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古賀稔宏の作曲ノート作曲・編曲家のDTM制作ノート

EDMドロップの作り方|ビルドアップから着地までDTMで組む手順

古賀稔宏のプロフィール写真

作曲・編曲家 古賀 稔宏

「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。

EDMのドロップが盛り上がらない時、足りないのはドロップの音色ではなく、直前との落差であることがほとんどです。

静かな場所があるから、大きな場所が大きく聞こえます。つまりドロップ作りとは、ドロップだけを触る作業ではなく、その手前を含めた高低差の設計です。

ここでは、ビルドアップで期待を釣り上げる方法、着地直前の無音の溜め、ドロップで鳴らす要素の絞り方、そして音量差を錯覚で作る方法まで、DAWでそのまま置ける形に分解します。

落差の設計

EDMドロップは、着地点よりも手前の作り込みで決まります。

  • ビルドアップはスネアロールと上昇音で期待を作る
  • 着地の直前に半拍〜2拍の無音を置く
  • ドロップはキック・ベース・リフの3要素に絞る
  • ドロップを上げるのではなく手前を下げる

ドロップは落差でできている

直したいのがドロップでも、触る場所は手前のことが多いです。

ドロップとは、EDMで一番盛り上がる区間の呼び名です。歌ものでいうサビにあたりますが、決定的に違うのは「直前まで我慢させて、一気に解放する」という設計が前提になっている点です。

この高低差そのものがドロップの本体です。

初心者がやりがちなのは、着地が地味だと感じた時に、ドロップの音色だけを延々と差し替え続けることです。

同じドロップでも、直前が静かなら大きく聞こえ、直前が騒がしいなら小さく聞こえます。音色の問題に見えて、実は手前の区間の問題であるケースがとても多いです。

テンポの目安はBPM128前後です。4つ打ち系の標準的な速さで、体が縦に乗りやすい速度です。

150前後の速いスタイルもありますが、最初の1曲は128に固定し、落差の設計だけに集中するのがおすすめです。

曲全体の骨組みは、静かな入り、ビルドアップ8〜16小節、ドロップ16小節、また静かな区間、という波の繰り返しが基本形です。

この波を先に決めてから中身を作ると、どの区間を作業しているのか迷わなくなります。

ビルドアップの組み立て

道具はスネアロール、上昇する音、引き算の3つです。

ビルドアップの役割は「もうすぐ来るぞ」という期待を作ることです。

まずスネアロール。スネアの連打を4分から8分、8分から16分へと段階的に細かくしていきます。

8小節なら、前半4小節を8分、後半4小節を16分、最後の1小節だけさらに詰める、という階段が組みやすいです。

次に上昇する音です。長く伸びる音の高さをゆっくり上げていくライザー系の効果音を敷くか、鳴っているシンセのフィルター(音の明るさを変えるつまみ)を少しずつ開いて、こもった音から明るい音へ変化させます。

どちらも「上がり続けている」感覚を作る道具です。

そして意外と大事なのが引き算です。ビルドアップの後半でベースをすっと抜くと、足元が浮くような感覚が生まれます。

低音が消えた不安定さがあるからこそ、ドロップで低音が戻った瞬間の重さが際立ちます。

ドラムの連打と上昇音を足すことばかり考えがちですが、盛り上げの正体は「足す」と「抜く」の同時進行です。

上は増やし、下は減らす。この形を覚えておくと、ビルドアップが騒がしいだけの区間になりません。

着地直前の無音の溜め

最大の落差は、静寂のすぐ後に作れます。

ビルドアップの一番最後、ドロップに入る直前に、半拍から2拍ほどの無音を置きます。全トラックの音を止めるか、残響だけがふわっと残る状態にします。ここが「溜め」です。

音圧の限界まで盛り上げた状態から全部を鳴らしても、伸びしろはもうありません。一度ゼロに落としてから全部を鳴らすと、実際の音量以上の衝撃になります。

静寂は無料で使える一番強いエフェクトだと考えてください。

溜めの長さは楽譜上の理屈より体感で決めます。書き出してスマホで聞き、着地の瞬間に体が動くかどうかで判断します。

長すぎると流れが切れて「事故で音が止まった」ように聞こえるので、迷ったら1拍から試すと扱いやすいです。

ドロップで鳴らす要素の絞り方

キック、ベース、リードリフの3つで成立します。

ドロップは音の洪水に聞こえますが、分解するとキック、ベース、リードリフの3要素で成立しています。トラックを何十本も並べる必要はなく、むしろ絞るほど一つひとつが太く聞こえます。

