K-POP風楽曲の作り方|展開と音色をDTMで組む手順

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
K-POP風の曲を分解すると、一つのジャンルというより、1曲の中で場面がいくつも切り替わる映画のような設計が見えてきます。
Aメロはヒップホップ調、その先で浮遊感のある区間、サビはダンスビート、直後に口ずさめるシンセの繰り返し。音色ごと雰囲気が変わるのに、なぜか1曲として聞こえる。
この「切り替えてもバラバラにならない」仕組みが分かれば、初心者でも再現できます。
ここでは、固定するものと変えるものの区別、洋楽的なビートと歌の融合、音数を絞ったパートとの対比、最初の8小節の手順まで、順番に組み立てます。
制作の軸
K-POP風楽曲は、場面の切り替えを設計してから音を置きます。
- テンポとキーは固定、音色と密度だけ変える
- ビートはキックとクラップ、ハイハットの刻みで場面を作る
- セクションごとに主役の音色を1つ決める
- 音数を絞る区間が切り替えの対比を生む
曲の中で場面が切り替わる構成
変えるものより先に、変えないものを決めます。
K-POP風の構成は、Aメロ、盛り上げの区間、サビ、そしてサビ直後にシンセや掛け声の反復を置くポストフック、という流れが典型です。
それぞれのセクションで、雰囲気だけでなく鳴っている楽器の顔ぶれごと入れ替わります。展開の多さそのものが曲の魅力になっている作り方です。
初心者がここで失敗するのは、切り替えに合わせて何もかも変えてしまうことです。テンポも響きも変わると、場面転換ではなく別の曲の継ぎはぎに聞こえます。
先に固定するものを決めてください。テンポとキー(曲の音の中心)は最後まで動かさない。変えてよいのは、ビートの刻みと音色と音数だけです。
テンポの目安はBPM100前後のミドルから始めます。
ダンス寄りに振るなら120台でも構いませんが、100前後はハイハットの刻み方だけでゆったりにも前のめりにも聞こえる、場面転換向きの速度です。
洋楽的ビートと歌の融合
歌もリズム楽器の一つとして扱います。
ビートの基本形は、キックと、スネアの代わりに置くクラップ(手拍子系の音)です。クラップは2拍目と4拍目。
キックは1拍目を軸に、小節の後半で少し崩します。ハイハットは16分音符で細かく刻み、区間の変わり目だけ刻みを倍にしたり3連にしたりすると、それだけで場面が動きます。
洋楽的と呼ばれる質感の多くは、この「ビートの隙間の使い方」から来ています。そして肝心なのは、歌をビートの上に浮かべるのではなく、隙間へはめ込むことです。
歌が細かく動く場所ではハイハットを引き、歌が伸ばす場所でビートの刻みを見せる。歌とドラムが交互に前へ出る形にすると、融合した感じが生まれます。
もう一つの鍵は跳ねの量です。16分のハイハットを機械のように等間隔で置くか、裏側をわずかに遅らせて跳ねさせるかで、同じ譜面でも体の揺れ方が変わります。
セクションごとに跳ねの量を変えるのも、場面転換の道具になります。
打ち込みの段階では、仮の歌がなくても構いません。メロディを短い単音の音色で置き、ビートと会話しているかを確認します。
両方が同時に細かく動いている場所を見つけたら、どちらかを削る。それが融合の実作業です。
セクションごとの音色設計
各場面に、主役の音色を1つずつ配ります。
切り替えの設計は、セクションごとに主役の音色を1つ決めることから始めます。
たとえばAメロはベースと歌だけ。盛り上げ区間はパッド(長く伸びる柔らかい和音の音色)と上昇する効果音。サビは太いシンセの和音。ポストフックは一度聞いたら口ずさめる短いシンセリフ。
主役が替わることが、場面が替わることです。
レッスンでは、リファレンスとなる曲を真似るためではなく、どの楽器を使うか、どこで密度が上がるか、どこで休むかを決める材料として使う、という判断基準を伝えています。K-POP風を作る時ほどこの聞き方が効きます。
好きな曲の1番だけを、セクションが替わるたびに一時停止しながら聞き、鳴っている楽器の数と主役をメモしてください。30分で切り替えの設計図が手に入ります。
