ハウスミュージックの作り方|キックとベースをDTMで組む手順

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。
ハウスミュージックの中心は、4つ打ちのキックと、その間で揺れる裏拍のハット、そして温かいコードです。派手な音色を集めることではなく、この3つの関係を作ることが、ハウスらしさへの近道です。
やることは多くありません。BPMを決め、キックを全拍に置き、裏拍にオープンハットを置き、キックの隙間にベースを差し込み、セブンスコードを短く刻む。
ここまでで8小節のループができます。順番に見ていきます。
ハウスの骨格
ハウスは「4つ打ちキック+裏拍ハット+温かいコード」の3点で立ちます。
- BPMは120〜128、迷ったら124
- キックは全拍、クラップは2拍目と4拍目
- ベースはキックの合間に短く
- コードはセブンス系を裏拍で刻む
BPMの目安
120〜128の範囲で、体が揺れる速さを探します。
ハウスのBPMは120〜128がひとつの目安です。迷ったら124に設定して始めます。
この速さは、歩くより少し速く、走るほどではない、体を左右に揺らしやすいテンポです。
数字を決めたら、キックだけを鳴らして首を振ってみてください。せかされる感じがしたら2〜3下げ、間延びして聞こえたら2〜3上げます。
ハウスは速さで押すジャンルではないので、余裕が残る速度に落ち着かせるのがコツです。
同じ124でも、ハットの細かさやベースの跳ね方で、聞こえる速さは変わります。テンポを何度も変える前に、まず後述する裏拍の音を入れてから判断すると、迷いが減ります。
ドラムパターンの組み方
キックは全拍、クラップは2・4拍、オープンハットは裏拍です。
ハウスのドラムは、役割がはっきり分かれています。キックは1小節に4回、1・2・3・4拍の頭に等間隔で置きます。これが4つ打ちです。
次にクラップ(手拍子系の音)かスネアを、2拍目と4拍目のキックに重ねます。
ハウスらしさを決めるのは、その次のオープンハットです。オープンハットは「チーッ」と少し伸びるシンバル系の音で、これをキックとキックのちょうど中間、つまり各拍の裏に置きます。
ドン・チー・ドン・チー、という交互の形ができれば、それだけで体が上下に動き始めます。
レッスンでドラムの打ち込みを教える時は、譜面やパターン名から入るより、口で言えるリズムをそのまま置くように伝えています。
ハウスなら「ドン・チー・ドン・パン」です。ドンがキック、チーがオープンハット、パンがクラップ。口で歌えたら、あとはピアノロールに写すだけです。
最後に、16分音符のクローズハット(短い「チチチチ」)を小さめの音量で敷くと、隙間が埋まって滑らかになります。ここで音量を上げすぎると忙しくなるので、あくまで下敷きとして扱います。
ベースの作り方
キックと同時に鳴らさず、隙間に短く差し込みます。
ハウスのベースで一番大事な決まりは、キックと同じ場所で鳴らさないことです。
キックが1・2・3・4拍の頭にいるので、ベースはその合間、裏拍を中心に短い音で差し込みます。裏拍のオープンハットと同じ場所にベースが入ると、キックとベースが交互に鳴る形になり、これがハウス特有の前に進む感じを作ります。
音の選び方はシンプルで構いません。コードのルート音(コードの土台になる一番基本の音)を短く置き、慣れてきたら1オクターブ上の同じ音と行き来させます。
音程を凝るより、音の長さを短く切ることが先です。ベースを長く伸ばすと、せっかく空けたキックの場所に低音がかぶり、全体がもたついて聞こえます。
打ち込んだら、ドラムとベースだけで4小節ループさせてください。この2つだけで体が揺れるなら土台は完成です。
揺れないなら、上に何を足しても踊れる曲にはなりにくいので、先にここを直します。
ハウスの各パートの置き場所
どこに置くかで迷ったら、この表に戻ります。
| パート | 置く場所 | 崩れやすいポイント |
|---|---|---|
| キック | 1・2・3・4拍の頭(4つ打ち) | 音を重ねすぎて輪郭がぼやける |
| クラップ | 2拍目と4拍目 | 大きすぎるとキックより前に出る |
| オープンハット | 各拍の裏 | 長すぎると次のキックにかぶる |
| ベース | キックの合間に短く | 伸ばすと低音が濁る |
| コード | 裏拍に短く刻む | 白玉で伸ばすと跳ねが消える |
温かいコードと上モノ
セブンスコードを短く刻むと、それらしくなります。
