ギター録音のノイズを減らす確認手順

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
エレキギターをオーディオインターフェイスにつないで録ったテイクを聞き返すと、演奏の後ろで「ジー」と鳴り続けている。あるいは「サー」という砂嵐、ケーブルを動かした瞬間の「ガリッ」。ギター録音のノイズは種類ごとに出どころがほぼ決まっているので、まず音を聞き分けるところから始めます。
最初にやることは、機材の買い替えでもノイズ除去プラグインでもありません。弾かない状態で数秒だけ録音し、鳴っているのがジーなのか、サーなのか、ガリなのかを確かめる。それだけで、この後に確認する場所が一気に絞れます。
先に見ること
ギター録音のノイズは、音の種類で原因を分けてから直します。
- 「ジー」「ブーン」は電源・アースまわり、「サー」はゲインの上げすぎ、「ガリ」は接触不良
- ケーブルと挿し口を最初に確かめる
- 入力ゲインは赤に届かない控えめな設定にする
- ノイズ除去プラグインに頼るのは最後
ノイズを3種類に聞き分ける
音の質感が、そのまま原因の地図になります。
ギターの録音に混ざるノイズは、大きく3種類に分かれます。1つ目は「ジー」「ブーン」と低くうなり続ける音。
ハムノイズと呼ばれ、電源やアース(機材同士の電気的なつながり)まわりから来ます。弦や金属パーツに触れると音量が変わるのが目印です。
2つ目は「サー」という砂嵐のような音です。これはどんな機材にもわずかにある雑音が、入力ゲイン(録音の入り口の音量)やアンプシミュレーターの歪みで増幅されて目立っているもので、出どころは主に設定です。
3つ目は「ガリッ」「バリバリ」という不規則な音。ケーブルを動かした時や、ギター側のつまみを回した時に出るなら、ほぼ接触不良です。
弾かずに10秒ほど録音して、この3つのどれに近いかをメモしてください。
- ジーなら部屋と接続
- サーなら設定
- ガリなら物理的な接点
見に行く場所がここで分かれます。
ボリュームを絞って前後を分ける
10秒でできる、いちばん効率のいい切り分けです。
次に、ギター本体のボリュームを0まで絞って、同じようにノイズを聞きます。ここで消えるか消えないかで、原因の位置が前後に分かれます。
絞って消えるなら、ノイズはギターより前、つまりピックアップ(弦の振動を電気に変える部品)が部屋の電気的な雑音を拾っています。
ピックアップはマイクのような性質を持つので、蛍光灯やパソコンのそばでは雑音ごと拾ってしまうのです。この場合はケーブルを買い替えても直らないので、後述する部屋側の対策へ進みます。
絞っても消えないなら、ノイズはギターより後ろ、ケーブルからオーディオインターフェイスまでの間か、設定にあります。
ケーブルとゲインの確認へ進みます。
この一手間を飛ばすと、部屋が原因なのにケーブルを何本も買い替える、といった遠回りが起きます。
絞って聞く。それだけで捜索範囲が半分になります。
ケーブルと挿し口を確かめる
ガリ系のノイズは、まずここで決着がつきます。
ケーブル(シールド)は、ギター録音のノイズでいちばん疑われる場所です。プラグを根元まで挿し直し、録音しながらケーブルを軽く揺らしてみてください。
揺らした瞬間にガリガリと音が出るなら、ケーブルの内部かプラグの根元が傷んでいます。断線しかけのケーブルは見た目では分からないので、別のケーブルに差し替えて比べるのが確実です。
挿し口も見ます。オーディオインターフェイスにHi-Z(ハイインピーダンス、INSTと表記されることもあります)という切り替えがある機種では、ギターを直接挿す時にこれをオンにします。
合っていない入力に挿すと、音が細くなったりノイズが目立ちやすくなったりします。
ギター側のジャックやボリュームのつまみを回した時だけガリが出る場合は、楽器側の接点の汚れです。こちらは楽器店での点検や接点の清掃で直る領域なので、録音設定をいくら触っても解決しません。
入力ゲインと歪みの量を見直す
サー系のノイズは、ほとんどが上げすぎです。
「サー」が気になる時は、まず入力ゲインを見ます。レッスンでは録音レベルについて「オーディオファイルは逆で、小は大を兼ねる」という言い方で伝えています。
赤く振り切って割れた音は後から直せませんが、小さめに録った音は後から持ち上げられる、という意味です。ゲインはいちばん強く弾いてもメーターが赤に届かない、5割あたりを目安に控えめへ寄せます。
ゲインを上げるほど、演奏と一緒に機材の雑音も増幅されます。録れた音が小さいからと入り口で無理に稼ぐより、控えめに録って、あとでDAW側の音量を上げる方がサーは目立ちません。
