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古賀稔宏の作曲ノート作曲・編曲家のDTM制作ノート

DTM初心者の30分練習メニュー|毎日何を作ればいいか

古賀稔宏のプロフィール写真

作曲・編曲家 古賀 稔宏

「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。

30分あれば、DTMの練習は1回分として成り立ちます。ただし、DAWを開いてから「今日は何をしよう」と考え始めると、音色を眺めているうちに30分は消えます。1回の練習に必要なのは、やる気ではなく、中身の配分です。

ここで扱うのは、30分1回の中身だけです。5分で前回の続きを聞き、15分で今日の1テーマだけ触り、10分で書き出して保存する。この配分と、テーマを1回1操作に絞る選び方、30分で切る理由を順に説明します。毎日続けるための工夫や習慣づくりは、別の記事に譲ります。

30分の配分

先に決めるのは今日の1操作です。30分は「聞く5分・触る15分・残す10分」に割り、迷ったら前回の書き出しを聞いて気になった1か所を今日の1操作にします。

  • 最初の5分:前回の続きを通して聞き、今日の1テーマを決める
  • 真ん中の15分:決めた1テーマ、1操作だけ触る
  • 最後の10分:書き出して、DAWの外で1回聞き、保存する
  • テーマは「操作1つ」の大きさまで削ってから始める

5分・15分・10分に分ける

触る時間は真ん中の15分だけ。前後はそのための時間です。

30分練習の配分は、5分、15分、10分です。実際に音を置いたり動かしたりするのは、真ん中の15分だけです。残りの15分は、その15分を無駄にしないための時間だと考えてください。

最初の5分は、前回の続きを聞いて、今日触る場所を1つに決める時間です。ここを飛ばして触り始めると、15分の途中で「今日は何を直したかったんだっけ」となります。

最後の10分は、書き出して保存する時間です。10分は長く見えますが、書き出しの操作、DAWの外で1回聞く、気づいたことを1行メモ、別名で保存、と並べると、慣れないうちはぎりぎりです。

大事なのは、真ん中の15分に1テーマしか入れないことです。15分で2つやろうとすると、どちらも中途半端に終わり、書き出した音を聞いても何が変わったのか分かりません。1テーマなら、前回との違いがはっきり聞こえます。

この配分は、時計を見なくても回せるように、タイマーを2回かけておきます。5分で1回、そこから15分で1回。2回目が鳴ったら、途中でも手を止めて書き出しに入ります。

最初の5分:前回の続きを聞いてテーマを決める

触る前に、今日どこまで行けば終わりかを決めます。

プロジェクトを開いたら、手を触れずに前回の続きを通して聞きます。4小節でも8小節でも、あるところまで全部です。聞きながら、気になった場所を1つだけ拾います。ハイハットが平坦、ベースが重い、コードの切り替わりが唐突、といった程度で十分です。

拾ったものが、今日のテーマです。ここで決めるのはテーマと、それをどこまでやれば終わりかの2つです。

制作の現場では、今日の作業を始める前に完成形の小さいゴールを決める、という判断を守っています。8小節なのか、90秒なのか、フルコーラスなのかが見えないまま細部を触ると、作業は増えても曲は進みにくい。30分練習では、この「小さいゴール」が最初の5分で決めるテーマにあたります。

たとえば「ハイハットが平坦」なら、ゴールは「8小節ぶんのハイハットに強弱を付ける」です。「ベースが重い」なら「4小節のベースの音の長さを短くする」です。触る場所と終わりの形がセットで言えたら、5分の仕事は終わりです。

前回のメモがあるなら、それを読むところから始めても構いません。メモに「サビ前のスネアが弱い」と書いてあれば、聞く時間はそこの確認だけで済み、テーマ決めは1分で終わります。

真ん中の15分:1テーマだけ触る

1回の練習で触る操作は1つ。他が気になっても手を出しません。

15分は、決めたテーマに関わる操作だけをします。ハイハットの強弱がテーマなら、触るのはハイハットのベロシティ(音の強さの値)だけです。途中でキックの音色が気になっても、そこには触りません。メモに書いて、次回のテーマ候補にします。

操作を1つに絞る理由は、最後の10分で書き出した音を聞いた時に、何が効いたかを1つに特定できるようにするためです。2つ触ると、良くなっても悪くなっても、どちらのせいか分かりません。1つなら、前回の書き出しと比べるだけで答えが出ます。

ドラムをテーマにするなら、レッスンで見ている判断軸が使えます。ドラムが機械っぽく聞こえる一番の原因は、ベロシティを一定にしていることです。タイミングはジャストのままでよく、八分の刻みに強弱を付けるだけで人間味が出ます。15分でこの1操作をやると、変化が耳ではっきり分かります。

ベースがテーマなら、音の長さだけを触ります。全部つながっている音を、小節の終わりで少し短く切る。音程は変えません。コードがテーマなら、4つのコードのうち1つだけ別のコードに替えて聞き比べる。どれも「1操作」の大きさです。

15分たった時に終わっていなくても、そこで止めます。8小節のうち4小節しか強弱を付けられなかったなら、その4小節が今日の成果です。残りの4小節は、次回のテーマとしてそのまま使えます。

15分で終わるテーマの例

どれも操作が1つで、書き出せば前回との違いが聞こえます。

テーマ触る操作終わりの形
ハイハットが平坦ベロシティに強弱を付ける8小節ぶんの八分に強弱が入った
ベースが重い音の長さを短く切る4小節の小節末が短くなった
コードが単調4つのうち1つを別のコードに替える替えた版と元の版の両方が聞ける
メロディが平らフレーズの入る拍を1拍ずらすずらした4小節が鳴る
歌が埋もれる歌以外のフェーダーを少し下げる歌の言葉が聞き取れる
次の4小節がないコードを4つ足す8小節が止まらずに回る

