めます。

  • 音源とエフェクトの違いを先に知る
  • 足す前に、DAW付属の道具で同じことを試す
  • 無料プラグインは1カテゴリ1つまで
  • 有料はドラム音源とマスタリングから検討する

プラグインとは何か

DAWが作業机なら、プラグインは机に増やす道具です。

DAWは、それ単体で音を出せます。インストールした時点で、鍵盤の音もドラムの音も、音量や響きを整える道具もひと通り入っています。

プラグインは、そこに後から追加する拡張パーツだと考えてください。

追加すると何が変わるかというと、「出せる音の種類」と「音の加工手段」が増えます。

DAWに入っていない楽器の音を鳴らしたい、付属にはない質感で音を磨きたい。そういう時に、外部のソフトを差し込んで机の上の道具を増やすわけです。

無料配布が多いのには理由があります。メーカーが有料版への入口として無料版を配る場合と、開発者が実験的に公開している場合です。

つまり無料の棚には、有料級に作り込まれたものと、動作が不安定なものが混ざっています。「無料だから全部もらう」が危ない理由は、ここにあります。

だから最初の姿勢はこうなります。プラグインは「集めるもの」ではなく、「足りない場所に差し込むもの」。

この見方さえ持っておけば、この先の判断はずっと楽になります。

音源とエフェクトの違い

この区別がつくと、探し方と挿し方が変わります。

プラグインは大きく2種類です。1つ目は音源(インストゥルメントとも呼びます)。

ピアノ、ドラム、シンセのように、打ち込んだ音符を受け取って音そのものを出すソフトです。トラックに「楽器」として立ち上げて使います。

2つ目はエフェクト。EQ(音の高い低いのバランスを整える道具)、コンプレッサー(音量の凸凹をならす道具)、リバーブ(響きを足す道具)のように、すでに鳴っている音を加工するソフトです。

こちらはトラックの音の通り道に挿して使います。

この区別が役に立つのは、不満を感じた時です。

「ピアノの音が安っぽい」なら音源の話。「歌がこもって聞こえる」なら加工の話。

悩みがどちらの棚の話なのかが分かると、探す場所も調べる言葉も一気に絞れます。

初心者がつまずくのは、この2つを同じ「プラグイン」というひとつの棚で見てしまう時です。音源を挿すべき場所にエフェクトを挿しても音は出ませんし、逆も同じです。

まずこの区別だけ、頭に入れてください。

VSTプラグインの入れ方

手順は3つ。ダウンロード、インストール、DAWで確認です。

VSTは、プラグインをDAWにつなぐための規格の名前です。DAW開発元のSteinbergが作った規格で、多くのDAWがこれに対応しています。

現在の配布ページで中心になっているのはVST3という世代です。Macでは、これとは別にAUという規格もあります。

自分のDAWがどの形式に対応しているかを、ダウンロード前に一度確認してください。

入れ方の流れは、ほとんどの場合こうなります。

  1. まず、開発元の公式ページからインストーラーをダウンロードします。
  2. 次にインストーラーを実行すると、VST3形式のファイルはパソコンの決まったフォルダに配置されます。
  3. 最後にDAWを起動し直すと、DAWがそのフォルダを調べて、新しいプラグインを一覧に加えます。

一覧に出てこない時は、慌てなくて大丈夫です。DAW側のプラグイン管理画面から再スキャンを実行するか、読み込むフォルダの設定を確認します。

形式違い(VST3対応のDAWに古い形式だけ入れた等)も、出てこない原因の定番です。

安全面では、配布元が開発元本人のページかどうかを見ます。再配布のまとめリンクではなく、公式ページから入手する。

ダウンロード時にメールアドレスの登録を求められることは多く、それ自体は普通のことです。

無料でどこまでできるか

最初の数曲なら、無料の範囲で困りません。

先に答えを言うと、打ち込みから書き出しまで、無料の道具だけで曲の形は作れます。シンセ系の音源、EQやコンプレッサーのような基本のエフェクトは、無料の選択肢が特に充実している分野です。

