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古賀稔宏の作曲ノート作曲・編曲家のDTM制作ノート

サンプルパックの選び方|DTM初心者が買う前に見ること

古賀稔宏のプロフィール写真

作曲・編曲家 古賀 稔宏

「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。

サンプルパックは、演奏や音作りを済ませた音をファイルにして集めた素材集です。

ドラムの一発、シンセのフレーズ、数小節のリズムなどが入っていて、DAWのトラックに貼るだけで鳴ります。楽器が弾けなくても、本物に近い音で曲の土台を作れる道具です。

一方で、中身の種類や利用条件を知らずに買うと、開かないフォルダが増えるだけになりがちです。

買う前に、ループとワンショットのどちらが多いか、テンポとキーの表記があるか、商用利用できるか。見る場所はこの3つに絞れます。

先に見ること

値段や収録数より、素材の種類と利用条件を先に確認します。

  • 中身はループ中心か、ワンショット中心か
  • ファイルにBPMとキーの表記があるか
  • 商用利用可か、再配布不可などの条件はどうか
  • デモを聞いて、口ずさめる素材があるか

サンプルパックとは何か

録音済みの音を集めたファイルの詰め合わせです。

サンプルパックの中身は、WAVなどのオーディオファイルです。

スタジオで録ったドラム、作り込まれたシンセの音、歌の一節。そうした「もう完成している音」が、ジャンルやテーマごとにまとめて配布されています。

有料のものも、無料で配られているものもあります。

使い方は単純で、ファイルをDAWのトラックにドラッグするだけです。ソフト音源のように音色を設定したり、演奏を録音したりする手間がありません。

開いたその日に、プロが作った音を自分の曲で鳴らせます。

ここで知っておきたいのは、サンプルは「写真」に近いということです。写り込んだ景色は最初からきれいですが、後から構図を変えるのは苦手です。

音の高さ、リズムの細部、演奏のニュアンスは、素材の中にほぼ固定されています。この性質が、次に説明する種類の違いと、打ち込みとの使い分けにつながります。

ループとワンショットの違い

「貼るだけで鳴るフレーズ」か「1発の音」かの違いです。

ループは、2小節や4小節のフレーズが完成した状態で入っている素材です。ドラムのループなら、貼って繰り返すだけで8ビートが鳴り続けます。

フレーズを考える工程を丸ごと省略できるので、最初の1曲では特に助けになります。

ワンショットは、キック1発、スネア1発、ベルの音1つのような単発の音です。鳴らすリズムは自分で決めます。

手間は増えますが、自分の曲に合わせてパターンを自由に組めるのが強みです。

初心者はまずループで曲の形を体験し、慣れてきたらワンショットで自分のリズムを組む。この順番が挫折しにくいです。

パックを選ぶ時は、商品説明にある収録内容の内訳を見て、どちらが多いかを確認してください。ループばかりのパックを買って「自分で組みたかったのに」となる失敗は、事前の1分で防げます。

打ち込みとの違いと使い分け

「音そのもの」を使うか、「音符のデータ」を書くかの違いです。

打ち込みは、MIDIという音符のデータをピアノロールに置き、ソフト音源に演奏させる方法です。

音の高さも長さも音色も、後からいくらでも直せます。その代わり、音符もリズムも自分で考える必要があります。

サンプルはこの逆です。音はすでに完成していて質が高いぶん、変更が苦手です。ループのメロディを「ここだけ1音変えたい」と思っても、簡単にはできません。

使い分けの目安はこうです。メロディやコードのように、曲の途中で何度も直したくなる部分は打ち込みで作る

ドラムや効果音のように、音の質感が欲しくて形はあまり変えない部分はサンプルを使う。この分担なら、直したい場所は直せて、音の迫力も手に入ります。

中間のやり方もあります。ワンショットをサンプラーという仕組みに読み込むと、単発の音をMIDIで打ち込んで鳴らせます。

サンプルの音の良さと、打ち込みの自由さの両取りです。多くのDAWに最初から入っている機能なので、慣れてきたら試す価値があります。

BPMとキーを合わせる基本

合っていないと、ずれるか濁るかのどちらかが起きます。

ループの多くは、ファイル名にBPM(テンポ)とキーが書かれています。「120BPM」「Am」のような表記です。

自分の曲がBPM100なのに、BPM140のループをそのまま貼ると、リズムが曲とずれて崩れます。

ほとんどのDAWにはタイムストレッチという機能があり、素材のテンポを曲に合わせて伸び縮みさせられます。ただし、元のテンポから大きく離すほど音は不自然になりやすいです。

