メロディとコードが合わない時の直し方

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
打ち込んだメロディを、コードと一緒に鳴らした瞬間に「なんだか濁る」「気持ち悪い」と感じることがあります。多くの場合、これは才能や音感の問題ではなく、音の選び方と置き場所の問題です。
合わないメロディには、共通した原因がいくつかあります。ここでは、その原因の見つけ方と、コードトーンを使った直し方、そして自分の耳で確かめる方法を順番に説明します。譜面は使いません。
先に見ること
メロディとコードが合わない時は、長く伸ばしている音をまず疑います。
- 強い拍で長く伸びている音が、コードの中にあるか見る
- コードトーン(コードの構成音)を強い拍に置く
- コードにない音は、短く通り抜ける経過音なら使える
- メロディとコードを一緒に鳴らし、濁る場所を耳で探す
なぜ合わなく聞こえるのか
合わない音のほとんどは、コードに入っていない音です。
コードは、いくつかの音を同時に鳴らした「音の土台」です。たとえばCというコードは、ド・ミ・ソの3つの音でできています。
この土台の上でメロディを鳴らすと、土台に含まれる音は溶け込み、含まれない音は浮いて聞こえます。
問題が起きやすいのは、土台に入っていない音を、強い拍で長く伸ばした時です。Cコードの上でレやファを1小節ずっと伸ばすと、土台とぶつかって濁ります。
逆に、同じレやファでも一瞬で通り過ぎるだけなら、ほとんど気になりません。
つまり「合わない」の正体は、音そのものの善し悪しではなく、コードに含まれない音を目立つ場所に置いてしまうことです。ここが分かると、直す場所は一気に絞られます。
もう一つ知っておくと楽なのは、コードトーン以外の音が全部だめなわけではない、ということです。合う音と合わない音の境目は、その音をどれだけ長く、どれだけ目立つ場所で鳴らすかで決まります。
だから直す時も、音を消すのではなく、長さと置き場所を調整するのが基本になります。
コードトーンを強い拍に置く
小節の頭や伸ばす音は、コードの構成音から選びます。
コードトーンとは、そのコードを作っている音のことです。Cならド・ミ・ソ、Amならラ・ド・ミ、Fならファ・ラ・ドというように、コードごとに決まっています。
この音は土台そのものなので、どれだけ伸ばしても濁りません。
メロディを直す時は、強い拍に来る音と、長く伸ばす音を、コードトーンから選ぶのが基本です。強い拍とは、小節の頭や、リズムのアクセントが乗る位置のことです。
ここに土台の音が来ると、メロディはコードにしっかり乗ります。
やり方は簡単です。合わないと感じた小節を開き、そこで鳴っているコードのコードトーンを確認します。
強い拍で伸びている音がコードトーン以外なら、一番近いコードトーンへ動かします。多くの場合、半音か1音動かすだけで収まります。
メロディが浮いて聞こえる時は、まず伸ばしている音がコードの中にあるかを見ます。音を増やすより、今ある1音の置き場所を直すほうが早いからです。
経過音は通り抜けなら使える
コードにない音も、短く通り過ぎるなら自然です。
ここまで読むと「コードトーンしか使えないのか」と思うかもしれませんが、そうではありません。コードに入っていない音を、隣の音へ移る途中で短く通り過ぎるように使うと、むしろメロディがなめらかになります。
この通り抜ける音を経過音と呼びます。
たとえばCコードの上で、ミからソへ上がる時に、間のファを一瞬だけ挟む。このファはコードにない音ですが、止まらずに通り過ぎるので濁りとして残りません。
強い拍で止めず、弱い拍でさっと抜けるのがコツです。
合わない音を全部消す必要はない、ということです。消すべきなのは、強い拍で長く止まっているコード外の音だけ。
通り抜けている音まで直すと、メロディが平坦になってしまいます。
一緒に鳴らして確かめる
画面で考えるより、鳴らして耳で探すほうが速いです。
合っているかどうかは、メロディとコードを一緒に鳴らして確かめます。片方ずつ聞いても、ぶつかりは分かりません。
両方を重ねて、問題の1小節をループ再生します。
濁って聞こえたら、その小節で長く伸びている音を1つずつ確認します。その音がコードトーンなら別の原因、コード外の音なら、そこが犯人です。