アンプシミュレーターを通しているなら、歪みの深さも確認します。歪みはゲインを何段も重ねる処理なので、深くするほどサーは必ず増えます。
録音の段階では歪みを浅めにしておき、音作りの追い込みは録った後にかけ直す。この順番にすると、ノイズの少ない素材が手元に残ります。
部屋の電気機器と向きを変える
ジー系のノイズは、部屋の中に犯人がいます。
ボリュームを絞ると消えるジー、つまりピックアップが拾っているノイズは、部屋側を変えると減ります。
疑う相手は、蛍光灯、調光機能つきの照明、パソコン本体とディスプレイ、ACアダプター、スマホの充電器あたりです。録音しながら一つずつ電源を切って、ノイズ量が変わるかを聞き比べます。
もう一つ効くのが、ギターを持ったまま椅子ごとゆっくり回ることです。ピックアップが拾う雑音は向きで強さが変わるので、いちばん静かになる向きを探して、そこで録ります。
パソコンの画面から1〜2歩離れるだけで変わることもあります。
構造的な話として、シングルコイルというタイプのピックアップを積んだギターは、この種のノイズを拾いやすい性質があります。
ハムバッカーというタイプは打ち消す構造なので拾いにくい。手持ちのギターがシングルコイルなら、ジーが完全に消えないのは異常ではなく、向きと距離で実用レベルまで減らすのが現実的なゴールです。
音別の切り分け表
聞こえた音から逆引きできるようにまとめました。
| 聞こえる音 | 疑う場所 | 試すこと |
|---|---|---|
| ジー・ブーンとうなる。弦に触れると変わる | 電源・アースまわり、部屋の機器 | 照明や充電器を切り、ギターの向きを変える |
| サーという砂嵐。ゲインを上げると増える | 入力ゲイン、歪みの深さ | ゲインを5割目安に下げ、歪みを浅くする |
| ガリッ・バリバリ。ケーブルを動かすと出る | ケーブル、プラグの接点 | 挿し直し、別ケーブルで比べる |
| つまみを回した時だけガリが出る | ギター側の接点 | 楽器店で点検・清掃を頼む |
| ボリューム0でも常に同じ量で残る | ケーブル以降、インターフェイス側 | 別の入力端子・別ケーブルで切り分ける |
それでもノイズが残る時
ゼロを目指すより、曲にした時の聞こえ方で判断します。
ここまでの確認をしても、うっすらしたサーが残ることはあります。その時は、ノイズ単体ではなく、ドラムやベースと混ぜた状態で聞いてください。
単体では気になっても、オケの中では聞こえないレベルなら、録音としては合格です。
それでも気になる分にだけ、ノイズゲート(一定より小さい音を自動でカットする処理)やノイズ除去プラグインを使います。
順番が最後なのには理由があって、除去処理はノイズと一緒に演奏の細かい成分も削るからです。入り口で減らせるノイズを後処理に肩代わりさせると、音がやせていきます。
直った設定は、ゲインの位置と挿した端子だけでも書き留めておくと、次の録音で同じ状態をすぐ再現できます。
ノイズが実用レベルまで下がったら、あとはテイクを重ねて曲を進めるだけです。録ったギターをどの工程で組み込んでいくかは、下の制作工程マップに流れをまとめています。
よくある疑問
ノイズの種類はどうやって聞き分けますか
低くうなる「ジー」「ブーン」は電源やアースまわり、砂嵐のような「サー」は入力ゲインや歪みの上げすぎ、動かすと出る「ガリッ」は接触不良が主な出どころです。弾かずに録った数秒を聞くと判断しやすくなります。
ノイズ除去プラグインを最初に使ってはだめですか
順番としては最後です。除去処理はノイズと一緒に演奏の成分も削るので、音がやせることがあります。ケーブル、ゲイン、部屋の環境で減らせるだけ減らし、残ったわずかな分だけに使います。
ギターのボリュームを0にするとノイズが消えます。故障ですか
故障ではないことが多いです。ボリュームを絞って消えるなら、ノイズはピックアップが部屋の電気的な雑音を拾ったものです。ギターの向きや座る場所を変える、周囲の電気機器を消すことで減らせます。
録音レベルはどのくらいが目安ですか
いちばん強く弾いた時にメーターが赤に届かない範囲で、控えめに設定します。目安はメーターの5割ほどです。赤く振り切って割れた音は後から直せませんが、小さめに録った音は後から持ち上げられます。
無料配布|アンパンマン劇場版楽曲を手がけた作曲家の「制作工程マップ」
音出し、コード、ドラム、メロディ、アレンジ、フルコーラス完成までの流れを1枚にまとめた無料マップです。登録するとその場でご覧いただけます。
次に進む記事
ノイズが減ったら、録音まわりの他のつまずきも先回りしておけます。