ユーロビートの作り方|高速4つ打ちとオクターブベースをDTMで組む手順

作曲・編曲家 古賀 稔宏
「それいけ!アンパンマン」劇場版関連楽曲の作曲・編曲、Do As Infinity関連楽曲、アニメ楽曲、滝沢歌舞伎BGMなど、商業音楽の制作・演奏に携わる。担当作品と外部での確認先
ユーロビートは、速い4つ打ちの上で、ベースが8分で1オクターブを跳ね続ける音楽です。
キックは等間隔、ベースは上下、シンセのリフは決まった形で何度も戻ってくる。要素は少なく、全部が規則正しく動きます。
だから初心者でも形にしやすい一方で、1つでも規則を崩すと途端に別の音楽になります。守る場所を先に決めます。
BPMを決め、4つ打ちを置き、オクターブベースを入れ、リフを作り、マイナーの進行に乗せる。8小節までの手順を順番に説明します。
先に見ること
先に決めるのは、メロディではなく、ベースが跳ねる2つの高さです。
- BPMは150〜160が目安。まず155で
- キックは4つ打ち。オープンハイハットは全部の裏
- ベースは8分でルートと1オクターブ上を交互に
- リフはサビの後に戻ってくる。先に作る
ユーロビートとは
イタリアで作られ、日本で聞かれ続けてきたダンスミュージックです。
ユーロビートは、1980年代のヨーロッパのディスコから枝分かれし、主にイタリアの制作チームが作ってきたダンスミュージックです。日本では1990年代のコンピレーションシリーズや、アニメ「頭文字D」の劇中で使われたことで広く知られるようになりました。
特徴は4つです。1つ、速い4つ打ちと、全部の裏で開くハイハット。2つ、8分で1オクターブを上下し続けるシンセベース。3つ、ノコギリ波の太いシンセで弾くリフ。4つ、マイナーの進行の上に乗る、明るく張った歌。
作る側から見ると、ほとんどの要素が「同じ形のくり返し」でできています。ベースは2つの高さしか使わず、リフは曲の中で何度も同じ形で戻ります。だから、1つ作れば曲の大半が埋まります。
この記事では、歌の前の段階、つまりドラム・ベース・リフ・コードの4つで8小節を組むところまでを扱います。歌を乗せる手順は、他の歌もの記事と同じです。
速さと4つ打ちが近いトランスとの違いは、ベースです。トランスは裏に置いたベースで浮かせますが、ユーロビートは表裏の両方で跳ねさせます。浮かせる側の作り方はトランスの作り方を見てください。
BPMの目安
速い。でも、ベースの上下が1音ずつ聞こえる速さで止めます。
150〜160あたりが目安です。まず155に設定してください。
この速さだと、8分で上下するベースが「跳ねている」と聞こえます。165を超えると上下が1つのうなりに溶け、速いだけの音になります。140を下回ると、跳ねではなく歩きに聞こえ、トランスやハウスの側へ寄ります。
決める基準はベースです。ルートと1オクターブ上が、別々の音として交互に聞こえる速さに合わせます。聞き分けられなければ下げます。
歌を乗せる予定なら、歌詞が8分に1語ずつ乗るかも見ます。この速さでは言葉を詰めると息が続かないので、サビは4分で言葉を置き、Aメロで8分を使う配分になります。
近いジャンルとの違い
4つ打ちで速い音楽は多いので、ベースの動きで見分けます。
| ジャンル | BPMの目安 | 見分けるところ |
|---|---|---|
| この記事(ユーロビート) | 150〜160 | ベースが8分で1オクターブを跳ね続ける |
| トランス | 136〜142 | ベースを裏だけに置いて浮かせる。長いビルドアップ |
| テクノ | 125〜135 | 歌もサビも置かず、反復と微変化で聞かせる |
| ハウスミュージック | 120〜128 | 遅く、キックとベースの隙間で揺れる |
| アニソン風 | 160〜185 | 速さは近いがバンドの8ビート。ギターが主役 |
| シンセウェーブ | 80〜115 | 同じ80年代のシンセでも、遅く、夜の雰囲気 |
数字の範囲は重なります。迷った時はベースを聞いてください。上下に跳ね続けていれば、この記事の側です。
4つ打ちと裏のオープンハイハット
キックは等間隔。開くハイハットが速さの体感を作ります。
1小節を16分音符で16マスに分け、番号で呼びます。1拍目の頭が1番、2拍目が5番、3拍目が9番、4拍目が13番です。
キックは1番、5番、9番、13番の4つ打ちです。ここは曲の最初から最後まで動かしません。ブレイクで止める時以外、崩しも入れません。
オープンハイハットを、3番、7番、11番、15番、つまり全部の裏に置きます。キックとオープンハイハットが交互に鳴ることで、4つ打ちが「ドッ・チー・ドッ・チー」と前に進みます。この裏のハイハットが、ユーロビートの速さの体感をほぼ決めています。