近いコードトーンへ動かして、もう一度ループします。濁りが消えれば直っています。
レッスンでも、理屈で正解を探すより、実際に重ねて鳴らして耳で選んでもらうほうが早く進みます。理論の理解が浅くても、鳴った音の良し悪しは判断できるからです。
迷ったら、直す前と後の2案を作って聞き比べれば十分です。
コードが切り替わる場所を見る
外れは、コードが変わる境目で起きやすいです。
合わないメロディを探す時、特に注意して聞きたいのが、コードが切り替わる境目です。前のコードでは合っていた音が、コードが変わった瞬間に、次のコードには入っていない音になってしまうことがよくあります。
伸ばしている音の途中でコードが変わると、後半だけ濁って聞こえます。
直し方はシンプルです。コードが変わる位置で、メロディの音も置き直せないかを見ます。
長く伸ばしていた音を、コードが変わるところでいったん切り、新しいコードのコードトーンへ移す。これだけで、境目の濁りは消えることが多いです。
耳だけで境目を追うのが難しければ、テンポを少し落として再生します。ゆっくり鳴らすと、どの音が変わり目でぶつかっているかを聞き取りやすくなります。
原因の音が分かったら、テンポを元に戻します。
4小節の中でコードが2回、3回と変わるなら、その変わり目を1つずつ確認します。全部を一度に見るより、境目だけに絞ったほうが、原因の音を早く見つけられます。
よくある外れ方と直し方
濁って聞こえる時の、代表的な原因と対処です。
| 症状 | 原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 小節の頭がぶつかる | 強い拍にコード外の音を置いている | 頭の音を近いコードトーンへ動かす |
| 伸ばすと濁る | コード外の音を長く伸ばしている | 伸ばす音だけコードトーンに変える |
| なめらかさが足りない | コードトーンだけで飛び跳ねている | 音と音の間に経過音を短く挟む |
| コードが変わると急に外れる | 前のコードの音のまま伸ばしている | コードが変わる位置で音を置き直す |
| 全体がぼんやり合わない | どの音がコードトーンか把握していない | コードごとに3つの構成音を書き出す |
直しすぎを避ける
合わせにいくほど、つまらなくなることがあります。
合わないのを気にして、すべての音をコードトーンにそろえると、今度はメロディが単純になりすぎます。土台に溶けすぎて、印象に残らないメロディになってしまうのです。
直すのは、強い拍で止まっているコード外の音だけ。弱い拍や通り抜ける音は、多少コードから外れていても残します。
その少しの外れが、メロディの表情になります。
もう一つ。合わない原因が、実はコードの側にあることもあります。メロディは自然なのに、コードの並びが不自然なせいでぶつかって聞こえるケースです。
メロディをいくら動かしても収まらない時は、下のコード進行を見直します。土台が決まれば、その上のメロディはぐっと作りやすくなります。
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よくある疑問
メロディとコードが合わないのは音痴だからですか
多くは音感の問題ではありません。コードに入っていない音を、強い拍で長く伸ばしていることが原因です。その音を近いコードトーンへ動かすと収まります。
コードトーンはどうやって調べますか
コードトーンはそのコードの構成音のことです。ドミソならC、ラドミならAmというように、コードごとに音が決まっています。その音を強い拍に置くと外れにくくなります。
コード以外の音は使ってはいけませんか
使えます。コードにない音でも、短く通り抜けるように使う経過音なら自然に聞こえます。問題になるのは、その音を強い拍で長く伸ばして止めた時だけです。
合っているか自分で確かめる方法はありますか
メロディとコードを一緒に鳴らし、その1小節をループします。濁って聞こえる音を1つずつ探し、長く伸ばしている音がコードトーンかどうかを見ます。
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