一方で、無料が手薄な分野もあります。生のドラムやオーケストラのような、大量の録音データを積んだ大容量音源です。

データ量がそのまま制作コストになる分野なので、ここは有料との差が出やすい場所だと覚えておいてください。

つまり「無料でどこまでできるか」の答えは、ジャンルとこだわりの場所によって変わります。シンセ中心の曲なら無料でかなり戦えます。

生バンドの質感を求めるなら、いつかドラムの音で物足りなくなる日が来ます。その日が来るまでは、無料で困りません。

足りなくなる日を早く知るためにも、まず作ることです。

集めた道具の数は曲を進めてくれません。作った曲だけが、次に必要な道具を教えてくれます。

入れすぎると何が起きるか

無料の落とし穴は、お金ではなく時間で払うことになります。

無料だと「とりあえず入れておこう」が簡単に起きます。気づけば10個、20個。

ここで2つの問題が始まります。

1つ目は管理不能です。どの曲でどれを使ったか分からなくなる。

パソコンを替えた時に、昔のプロジェクトを開くと「見つかりません」の警告が並ぶ。音の不調が起きても、原因がどの1本なのか切り分けられない。

道具が増えるほど、トラブルの迷路は深くなります。

2つ目は選択疲れです。シンセが5本あると、音を作る前に「どれで作るか」という選択が毎回入ります。

制作時間が道具選びの時間にすり替わっていく。これが入れすぎのいちばん静かな害です。

レッスンでもこの順番を大事にしています。機材やソフトを増やす前に、音が鳴る、録音できる、再生できる、保存できる状態を先に作る。

高価な道具を最初から揃える必要はない、という判断基準です。無料プラグインにもそのまま当てはまります。

増やすのは、今の環境で制作が回るようになってからです。

実務的なルールとしては「1カテゴリ1つ」をおすすめします。シンセ1つ、リバーブ1つ。

同じカテゴリの2つ目を入れたくなったら、1つ目のどこが足りないかを言葉にしてから。言葉にできなければ、まだ要りません。

足す前の判断表

カテゴリごとに、入れる前のチェックを1つ挟みます。

カテゴリ種類足したくなるサイン入れる前に確認すること
ドラム音源音源ドラムが軽い、生っぽさが欲しい付属ドラムのキットを替えて試したか
シンセ音源欲しい音色が見つからない付属シンセのプリセットを一周聞いたか
EQ・コンプレッサーエフェクト音がこもる、埋もれる付属の同じ道具で同じ操作を試したか
リバーブエフェクト音が乾いて寂しい付属リバーブの深さと種類を変えたか
マスタリング系エフェクト書き出した曲が市販曲より小さいそもそも曲が最後まで完成しているか

共通しているのは、「付属で同じことを試したか」を先に聞いている点です。

不満の多くは、道具の不足ではなく設定と使い方で解決します。試した上で残った不満だけが、本当に足すべきプラグインを教えてくれます。

よくある疑問

無料プラグインだけで曲は作れますか

作れます。DAW付属の道具と無料プラグインを合わせれば、打ち込み、録音、ミックス、書き出しまで一通り進められます。差が出やすいのは生ドラムの質感や仕上げの部分で、そこは足りないと感じてから考えれば十分です。

VSTとVST3は違うものですか

VSTはプラグインをDAWにつなぐ規格の名前で、VST3はその新しい世代です。今の配布ページではVST3が中心になっています。自分のDAWがどの形式に対応しているかを、導入前に一度確認してください。

無料プラグインを入れるのは安全ですか

開発元の公式ページから入手すれば大きな問題は起きにくいです。まとめサイトの再配布リンクは避け、配布元の名前を確認してからダウンロードします。メールアドレスの登録を求められることは珍しくありません。

最初に買う有料プラグインは何がよいですか

制作の現場で最初の候補に挙がるのは、ドラム音源のSuperior Drummer 3と、マスタリング用のOzone 12です。ただし買うのは、無料の範囲で作ってみて、足りない場所を自分の言葉で言えるようになってからで間に合います。

無料配布|アンパンマン劇場版楽曲を手がけた作曲家の「制作工程マップ」

音出し、コード、ドラム、メロディ、アレンジ、フルコーラス完成までの流れを1枚にまとめた無料マップです。登録するとその場でご覧いただけます。

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プロフィール

古賀 稔宏

ギター、ウクレレ、DTM(Cubase)、作曲技法、音楽理論を指導。14歳でギターを始め、同時に作曲も始める。ポップ、ロック、クラシックの要素を含む楽曲を得意とする。

商業音楽の制作・演奏に携わりながら、初心者が止まりやすい場所を制作工程に沿って整理している。