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古賀稔宏の作曲ノート作曲・編曲家のDTM制作ノート

トランスの作り方|オフビートベースとビルドアップをDTMで組む手順

古賀稔宏のプロフィール写真

作曲・編曲家 古賀 稔宏

「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。

トランスを作りたいが、ドロップで盛り上がらず淡々と流れてしまう人へ向けて、ジャンル名の説明ではなく、DAW上で8小節を組む順番に落とします。BPM、ドラム、ベース、コード、メロディ、音色を分けて、書き出して聞ける状態まで進めます。

読み終わったら、まず音を出す、再生する、保存する、短く書き出す、次に確認する一点を決めるところまで進めます。完成度を採点する前に、同じ手順をもう一度再現できるかを見ます。制作中に迷ったら、画面の中で悩み続けず、8小節を書き出して普通の再生環境で聞きます。

制作の軸

トランスは、音色探しより先に8小節の役割を決めます。

  • BPMと体感を分けて決める
  • キック、ベース、コード、メロディの順に置く
  • ジャンルらしい装飾は骨格の後に足す
  • 同じ音量で書き出して判断する

この記事が扱う範囲

扱うもの
136〜142BPMのトランス。オフビートベースとビルドアップ
扱わないもの
サイケデリックトランスなどの派生ジャンル、電気のトランス(別の意味)
所要時間の目安
ドロップまで組めるまで約50分
まず鳴らす1音
キックの4つ打ちと、裏拍のオープンハットだけ

DAWはCubaseを想定していますが、手順はどのDAWでも同じです。 記事内のMIDIとデモ音源も、DAWを問わず使えます。

今日やること

8小節だけ作り、保存して、書き出して、次に直す一点を決めます。

  • 仮音色でドラム、ベース、コード、メロディを置く
  • 4小節目と8小節目に小さな変化を入れる
  • 変更前と変更後を別名保存する
  • スマホや小さい音量で再生して、次の修正点を一つだけ書く

最初に決めること

ジャンル名ではなく、曲の速度、主役、8小節の到達点を先に決めます。

トランスの作り方で最初に見るのは、音色の名前ではありません。トランスを作りたいが、ドロップで盛り上がらず淡々と流れてしまう人にとって必要なのは、今日のDAW画面で何を置けば前に進むかです。

テンポは、136〜142 BPM。138前後が扱いやすい。この範囲は絶対値ではなく、最初に手を動かすための目安です。曲の狙い、歌の言葉数、ドラムの細かさによって、同じジャンルでもかなり変わります。

最初の8小節では、完成形を狙いすぎません。ドラム、ベース、コード、メロディの4段だけを置き、曲の方向が聞こえるかを確認します。音色探しはその後で十分です。

作曲や編曲の現場でも、すべての音を一度に正解へ持っていくわけではありません。まず骨格を外に出し、聞き返しながら必要な音だけを残します。

BPMと体感を分ける

数値を決めたら、速さの印象がどこから出ているかを分けます。

136〜142 BPM。138前後が扱いやすい。ただし、BPMの数字だけでジャンルらしさは決まりません。速く聞こえる理由は、ドラムの刻み、ベースの長さ、メロディの音数、コードの切り替わり方に分かれます。

BPMを上げても高揚は出ません。トランスの高揚は速さではなく、溜めの長さから生まれます。138のまま、ビルドアップを8小節から16小節へ伸ばしてみてください。

テンポを変える前に、ベースがキックの裏に入っているか確認してください。同じ位置で鳴っていると、どれだけテンポを動かしても前へ進みません。

スーパーソウの音色を探す前に、キックとオフビートベースの関係を決めてください。この2つが噛み合っていれば、リードは素直な音でも成立します。

近いジャンルとの違い

4つ打ちのジャンルは速さが近いので、溜めの長さで見分けます。

ジャンルBPMの目安見分けるところ
この記事(トランス)136〜142長いブレイクダウンとビルドアップ。溜めが主役で、曲は6〜7分になる
テクノ125〜135溜めより反復。要素の出し入れだけで長く持たせる
ハウス120〜128裏拍のオープンハットで横に揺れる。溜めは短い
EDMのドロップ128前後サビ=ドロップに全部を集める。ブレイクは短く、曲も3〜4分

BPMはどれも目安で、実際には前後にかなり幅があります。 数字が重なっているジャンルは、数字では区別できません。 右の列に書いた「何が主役か」のほうを手がかりにしてください。