メモを取ると気づくはずです。派手に聞こえる曲ほど、1つのセクションで鳴っている楽器は意外と少ない。全部の音色を同時に使う場面は、ほとんどありません。
セクション設計の例
4つの場面に、ビートと主役と密度を割り当てます。
| セクション | ビート | 主役の音色 | 密度 |
|---|---|---|---|
| Aメロ | キック控えめ+細いハイハット | 歌とベース | 低 |
| 盛り上げ | ハイハットの刻みを倍に | パッドと上昇音 | 中 |
| サビ | キックを前に出しクラップ強め | 太いシンセ和音と歌 | 高 |
| ポストフック | サビと同じビートを維持 | 口ずさめるシンセリフ | 高 |
音数を絞るパートとの対比
抜いた場所の分だけ、次の場面が大きく聞こえます。
全セクションを豪華にすると、切り替えの効果は消えます。どこかに、歌とベースと最小限のリズムだけ、という区間を必ず作ってください。定番の位置は、サビの直前と、2番のAメロです。
音数を絞る時に迷ったら、残すものから決めます。残すのは歌、ベース、拍を示す最低限の打点。それ以外のパッドや飾りは全部ミュートして構いません。
空きすぎたと感じるくらいで丁度よく、その分だけサビで音が戻った瞬間の広がりが際立ちます。
展開を増やしたくなった時も、順番は同じです。足す場所を探す前に、抜く場所を決める。対比さえあれば、同じ素材の使い回しでも曲は前へ進んで聞こえます。
歌の距離感を揃えるミックス
場面が替わるたび、歌の聞こえ方がずれます。
ミックスで一つだけ注意するなら、セクションの境目での歌とトラックの音量関係です。伴奏の音色と音数が場面ごとに入れ替わるこの作り方では、同じ歌の音量でも、薄い区間では歌が大きすぎ、厚いサビでは埋もれる、というずれが必ず起きます。
確認の仕方は簡単です。セクションの切り替わりをまたぐ4小節だけをループ再生し、歌との距離感が境目の前後で揃っているかを聞きます。
ずれていたら、歌ではなく伴奏側を直します。サビで歌が埋もれるなら、シンセ和音の音量を少し下げるか、歌と同じ音域を薄くします。
この確認をセクションの数だけ繰り返せば、細かい処理を知らなくても、通して聞ける形になります。仕上げの飾りは、その後で十分です。
最初の8小節を組む手順
絞った4小節と厚い4小節で、切り替えを1回作ります。
最初の練習は、1〜4小節目を音数を絞ったAメロ、5〜8小節目をサビに見立てて、切り替えを1回だけ作ることです。手順は8つあります。
①BPMを100に設定する。②5〜8小節にキックの4つ打ちとクラップを置く。③太いシンセで4和音のコードを重ねる。
④1〜4小節はベースと、キックの数発だけにする。⑤メロディを仮の単音で両方の区間に置く。⑥1〜4小節と5〜8小節で、メロディの音色を別のものに差し替える。
⑦4小節目の最後に、ハイハットの連打か1拍の空白で切り替えの合図を入れる。⑧書き出してスマホで聞く。
確認するのは1点だけです。5小節目の頭で、場面が変わったと感じるか。
感じない場合は、前半と後半の音色が似ていることが原因のほとんどです。音量ではなく、音色と音数の差を広げてください。
切り替えが1回作れたら、あとは設計表のとおりに場面を並べていくだけです。曲全体のどの工程から手を付けるか迷ったら、制作工程マップで流れを確認しながら進めてください。
よくある疑問
K-POP風とはどんな作り方ですか
1曲の中でセクションごとに音色と雰囲気を切り替え、洋楽的なダンスビートの上に歌を乗せる作り方です。特定の音色よりも、構成の設計に特徴があります。
展開が多くてまとまりません
全部を変えないことです。テンポとキーは曲を通して固定し、変えるのはビートの刻みと主役の音色だけに絞ると、場面が切り替わっても1曲に聞こえます。
音数を絞るパートには何を残しますか
歌とベース、最小限のリズムです。歌の周りを空けるほど、次のセクションで音が戻った瞬間の対比が強くなります。
BPMはいくつがいいですか
100前後のミドルテンポから始めるのがおすすめです。同じBPMでも、ハイハットの刻みを変えるだけで別の場面に聞こえます。
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