DTMでEDMを作る始め方|初心者は4つ打ちと展開から

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
EDMを作ってみたいけれど何から手を付ければいいか分からない。そんな人にこそ伝えたいのは、EDMはDTM初心者に一番向いているジャンルのひとつだということです。生楽器の録音が要らず、パソコンの中だけで最後まで完成するからです。
迷わないために、全体像を先に押さえます。EDMとはどんな音楽か。4つ打ちの土台はどう組むか。シンセの音色は何を基準に選ぶか。そして、1個のループをどうやって曲に広げるか。この4つが分かれば、今日のうちに「EDMらしい8小節」までたどり着けます。
入門の全体像
EDM入門は、土台・音色・展開の3ステップで見通せます。
- EDMは電子音のダンス音楽の総称で、打ち込みだけで完結する
- 土台はキック4回・裏拍ハット・2拍4拍クラップの4つ打ち
- シンセはリード・パッド・プラックの役割で仮置きする
- 展開は1ループのコピペと抜き差しで作る
EDMとはどんな音楽か
電子音で作るダンス音楽の総称です。
EDMはエレクトロニック・ダンス・ミュージックの略で、シンセサイザーやサンプラーなどの電子音を中心に作られたダンス音楽をまとめて指す言葉です。ハウス、テクノ、トランスといった細かいスタイルの上にかかる、大きな傘だと考えてください。
共通しているのは、踊るための音楽なのでリズムが主役だということです。歌ものの多くはメロディから作られますが、EDMはビートから作ります。
作る順番が逆になる、という点を最初に頭に入れておくと迷いません。
初心者に向いている理由は3つあります。演奏の録音が不要なこと。
ループ(数小節の繰り返し)主体なので短い素材で成立すること。そして、正解の型がはっきりしていて真似しやすいことです。
テンポの目安はBPM120〜130です。迷ったら125に設定してください。
この帯はEDMの中心地なので、後からどのスタイルに寄せるにしても調整がききます。
4つ打ちの土台を組む
たった10個の音で、EDMの床が完成します。
EDMの背骨は4つ打ちです。4つ打ちとは、キック(低いドンという太鼓)を1小節に4回、1拍ごとに等間隔で打つリズムのこと。
ドン、ドン、ドン、ドン。これだけで曲が歩き始めます。
次にハイハット(チッという金属音)を、キックとキックのちょうど中間、いわゆる裏拍に置きます。ドン・チッ・ドン・チッという交互の形になり、急にダンス音楽の顔になります。
最後に、2拍目と4拍目にクラップ(手拍子系の音)を重ねます。キック4個、裏拍ハット4個、クラップ2個。
1小節あたり合計10個の音で、EDMの床は完成です。まずこの1小節をループ再生して、体が揺れるかを確かめてください。
ここで音色に凝る必要はありません。付属のドラム音源にある標準的なキットで十分です。
床の形さえ正しければ、音の差し替えは最後にいくらでもできます。
ベースは主音の8分から
動かすのは慣れてから。まず刻むだけで成立します。
ベースは、キー(曲の中心の音)の主音を8分音符で刻むだけで始められます。キーをCにしたなら、低いドの音をタタタタと等間隔に並べるだけです。
音域はピアノロールでいうC1〜C2あたりの低さが目安です。
コツはひとつ、キックが鳴る瞬間のベースを短くするか避けることです。低い音同士が同時に長く重なると、床が濁って重たくなります。
キックの合間を縫うように置くと、それだけで輪郭が出ます。
かっこいいベースラインは後回しで構いません。土台の段階では「低音が規則正しく脈打っている」ことが仕事のすべてです。
シンセ音色は役割で選ぶ
数千個のプリセットは、3つの役割に分けると迷いません。
シンセを開くと膨大なプリセット(保存済みの音色)が並んでいて、ここで日が暮れる人が本当に多いです。抜け道は、音を名前ではなく役割で見ることです。
EDMで必要な役割は3つしかありません。
- 1つ目はリード。メロディやフレーズを担当する、一番目立つ音です。
- 2つ目はパッド。後ろでコードを長く伸ばして曲を包む音です。
- 3つ目はプラック。短くはじけてすぐ消える、リズム寄りの音です。
プリセット一覧にはたいていLead、Pad、Pluckといったカテゴリ名が付いています。各フォルダの上から数個を試して、ましなものを仮置きすれば十分です。