ドラムの骨格

派手なフィルより、キックとスネアの位置を先に固定します。

※ 以下の音は、説明用にこのサイトで合成したドラムです。市販の音源や実際の楽曲の音ではありません。パターンの違いだけを聞いてください。

トランスでドロップが効かないのは、たいていその前の溜めが足りないからです。 BPM138で、スネアの詰め方だけを変えました。

① 平坦なままスネアは2拍目と4拍目だけ

きれいですが、この後に何が来ても驚きがありません。ずっと同じ景色が続きます。

② 詰めていく8分 → 16分 → 32分(最小60tick)

スネアが4打から32打へ増えていきます。速くしているのではなく、間隔を半分ずつ詰めているだけです。

条件:BPM 138/2小節/このサイトで合成したドラム(キック・スネア・ハイハット)。2本とも同じ音色・同じ音量で書き出しています。

トランスのビルドアップのピアノロール。スネアが8分から16分、32分へと詰まっていく
②のピアノロールです。左から右へ、スネアの間隔が半分ずつ詰まっていくのが見えます。

溜めは短くしないこと。8小節、慣れたら16小節かけてください。 ここを削ると、そのぶんドロップの快感が減ります。

ドラムは、キックは4つ打ち。オープンハットは裏拍に置き、クローズと重ねない。最初の段階では、細かいフィルや装飾よりも、どこで体が前に進むかを決めます。

4つ打ち。ベースを裏拍に置いて推進力を作る。このグルーヴの方向を決めずにハットやパーカッションを増やすと、音は多いのに曲が進まない状態になります。

8小節なら、1〜4小節はキックとオフビートベースだけ、5〜8小節でアルペジオを足します。アルペジオは同じ形のまま長く回してください。変えないほど効きます。

スネアロールは、詰めながら少しずつ強くしてください。間隔だけ詰めて強さが一定だと、機械的に速くなるだけで、上がっていく感じが出ません。

ベースの置き方

低音は大きさではなく、長さと場所で整理します。

ベースは、キックの裏に短いベースを置く(オフビートベース)。キックと同じ場所で鳴らさない。低音は曲の重さを作りますが、長く鳴らしすぎるとキックやコードの低域を隠します。

ベースを大きくすると、キックの4つ打ちが埋もれます。オフビートベースはキックの隙間を埋める役です。大きくするより、キックが鳴る瞬間に必ず引くようにしてください。

ベースはキックの裏だけに短く置いて8小節を作ります。ここで音を伸ばすと、キックと重なって濁ります。短く、裏だけ。まずこれを守ってください。

書き出したら、ドロップの直前だけを繰り返し聞いてください。溜めが足りていれば、ドロップが来る前から体が待つ状態になります。ならないなら、溜めが短すぎます。

コードの組み方

難しいコードより、メロディが乗る場所を作ります。

コードは、短調のアルペジオを長く回す。同じ形を保つほど効く。コード進行は知識を見せる場所ではなく、メロディと展開を支える場所です。

テンションコードや借用和音を使う場合も、名前を覚えることが目的ではありません。音の色が変わる場所を耳で確認し、必要な場所だけに置きます。

レッスンでは、理論を説明する前にコードの響きを鳴らして、明るい、暗い、浮く、戻る、という体感を確認することがあります。進行を丸暗記するより、耳で違いを聞けるほうが制作に使いやすいからです。

8小節では、同じ進行を2回繰り返しても構いません。2回目だけ上物を変えたり、最後のコードを少し変えたりすると、曲が次へ進む感じを作れます。

メロディとフック

覚えやすい形を先に作り、細かい装飾は後から足します。

メロディは、16小節かけて上げていく長いリード。途中で完成させない。ジャンルらしさを出そうとして音数を増やす前に、何度も出せる短い形を作ります。

サビや主題になる場所では、最初の1音が重要です。高い音にするのか、短い反復にするのか、長く伸ばすのかを決めると、伴奏の置き方も決まります。

メロディが弱い時は、音程を増やすよりリズムを見ます。同じ音でも、入る位置や伸ばす長さが変わるだけで、かなり印象が変わります。

歌ものの場合は、言葉が自然に入るかを必ず確認します。インストの場合も、リードが歌える形になっているかを口でなぞると判断しやすくなります。

音色の選び方

プリセット探しより、曲の役割で音を選びます。

音色は、プラック、スーパーソウ、オフビートベース、ライザー、スネアロールを出発点にします。見るのは音色の数ではなく、前に出る音、支える音、空間を作る音を分けることです。

