フューチャーベースの作り方|コードと揺れをDTMで組む手順

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
フューチャーベースらしさの中心は、リードでもドラムでもなく、うねりながら鳴る厚いコードのシンセです。
和音そのものが主役として前へ出て、波のように膨らんだり沈んだりする。あの膨らむ感じは特別な音色ではなく、和音の積み方と音量の揺れという2つの作業でできています。
ここでは、BPMとハーフタイムのドラム、明るく厚いコードの積み方、サイドチェイン的な揺れの作り方、可愛い系の音色の乗せ方、落差のあるサビの設計まで、DAWにそのまま置ける順番で分解します。
制作の軸
フューチャーベースは、うねるコードシンセを主役に据えて組み立てます。
- BPMは140〜160、スネアは3拍目に置く
- コードはmaj7やadd9の4和音+オクターブ重ね
- 揺れは4分音符の周期で音量を沈ませて作る
- サビの落差は手前の音数を絞って作る
主役はうねるコードシンセ
ダンス系なのに、主役はビートではなく和音です。
多くのダンス系はキックとベースが曲の中心にいます。フューチャーベースは逆で、和音を鳴らすシンセが歌の主役級に前へ出ます。
明るくて、厚くて、少し切ない。そして音量が波打つように揺れる。この4つがそろうと、一気にそれらしく聞こえます。
初心者がつまずくのは、プリセットを何百個試しても「あの膨らむ感じ」にならない場面です。原因は音色ではありません。
膨らむ感じの正体は、4和音以上を高い音域まで重ねた厚みと、音量が周期的に沈んでは戻る揺れの処理です。つまり探すものではなく、作るものです。
この記事の手順は、和音を積む、揺らす、飾る、落差を付ける、の4段階です。順番に置けば、シンセ1台とドラムだけでジャンルの骨格が鳴ります。
BPMとドラムの土台
数字は速く、体感はゆったり。この二重構造を先に作ります。
テンポの目安はBPM140〜160で、迷ったら150に固定します。数字だけ見ると速いですが、体感はゆったりしています。
理由はスネアの位置です。スネアを1小節に1回、3拍目にだけ置くハーフタイムという形にすると、テンポの半分の速さで体が揺れます。
キックは4つ打ちにしません。1拍目に1発、あとはコードが変わる直前などに数発だけ置きます。
ハイハットは8分音符で薄く敷き、スネアの手前に短い連打やクラップを足すと、隙間の多いビートに前へ進む力が生まれます。
ドラムを組んだら、コードを入れる前に一度だけ確認します。スネアの3拍目で首が縦に動くか。動かないならキックを減らします。
ここが騒がしいと、主役の和音が乗る場所がなくなります。
明るく厚いコードの積み方
4和音を選び、オクターブで厚くします。
コードは4和音が基本です。おすすめはmaj7(メジャーセブンス)とadd9。
どちらも普通のメジャーコードに1音足しただけの響きで、明るいのにどこか切なく聞こえます。この「明るい+切ない」がジャンルの感情の芯です。
厚みはオクターブで作ります。同じ4和音を1オクターブ上にそのまま重ねると、音数は倍になり、壁のような響きになります。
音色はノコギリ波を何本も重ねた厚いシンセを選び、白玉(長く伸ばす音符)で2小節ずつ鳴らします。細かく刻むより、まず伸ばすことです。
進行は4つのコードで1周させます。凝った進行を探すより、一番上の音(トップノート)がなだらかに動くように積み替えるほうが効きます。
トップノートは聞き手にはメロディとして届くので、ここが歌えるとコードだけで曲になります。
うねりの作り方
サイドチェイン的な揺れは、周期で作ると扱いやすいです。
うねりの正体は、コードの音量が周期的に沈んでは戻る動きです。
本来はサイドチェインといって、キックが鳴った瞬間に他の音の音量を沈ませ、キックの場所を空ける処理から来ています。フューチャーベースでは、この沈み込み自体を効果として聞かせます。
ただしこのジャンルはキックが少ないので、キックに反応させる方式だと揺れが途切れます。実際には、キックと関係なく4分音符の周期で音量が沈む形を作るほうが扱いやすいです。
音量を周期的に動かす機能を使うか、ボリュームのオートメーションを1拍ぶん手で描いてコピーします。
