曲構成の基本

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
曲構成とは、イントロやAメロ、サビといった部品を、どの順番で並べるかという設計図のことです。一つ一つの部品の作り方より前に、全体をどう並べるかを決めておくと、作った素材が迷子になりません。
部品がそろっていても、並べ方が決まっていないと、曲は途中で行き止まります。よく使われる定番の並び、それぞれの部品が担う役割、そしてワンコーラスからフル尺へ広げる時の構成の考え方までを、地図を描くように整理します。
先に見ること
曲構成は、部品を並べる設計図。作る前に地図を持ちます。
- 定番はイントロ→Aメロ→Bメロ→サビ→間奏→…→アウトロ
- 各セクションには、つかむ・語る・ためる・解放する役割がある
- まずワンコーラスで並べ、あとからフル尺へ広げる
- 迷ったら定番に戻り、省略や入れ替えは後から試す
構成は曲の設計図
部品を作り込む前に、地図を描きます。
曲構成は、曲全体の設計図です。家でいえば間取り図にあたります。
どの部屋をどこに置くかを先に決めておくと、あとから壁を立てる時に迷いません。
曲でも、どの部品をどこに置くかを先に決めると、作業がまっすぐ進みます。
部品というのは、イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ、間奏、アウトロといったまとまりのことです。
それぞれが数小節から十数小節の長さを持ち、順番に並んで一曲になります。構成を考えるとは、この部品の並び順と長さを決めることです。
初心者がつまずきやすいのは、一つのループをただ長く引き伸ばして曲にしようとする時です。
同じ8小節をくり返すだけでは、時間は伸びても場面が変わりません。構成とは、時間を伸ばすことではなく、役割の違う場面を順番に並べることです。
だから、部品を細かく作り込む前に、まず地図を描きます。
紙でもDAWのメモ欄でもかまいません。どんな順番で並べるかを一行書いておくと、次に何を作ればいいかが見えてきます。
地図には、部品の長さも書き添えておくと便利です。
イントロは8小節、Aメロは16小節、サビは16小節、というように数を決めておくと、作りながら長さがばらつきません。長さがそろうと、部品を入れ替えても全体のバランスが崩れにくくなります。
定番の並びを覚える
まず定番どおりに一度並べてみます。
いちばん多く使われる並びは、イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ、という流れです。
歌もののJ-POPの1番は、たいていこの順で進みます。この四つが並ぶだけで、聞き手は「曲を聞いている」と感じます。
1番のあとは、間奏をはさんで2番へ進みます。
2番も基本はAメロ、Bメロ、サビの並びです。
そのあと、間奏や落ちサビ(音を抜いた静かなサビ)をはさんで、最後にもう一度サビをくり返し、アウトロで閉じる。これがフル尺の定番の骨格です。
この並びは、暗記する決まりではありません。
多くの曲がこの形に落ち着くのは、聞き手が飽きずに最後まで聞ける流れだからです。まずこの定番どおりに一度並べてみると、どこが強くてどこが弱いかを判断する土台になります。
全部の部品を最初からそろえる必要はありません。
イントロ、Aメロ、サビの三つだけでも、短い曲の構成になります。足りないと感じた場所にBメロや間奏を足していくと、無理なく形が広がります。
セクションの役割地図
部品ごとに、役割と置く場所を確かめます。
| セクション | 役割 | 置く場所の目安 |
|---|---|---|
| イントロ | つかむ。曲の顔を見せる | いちばん最初 |
| Aメロ | 語る。世界を説明する | イントロのあと |
| Bメロ | ためる。サビへ橋を渡す | Aメロとサビの間 |
| サビ | 解放する。頂点を見せる | 曲の山 |
| 間奏 | 休ませる。次へ切り替える | 1番と2番の間 |
| アウトロ | 閉じる。後味を作る | いちばん最後 |
ワンコーラスからフル尺へ
短い形で並びを決めてから伸ばします。
構成を最初からフル尺で組もうとすると、部品が多すぎて迷います。
まずはワンコーラス、つまりイントロからサビまでが一度ずつ出る短い形で並べます。曲の骨格は、この短い範囲でほとんど決まります。