プリセットを探し始めると、制作が止まりやすくなります。まず仮音色でコードとリズムを置き、曲の形が見えた後で差し替えます。

商業音楽の制作でも、最初から最終音色だけで進むとは限りません。仮のピアノ、仮のドラム、仮のベースで構成を見てから、必要な質感へ寄せていきます。

音色を変えたら、必ず音量も見直します。派手な音は大きく聞こえやすいため、良くなったのか大きくなっただけなのかを分けて判断します。

8小節の制作マップ

短い範囲で完成の入口を作り、次の展開へ渡します。

最初の8小節は、完成品ではなく制作の地図です。1小節目で土台を見せ、3小節目で少し変化し、7〜8小節目で次のセクションへ渡します。

A案として、1〜4小節は基本パターン、5〜8小節はドラムか上物を一つ増やします。B案として、1〜4小節は少なめ、5〜8小節でメロディを少し上げます。

この時点でミックスを作り込みすぎる必要はありません。音量バランスだけ整え、各パートの役割が聞こえるかを確認します。

制作で重視しているのは、頭の中のイメージを聞ける形に出すことです。8小節でよいので外に出すと、直す場所が具体的になります。

8小節から先へ広げる目安
段階長さやることこのジャンルでの具体
1周目8小節骨格だけを置く4つ打ちと裏拍のオフビートベースだけ
2周目16小節抜き差しで変化を作るアルペジオを入れる。同じ形を長く回す
展開32小節場面を足すブレイクダウン16小節→ビルドアップ16小節→ドロップ
フル尺64小節〜曲として通すイントロ64・ブレイク64・ドロップ。6〜7分。溜めを削らない

長さや小節数はあくまで目安です。大事なのは順番で、 8小節が気持ちよく回らないうちに長さを足さないこと。 伸ばしてから直すより、8小節に戻って直すほうが早く終わります。

上の表の2周目のやり方(抜き差しで変化を作る)を音にしました。 2本とも16小節・同じ音量で、前半8小節は1音も違いません。 変えたのは9小節目から先だけです。

① そのままくり返した版同じ2小節を16小節ぶん

8小節を過ぎたあたりから、耳が先を予測してしまいます。手は動いているのに曲が進んでいない状態です。

② 9小節目から抜き差しした版足すのではなく、消して戻す

9〜12小節目でスネアが16分から32分へ詰まり、13〜14小節目でキックが消えます。溜めてから戻す。トランスの高揚はこの形から出ています。

条件:BPM 138/16小節/このサイトで合成したドラム(キック・スネア・ハイハット)。2本とも同じ音色・同じ音量で書き出しています。

トランスの16小節の構成図。9〜12小節目でスネアの打点が増え、13〜14小節目でキックが無くなっている
②の構成図です。帯が高いところほど、その小節の打点が多いことを表しています。 新しい楽器を足したわけではなく、もとからある音を増やしたり消したりしているだけです。 鳴っているキック・スネア・ハイハットは、登録なしで配っています。

崩れやすい場所

ジャンルらしさを足すほど、曲の芯が消えることがあります。

このジャンルで崩れやすいのは、ビルドアップを短くすると、ドロップの快感がそのぶん減ることです。ジャンル名に寄せるほど、音色や装飾に意識が行き、曲の骨格が弱くなることがあります。