深さの目安は、沈んだ瞬間に音が半分くらいへ落ちる程度です。深すぎると息切れしたように聞こえ、浅すぎると揺れが分かりません。
必ず曲のテンポと同期させること。周期がテンポとずれていると、うねりではなく酔いになります。
可愛い系の音色とフック
高い音域の短い音が、可愛さを担当します。
厚いコードの上に、可愛い系の飾りを少しだけ乗せます。向いているのは、ベルの音や、弾いた瞬間に立ち上がってすぐ減衰するプラックと呼ばれる短い音です。
高めの音域で、音の頭がわずかに下から上へしゃくれるように動くと、声が笑ったような表情になります。
フックは短く作ります。
レッスンでは、同じメロディや音を繰り返しても下のコードが変わると聞こえ方が変わる、つまり反復と変化を同時に作れるので耳に残るフックになりやすい、という判断基準を伝えています。コードが主役のこのジャンルとは特に相性が良い考え方です。
具体的には、2小節で完結する短いフレーズを1つ作って固定し、下のコードだけを4つ動かします。
フレーズを増やすのではなく、同じフレーズの聞こえ方が変わっていくのを見せる。これだけでサビの主役が立ちます。
パートごとの役割早見表
4つのパートの担当を、置き方まで含めて整理します。
| パート | 置き方 | 注意 |
|---|---|---|
| ドラム | 3拍目スネア+控えめなキック | 4つ打ちにしない |
| コードシンセ | maj7やadd9を4和音+オクターブ重ね | 白玉で伸ばして揺らす |
| ベース | サイン波系の低音でルートを支える | コードの低域と場所を分ける |
| 飾り | ベルやプラックの短いフック | 高い音域で音数は少なく |
落差のあるサビの設計
サビで全部を出すには、手前で出さないことです。
曲の骨組みは、静かなAメロ、短い盛り上げ、コードシンセが全開になるサビ、また静かな区間、という波で作ります。
サビの豪華さは手前との差で決まるので、Aメロはピアノ1本と歌もの素材くらいまで音数を絞って構いません。
サビ直前には1拍の空白を置きます。全部の音が一瞬消えてからコードの壁が押し寄せると、同じ音量でも数割大きく感じます。
落差はフェーダーではなく、この抜き差しで作るものです。
ミックスで一つだけ注意するなら、コードシンセの低域です。オクターブ重ねで厚くすると下の音域まで膨らみ、ベースと重なって濁ります。
コードシンセの低い成分は思い切って削り、低域は低音の楽器に任せます。この分担だけで、サビの抜けが目に見えて変わります。
最初の8小節を組む手順
静かな4小節とサビ4小節を1セットで作ります。
練習は落差ごと作るのが近道です。1〜4小節目を静かな区間、5〜8小節目をサビと決めて、次の順で置きます。
手順は8つです。①BPMを150に設定する。②5〜8小節にmaj7系の4和音を白玉で置く。③同じ和音を1オクターブ上に重ねる。④コードに4分周期の音量の揺れをかける。
⑤3拍目スネアと控えめなキックを置く。⑥低音でルートを支える。⑦1〜4小節は同じ進行をピアノだけで薄く鳴らす。⑧4小節目の最後の1拍を空白にする。
書き出してスマホで聞き、5小節目の頭で景色が開くかを確認します。開かないなら、直すのは5小節目ではなく1〜4小節目です。
手前をさらに減らすか、空白を半拍伸ばします。
この8小節が鳴れば、あとは曲全体へ広げるだけです。どの工程から広げるか迷ったら、制作工程マップで全体の順番を確認しながら進めてください。
よくある疑問
うねる揺れはどうやって作りますか
キックに合わせて音量が沈むサイドチェインか、音量を周期的に動かす機能で作ります。キックが少ないジャンルなので、4分音符の周期で沈ませる方法が扱いやすいです。
コードは何和音にすればいいですか
4和音が基本です。maj7やadd9のような明るく少し切ない響きを選び、同じ音を1オクターブ上に重ねると厚くなります。
サビの落差が出ないのはなぜですか
サビ以外が鳴りすぎていることが多いです。Aメロの音数を絞り、サビ直前に1拍の空白を置くと、同じサビでも大きく聞こえます。
BPMはいくつにすればいいですか
140から160の間で試し、迷ったら150に固定します。スネアを3拍目に1回だけ置くと、速さと余裕が両立します。
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