最後の10分:書き出して保存する

DAWの外で1回聞いてから閉じると、次回の5分が短くなります。

2回目のタイマーが鳴ったら、書き出しに入ります。今日触った範囲を含む区間を、WAVかMP3で書き出します。全体でなくて構いません。8小節なら8小節だけです。

書き出したら、DAWを閉じる前にDAWの外で1回聞きます。スマホに送っても、パソコンの別のプレイヤーで再生しても構いません。画面のノートを見ながら聞くのと、音だけで聞くのとでは、気づくことが違います。今日の1操作が効いたかどうかは、ここで判定します。

聞いて気づいたことを、1行だけメモに残します。「ハイハットの強弱は効いた。次はスネア前の1発を弱くする」のように、今日の結果と次回のテーマ候補をセットで書くと、次回の5分がそのまま短くなります。

最後に保存です。上書きではなく、日付を付けた別名で保存しておくと、今日の版と前回の版を後から聞き比べられます。今日の操作が裏目に出ていた時も、前回の版を開けば戻れます。

書き出しを省いて保存だけで閉じると、次回の5分は「前回何をしたか思い出す」から始まります。10分を書き出しと聞き直しに使うのは、次回の30分を守るためです。

テーマが大きすぎる時の削り方

「〜を作る」は操作ではありません。操作の大きさまで削ります。

最初の5分で決めたテーマが15分で終わらない時、原因はほぼ決まっています。テーマが「操作」ではなく「工程」の大きさになっていることです。

「サビを作る」は工程です。コードを決める、ドラムを置く、メロディを乗せる、と操作が3つ以上入っています。これを15分に入れるなら、「サビのコードを4つ置く」まで削ります。「ミックスをする」も工程です。「歌以外のフェーダーを下げる」まで削って、初めて1操作になります。

削る時の目安は、触る画面が1つで済むかです。ピアノロールとミキサーの両方を行き来するテーマは、2操作に分かれています。片方に絞ってください。

もうひとつの目安は、終わりの形が音で確認できるかです。「ドラムを良くする」は、いつ終わったか分かりません。「8小節のハイハットに強弱を付ける」なら、付け終わった瞬間に終わりが分かります。

テーマが小さすぎて15分余った時は、同じ操作を別の場所に広げます。4小節に強弱を付け終わったなら、次の4小節にも同じ操作をする。別の操作に移らず、同じ操作の範囲を広げるほうが、練習としては身につきます。

30分で切る理由

延長すると2テーマ目に手が伸び、何が効いたか分からなくなります。

調子が出てきた日ほど、30分で切るのがもったいなく感じます。それでも切る理由は2つあります。

ひとつは、延長した時間で必ず2テーマ目に手が伸びるからです。ハイハットの強弱が終わり、余った時間でキックの音色を替え、ついでにベースも短く切る。閉じる時には3つ触っていて、書き出した音を聞いても、どれが良くてどれが悪かったのか分からなくなります。1操作の効果を確かめるという練習の目的が、延長で消えます。

もうひとつは、耳です。同じ8小節を30分以上聞き続けると、耳がその音に慣れて、変化を判定できなくなります。「良くなった気がする」と「悪くなった気がする」を行ったり来たりし始めたら、それは耳が疲れた合図です。判定は、次回の最初の5分に回したほうが正確です。

30分で切ると、今日の1操作が効いたかどうかの答えは、次回の5分で出ます。前回の書き出しと今回の書き出しを聞き比べれば、耳が新しい状態で判定できます。練習の結果が次回の入口になる、この循環が30分で切ることで成り立ちます。

1回の30分で触るのは1操作です。その1操作が、曲全体のどの工程にあたるのかが分かると、テーマの選び方に迷わなくなります。音出しから仕上げまでの工程は、制作工程マップに1枚でまとめています。

よくある疑問

15分で1テーマが終わりません

テーマが「工程」の大きさになっています。「サビを作る」なら「サビのコードを4つ置く」まで削ってください。終わらなかった分は延長せず、次回のテーマにします。

最後の10分は保存だけではだめですか

書き出してDAWの外で1回聞くところまでやってください。今日の操作が効いたかどうかは、そこで初めて分かります。省くと次回の5分が「思い出す時間」になります。

テーマは毎回違うものにすべきですか

同じテーマを別の場所に広げるほうが身につきます。ハイハットの強弱を4小節でやったなら、次回は残りの4小節で同じ操作をしてください。

30分を朝と夜に分けても成り立ちますか

成り立ちます。朝に5分の聞く時間、夜に15分と10分、という分け方でも流れは同じです。触る15分と書き出しの10分だけは続けて行ってください。

今日やることは1つです。タイマーを30分にして、前回書き出した音を聞くところから始める。テーマが決まらなければ、ハイハットの強弱を触る。それだけで1回分になります。

1日1つだけ。7日で1曲書き出す

「最初の7日チェック表」(PDF)を無料でお送りしています。1日にやることを1つに絞って、7日目には音声ファイルが1つ完成する組み方です。MIDI素材一式も同梱しています。

次に進む記事

30分で触った1操作が、曲のどの工程にあたるかを確かめる記事へ進みます。

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プロフィール

古賀 稔宏

ギター、ウクレレ、DTM(Cubase)、作曲技法、音楽理論を指導。14歳でギターを始め、同時に作曲も始める。ポップ、ロック、クラシックの要素を含む楽曲を得意とする。

商業音楽の制作・演奏に携わりながら、初心者が止まりやすい場所を制作工程に沿って整理している。