対策は、ドラム、ベース、コード、メロディを一度ミュートしながら聞くことです。どれか一つを消した時に曲が急に弱くなるなら、そのパートが支えすぎています。

また、同じ場所を長時間触り続けると、判断が鈍ります。15分ごとに書き出して聞き、次に直す一点だけを決めると、作業が散らかりにくくなります。

生徒の制作でも、うまくいかない原因はセンスより工程の混線であることが多いです。いま直しているのがリズムなのか、音色なのか、構成なのかを分けるだけで進みます。

ミックス前の確認

音圧を上げる前に、役割が聞こえるかを確認します。

ミックスでは、最初から音圧を狙いません。まず音量、左右、低域のぶつかり、主役の聞こえ方を見ます。

ベースがキックの裏に入っているか。同じ場所なら濁る。この確認が終わる前にEQやコンプレッサーを深く触ると、原因が見えにくくなります。

EQはソロで決めきらず、全体再生中に動かします。特に中域はメロディ、コード、ギター、シンセが奪い合いやすいため、単体で良い音より全体で必要な音を優先します。

最後に、同じ音量で変更前と変更後を書き出して聞きます。大きい音は良く聞こえるため、音量差をそろえないと判断を間違えます。

ミックスのチェックリスト

このジャンルは溜めで失敗します。全部を大きくすると高揚が消えます。

見るところやること崩れているときの症状
ブレイクダウンとドロップに音量差が残っているか通しで聞いて、静かな場所をわざと物足りなくしておくどこも同じ大きさになり、上がった感じがしない
4つ打ちに合わせて上モノが呼吸しているか(サイドチェイン)リードとパッドにかけ、キックの通り道を作るキックが埋もれ、前へ進む力が出ない
リバーブの長さを場面で変えているか溜めでは長く、ドロップでは短くする全編ぼやけて、輪郭が最後まで出てこない
広げたパッドがモノラルで消えないかモノに切り替えて、音量が急に落ちないか確かめる環境によってコードだけ聞こえなくなる
6〜7分を通して聞けるか最初から最後まで1回、途中で止めずに再生する部分ごとには良いのに、通すと疲れる曲になる

上から順に見ていくのが早いです。 音圧は一番最後で、ここを先に触ると、原因がどこにあるのか分からなくなります。

完成へ進める基準

完璧さではなく、次の工程へ渡せるかで判断します。

8小節ができたら、完成度ではなく次へ渡せる状態かを見ます。ドラム、ベース、コード、メロディの役割が聞こえ、次のセクションへ進む理由があれば十分です。

次は16小節、32小節、ワンコーラスへ広げます。広げる時は新しい音を増やすだけでなく、音を抜く場所も作ります。抜く場所があるから、サビやクライマックスが強く聞こえます。

制作ログには、今日のテンポ、使ったコード、残した音色、次に直す一点を書きます。長い反省より、再開できるメモのほうが役に立ちます。

検索に戻る場合も、ジャンル名だけではなく、キック、ベース、コード、メロディ、ミックスのどこで止まったのかを言葉にします。検索語が具体的になるほど、次に読む記事も選びやすくなります。

トランスの制作レシピ表

表は丸暗記ではなく、8小節を作る時の確認順として使います。

項目最初に置くもの注意点
BPM136〜142 BPM。138前後が扱いやすい数字は固定ではなく、体感と音数で調整する
ドラムキックは4つ打ち。オープンハットは裏拍に置き、クローズと重ねないフィルより骨格を先に置く
ベースキックの裏に短いベースを置く(オフビートベース)。キックと同じ場所で鳴らさない低音は長さと場所を決める
コード短調のアルペジオを長く回す。同じ形を保つほど効く難しさよりメロディの居場所を優先する
メロディ16小節かけて上げていく長いリード。途中で完成させない短いフックを作って反復できる形にする
音色プラック、スーパーソウ、オフビートベース、ライザー、スネアロール前に出る音、支える音、空間の音を分ける

よくある疑問

初心者はどこから作ればいいですか

音色探しではなく、BPM、ドラム、ベース、コード、メロディの順で8小節だけ作るのがおすすめです。

ジャンルらしさは何で決まりますか

BPMだけでは決まりません。ドラムの置き方、ベースの長さ、コードの色、メロディの音数、音色の役割が合わさって決まります。

ミックスはいつ始めますか

8小節の骨格が聞こえてから始めます。最初は音量と低域の整理だけで十分です。

記事通りに作れば同じジャンルになりますか

記事の数値は固定値ではなく出発点です。作りたい曲の速度、歌、音色に合わせて調整してください。

次に進む記事

ジャンルの方向が見えたら、止まっている工程に近い記事へ進みます。

古賀稔宏のプロフィール写真

プロフィール

古賀 稔宏

ギター、ウクレレ、DTM(Cubase)、作曲技法、音楽理論を指導。14歳でギターを始め、同時に作曲も始める。ポップ、ロック、クラシックの要素を含む楽曲を得意とする。

商業音楽の制作・演奏に携わりながら、初心者が止まりやすい場所を制作工程に沿って整理している。

記事で聴いたパターンを、そのままDAWへ

UKガラージの2ステップ、テクノの絞ったキック、ハウスの裏拍オープンハット、ドラムンベースの2ステップ、トラップの3連ロール。記事で聴き比べたそのままのドラムMIDI5本を、90秒ワンコーラスの下地とコードループMIDIと一緒に無料でお送りしています。テンポも打点も記事の音源と同じなので、読み込んだ瞬間から自分の曲として触れます。