スネアかクラップは5番と13番です。音は短く、キックより少し軽いものを選びます。長いスネアは裏のハイハットを隠します。
クローズドハイハットは16分で全部のマスに薄く入れるか、入れないかのどちらかです。入れる場合はオープンより一段下げます。16分を強く入れると、裏のオープンが埋もれて速さの体感が落ちます。
これで1小節ができます。2小節目以降も同じです。変化は8小節目の13番から16番に、スネアを16分で4発詰めるフィルだけです。
8分で跳ねるオクターブベース
使う高さは2つだけ。ルートと、その1オクターブ上です。
この節がユーロビートの中心です。ベースは、コードのルートと、その1オクターブ上を、8分音符で交互に鳴らします。
16マスで言うと、奇数のマス全部にベースが入ります。1番がルート、3番が1オクターブ上、5番がルート、7番が1オクターブ上。低い・高い・低い・高いの順で、1小節に8音です。
音の長さは、次の音が鳴る直前に切れる程度にします。伸ばすと低い音と高い音が重なり、跳ねが消えます。16分より少し短い長さが目安です。
音色は、ノコギリ波を1本か2本重ねたシンセベースです。歪みは要りません。立ち上がりがはっきりしていて、すぐ減衰する設定にします。
コードが変わる時は、ルートだけを次のコードの音に移し、形は変えません。Amの小節ならA、Fの小節ならF。跳ねる形は曲の間ずっと同じです。
打ち込んだら、ベースだけ音を出して4小節回し、8音が全部同じ強さで聞こえるかを確かめます。高い音のほうが目立つなら、高い音のベロシティを少し下げます。ベースの基本的な置き方はベースラインの作り方にもまとめています。
ノコギリ波のシンセリフ
サビの後に戻ってくる4小節。メロディより先に作ります。
ユーロビートには、歌とは別に、シンセで弾く決まったフレーズがあります。これをリフと呼びます。曲の頭に出て、サビの後にもう一度戻ってくるのが型です。
リフは4小節で作ります。コード4つに乗せて、1小節に1フレーズ。4小節目の終わりで1小節目の頭へ戻れる形にしておくと、何度でもくり返せます。
音の動きは、8分と16分を混ぜて、コードの構成音の中を上下します。高さの幅は1オクターブ以内に収めます。広げると歌の場所を取ります。
音色は、ノコギリ波を2本、少しだけピッチをずらして重ねたものです。ずらすことで厚みが出ます。歪みではなく重ねで太くするのがこのジャンルの音です。
リフを先に作る理由は、曲の骨格になるからです。歌のメロディはリフの隙間に入れるので、リフが決まっていないと歌の高さも長さも決められません。
作ったリフは、キックとベースの上で8小節回します。ベースの跳ねとリフの8分がそろって聞こえるなら、リフの打点がベースと合っています。ずれて聞こえるなら、リフの16分をどれか1つ8分に戻します。
マイナーの進行に乗せる
暗い進行の上に、明るく張ったメロディ。この組み合わせが型です。
コードは、マイナーキーの4つで足ります。Amなら、Am→F→G→Am。あるいはAm→F→G→E。4小節に1つずつ置きます。
進行が暗いのに曲が明るく聞こえるのは、ベースの跳ねとリフが明るさを担っているからです。コード側で明るくしようとメジャーに変えると、ユーロビートの切なさが消えて別の音になります。
コードの音色は、ベースやリフと同じノコギリ波を薄く伸ばしたパッドです。鳴らし方は2つあります。1つ、4小節に1つを白玉で伸ばす。2つ、キックと同じ4つ打ちで短く刻む。サビで刻みに切り替えると、押し出しが増えます。
コードの高さは、ベースの1オクターブ上より上、リフより下に置きます。ベースと同じ高さで鳴らすと、せっかくの跳ねがパッドに埋まります。
マイナーキーの選び方と、暗い進行の扱いはマイナーキーの曲の作り方にまとめています。この記事の範囲では、Am→F→G→Amの1つで8小節を組んでください。
リフ→Aメロ→Bメロ→サビ
リフが2回出るところが、他の歌ものと違います。
ユーロビートの型は、リフ→Aメロ→Bメロ→サビ→リフの順です。サビの後にリフが戻るのが最大の特徴で、ここで曲が1周したことが伝わります。
長さの目安は、リフ8小節、Aメロ8小節、Bメロ8小節、サビ8〜16小節、リフ8小節です。4つ打ちもベースも、この間ずっと同じ形で鳴り続けます。
変えるのは3つだけです。1つ、Aメロではリフを消し、パッドを薄く伸ばす。2つ、Bメロでパッドを刻みに変え、サビへ向かう。3つ、サビの直前の1小節で、キック以外を全部止める。
サビ直前の1小節の無音が、このジャンルの一番の盛り上がりを作ります。ここでキックまで止めると落ちすぎるので、キックだけは残します。
