歌詞とメロディが合わない時の直し方

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
歌詞とメロディが合わない、と感じる時は、たいてい三つのどれかが起きています。
音符の数と言葉の文字数がずれている。言葉のアクセントがメロディの上下と逆になっている。伸ばす場所が言葉の切れ目とずれている。
この三つを分けると、直す場所が見えます。
迷ったら、まず実際に声に出して歌ってみます。どこで詰まるか、どこで言葉が変に伸びるか。
引っかかった場所が、直すべき一点です。頭の中だけで考えると、この引っかかりに気づけません。
先に見ること
合わない原因を、三つのどれかに切り分けます。
- 音符の数と言葉の文字数がずれていないか
- 言葉のアクセントとメロディの上下が逆になっていないか
- 伸ばす音の場所が、言葉の切れ目とずれていないか
- 直したら、声に出して口ずさんで確かめる
合わない三つの原因
同じ「合わない」でも中身は違います。
歌詞とメロディが合わないと感じても、原因はひとまとまりではありません。よく起きるのは三つです。
一つ目は、メロディの音符が5つなのに言葉が7文字ある、というような数のずれです。二つ目は、言葉の抑揚とメロディの上がり下がりが逆になっている場合です。三つ目は、音を長く伸ばす場所が、言葉の途中に来てしまう場合です。
この三つは、直し方がそれぞれ違います。
数のずれは音符か言葉のどちらかを増減させます。抑揚のずれは音の高さを入れ替えます。伸ばす場所のずれは、伸ばす音符を言葉の区切りへ動かします。
まず、自分の引っかかりがどれなのかを見分けます。
見分ける近道は、歌ってみて、どこで違和感が出るかを一箇所だけ探すことです。
全体をまとめて直そうとすると、何が効いたのか分からなくなります。まず一箇所、いちばん気になる場所から手を付けます。
音数と文字数を合わせる
数のずれが、いちばん多い原因です。
初心者がつまずく多くは、音数と文字数のずれです。
メロディに置いた音符の数より、乗せたい歌詞の文字数が多いと、言葉が詰まって歌えません。逆に文字数が少ないと、音が余って間延びします。
文字が多くて詰まる時は、二つの直し方があります。一つは、言葉を短く言い換えることです。「あなたのことを」を「きみを」にするだけで、四文字減ります。
もう一つは、一つの音符に二文字を軽く乗せることです。日本語は「た・い・よ・う」のように一音ずつ乗るのが基本ですが、速い所では二文字をまとめても歌えます。
それでも詰まるなら、メロディ側で音符を一つ足します。長く伸ばしていた音を二つに割れば、文字を一つ余分に乗せられます。
言葉を残したいのか、メロディの形を残したいのかで、どちらを動かすか決めます。
音が余って間延びする時は逆です。歌詞に言葉を足すか、メロディの音符を減らして一音を長く伸ばします。ここでも、残したい方を先に決めてから、もう一方を動かすと迷いません。
症状別の直し方
引っかかった場所から、対応を選びます。
| 症状 | 原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 言葉が詰まる | 文字数が音符より多い | 言葉を短くするか、音符を一つ足す |
| 音が余る | 文字数が音符より少ない | 言葉を足すか、音を長く伸ばす |
| 変な所が強く聞こえる | アクセントが上下と逆 | 強い言葉が高い音に来るよう入れ替える |
| 言葉が途中で伸びる | 伸ばす音が言葉の切れ目とずれる | 伸ばす音符を語尾の母音へ動かす |
アクセントと伸ばす場所
数が合っても、位置がずれると不自然です。
数がそろっても、まだ変に聞こえることがあります。多いのは、言葉のアクセントとメロディの上下が逆のときです。
ふだん高く読む部分が低い音に、低く読む部分が高い音に来ると、言葉が変な意味に聞こえたり、外国語のように聞こえたりします。強く言いたい言葉が高い音に来るよう、音の高さを入れ替えます。
ここで役立つのが、入り方の考え方です。メロディは、どの拍から言葉や音が入るかで印象が変わります。
1拍目から入るのか、少し待って入るのか、手前から入るのかを試します。強調したい言葉を、少し手前から入れて拍の頭に着地させると、自然に強く聞こえます。
もう一つは、伸ばす場所です。音を長く伸ばすのは、言葉が切れる場所、つまり語尾の母音が向いています。
「そら」なら「ら」を伸ばすと自然ですが、「そ」を伸ばすと言葉が途中で止まったように聞こえます。伸ばす音符は、言葉の区切りへ動かします。
直したら、また歌います。位置のずれは、目で見るより耳のほうが早く気づきます。一箇所直すごとに歌い直すと、直しすぎも防げます。
先にどちらを作るか
合わせやすさは、順番でも変わります。
そもそも、歌詞とメロディのどちらを先に作るかで、合わせやすさが変わります。決まりはありませんが、初心者のうちは、片方を先に固めてから、もう片方を乗せると迷いにくいです。
メロディを先に作ると、音数がはっきり決まります。その音数に収まるように言葉を選べるので、詰まりが起きにくいです。
鼻歌から曲を作る人は、この順番が向いています。先にメロディの形があり、そこへ言葉を当てていきます。
歌詞を先に作ると、言いたいことがぶれません。その代わり、文字数がばらばらなので、メロディ側で音符の数を言葉に合わせる作業が増えます。
伝えたい言葉が決まっている人には、この順番が向いています。
どちらで作っても、最後は両方を少しずつ動かして合わせます。
片方だけを完璧に守ろうとすると、もう片方が窮屈になります。残したい部分を決めつつ、細かい所はお互いに譲り合うと、自然な歌になります。
口ずさんで確かめる
合ったかどうかは、声で判断します。
直したら、必ず声に出して口ずさみます。画面上で音符と文字がきれいに並んでいても、歌うと詰まることがあります。
逆に、見た目はずれていても、歌うと気持ちよく流れることもあります。最後の判断は耳でします。
おすすめは、口ずさんだ声をスマホで録音して聞き返すことです。
歌っている最中は、詰まりを無意識に飛ばして歌ってしまいます。録音を聞くと、引っかかっている場所がはっきり分かります。気になった一箇所だけ、また直します。
合ったと感じたら、その版を別名で保存します。歌詞とメロディを両方いじると、元がどうだったか分からなくなりがちです。区切りごとに保存を残すと、直しすぎても戻れます。
ここまで来たら、次は伴奏や構成へ進みます。全体の順番は、制作工程をまとめたマップで確認できます。
よくある疑問
歌詞とメロディ、どちらを直すべきですか
どちらでも構いません。言葉を残したいなら音符を増減させ、メロディを残したいなら言葉を言い換えます。残したい方を決めてから、もう一方を動かします。
言葉が詰まって歌えない時はどうしますか
文字数が音符より多い状態です。言葉を短く言い換えるか、一つの音符に二文字を軽く乗せます。それでも詰まるなら、音符を一つ足します。
合っているか自分で確かめる方法はありますか
実際に声に出して口ずさむのが一番です。頭の中だけだと詰まりに気づきません。スマホで録音して聞き返すと、不自然な場所がはっきりします。
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