レッスンで使っている判断メモに、90秒くらいの短い形は最終ゴールではなく、フルコーラスへ広げる前に、入口、展開、盛り上がり、終わり方を小さく確認する通過点だ、というものがあります。
構成を確かめるのも同じで、短い形で並びが成り立てば、長くしても崩れにくくなります。
ワンコーラスで流れが良ければ、フル尺へ広げます。
広げるといっても、全部を新しく作るわけではありません。
1番の部品を2番へ使い回し、間奏やもう一度のサビを足していく。同じ地図を二周する形で、無理なく長さを伸ばせます。
大事なのは、フル尺は長さで作るのではなく、場面の数で作ると考えることです。
同じサビをただ三回くり返すより、静かな落ちサビをはさんでから最後のサビへ入るほうが、長くても飽きません。役割の違う場面を足すのが、フル尺の構成です。
並べ替えと省略
定番で作ってから、変化を試します。
定番に慣れたら、並べ替えや省略も試せます。
よくあるのが、Bメロを省いてAメロからサビへ直接つなぐ形です。海外のポップスに多く、テンポよくサビへ届きます。
橋渡しをなくすぶん、Aメロとサビの差をはっきりつけておく必要があります。
逆に、頭にサビを持ってくる形もあります。
曲のいちばん強い場所を最初に聞かせてから、Aメロへ戻る。つかみを最優先したい時に使われます。
構成は、部品を入れ替えるだけで印象が変わる、いくつもの並べ方を試せる場所です。
ただし、入れ替えや省略は、定番で一度作ってから試すほうが安全です。
基準になる並びを持っていると、変えた時に良くなったか悪くなったかを判断できます。最初から変わった構成を狙うより、定番を土台にして少しずつずらします。
並べ替えを試す時は、DAW上で部品ごとに区切って名前を付けておきます。
ブロックを入れ替えるだけで別の構成を試せるようにしておくと、聞き比べが速くなります。
入れ替えを試したら、必ず最初から通して聞きます。
部品単体では良くても、前後のつながりで違和感が出ることがあります。構成の良し悪しは、部品の出来より、並べた時の流れで決まります。
曲がまとまらない時
場面の差と、部品の多さを見ます。
構成がまとまらないと感じる時は、たいてい場面の差が足りていません。
イントロもAメロもサビも同じ厚さ、同じ高さで鳴っていると、並べても一本調子に聞こえます。まず、どこかを思い切って薄くして、場面ごとの差を作ります。
逆に、部品が多すぎて散らかることもあります。
間奏や展開を足しすぎると、地図が複雑になって迷子になります。
その時は、いちど定番のワンコーラスまで削って、本当に要る部品だけを残します。足すより減らすほうが、構成は整いやすいです。
通して聞く時は、部品の切れ目に注目します。
イントロからAメロ、Bメロからサビへと移る境目が、なめらかか、唐突か。
つなぎがぎくしゃくする場所が、たいてい構成の弱点です。境目の一小節を足したり抜いたりして調整します。
迷った時ほど、部品を増やすより並べ替えで解決できないかを先に考えます。
同じ部品でも、置く順番と長さを変えるだけで、曲の印象は大きく動きます。手を広げる前に、今ある地図の並びを見直すほうが近道です。
最後は、曲を頭から通して再生し、止まりたくなる場所を一つだけメモします。
全体の地図が見えると、次にどの部品を直せばいいかが分かります。個々のセクションの作り方や、部品をつないでいく順番は、制作工程マップに1枚でまとめています。
よくある疑問
曲構成はどの並びから覚えればいいですか
イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ、という定番の並びから覚えます。この四つを一度ずつ並べたワンコーラスが作れれば、あとは2番や間奏を足してフル尺へ広げられます。
全部のセクションを入れないとだめですか
いいえ。イントロ、Aメロ、サビの三つだけでも曲構成として成立します。Bメロや間奏は、物足りない場所に後から足せば十分です。
ワンコーラスとフル尺はどう違いますか
ワンコーラスはイントロからサビまでが一度出る短い形、フル尺は2番や最後のサビまで含めた完成形です。まずワンコーラスで並びを決め、同じ地図を二周させる形でフル尺へ広げます。
構成を変えたら曲がおかしくなりました
定番の並びに一度戻して比べます。基準があると、どの入れ替えが良くなかったか判断できます。省略や並べ替えは、定番を土台にして一か所ずつ試すと安全です。
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