サビの後にリフが戻る時は、サビの最後の小節でスネアのフィルを入れ、リフの1音目をキックと同じ1番にぴったり合わせます。ずれると、リフが戻った感じが出ません。
曲全体の構成の考え方は曲の構成の基本を見てください。この記事の範囲では、リフ8小節とAメロ8小節の16小節を先に組みます。
低域はキックとベースで分ける
8分で鳴り続けるベースと4つ打ちは、必ずぶつかります。
キックは1・5・9・13番、ベースは奇数のマス全部。つまりキックが鳴る瞬間は必ずベースのルートも鳴っています。ここを整理しないと、低域がこもります。
手順は2つです。1つ、キックが鳴る瞬間だけベースの音量を下げる。サイドチェインという方法で、キックの打点でベースがへこみ、すぐ戻ります。2つ、ベースの一番低い成分を少し削り、キックの下を空ける。
どちらか1つで足りることが多いです。両方やると、ベースが痩せて跳ねが軽くなります。
リフとパッドは、低域には入れません。ベースの1オクターブ上より高い場所で鳴らし、低い成分を削ります。
確認は、キックとベースだけを鳴らして、両方の打点が数えられるかを聞きます。数えられないなら、へこませ方が足りません。サイドチェインの設定はサイドチェインの基本にまとめています。
最初の8小節の手順
ドラム、ベース、リフ、コードの順です。歌は最後です。
| 順番 | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 1 | BPMを設定 | まず155 |
| 2 | キックを4つ打ちで置く | 1・5・9・13番 |
| 3 | オープンハイハットを裏に置く | 3・7・11・15番 |
| 4 | スネアを5番と13番に置く | 短い音で |
| 5 | コードを決める | Am→F→G→Am。4小節に1つ |
| 6 | ベースを8分で上下させる | 奇数のマス全部。低・高・低・高 |
| 7 | ベースだけで4小節回す | 8音が同じ強さで聞こえるか |
| 8 | リフを4小節作る | ノコギリ波2本。1オクターブ以内 |
| 9 | パッドを白玉で伸ばす | ベースより上、リフより下の高さ |
| 10 | キックの打点でベースをへこませる | 両方の打点が数えられるまで |
8番を5番より先にやらないでください。コードが決まる前にリフを作ると、後からコードに合わせてリフを直すことになり、リフの形が崩れます。コード、ベース、リフの順です。
書き出して確かめる
小さい音量で、ベースの上下が聞こえるかを見ます。
プロジェクトを保存してから8小節を書き出し、書き出した音源を小さい音量で再生します。見るのは3つです。
1つ目、ベースが低・高・低・高と跳ねて聞こえるか。1つのうなりに聞こえるなら、BPMが速すぎるか、音が長すぎます。
2つ目、裏のオープンハイハットが聞こえるか。聞こえないなら、16分のクローズドが強すぎます。
3つ目、キックとベースの打点が数えられるか。数えられないなら、へこませ方が足りません。
今日やることは1つに絞ります。BPM155で、キックの4つ打ちと、8分で上下するベースを4小節置く。リフもコードも、まだ要りません。ベースが跳ねて聞こえた時点で、ユーロビートの土台はできています。曲として仕上げる残りの流れは、制作工程マップで確認してください。
よくある疑問
BPMはいくつにすればいいですか
150〜160が目安で、まず155です。8分で上下するベースが、低い音と高い音として別々に聞こえる速さに合わせます。165を超えると上下が溶け、140を下回るとトランスやハウスの側へ寄ります。
ベースは何音使いますか
2つです。コードのルートと、その1オクターブ上を8分で交互に鳴らします。コードが変わってもこの形は変えず、ルートだけを次のコードの音へ移します。
トランスとの違いは何ですか
ベースの置き方です。トランスは裏だけにベースを置いて浮かせます。ユーロビートは表と裏の両方で跳ねさせます。BPMもユーロビートのほうが速めです。
コードがマイナーなのに明るく聞こえるのはなぜですか
明るさをベースの跳ねとリフが担っているからです。コードをメジャーに変えると切なさが消えて別の音になります。進行はマイナーのまま、ベースとリフで押します。
低域がこもります
キックが鳴る瞬間に、必ずベースのルートも鳴っているからです。キックの打点でベースをへこませるか、ベースの一番低い成分を削ります。どちらか1つで足りることが多いです。
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