この段階の音は全部仮でよく、音色の良し悪しを決めるのは曲の形ができた後です。
迷ったら、リードは明るくて太いノコギリ波系を選んでください。EDMのリードの主流で、ハズレが少ない性格の音です。
EDMのパーツ早見表
最初の1曲で置くものは、これだけです。
| パート | 役割 | 最初に置く形 |
|---|---|---|
| キック | 土台の心臓 | 1拍ごとに4回(4つ打ち) |
| ハイハット | ノリを作る | 裏拍に等間隔 |
| クラップ | アクセント | 2拍目と4拍目 |
| ベース | 低音の脈 | 主音の8分刻み |
| パッド | 背景の響き | コードを白玉で |
| リード | 主役 | 2小節フレーズの繰り返し |
1ループから曲へ広げる
展開は作曲ではなく、コピペと引き算です。
8小節のループが1個できたら、それが曲の全材料です。EDMの展開は、新しい素材を次々と作って足すのではなく、同じ素材の抜き差しで作られています。
ここが入門者に一番伝えたい仕組みです。
やり方は単純です。8小節のループを6回ほどコピペして48小節に並べます。
次に、区間ごとにトラックをミュート(消音)していきます。最初の区間はドラムだけ。
次はドラムとベース。中盤はキックを抜いてパッドとリードだけ。
そして全部が鳴る区間をクライマックスにします。
音を抜いた区間があるから、全部鳴る区間が盛り上がって聞こえます。展開とは足し算ではなく、我慢の配置です。
ミュートのオンオフだけで曲の起伏が作れると分かると、「展開が思いつかない」という悩みはかなり軽くなります。
レッスンでは、最初の目的は理論や機能を全部覚えることではなく、自分のパソコンから曲っぽい音が鳴る体験を早く作ることだ、という判断基準を大事にしています。ループのコピペと抜き差しは、その体験への最短ルートです。
曲っぽく鳴った実感が、次の学習を引っ張ってくれます。
書き出しで音が割れる時
全部を大きくすると、全部が濁ります。
EDMは同時に鳴る音が多いので、初心者の書き出しでよく起きるのが音割れです。原因はほぼ決まっていて、各トラックの音量を全部上げてしまい、合計がマスター(最終出力)の天井を超えていることです。
対処もひとつだけ覚えれば足ります。迫力が欲しい時は上げるのではなく、キックを基準に他のトラックを下げて相対的な差を作ることです。
マスターのメーターが赤く点灯しない状態を守れば、音量は再生機器側でいくらでも上げられます。
今日作る8小節の手順
上から順に置くだけで、EDMの骨格が鳴ります。
ここまでの内容を、DAWでの操作順に並べ直します。
- BPMを125に設定する。
- キックを4つ打ちで8小節置く。
- 裏拍にハイハットを置く。
- 2拍目と4拍目にクラップを置く。
- 低いドを8分で刻むベースを置く。
- パッドで簡単なコードを2小節ずつ4つ鳴らす。
- リードで2小節のフレーズを作り4回繰り返す。
- 保存して書き出す。
コードが思いつかなければ、白鍵だけで押さえられる定番の並びから借りて構いません。この8小節はスタート地点であって作品ではないので、質より完走を優先してください。
書き出した音源を1分ほどループ再生して、飽きた瞬間の場所をメモしてください。そこが次に抜き差しを入れる場所、つまり展開の入り口です。
8小節から先の広げ方と全体の工程は、制作工程マップで順番を確かめながら進むと迷いません。
よくある疑問
EDMを作るのに楽器の経験は必要ですか
必要ありません。EDMは打ち込み中心で完結するジャンルで、鍵盤が弾けなくてもマウス入力だけで作れます。録音機材も最初は不要です。
BPMはいくつにすればいいですか
まず125前後で始めます。EDMの多くは120〜130の範囲に収まるので、この帯で作っておけば後から曲に合わせて調整できます。
シンセの音色はどう選べばいいですか
名前ではなく役割で選びます。主役のリード、後ろで伸びるパッド、短くはじくプラックの3種類を仮置きできれば、最初は十分です。
展開が作れずループのまま止まります
8小節のループをコピペで並べ、区間ごとに音を抜き差しします。イントロはドラムだけ、ブレイクはキック抜き、サビは全部、という引き算で展開になります。
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