ハウスの上モノ(コードやメロディなどドラム以外の音)は、温かくて丸い響きが好まれます。具体的には、マイナーセブンスやナインスといった、普通の3音のコードに音を1つ2つ足したコードです。
名前が難しく感じたら、Am7とDm7の2つだけで始めて構いません。この2つを2小節ずつ交互に鳴らすだけで、ハウスらしい落ち着いた響きになります。
音色は、電気ピアノやオルガンのような鍵盤系が定番です。
ここで大事なのは弾き方で、コードを長く伸ばさず、裏拍で「ジャッ、ジャッ」と短く刻みます。ベースやハットと同じ裏拍の世界にコードも参加させるイメージです。
メロディは長い歌である必要はありません。コードの中の音を2〜3個使った短いフレーズや、一言のボーカルサンプルを繰り返すだけで、曲の顔になります。
ハウスでは、覚えやすい短い形を何度も出すほうが、長いメロディより機能します。
ループで踊らせる構成
8小節単位で足し引きし、ブレイクでキックを抜きます。
ハウスの構成は、Aメロやサビで考えるより、8小節ごとの足し算と引き算で考えます。
最初の8小節はドラムだけ。次の8小節でベースを足す。その次でコードを足す。
こうして少しずつ増やすと、同じループなのに曲が進んで聞こえます。
曲の真ん中あたりで一度、キックを丸ごと抜く区間を作ります。これがブレイクです。
コードとボーカルだけが漂う静かな8〜16小節を作り、最後に短いドラムの連打やノイズの上昇音で合図を出して、キックを全部戻します。この「抜いてから戻す」瞬間が、ハウスで一番気持ちいい場所です。
初心者がやりがちなのは、8小節のループを完成させた後、変化を怖がって同じまま並べてしまうことです。
足すだけでなく、どこかで必ず抜く。盛り上がりは、直前にどれだけ静かにできたかで決まります。
キックとベースの住み分け
低音の主役を1拍ごとに交代させます。
ハウスのミックスで最初にぶつかる問題は、キックとベースの衝突です。どちらも低い音域に住んでいるため、同時に鳴ると低音がひとかたまりに濁り、せっかくの4つ打ちの輪郭が消えます。
対策の基本は、時間で住み分けることです。ベースをキックの合間に短く置く配置ができていれば、衝突の大半は防げます。
それでも濁るなら、キックが鳴る瞬間だけベースの音量が自動で下がる設定を使います。
多くのDAWに入っている機能で、キックが「ドッ」と鳴るたびにベースが一瞬引っ込み、結果として低音が波打つように動きます。この動き自体がハウスのノリの一部です。
確認は小さい音量で行います。小さくしてもキックの位置がはっきり分かるなら、住み分けはできています。
最初の8小節の手順
上から順に置けば、今日ループが完成します。
ここまでの内容を、実際の作業順に並べます。所要時間は慣れていなくても1時間程度です。
手順は次の通りです。①BPMを124に設定する。②キックを1小節に4回、全拍に置いて8小節分ループさせる。③クラップを2拍目と4拍目に重ねる。④オープンハットを各拍の裏に置く。
⑤ベースをキックの合間に短く置く(音はAの1音だけでよい)。⑥Am7とDm7を2小節ずつ、裏拍で短く刻む。⑦16分のクローズハットを小さく敷く。⑧書き出して、スマホで一度聞く。
ポイントは、⑤まで一切音色を選ばないことです。付属音源の最初のキック、最初のベースで進めます。
配置が正しければ仮の音でも揺れますし、配置が間違っていれば高級な音でも揺れません。先に配置だけを完成させて、音色の差し替えは8小節が鳴ってからにします。
この8小節ができたら、あとは構成の節で書いた足し引きで曲の長さに伸ばしていくだけです。1曲全体の進め方は、制作工程マップで流れを確認しながら進めてください。
よくある疑問
ハウスのBPMはいくつにすればいいですか
120〜128が目安です。迷ったら124で始めて、裏拍のハットが気持ちよく揺れるかで前後に調整します。
キックとベースが濁って聞こえます
同じ低い場所で同時に鳴っていることが原因です。ベースをキックの合間に短く置き直すか、キックが鳴る瞬間だけベースの音量を下げます。
コードは何を使えばいいですか
セブンスコードを2つか4つ、裏拍に短く刻むだけで十分です。電気ピアノやオルガンのような温かい音が合います。
4つ打ちなのに踊れる感じになりません
キックそのものではなく、キックの間を見ます。裏拍のオープンハットとベースが隙間で鳴っているかを確認してください。
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