リードの音は、アタック(立ち上がり)が速く、リリース(余韻)が短い、硬い性格のものを選びます。

コードを白玉で伸ばすのではなく、1〜2小節で繰り返せる短いリフを刻むのがドロップの型です。音の隙間が多いほど、キックとベースが呼吸できます。

ベースはキックの隙間で鳴らします。キックと同時に長く伸ばすと低域が団子になり、輪郭が消えます。

キックが「ドン」と鳴った直後にベースが「ウッ」と答える、この会話の形を先に作ってください。

4つ目以降の音を足したくなったら、一度立ち止まります。3要素が噛み合っていれば、ドロップはすでに成立しています。

足すのは、書き出して聞いて「隙間が寂しい」と確認できた場所だけで十分です。

区間ごとの設計早見表

before/afterの対比を、区間ごとの作業に落とします。

区間ドラム低音狙い
ビルド前半スネアロール8分まだ鳴らす助走を始める
ビルド後半スネアロール16分+上昇音ベースを抜く浮遊感で期待を最大化
溜め無音(残響のみ)無音落差の起点を作る
ドロップキック4つ打ちに戻すベース復帰3要素で一気に解放

音量差の作り方

ドロップを上げるのではなく、手前を下げます。

before/afterの音量差は、フェーダーを上げて作るものではありません。ドロップを限界まで大きくすると音が割れるだけです。

正解は逆で、ビルドアップ側を下げて、ドロップとの相対差を作ります

ミックスで一つだけ注意するなら、ビルドアップ後半の低域です。盛り上げようとして音数も音量も増やすと、ドロップに入る前に音圧が天井に張り付き、着地の上げ幅が残りません。

ビルド後半こそ低域を削る。ここを守るだけで落差は目に見えて変わります。

レッスンでは、リファレンス(お手本にする曲)を真似るためではなく、どの楽器を使い、どこで密度が上がり、どこで休むかを決める材料として使う、という判断基準を伝えています。

ドロップ作りならお手本のドロップ前後30秒だけを繰り返し聞き、着地の何拍前に音が減り始めるかをメモしてください。数値ではなく設計図が手に入ります。

確認は必ず同じ再生音量で行います。作業中にモニターの音量を上げてしまうと、落差ができた気がするだけで、データ上は何も変わっていないことがあります。

最初の8小節を組む手順

ビルド末尾4小節+ドロップ頭4小節を1セットで作ります。

ドロップの練習は、曲の頭からではなく境目から作るのが近道です。

1〜4小節目をビルドアップの末尾、5〜8小節目をドロップの頭と決めて、次の順で置いていきます。

手順は7つです。①BPMを128に設定する。②5〜8小節にキックの4つ打ちを置く。③キックの隙間にベースを短く置く。

④1〜2小節で繰り返せるリードリフを5〜8小節に置く。⑤1〜4小節にスネアロールを8分から16分の階段で置く。

⑥4小節目の最後の1拍を無音にする。⑦書き出してスマホで聞き、5小節目の頭で体が動くかを確認する。

動かなかった場合、直す場所は5小節目ではなく4小節目までの中にあります。溜めが短いのか、ベースの抜きが早すぎるのか、ロールの階段が平坦なのか。

境目の8小節を仕上げてから前後へ広げると、1曲分の設計にそのまま流用できます。

この8小節が鳴れば、あとは曲全体の波に配置していくだけです。どの工程で組み立てるかに迷ったら、制作工程マップで全体の順番を確認しながら進めてください。

よくある疑問

ドロップが盛り上がらないのはなぜですか

ドロップ自体より、直前の区間が原因のことが多いです。ビルドアップの後半で低域を削り、着地の直前に無音の溜めを作ると、同じドロップでも落差が大きく聞こえます。

ビルドアップは何小節にすればいいですか

まず8小節で作ります。前半4小節でスネアロールを8分で始め、後半4小節で16分に細かくし、最後の1〜2拍を無音にする形が組みやすいです。

ドロップでは何トラック鳴らせばいいですか

キック、ベース、リードリフの3つで成立します。音を足すのは、この3つが噛み合ってからで十分です。

無音の溜めはどのくらいの長さですか

半拍から2拍が目安です。長すぎると流れが切れるので、書き出して聞き、着地で体が動くかで判断します。

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ドロップが鳴ったら、曲全体の構成を仕上げる記事へ進みます。

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プロフィール

古賀 稔宏

ギター、ウクレレ、DTM(Cubase)、作曲技法、音楽理論を指導。14歳でギターを始め、同時に作曲も始める。ポップ、ロック、クラシックの要素を含む楽曲を得意とする。

商業音楽の制作・演奏に携わりながら、初心者が止まりやすい場所を制作工程に沿って整理している。