モニター音量が小さい時の確認手順

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
作業中、DAWのメーターはしっかり振れているのに、ヘッドホンから聞こえる音がやけに小さい。ボリュームを全開にしても物足りない。曲の作り方の問題ではなく、これは音が耳へ届くまでの経路のどこかで絞られている、いわば物理的なトラブルです。
音は、DAWから耳まで何段もの関所を通ります。どの関所も音量を絞れるので、一つでも下がっていると、最後の聞こえは小さくなります。犯人を探す手順は決まっていて、出口に近いところから順に一つずつ見ていくだけです。
先に確かめること
聞こえが小さいのは、経路のどこかで絞られているサインです。
- DAWのメーターが振れているなら、絞っているのは外側の経路
- DAWのモニター、OS、インターフェース、ヘッドホンの順に見る
- 挿し場所の食い違いと、つまみの系統違いが定番の原因
- 作業の聞こえの小ささと、曲そのものの音量は別の話
音は何段も通って耳に届く
まず、音の通り道を思い出します。
DAWで鳴った音は、そのまま耳に届くわけではありません。パソコンのOSの音量、オーディオインターフェースの出力つまみ、そこに挿したヘッドホンやスピーカー、という何段もの関所を順に通ります。
それぞれの関所が独立して音量を絞れるので、途中の一つでもつまみが下がっていると、最後に聞こえる音はその分だけ小さくなります。
ここで最初にやるのは、トラブルがDAWの中にあるのか外にあるのかを分けることです。切り分けの目印はメーターです。
DAWのメーターがしっかり振れているのに耳だけが小さいなら、DAWの中の音は正常に作られていて、絞っているのは外側の経路のどこかだと分かります。
この場合、DAWの設定や曲の作り方をいくらいじっても直りません。
逆に、メーター自体がほとんど振れていないなら、それはモニターの経路ではなく、音作りや音量設定など中側の話になります。
メーターを先に見るだけで、探す範囲が中か外かにきれいに分かれます。
絞られている場所を順に探す
出口に近い方から、一箇所ずつ動かします。
外側だと分かったら、音の出口に近い順に一つずつ確かめます。
最初は、DAWの出力を受けるモニターセクション(コントロールルームやモニターと呼ばれる部分)の音量つまみです。次に、パソコンのOS側の音量とミュート。
作業に集中していると、OSの音量が下がっていたりミュートになっていたりするのは、よくある見落としです。
続いて、オーディオインターフェース本体のつまみを見ます。ここに落とし穴があって、多くのインターフェースは、ヘッドホン出力(Phonesと書かれています)と、スピーカーへ送るメイン出力(MonitorやMainと書かれています)で、つまみが別々の系統になっています。
スピーカー用だけ上げてヘッドホン用が絞られたまま、という食い違いが起きます。
最後に、ヘッドホンやスピーカーがどこに挿さっているかを確認します。インターフェースを使っているつもりで、ヘッドホンをパソコン本体に挿していた、という取り違えは定番です。
一箇所ずつ動かして、どこを触った時に音量が変わるかを見れば、絞っている犯人が特定できます。
探す時のコツは、複数のつまみを同時に動かさないことです。
あちこちを一度に上げてしまうと、たまたま大きくなっても、どこが原因だったのか分からず、次に同じ状態になった時にまた一から探す羽目になります。
面倒でも、一つ動かして再生、戻してまた次、と順に切り分けると、犯人がはっきりして、原因が記憶にも残ります。
別のアプリで音楽を再生してみて、そちらは普通に鳴るかを確かめると、パソコンより外側の問題なのかどうかも切り分けられます。
確認する場所の一覧
出口に近い順に、上から見ていきます。
| 見る場所 | 下がりやすい理由 | 確認すること |
|---|---|---|
| DAWのモニター音量 | 誤って絞ってしまう | コントロールルームのつまみ位置 |
| OSの音量とミュート | 他の操作で下がる | ミュートと音量スライダー |
| インターフェースのつまみ | 系統が別で片方だけ上がる | ヘッドホンとメインを別々に確認 |
| 挿し場所 | 本体とインターフェースの取り違え | 出力先と挿し口が一致しているか |
| ヘッドホン自体 | 鳴らしにくいモデルがある | インピーダンスと挿す出力 |
ヘッドホン側の理由
つまみを上げても伸びない時は、ここを疑います。
どのつまみも上げているのに、ヘッドホンだけ音量が伸びない。そんな時は、ヘッドホン自体に理由があることがあります。
モニター用のヘッドホンには、鳴らしにくさを表すインピーダンス(単位はオーム)という値があり、これが高いモデルは、同じつまみ位置でも音量が出にくい傾向があります。
そのため、スマホやパソコン本体に直接挿すと十分な音量が出ない、というヘッドホンでも、オーディオインターフェースのヘッドホン出力に挿すと、しっかり鳴るようになることがあります。
インターフェースのヘッドホン出力は、そうしたヘッドホンを鳴らすための余力を持っているためです。
難しく考えず、まずは対応する出力へ挿す、という一手で改善することが多いので、買い替えを考える前に挿し場所を見直します。
上げる前に分けて考える
聞こえの小ささと、曲の小ささは別物です。
音量を上げる前に、一つだけ整理しておきたいことがあります。
作業中の聞こえが小さいのと、曲そのものが小さいのは、まったく別の問題だということです。ここを混同すると、直し方を間違えます。
モニターのつまみを上げれば作業中の聞こえは大きくなりますが、それは曲のデータの音量を変えるものではありません。
ところが、聞こえが小さいからといって、曲側のマスターや各トラックのフェーダーを上げてしまうと、書き出した時に割れる原因を自分で作ってしまいます。
だから、直すのはあくまでモニター側です。曲の中の音量は触らず、耳に届く音量だけを上げます。
もう一つ。大きい音で長く作業すると耳が慣れて、バランスの判断がぶれていきます。
しっかり聞こえるようになったら、上げすぎず、小さめの音量でも各パートが聞き分けられる状態へ戻しておくと、耳が疲れにくく、判断も安定します。
音出しからの各工程で音量とどう付き合うかは、制作工程マップに全体像として整理しています。
よくある疑問
DAWのメーターは動くのに耳だけ小さいのはなぜですか
DAWの中の音は正常で、そこから耳までの外側の経路のどこかが絞られています。OSの音量、オーディオインターフェースの出力つまみ、ヘッドホンの挿し場所を、出口に近い順に一つずつ確かめます。
どこから確認すればいいですか
音の出口から近い順が迷いません。DAWのモニター音量、OSの音量とミュート、インターフェース本体のヘッドホンとメインのつまみ、挿し場所の順です。一箇所ずつ動かし、どこで音量が変わるか見ます。
ヘッドホンだけ音量が伸びません
モニター用ヘッドホンには鳴らしにくさを示すインピーダンスという値があり、高いモデルはパソコン直挿しだと音量が出にくいことがあります。オーディオインターフェースのヘッドホン出力へ挿すと改善することが多いです。
聞こえが小さいので曲の方を上げてもいいですか
分けて考えます。作業中の聞こえはモニターのつまみで上げます。聞こえが小さいからと曲側のマスターやトラックを上げると、後で割れる原因になります。直すのはモニター側の音量です。
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