買う段階で、自分がよく作るテンポ帯に近い素材が入ったパックを選ぶほうが、結局は手間が減ります。

キーは、音程のある素材で問題になります。ベースやシンセのループが曲のキーと合っていないと、コードと素材がぶつかって濁った響きになります。

キー表記のある素材を選ぶか、DAWのピッチ変更で寄せます。

なお、キックやスネアなどのドラム系は音程がほぼ気にならないので、キーを気にせず使えます。最初にドラム系の素材から集めると迷いが少ないのは、この理由もあります。

ライセンスで確認すること

「買ったから何でも自由」ではありません。

サンプルパックには利用条件、つまりライセンスが付いています。

多くはロイヤリティフリーという形式で、一度手に入れれば、自分の曲に組み込んで発表・販売するのに追加の支払いはいりません。ここまでは安心して使えます。

一方で、ほぼ全ての規約が禁止しているのが再配布です。素材をそのまま、あるいは別の素材集として配ったり売ったりする行為は、曲に使うのとは全く別の扱いになります。

友人に「このキックいいよ」とファイルを渡すのも、厳密には再配布です。

確認する項目は3つです。商用利用が可能か。クレジット表記(制作元の名前を書くこと)が必要か。素材単体での配布が禁止されているか。

特に無料配布の素材は条件がまちまちなので、ダウンロードページの利用規約を一度は読んでください。数分の確認で、公開後に曲を取り下げる事態を避けられます。

買う前のチェック表

迷ったら、この順番で確認して判断します。

確認すること見る場所判断の目安
中身の種類収録内容の内訳(ループ/ワンショットの数)最初の1曲ならループ多め、リズムを組みたいならワンショット多め
テンポとキーファイル名やデモのBPM・キー表記自分がよく作るテンポ帯に近いものを選ぶ
ライセンス利用規約のページ商用利用可・再配布不可の範囲を確認してから使う
デモの印象試聴デモ聞いて口ずさめる素材があるかで決める
ジャンルパックのテーマ・想定ジャンル今作っている曲の1曲分だけ選び、買いだめしない

頼りすぎると起きること

便利さの代わりに、失うものが2つあります。

1つ目は、曲が誰かに似ることです。人気のサンプルパックは世界中で使われています。

目立つメロディのループをそのまま曲の主役にすると、同じ素材を使った別の曲と印象が重なります。ループは主役ではなく、ドラムや背景の飾りとして使うほうが安全です。

2つ目は、構成力が育たないことです。貼るだけで形になるため、「なぜこのリズムなのか」「どこで展開を変えるのか」を考えないまま曲が終わります。

次の曲で素材が変わると、また貼るだけに戻ります。

対策として、レッスンでドラムの打ち込みに使っている判断軸がそのまま役立ちます。ドラムは譜面や名前から入るより、「ドン、タン、ツツツ」のように口で言えるリズムから打ち込むほうが止まりにくい、という考え方です。

素材選びも同じで、デモを聞いて口ずさめるループは、自分の曲に組み込む場所を想像できています。逆に、歌えないほど複雑で派手な素材は、かっこよく聞こえても持て余しやすいです。

さらに一歩進むなら、気に入ったループを口で歌ってみて、そのリズムをワンショットや打ち込みで自分の手で組み直してみてください。

サンプルパックが「貼る素材」から「リズムの教材」に変わり、構成力の練習にもなります。

サンプルパックは、工程を速くする道具です。コードを置き、ドラムを組み、メロディを乗せるという曲作りの流れの中で、どの工程を速くしたいのかが見えていれば、選ぶパックも使い方も迷いません。

その全体の流れは、下の制作工程マップで確認できます。

よくある疑問

サンプルパックとは何ですか

録音済みの音をWAVなどのファイルでまとめた素材集です。数小節のフレーズが入ったループと、キック1発のような単発音のワンショットがあり、DAWのトラックに貼るとそのまま鳴らせます。

打ち込みとサンプルはどちらを覚えるべきですか

両方を少しずつ使い分けます。メロディやコードのように後から直したい部分は打ち込み、ドラムや効果音のように音の質感が欲しい部分はサンプルが向いています。

無料のサンプルパックでも商用利用できますか

配布元のライセンス次第です。無料でも商用利用可のものはありますが、素材そのものの再配布や転売はほぼ全ての規約で禁止されています。使う前に利用条件のページを確認してください。

ループのBPMが自分の曲と合いません

DAWのタイムストレッチ機能でテンポを合わせられます。ただし元のBPMから大きく離すほど音は不自然になりやすいので、買う段階で自分がよく作るテンポ帯に近い素材を選ぶのが安全です。

無料配布|アンパンマン劇場版楽曲を手がけた作曲家の「制作工程マップ」

音出し、コード、ドラム、メロディ、アレンジ、フルコーラス完成までの流れを1枚にまとめた無料マップです。登録するとその場でご覧いただけます。

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古賀稔宏のプロフィール写真

プロフィール

古賀 稔宏

ギター、ウクレレ、DTM(Cubase)、作曲技法、音楽理論を指導。14歳でギターを始め、同時に作曲も始める。ポップ、ロック、クラシックの要素を含む楽曲を得意とする。

商業音楽の制作・演奏に携わりながら、初心者が止まりやすい場所を制作工程に沿って整理している。